塩野瑛久
BS-TBSドラマ「天狗の台所Season3」
この作品の魅力は、等身大の芝居から生まれる“空気感”にある
多くのファンに愛され、待望の続編がスタートしたドラマ『天狗の台所 Season3』(BS-TBS・毎週木曜夜23:00〜放送中)。今作ではシリーズ初となる“春の里山”を舞台に、新鮮な春の味覚や豊かな自然とともに物語が紡がれます。今回のインタビューでは、基とオンと同じ天狗の一族の末裔で、二人の良き理解者である愛宕有意を演じる塩野瑛久さんに、Season3の見どころや自然体なお芝居を引き出すために大切にしていることなどを伺いました。シリーズを重ねてもなお色褪せない作品の魅力や撮影時のエピソードなど、本作の深みに触れられるお話が満載です。
©田中相/講談社 ©maroyaka/BS-TBS
<第4話 あらすじ>
#4 桜餡とトウモロコシ
脚本:天野千尋 監督:畑中みゆき
本作もSeason3に突入しました。
撮影現場で「『天狗の台所』に戻ってきたな」と感じたのは、どんな瞬間でしたか?
まず、あの里山の家での撮影というだけで、「戻ってきたな」という感覚が強くありました。それ以外で言うと、むぎ(スピカ)のタイミングを待つ時間ですかね。なかなか上手くいかないこともあるんですけど、ばっちりハマる時もあって。何かいい瞬間をつかめたら、と基本的にずっとカメラを回しながら待っているんです。そういった部分は、この作品ならではだと思います。
あとは、やっぱりご飯のシーン。撮影中は、それぞれの役としてシーンに合わせた「おいしい」を表現しますが、カットがかかった瞬間に役を一回忘れてみんなで夢中になって食べてしまう(笑)。そういう瞬間にも『天狗の台所』らしさを感じました。
Season3は “春の里山”が舞台となりますが、
前作までとの違いは感じましたか?
今までは夏の撮影ばかりだったので、春は新鮮でした。今回は春らしい食材もたくさん出てきますし、そこは視聴者の皆さんにも新鮮に見ていただける部分だと思います。
特に印象に残っている料理は?
2話で玉ねぎを使った料理が出てくるんですが、それがおいしすぎて。カットがかかった瞬間にみんなで「うま、うま」って言いながらバクバク食べていました。「こっちのほうを撮りたい」っていうくらい。でも、それだとちょっと役と離れすぎてしまうので……(笑)。
Season3まで続くほど多くの方に愛されている本作ですが、魅力はどこにあると思いますか?
この作品は、オン(越山敬達)を中心に動いていると僕は思っていて、“作り物”ではないところがあるんですよね。敬達のお芝居の温度感を大事にしながら、僕らもそれに合わせてお芝居を紡いでいく。敬達のリアルで等身大な部分が、一つ愛された要素だと感じます。
あとは、“空気感を撮っている”というところ。顔のアップや動作そのものにフィーチャーするというよりは、それをやっている人の“様”を撮っている感覚にすごく近いんです。そういった部分が画面を通して皆さんにも伝わったのかなと思います。
そうした『天狗の台所』ならではの“空気感”を生み出すために、演じるうえで大切にしていることは何ですか?
“新鮮味”ですかね。「次はこれを撮って……」「立ち位置はここで……」といった細かいことを『天狗の台所』の撮影では事前にあまり決めないんです。特に敬達とお芝居をするときは、彼になるべくそういうことを意識させず、自然にやってもらいたいので、僕ができるところはフォローするようにしています。
具体的にはどんなフォローを?
カットを細かく割らないぶん、人同士がかぶったりしてしまうことがあるんです。そういう時に、僕が避けられるところは避けて、敬達がちゃんとカメラに映るようにしてあげる。そういうことは、陰でやっているつもりです。
あとは、たとえばSeason1の2話で、オンと有意が一緒に水を取りに行くシーン。近くで川の音がザーッと流れていたので、二人で歩きながら会話していると、敬達の声が聞こえないことがあって。でも、そこでなんとなく「今、敬達のセリフが終わったかな」と判断して芝居を続けるんじゃなくて、聞こえなかったら、芝居中に「聞こえない」と言う。そうやって「このスタンスでいいんだよ」ということを、現場で示しています。
先輩として、後輩の自然なお芝居を引き出すような感覚でしょうか。
そうですね。そのほうが絶対に敬達の魅力、オンの魅力が伝わると思うんです。ただ、今回は敬達が成長したからこそ、生っぽさも含めて自分でお芝居を考えてくるようになったので、そこをあえて崩してあげる……たとえば言葉をかぶせたり、細かいリアクションを入れたり。僕から思いもよらない反応が返ってきた時に、敬達から決めてきた芝居ではないものが出たらいいな、と思いながらやっていました。
久しぶりに再会した越山さんは
「少しよそよそしくなった」そうですが……。
Season2の時も今回も、最初のほうはちょっと距離があって「あれ、敬語だったっけ?」みたいな(笑)。すごく丁寧な言葉を使おうとしすぎているので、「無理するなよ」って言っているんですけど。彼なりに成長しようとしているのが分かるぶん、可愛いらしいのですが「寂しいじゃん」っていう話は結構しましたね。
そんな越山さんの成長を間近で見てきて、
逆に塩野さん自身が教えられたことはありますか?
素直さですかね。今回の現場で、敬達がしきりに「こうやっているほうが俳優っぽくないですか?」「こっちのほうがかっこよくないですか?」みたいなことを言っていて(笑)。僕が17歳の時は、そんなお茶目さや素直さは持っていませんでした。どちらかというと突っ張るほうで、可愛げがなかった気がします。かっこよく見られたいなら、本当にかっこよくいようとしてしまう。背伸びしちゃうんです。
いい意味で、敬達にはそういうところがなくて。でも自分なりに必死に考えているし、悩みを隠さない。「悩んでいる」ということをちゃんと表に出すから、周りの大人たちも助けてあげたくなる。そこは、彼の強みですよね。
(基を演じる)駒木根さんに対する
印象の変化などはありましたか?
葵汰自身は、大きく変わらないです。その時その時の悩みはあるそうで、人生相談じゃないですけど、そういったことを二人で話したりはします。その中でも、マインドや心根の優しさ、ちょっと可愛いらしい部分もありつつ大人な部分もありつつというのは前から持っているところで。シーズンを重ねるごとに、居心地の良さをすごく感じています。
撮影の中で、三人の関係性を感じた
印象的な出来事があれば教えてください。
それで言うと、基とオンがすごくリンクして見えた瞬間があったんです。アブが家の中に入ってきてしまった時に、二人ともできるだけ身を低くして、抱き合いながら「あー!」って言っていて(笑)。その2人を僕は一歩外から微笑ましく見ている、みたいな瞬間がありまして。
撮影の合間には、三人でどんなお話をしましたか?
もともと僕と葵汰はカメラが好きで、よく話していたんです。今はそこに敬達も加わって、気づいたらカメラ好き三人になっていました。今回の撮影では、野生のキツネを見つけて、みんなでダッシュして撮りに行きました(笑)。
そうしたお話を聞いていると、三人の関係性と、基・有意・オンの関係性が重なって見える部分もありそうですね。
本当に僕らのパーソナルな部分に近いところが脚本に描かれているなと感じます。俳優としての敬達の変化が、今回のオンが成長して、自分で考えて行動する姿とも重なっていて。それが時には兄や有意を少し驚かせるような成長の仕方をしていたりもするんです。そういうところが静かに描かれているのも、Season3の見どころだと思います。
Season3では、
有意のどんな姿に注目してほしいですか?
有意は、ある意味で一番「働く人たちの目線」に近い役どころだと思います。社会の中で葛藤しながら頑張りつつ、基やオンのところへ行けば、自然の豊かさや人とのつながりの大切さに触れることができる。そのどちらにも偏りすぎない有意のあり方に、注目して見ていただけたら嬉しいです。 (後編に続く)
塩野瑛久
しおの あきひさ
1995年1月3日生まれ。
最近の出演作に、日本テレビ『告白-25年目の秘密-』(‘26)、TBS『未来のムスコ』(‘26)、フジテレビ『嘘が嘘で嘘は嘘だ』(‘26)、映画では、『ラブ≠コメディ』(‘26)、『マジカル・シークレット・ツアー』(‘26)、『SAKAMOTO DAYS』(‘26)、『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』(‘26)など。また、2026年劇団☆新感線46周年興行・冬公演いのうえ歌舞伎『髑髏城の七人 LAST STAND』、映画『すべて真夜中の恋人たち』(11月13日全国公開)への出演も控える。
緑豊かなロケーションは、『天狗の台所』の世界観にぴったり。ちょうど日が沈む間際の時間帯、塩野さんの持つ透明感と夕日の煌めきが重なった瞬間は本当に美しく、本作ならではの穏やかな空気を感じられるカットを収められました。インタビューでは、自分がどう演じるかだけでなく、共演者の魅力をどう活かすか、そして作品ならではの“空気感”をどう作っていくかを熱く語ってくださった塩野さん。細かなところまで考えながら役と深く向き合う役者としての姿勢に、とても感銘を受けました。後編では、そんな塩野さんのパーソナルな部分までたっぷりとお聞きしました。お楽しみに。
©田中相/講談社 ©maroyaka/BS-TBS
『天狗の台所 Season3』
毎週木曜よる11時〜11時30分
■出演:
駒木根 葵汰 塩野 瑛久 越山 敬達
古屋 呂敏 柊木 陽太 オクイシュージ 永尾 柚乃
角田 晃広[東京03] 渡辺 真起子
原田 泰造
■原作:田中 相『天狗の台所』〈講談社「月刊アフタヌーン」連載〉
■脚本:岨手由貴子、天野千尋、熊本浩武
■監督:長島翔、畑中みゆき、宮﨑萌加、小山亮太
■プロデューサー:平賀渉(BS-TBS)、五箇公貴(maroyaka)、向井達矢(ラインバック)
■音楽:VaVa(SUMMIT, Inc.)
■制作協力:ラインバック
■製作:BS-TBS maroyaka
※Team Credit
カメラマン:遥南碧
インタビュー・記事:相澤花菜