市原隼人
映画『おいしい給食 Road to イカメシ』
「『好きなものを好き』と胸を張る姿を人生の活力にしてほしい」
給食をこよなく愛する中学教師・甘利田幸男がスクリーンに帰ってくる! 5月24日公開の映画『おいしい給食 Road to イカメシ』は、昨年放送されたドラマ『おいしい給食 season3』の続きで、北の地・函館の中学校に赴任した甘利田の奮闘を描いています。本作で、己の給食道を追及し続ける甘利田を演じている俳優の市原隼人さんが「FAST」に初登場! 劇場版第3弾となる本作への思いや、撮影を終えられた感想、見どころなどをお聞きしました。
©2024「おいしい給食」製作委員会
<あらすじ>
函館の忍川中学に転勤した甘利田幸男(市原隼人)は、給食であるメニューを味わうことを楽しみにしていたが、赴任から1年以上経った現在も献立に登場することはなかった。相変わらず給食のために学校へ通う甘利田は、食のライバルでもある生徒・粒来ケン(田澤泰粋)と毎日ひそかにバトルを繰り広げている。一方、新米教師の比留川愛(大原優乃)は甘利田に憧れを抱いていた。そんな中、忍川町では町長選挙を前に忍川中学が給食完食のモデル校に選定され、政治利用されようとしていた。不穏な空気を察知した甘利田は、おいしい給食を守るべく立ち上がる。
劇場版も第3弾まできました。改めて本作の魅力をどんなところに感じていますか?
「おいしい給食」はお子様にも目を背けさせないよう、人生のキャリアを積んだご年配の方まで、全ての方に楽しんでいただけるエンターテインメント作品を創ろうとキャストスタッフ一丸となって取り組んできました。「世の中はシンプルじゃない」という甘利田を表したセリフがあるのですが、そんな令和の時代に核心をつくようなセリフが作中に溢れています。根底はコメディでありながら、社会派でもあり、人生の糧となるような強いメッセージ性のあるところが、多くの方に愛していただけるところなのではと改めて感じさせていただきました。
これまで、生徒の神野ゴウや粒來ケンとは「食べ方や楽しみ方」を競い合ってきましたが、今作では、石黒賢さん演じる等々力町長と「給食のあり方」を巡って討論します。大人相手のバトルはいかがでしたか?
石黒さんが演じていらっしゃる等々力町長のような人生のキャリアを積んだ大人とのかけ合いのシーンは、子供とのシーンとはまた違ったテンポ感があってとても面白かったです。スタッフキャストと見た試写はみんな笑っていて「こんなに楽しい試写会は役者人生で初めてなんじゃないかな」と思うぐらい自分が演じてでている作品ですが、自分も笑いながら見ていました。
等々力町長は甘利田と対立する1番の軸となる人物ですが、実は表裏一体でもあると思います。町長が時折人間くささを見せることで、愛おしく見えてしまうんです。この作品の舞台は1980年代ですから、今の時代よりももっと人間の『隙』というのが見えていて、その隙がすごくチャーミングで僕は好きなんです。
普段は隠している隙がふと見えた時の、大人ならではのチャーミングさがありますよね。
作中で二人は生徒を前に討論をしますが、最後の方で町長の「実は……」という思いを知ることができて、そこでまた感じ方も変わると思います。誰もがいろんな境遇や生い立ちがあって、それぞれに正義がある。本作は全ての立場の人間を受け止めてくれるような作品でもあると思います。
高畑淳子さんが演じる「駄菓子屋の店主・サキ」との絡みがいつも面白くて、毎回楽しみでした。
僕もまさか高畑さんが出演してくださるとは思っていなかったので、他の作品ではまず見ることのできない高畑さんをお楽しみいただきたいです。高畑さんが演じるサキがまた人間くさくて、本当にそこに生きているんです。
個人的に、甘利田がサキのことを「ババア」と心の中で呼ぶのも好きでして(笑)。2人の関係があってこそ成立すると思うのですが、共演はいかがでしたか。
高畑さんは大先輩で、全てを受け止めてくださって、今作の舞台である1989年当時を生きているような生々しい感覚で掛け合いのお芝居をさせていただけて、とても楽しく嬉しかったです。
甘利田にとって駄菓子を食べるひと時は、給食とはまた違う時間ですよね。
もう至福の時間です。僕は駄菓子屋のシーンも色々なパターンの芝居を試してみたいので、駄菓子屋のシーンもたくさん食べました。きっと皆さんが想像している量の何倍もです。
何度食べても初めて食べたリアクションをしなければいけないのは大変ですね!
大変ではありますが、どれも美味しいですし、どんなものでも作ってくださる方がいらっしゃるので、毎回感謝しながら頂いています。駄菓子屋のシーンは「日々の暮らしの中でこういう楽しみって大切だよな」と思わせていただけた場でした。
2019年にスタートしたドラマSeason1から3、劇場版が2作、そして今回の映画となります。原作実写化が多い昨今で、オリジナル作品である本作がこれだけ長い間多くの方に支持されている理由をどのようにお考えですか?
このような作品が増えればいいなと思える作品と出会えるかどうかは、役者の醍醐味です。「おいしい給食」は、制作に携わる全てのスタッフキャストと共闘しながら、ゼロからイチを生み出す可能性に満ち溢れている現場なんです。全ての方が思いを奮い立たせて、部署を越えて仕事をしています。意見が交差することもありますが、それは信頼がないと成し得ないことなので、この座組みだから創れたと思っています。
愛に満ち溢れた、家族のようなチームで制作できることは本当に贅沢なことだと思います。このような作品の現場にまた帰ってくることができたのは、本作を支持してくださったお客様の温かく力強い想いがあったからです。その思いにこれ以上ない程感謝をしています。
最後に、映画を楽しみにしている方々へメッセージをお願いします。
とてつもなくパンチのある、すさまじく面白い第3弾ができました。基本は変わらず、滑稽な姿を見せながらも「好きなものを好き」と胸を張って人生を謳歌しようとする甘利田の姿を見て、みなさんの人生の活力にしていただきたいです。「おいしい給食」ならではの恋愛模様もあって、それぞれのキャラクターのチャーミングなポイントもたくさん見ることができます。今まであったジャンルにとらわれない「おいしい給食」という新たなジャンルを創っていますので、ぜひお楽しみください。
市原隼人
いちはら はやと
1987年2月6日生まれ。
お会いしてすぐ深々と「お願いします!」とお辞儀をしてくださった市原さん。テレビのイメージ通りの男らしさと真面目さで、そして優しいお人柄なのが第一印象からグッと伝わりました。撮影時では曇天の中でしたが、太陽のような存在感のあるオーラと漢らしさが際立っていました!普段市原さんの写真はパキッとした写真が多い中で、横断歩道や緑をバックに新しい市原さんをカメラに納めることができました。そして、時々周りをクスッと笑わせてくださる行動をとる市原さんに周りも自然と笑顔になる時間となりました。外での撮影では多くの人が通る中でも「お邪魔してすみません」と分け隔てない優しさにスタッフも終始漢らしいと感じていました。
近年の出演では、テレビドラマでは、NHK『正直不動産2』(‘24)、『おいしい給食』(‘23)、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(‘22)、映画では、雑賀俊朗監督作『レッドシューズ』(‘23)、舞台では『中村仲蔵 ~歌舞伎王国 下剋上異聞~』(‘24)などがある。
©2024「おいしい給食」製作委員会
『おいしい給食 Road to イカメシ』
出演:市原隼人 大原優乃 田澤泰粋 栄信 石黒賢 いとうまい子 六平直政 高畑淳子 小堺一機
監督:綾部真弥
企画・脚本:永森裕二 プロデューサー:岩淵規
©2024「おいしい給食」製作委員会
5月24日より新宿ピカデリーほか全国公開
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:大森裕行(VANITÉS)
スタイリスト:小野和美
インタビュー:根津香菜子
記事:根津香菜子/有松駿