野村康太
映画『6人ぼっち』
すごく共感できて勇気づけられる作品
ネクストブレイク俳優として期待を集め、映画やドラマに引っ張りだこの野村康太さん。主演映画『6人ぼっち』で、クラスで目立たない“陰キャ”の加山 糸を演じている彼に、撮影中の思い出や、好きなシーンなどを伺いました。また、ご自身の高校時代や修学旅行の思い出も語ってくださっています。

<あらすじ>
クラスに一人も友達がいない加山 糸(野村)は、修学旅行前の班決めで、誰とも組めずにいた5人と班を組まされ、強制的に班長を任されてしまう。自己中で周りから引かれ気味のTikToker・馬場すみれ(三浦羽衣)、ガリ勉タイプで接しにくい新川 琴(鈴木美羽)、自慢話ばかりでウザがられている五十嵐 大輔(松尾 潤)、気弱で意思表示のできない山田ちえ(中山ひなの)、そして、何らかの理由で不登校になってしまった飯島 祐太郎(吉田晴登)と、一癖も二癖もある“ぼっち”の面々だった。広島での修学旅行とは思えない、バッティングセンターや“SNS映え”のためのカフェを巡るうちに仲間意識が芽生え始める6人だったが、あることをきっかけに誰も予想していなかった事態が起こる……。

最初に脚本を読んだときの感想を教えてください。
監督に「これ、僕です」と言ったぐらい、自分とマッチする部分や共感できる部分が多くて。セリフの口調なども、すごく共感できると思いました。作品に対しては、それぞれ違う個性の子たちが徐々に仲よくなっていって、最後に一つになるという物語で……チラシのキャッチコピーには「青春できていない青春映画」と書いてありますが、この映画はすごく青春だなと思いました。
では、役作りに対してすごく迷ったりすることはなかった?
あまりなかったです。ただ、最初の読み合わせの段階では、セリフの口調がオーバーになってしまっていたんです。たとえていうなら、アニメキャラクターのようなしゃべり方というか。だから、そこを引き算して引き算して、より自然体になるように作っていきました。
糸に対して、特に共感できる部分は?
僕もはじめましての方には人見知りをしてしまうので、最初に話しかけるときの“どうしよう……!?”という戸惑いは、ものすごくあります。撮影現場とかでも、共演者の方に自分から話しかけることが、ホントに勇気を振り絞らないとできないタイプなので。糸が勇気を振り絞ってみんなに話しかけている姿には、とても共感できました。

糸が、自分には存在価値あるのかと自問自答する場面もありますが、野村さんもそんなふうに考えることはありますか?
自分に存在価値がないと思ったことは、あまりないです。なので、役作りをするうえで、自分を追い込んでネガティブな気持ちを作らなければいけないところはありました。
最初こそ人見知りを発揮したものの、撮影が進むうちにキャストのみなさんと仲よくなったそうですね。
そうなんです!夜ごはんは、ほぼ毎日みんなで一緒に食べていましたし。メンズは、時間があれば一つの部屋に集まって“スマブラ”をしたりとか(笑)。今でもみんなでごはんを食べにいったりするぐらい、仲よくなりました。
キャストのみなさんとは、撮影前にお芝居について話し合ったりすることも?
いや、お芝居のことで話し合うことは、まったくなかったです。あっ、でも!撮影の前日にみんなで集まって、翌日のシーンの読み合わせはしました。だけど、そのときも“ここのシーンをこうしよう”みたいに話し合うことはなかったです。たぶん、みんながそれぞれ感じたままに作り上げていこうと考えていたのかなって。
野村さん自身は高校時代、どんな生徒でしたか?
部活の時間になるとはっちゃけて大きな声を出したりとか、ウェイウェイしていたんですけど(笑)、クラスではわりと静かなタイプでした。というのも、高校3年生のクラス替えのときに、2年生からずっと同じメンバーですでに輪ができているようなクラスに、僕一人放り込まれたんです。なので、最初はめちゃくちゃ静かで、話しかけづらい雰囲気だったんじゃないですかね。
劇中には、お昼休みに一人でお弁当を食べるシーンなどもありましたが。
僕も、お昼ごはんは基本的に一人で食べていました。それか、ほかのクラスに仲のいい子がいたので、その子を自分の教室に呼んだり、その子の教室に行って食べたりとか。でも、疎外感はまったくなくて。僕はスポーツクラスだったんですけど、みんないい子たちばかりで、一人で(お昼ごはんを)食べていても気にしないような、自由な雰囲気だったので。孤独を感じることはなかったです。

本作は、修学旅行の班決めをするところから始まります。ご自身の修学旅行の思い出を教えてください。
高校のときは、ちょうどコロナ禍で修学旅行に行けなかったんです。中学校では京都・奈良に行ったのですが、行きの新幹線のなかで、みんなで(トランプゲームの)大富豪をやったんですけど、盛り上がりすぎて、帰りの新幹線は僕だけ一人席にさせられたりとか(笑)。夜な夜な、男子だけで部屋に集まって恋バナをしたり、みんなで温泉に入ってはしゃいだり、楽しかったなぁ。
撮影で特に印象に残っているシーンは?
修学旅行のクライマックスシーンです。そのシーンで、「カット!」がかかった瞬間にみんなで抱き合って、泣きながら「お疲れさま!」と言い合ったのは、とても印象に残っています。

そこまでに、かなりの試行錯誤があったからこそでしょうか。
みんな、本当に集中してやっていましたし、各々が役として思う部分もたくさんあったので、あのシーンで物語のキャラクターたちも一つになった感がありました。だからこそ演じている僕らも、撮り終えたときにみんなで抱き合って称え合えるくらい一つになれて。今、思い出してもちょっと感動しちゃうぐらい、いいシーンになったと思います。
特に、糸が祐太郎(吉田晴登)にかけた「ほうっておけないよ!」という言葉にグッときました。
祐太郎は、自分には存在価値がないと思うくらいネガティブな気持ちを持っている青年で。糸は、そういうところに共感……まぁ、同情もあるでしょうけど、せっかくなら修学旅行の最後に、みんなで築いてきた絆のなかに祐太郎も入ってほしいというか、楽しくみんなで終わりたいという糸のやさしさですよね。“班長としてまとめなきゃ”という正義感から出た「ほうっておけないよ」だったのかなと思います。
では、特にお気に入りのシーンは?
バッティングセンターのシーンです。監督から「めちゃくちゃダサく(球を)打ってほしい」と言われて。「わかりました!」といって、ダサいフォームになるようにがんばりました(笑)。でも、一発OKだったんじゃないかな。

撮影は広島で行われたそうですが、空き時間に観光などはできましたか?
広島には2週間ぐらい行っていたのですが、撮休の日には厳島神社や広島平和記念資料館へ行ったりして、本当の修学旅行みたいでした。空き時間ができると、みんなで現地のおいしいものを食べにいったり、宿舎に戻ってみんなでゲームをしたりもしました。
厳島神社のある宮島は、いかがでしたか?
そこらじゅうに鹿がいたりとか、東京では感じられない自然の豊かさを感じられました。屋台もたくさんあって、海もキレイで、すごく居心地がよかったです。

食べ物で印象に残っているものは?
広島焼きがものすごくおいしくて、ドカ食いをした記憶があります。
ドカ食いというと!?
(直径30センチ程度の円を手で示しながら)これぐらいのサイズのを、一度に3つぐらい食べちゃいました。
劇中に、糸がお好み焼きをヘラでひっくり返すシーンが……。
あっ、ありましたね!

みごとな手さばきでしたが、もともとお好み焼き作りは得意なのですか?
いや!僕、お好み焼きや広島焼きを、人生で1回もひっくり返したことがなくて。あれが初めてだったので、撮影前にちょっと練習させてもらって臨んだんですけど。
本番では、一発OK?
ではあったんですけど……実は、よく見るとちょっと失敗しているんです。画角のおかげですごく上手にできている風なんですけど、ちょっとベチャッとなっちゃって……。でも、それも含めていい思い出です(笑)。
改めて、本作を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。
どんな人が見ても共感するところが多い作品だと思います。6人もいるので、すでに高校を卒業した方だったら、“私も学生時代、こんな経験をしたな”と、なつかしさに浸ったりとか。学生じゃない方にも、働いている環境のもとで孤独を感じることがあると思うので、共感してもらえるでしょうし。糸が勇気を振り絞って一歩を踏み出したことにより、とてもいい形で結末を迎える物語になっています。4月から新生活が始まって悩んでいる方も、この映画を観ていただけたら、少なからず勇気づけられるんじゃないかなと思っています。

野村康太
のむら こうた
2003年11月30日生まれ。メンズノンノ専属モデル。
ドラマや映画で多忙な中に取材のお時間をいただいた、野村さん。去年に引き続きお話を伺いましたが、素直さは健在で、どんな質問にも等身大で誠実にお答えいただいたのがとても印象的でした。そして時折見せるこちらの予想の斜め上をいくお茶目で天然な返答に、周りにいるスタッフにも笑顔をたくさん与えてくださいました。そして、この1年でコツコツとたくさんの経験を積まれて、昨年よりもより落ち着きや時に見せるしっかりとしたお姿に嬉しくも、微笑ましくなるスタッフでした。
後編では、以前伺った料理や最近の野村さんの流行りを伺っております。お楽しみに。
最近の出演作に、テレビドラマでは、テレビ東京『ディアマイベイビー〜私があなたを支配するまで〜』(‘25)、カンテレ・フジテレビ『パラレル夫婦 死んだ”僕と妻”の真実』(‘25)、TBS『クジャクのダンス、誰が見た?』(‘25)、MBS・TBS『その着せ替え人形は恋をする』(‘24)、テレビ東京『夫の家庭を壊すまで』(‘24)映画では、『パーフェクトプロポーズ Dream Edition』(‘24)、『ただ、あなたを理解したい』(‘24)などがある。

©2025『6人ぼっち』製作委員会
タイトル:『6人ぼっち』
キャスト:野村康太、吉田晴登、三原羽衣、松尾潤、鈴木美羽、中山ひなの
小西詠斗、賀屋壮也(かが屋)
監督:宗綱弟
企画・脚本:政池洋佑
エグゼクティブプロデューサー:野田爽介
プロデューサー:熊田泰祐
音楽:坂本秀一
編集:上野聡一
製作幹事:FOR YOU
製作プロダクション:isai
配給:ギグリーボックス
配給協力:フューレック
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:SUGA NAKATA(GLEAM)
スタイリスト:能城匠(TakumiNoshiro)
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿