坂東龍汰
自分に足りないものを指摘してくれる人の言葉に耳を傾け、
初心を忘れない
2017年に俳優デビュー後、TVドラマや映画を中心に活躍。現在放送中のドラマ『RoOT/ルート』では河合優実さんとW主演を務め話題になるなど、今、大注目の俳優・坂東龍汰さん。高校生までシュタイナー教育を受けてきたこともあり、社会に出てすぐは戸惑うことも多かったというが、その経験が役者という職業にどのような影響を与えているのか。これまでの人生を振り返りつつ、将来の展望も語っていただきました。
2017年に俳優デビュー後、翌年にはドラマで初主演を務めたりと恵まれたスタートだったように思いますが、当時はご自身の状況をどのようにとらえていたのでしょうか。
今の事務所に入るまでは、けっこう大変なこともありました。最初にお話ししたように、シュタイナー教育を受けているときに感じていたことと社会に出たときのギャップに苦しんだりもしましたし。でも、ホントに運よく鈍牛倶楽部に入ることができてからは、自分を突き動かす根拠のない自信に満ち溢れていて、それに対してすごく衝動的になっていたのかなって……すみません、抽象的で。ただ、自分はお芝居もまったくできないのに、恵まれた環境でお仕事をさせてもらっているなというのは毎日感じていました。
それは、今の事務所に所属することができたから?
そうですね。お仕事の現場やオーディションに行ったときに、鈍牛倶楽部という事務所に対する業界からの信頼みたいなものを、すごく肌で感じたんですよ。やっぱりそこに迷惑はかけられないし、僕のせいで鈍牛倶楽部という名前を汚すようなことはできないから。自分にしかできないことだったり、周りの役者と差をつけられる魅力をがんばって出さなきゃ! って必死でした。でも今思うと、僕の育ちや受けていた教育が普通じゃなかったことが、一番の助けになってくれていたのかなって。
なぜ、そう思うのですか?
僕が今、二十歳前後の役者さんたちと出会って思うのは、その人たちがどういうふうに育ってきて、どういうものに感動して、どういうものを演技として届けていきたいのかが大事なんだということ。それがユニークであればあるほど、“この人が、こういう役を演じているところを見てみたい”と思うし、一緒に芝居をしていても何か感じるものがあるんですよ。当時の自分には、そのユニークさがあったんだと思うんです。もちろん運もあるし、周りの人たちの力もあるし。そのタイミングでいい作品のオーディションに出会えたり、ということもありますけどね。
先ほどおっしゃった「助けられていた」というのは、どういう意味で?
とにかく怖いもの知らずでした。あとは当時、何かを突発的にクリエイティブしていくためのアイデアが、自分のなかでたくさん生まれてきていたので。人からこう言われたからとか、あの作品でこうだったからとかじゃなく、自分自身が“これをやったら驚いてもらえるんじゃないかな”と思えるものを、怒られてもいいからやってみることをとても大切にしていたんです。必ずしもそれが正解じゃなくても、別に表現することは自由だからいいんじゃないのかなって。そうしたら、自然といろんな作品に出会えましたね。
そういった環境に“勘違い”しそうになったことはなかったのですか?
ありましたね。でも、勘違いしそうになった瞬間に、事務所の人にきちんと叱っていただいて(笑)。ウチの事務所は、そういうところはホントにいい意味で厳しいんですよ。役者としてのレベルアップはもちろんですけど、まず人としてちゃんとしなさいと叱ってくれる。当時は、毎週事務所に呼び出されていましたから(苦笑)。そういうところにすごく体力を使ってくれる社長でよかったなと思います。もしも別の事務所にいたら、僕の性格上、思いきり勘違いして、挫折していた可能性もありますよね。
今後、役者としてさらに進化するために必要だと思うことは?
うーん、自分の心に素直にいることかなぁ。それさえできていれば、いいんじゃないですかね。ムリして背伸びしようとせずに。あとは、自分勝手にならないこと。最近すごく思うのは、みんなで一つの作品を作っているんだから、一人でも仕事がやりづらそうに見える人がいたら、手を差し伸べたりとか。そういう気遣いも、ちゃんとできるようになっていかなきゃいけないなって。
たくさんの人たちと一緒にモノづくりをしていくうえでは不可欠なものですね。
表現するという部分では、昔と変わらず“これをやったらおもしろいんじゃないかな”という自分のなかから出てくるアイデアに従って、常に新しいことを模索しながらマイペースにやっていけたらなって。ただ、舞台も映画もドラマも、全部共同作業なので。ちょっと現場の雰囲気が暗かったら、自分が率先して明るく振る舞おうとか、そういう小さな気遣いを、今後もっともっとできるようになっていけば、坂東龍汰と仕事をしてみたいなと思ってくれる人が増えるかもしれないし。でも年齢的にも、怒られる……というか、ちゃんと言ってもらえることがだんだんと少なくなってくると思うので。自分に足りないものを指摘してくれる人たちの言葉にキチンと耳を傾けて。常に初心を忘れないことが大切なのかなと思います。
まもなく27歳の誕生日を迎えますが、30歳というのは意識しますか?
うーん、10年後とかは意識しますけど、特に30歳だからというのは気にならないですね。
一つの区切りとして、30歳までに成し遂げたいこととか?
あー。でも、あと3年なんて、たぶんあっという間ですよね。もう、来週みたいなもんですよ(笑)。まぁでも、それまでに決まっているお仕事もありますから。そういうもの一つひとつ、目の前にある仕事に真摯に取り組むということですかね。なにせ、こうなるだろうという目星が立たない職業ですし、タイミングだったり出会いが大切な職業でもあるので。そこはもう事務所の人たちとも話し合いながら、流れに身をまかせて。人としては、変わらない部分はムリに変わらなくてもいいと思うし。周りの方々への気遣いを大切にしながら、「楽しむ」をモットーにやっていけたらなと思います。
坂東龍汰
ばんどう りょうた
1997年5月24日生まれ。
撮影では見ているこちらもわかるぐらいにとても楽しそうにしている坂東さん。走ったり、飛んだり、カメラマンの伝えたポージングをご自身でアレンジしたり等、映画やドラマの役の雰囲気からは想像がつかないくらい素敵で貴重なショットをたくさんカメラに納めることができました。そして、撮影時にまさかの坂東さんの野球好きな部分も発見!大谷選手のホームランにさらにテンションが上がってしまう坂東さんの姿に周りも見ていてたくさん笑顔と元気をもらいました!お話の時に周りに常に感謝の気持ちを持ちながら色んなものに答えたいという思いを大事にされている坂東さん。これからもミステリアスな一面を秘めながらもかっこよく、面白い素敵な坂東さんの活躍を応援しております。初出演ありがとうございました!
4月期のテレビドラマでは、フジテレビ『366日』(‘24)、テレ東『RoOT/ルート』(‘24)、に出演。最近の出演では、『王様に捧ぐ薬指』(‘23)、映画では、瀬々敬久監督作『春に散る』(‘24)、三島有紀子監督作『一月の声に歓びを刻め』(‘24)、舞台では横山拓也作・瀬戸山美咲演出の『う蝕』(‘24)などがある。
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『若武者』
唯一無二のスタイルで世界を圧倒し続ける二ノ宮隆太郎監督、待望の最新作
監督・主演を務めた長編第二作『枝葉のこと』(2017)が第70回ロカルノ国際映 画祭、さらに前作『逃げきれた夢』(2023)が第76回カンヌ国際映画祭に正式出品されるなど、国境を越えて着実に評価を積み重ね、様々な立場に置かれた 人々の“生き様”にフォーカスしてきた二ノ宮隆太郎監督。待望の最新作は、3人の若者を主人公に描く青春群像劇で、主演には期待の新世代俳優・坂東龍汰、髙橋里恩、清水尚弥が抜擢された。彼らを取り巻く大人たちには、木野花、豊原功補、岩松了ら実力派俳優らが名を連ねる。さらに、音楽ユニット・ group_inouのimaiが長編映画では初めて音楽を手掛け、予測不能な展開に彩りを加える。
Story
工場に勤める寡黙な渉(坂東龍汰)、血の気の多い飲食店員の英治(髙橋里恩)、一見温厚そうに見える介護士の光則(清水尚弥)は、互いに幼馴染の若者 である。
ある晩秋の昼下がり、暇を持て余した彼らは“世直し”と称して街の人 間たちの些細な違反や差別に対し、無軌道に牙を剥いていく。その“世直し” は、徐々に“暴力”へと変化してしまうのだった─。
出演:坂東龍汰/髙橋里恩/清水尚弥
木越明/冴木柚葉/大友律/坂口征夫/宮下今日子
木野花/豊原功補/岩松了
エグゼクティブ・プロデューサー:堤 天心 関 友彦
プロデューサー:鈴木徳至
製作:コギトワークス U-NEXT
制作プロダクション・配給:コギトワークス
Presented by New Counter Films
2024 年 / 日本 / DCP / カラー / スタンダード(1.33:1) / 5.1ch / 103 分
Copyright 2023 “ 若武者” New Counter Films LLC. ALL RIGHTS RESERVED
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:長澤 葵
スタイリスト:YOSHIE OGASAWARA(CEKAI)
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿