井上祐貴
目標を口に出して努力し続けることが自信につながっていく
2024年は念願の、NHKの“朝ドラ”にも出演するなど、役者として進化し続ける井上祐貴さん。連続テレビ小説『虎に翼』への出演を経て得たものや、30歳を目前にしての心境、さらには今後の目標まで、役者・井上祐貴の“今”を率直に語っていただきました。

前回FASTにご登場いただいたのが、約1年前。その際に、一番の目標として「朝ドラに出演すること」とおっしゃっていましたが、2024年に『虎に翼』で叶いました。
あっ、そうですね。
朝ドラでの経験を経て、ご自身の血肉になったと感じるところはありますか?
めちゃくちゃあります。朝ドラの現場って、もうホントに時間に追われているというか。撮らなければいけない分量がすごく多いので、そういう時間がないなかでプロフェッショナルな人たちが本番にかける強い思いを……もちろん、ほかの作品でもあることですが、それをより強く感じました。だからこそ、絶対にミスできないと思いました。ちょっとニュアンスをミスったくらいでは、そのまま使われてしまうので。演者だけじゃなくスタッフさんも、本番の一回でどれだけ全力を出せるかが試されているんだなって、すごく感じました。

それは、非常に緊張感がありますね。
作品によっては自分の芝居がちょっと気になった時に、「すみません。今のシーン、もう1回やらせていただけますか?」と自分からお願いすることもあるのですが、朝ドラの現場では、そんなワガママを絶対に言えない空気がありました。「はい、OK。次!」みたいな感じで撮影がどんどん進んでいく。それを見ていて、 “もう1回とかなくて、一発で決めないといけない”という仕事を自分はしているんだなって。
なるほど。
あと、これは朝ドラに限ったことではありませんが、目標を口にするようになってから、それが一つずつ達成されていて、その過程で生まれる自信みたいなものがあると感じます。それが、僕のなかですごく大きいかもしれないです。やっぱり目標を言い続けること、そして、目標に向かって努力……というか、がんばり続けることによって、だんだんと自信につながっていく感覚を持てたので。それはずっと忘れずに、これからも続けていきたいなと思います。
本番にかける思いの強さは、共演した伊藤沙莉さんや岡田将生さんの姿を見ていても感じましたか?
あっ、お二人は、もうもうずっとヤバいです。絶対に手を抜いたりしないので。それは、当たり前のことなのかもしれませんが、僕の前では、伊藤さんは寅子、岡田さんは星 航一……僕のお父さんとしてずっといてくださいましたし。お二人とも、ホントに大きくてカッコいい背中でした。

今年の6月で29歳を迎えますが、30歳という年齢は意識しますか?
あまりしないですね。というか、歳を意識していた時期は終わりました。2~3年ぐらい前までは、すっごく意識していて、オーディションとかで自分の年齢を言うのもイヤだなと思っていた頃がありました。
それは、なぜですか?
僕は、22歳でこの仕事を始めたのですが、僕と同世代で活躍している方は、ずいぶん前から仕事を始めている人が多くて。そういう人たちとくらべてしまって、悲観的になったり。それこそ昔サッカーをやっていた頃にポジションがかぶった人に対して“あいつがいなければ”とか思っていたように。でも、そうじゃなくて、その人たちの何倍も自分が努力すればいいだけと思えるようになってから、年齢を気にしなくなりました。
そう思えるようになったのは何かきっかけが?
それが、わからないんですよね……でも、いろんな先輩方と話をさせていただいているうちに、だんだんとそう考えるようになったのかもしれないです。“なんで、そんなことを考えているんだ、考えても変わらないのに”って。

そうなのですね。
去年1年間は、いろんな先輩に「僕と同じくらいの歳の頃、どんなことを考えていましたか?」とか「何をされていましたか?」みたいなことをたくさん聞きました。年頭からそういうことを聞く一年にしようと思っていたので。今思うと、それ以外にももっと聞けることがいっぱいあった気もしますが。
そのなかでも、特に心に残っている言葉は?
僕、溝端淳平さんにすごくお世話になっていて、シェイクスピア作品にも出られているので、そのときの話とかもいっぱい聞いたのですが、「キツかったけど、キツいのは当たり前じゃん」と言われました。でも、シェイクスピア作品をやったからこそいまだに付き合いのある先輩たちがいて、(吉田)鋼太郎さんや(藤原)竜也さんともいまだにごはんにいかれたり、プライベートでも交流があったりされていると。それは、大切な財産だと思っていると。だから、「お芝居だけじゃなく、いろんな人とコミュニケーションをとることも意識してやってみると、よりいいかもよ」という話をしてくださいました。
2024年は、実り多き一年だったと。
そうですね。はい、本当に。一般の友達と会う時間もありましたが、先輩と会うことのほうが圧倒的に多い一年で。いろんな先輩からいろんな話を聞くたびに、意識が高まっていく感覚がありました。

今、新たに掲げている目標はありますか?
朝ドラでいうと、『虎と翼』でとてもステキな役をいただきましたが、次は最初から最後まで出る役を目指したいです。あと、僕はもともと、ドラマも好きですが映画も好きなので、映画にもたくさん出たい。そして、新たな自分をどんどんどんどん発見していきたいですね。
やってみたい役や作品などは?
精神が狂ってしまうような役をやってみたいです。それこそ、今度、『マクベス』という舞台をやらせていただくのですが。すごくきついけど、すごくいい経験になりそうだな……というか、いい経験にしたいなと思っています。まだ稽古も始まっていなくてフワフワしてますが(取材は2月上旬)、たぶん僕おかしくなると思うんですよね、大変すぎて。でも、そういう役もどんどん経験していきたいです。

井上祐貴
いのうえ ゆうき
1996年6月6日生まれ。
撮影でもカメラマンだけでなく、スタッフ全員と気さくにコミュニケーションをとって明るく楽しい雰囲気を作ってくださった井上さん。柔らかいライトでカッコ良くも井上さんらしさのあるセットも自然光の中で抜群の存在感を示してくださった井上さんもどちらもとてもかっこよく素敵でした。大体の撮影が終わりカメラマンが追加で撮影をお願いした際も快く引き受けてくださり、物腰低く、紳士的なお人柄でした。
これからも周りと自然と打ち解けてしまう気さくさと様々な現場で吸収して、次につなげようとするひたむきさでたくさんのご活躍を応援しております!
約1年ぶりのご登場ありがとうございました!
最近の出演作に、テレビドラマでは、TBS『地獄の果てまで連れていく』(‘25)、NHK連続テレビ小説『虎に翼』(‘24)があり、映画では、『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』(‘25)が公開中、5月より、舞台 彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.2『マクベス』が控えている。

第48回創作テレビドラマ大賞「明日、輝く」
3月17日(月)夜10:45~ NHK総合
【作】竹上雄介 【出演】井上祐貴 具志川莉央 本多力 佐藤寛太 横田栄司 他
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
スタイリスト:TAKURO
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿