鈴鹿央士
映画『藁にもすがる獣たち』
“落ちるところまで落ちよう”と思いながら演じていました
江戸川乱歩賞作家・曽根圭介の同名小説を、監督・城定秀夫と脚本家・小林靖子のタッグで実写映画化した『藁にもすがる獣たち』が、9月25日より全国公開されます。バイト先のネットカフェで「1億円入りのボストンバッグ」を見つけ、争奪戦に巻き込まれていく弱小大学生YouTuber・佐藤寛治を演じた鈴鹿央士さんに、脚本を読んだ印象から、寛治の人物像、祖母・富子を演じる風吹ジュンさんとの撮影現場でのエピソードまで伺いました!
©曽根圭介/講談社 ©2026「藁にもすがる獣たち」製作委員会
<あらすじ>
チャンネル登録者数“2ケタ”の弱小大学生YouTuber・佐藤寛治(鈴鹿央士)は、ある日バイト先のネットカフェで、1億円の札束が入った怪しげなボストンバッグを発見する。一方、ヤクザからの借金に追われる不良警官・江波戸良介(成宮寛貴)と、多額の借金を抱えた主婦に怪しげな計画を持ちかける謎の女・し~な(森七菜)も、それぞれの思惑を胸に動き出す。そんな中、山中で発見された遺体。無関係だった彼らの人生は、やがて“1億円”によって交錯し始める――。
オファーを受けて脚本を読んだとき、率直にどのような感想を持ちましたか?
原作とも、韓国で映画化された作品ともまた違いがあって、寛治という役柄も中年男性から大学生YouTuberに変わっていたので、「こういう変化になったんだ」と思いました。
でも、次から次へと展開が広がっていく感じや、いろいろな登場人物の物語が交差していく感じがやっぱり面白いなと思って。映像になってつながったときに、どんなワクワクする作品になるんだろうと、すごく楽しみでした。
鈴鹿さんは、寛治をどのような人物として捉えましたか?
まず、すごく優しさのある人です。おばあちゃんと二人暮らしをしていて、周りの登場人物と比べても悪というものがあまりない、普通の青年だと思いました。1億円を手にすることになったときも、行動の根っこにはおばあちゃんの存在がずっとあるような感じがしたので、その優しさは持ったままでいようと思いました。
でも、あまり面白くない人なんじゃないかと(笑)。YouTubeのチャンネル登録者数も2桁ですし。バイト先の人やおばあちゃんに対しても、優しさがすべて表に出ているわけではなくて。人付き合いがあまり得意ではない人なのかなと思っていました。
チャンネル登録者数2桁の弱小大学生YouTuberという設定を聞いたときは、どう思いましたか?
かなり個人的なことなんですけど、「ああ、またお金を持っていない配信者か」と思いました(笑)。Netflixシリーズ『喧嘩独学』で演じた志村光太という役の次がこれだったので、「またお金がない役だ」って。
でも、「配信者」といえば一緒かもしれないけれど、話の展開も役柄もまた違う感じなので、こちらはこちらで面白そうだなと思いました。寛治は以前演じた光太よりも、ユーモアもあまりない感じで、冗談も言わなそうな、面白くない人という印象です。
寛治の行動に共感できる部分はありましたか?
ありました。目の前に1億円が出てきたら、「どうする?」という葛藤は絶対にありますし。
寛治は、自分の生活状況を考えたらすぐに持っていくこともできたけど、一度、忘れ物を保管するところに隠しておく。まだ善の部分が残っている人だったので、そこは「そうだよな」と思いました。
バッグを持ち去ってしまったことは悪ですけど、自分の状況に対して、一度、善悪をちゃんと判断できてはいたので、そこは良かったなというか。僕も善悪の判断をするときには、一回ちゃんと考えておかないとな、と思うので、そこは共感しました。それに、寛治にとって行動の背景にある「おばあちゃんのため」という気持ちは、すごく分かるなと思いました。
寛治を演じるうえで、気をつけたことや心がけたことはありますか?
追い込まれなきゃいけないなと思いました。
おばあちゃんがぼけてしまってからお金を使うようになって、自分たちが生きていくためのお金がなくなっていく。そのなかで、寛治が1億円に手を伸ばすまでの過程がちゃんとないといけないと思っていました。
そこは、落ちるところまで落ちよう、追い込まれようと思いながらやっていました。でも、難しかったですね。
城定秀夫監督とは、寛治の人物像や演技についてどのようなお話をされましたか?
衣装合わせの段階から、「寛治には優しさがありますよね」という話をしたことはすごく覚えています。
現場に入ってからは、本当に撮影のテンポが速くて、お昼過ぎに撮影が終わる日もありました。もちろん丁寧に撮っているんですけど、「じゃあ次、次」という感じで。城定さんの頭のなかで、何が必要か分かっているから、「これを撮ればいい」という判断がすごく速いんだと思います。
しっかり話したのは、寛治がなぜYouTubeを続けようと思っているのか、ということでした。それ以外は、演出も「はい、オッケーです」という感じで。風吹(ジュン)さんがいろいろなアイデアを出してくださるなか、城定さんがまとめ役を担ってくださっていた印象です。
監督にもご質問されたというYouTubeについて、寛治にとってYouTubeとはなんだったのでしょうか?
寛治がお金を手にしたあともYouTuberを続けているという台本だったので、その理由が「手っ取り早くお金を手にしたい」とか「有名になりたい」ということにつながっているのなら、お金を手にしたらやめるかもしれないと思って。
もしかしたら、寛治には「有名になりたい」という気持ちに近いところに、「お金持ちになりたい」という思いもある気がしていて。1億円を手に入れてもYouTuberを続けるのはなぜなんだろう、と思い監督に伺ったら、「単純にYouTubeが好きというか、撮っていたいという理由でいいんじゃないですか」とお話いただきました。
それで、寛治は最初からあまり欲にまみれた人ではなかったんだと分かりました。
風吹さんから出たアイデアで、印象に残っているものはありますか?
寛治を「コラ!」と叩くシーンがあったんです。何で叩くかというところで、おたまなのか、孫の手もあった気がするんですけど、結局、木魚バチになりました。
おじいちゃんの仏壇の前でお経を唱えているときも、「チーン」と鳴らしたり、「コンコンコン」とやったりするタイミングを、風吹さんが台本にないところで入れてくださって。寛治としても、おばあちゃんがぼけているということが、より入ってきやすかったですし、見ていて「えっ、どうしよう」となる感覚を作ってくださいました。
風吹さん演じる祖母・富子は、寛治にとってどのような存在だと考えましたか?
お金よりも大切なものですし、寛治が一番すがりたかったのは、おばあちゃんなのかなと思いました。
お金が必要になって「お金、お金」となっていたけど、それより大事なものがあったと、映画の最後のほうで気づいている気がします。
お二人の関係性についても話されましたか?
おじいちゃんの存在は遺影であるんですけど、「寛治とおばあちゃんはどのくらい二人きりで過ごしているんだろうね」という話をしました。
役について少し話しながら、どういう関係性なのかを考えて、空気を作っていく感じでした。
最後に、作品を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。
すごく見やすい作品だと思います。95分と短いですし、展開もスピーディーでテンポ感も良くて、見ていて飽きない作品です。
映画館に座ってじっくり楽しんでもらって、少しでも「面白かったな」と思ってもらえたら、周りの人に「こういう作品があったよ」と伝えてもらえるとうれしいです。
鈴鹿央士
すずか おうじ
2000年1月11日生まれ。
2018年に「MEN’S NON-NO」専属モデルオーディションでグランプリを獲得。映画『蜜蜂と遠雷』(2019年)で第43回日本アカデミー賞新人俳優賞など数多くの映画賞を受賞した。主な出演作に、ドラマ『silent』(2022年)、Netflixシリーズ『君に届け』(2023年)、ドラマ『嘘解きレトリック』(2024年)、Netflixシリーズ『喧嘩独学』(2026年)、ドラマ『リーガルビート–逆転の法廷–』(2026年)、映画『ロストケア』(2023年)、映画『PLAY!~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』(2024年)、映画『花まんま』(2025年)など。10月には映画『ファーストボイス』の公開を控えている。
クシャッとした笑みを浮かべながら語ってくださった鈴鹿さん。寛治の根にある優しさを見つめながら、真摯に役と向き合ったことが伝わるインタビューでした。祖母役・風吹ジュンさんとのやり取りにも注目しながら、映画『藁にもすがる獣たち』をぜひお楽しみください。後編では、主演として現場に立つなかで感じた変化や、鈴鹿さんが大切にする、人との関わりについてお届けします!
©曽根圭介/講談社 ©2026「藁にもすがる獣たち」製作委員会
映画『藁にもすがる獣たち』
2026年9月25日(金)全国公開
出演:鈴鹿央士 成宮寛貴 森七菜 MEGUMI 前田旺志郎 二ノ宮隆太郎 青木マッチョ 岩松了 小手伸也 風吹ジュン
監督:城定秀夫
脚本:小林靖子、城定秀夫
原作:曽根圭介『藁にもすがる獣たち』(講談社文庫)
主題歌:MAN WITH A MISSION「The Animals」(Sony Music Labels Inc.)
配給:東映
※Team Credit
カメラマン:八重樫ケイン
ヘアメイク:永瀬多壱(VANITÉS)
スタイリスト:梶原浩敬
インタビュー・記事:小谷康貴