岩橋玄樹
映画『男神』
英語のシーンは全てアドリブ「自分の経験値がすごく上がりました」
映画『男神』が9月19日より公開されます。失踪した子供を捜す父親を主人公に、足を踏み入れてはいけない禁足地にまつわる恐怖や狂気、家族の悲劇を描いたファンタジーホラー作です。本作が映画初出演となった岩橋玄樹さんがFASTに初登場!役作りで心がけたことや作品の魅力、自身にとっての経験値が上がった出来事などをお聞きしました。

©2025「男神」製作委員会
<あらすじ>
全国各地で母と子の失踪事件が発生していたある日、新興住宅地の建設現場に深い穴が出現する。同じころ、建設現場で働いている和田(遠藤雄弥)の息子が突然姿を消してしまう。穴の先には森が広がり、巫女たちが男神を鎮めるための儀式を行なっているという。息子が穴に迷い込んだと知った和田は、禁忌を破り、息子を助けるために穴に入ることを決意する。

今回のオファーを聞いてから撮影までに、どんな心構えで臨みましたか?
本作の原作は、YouTubeサイト「怖い話怪談朗読」で朗読されて人気だったもので、イメージ画像や資料をたくさんもらって、監督やプロデューサーさんたちと「こういう役柄でやってほしい」や「こういうストーリーなんです」ということを話し合っていきました。個人的にも、セリフの言い方やいろいろなバージョンの言い回しなどを家で練習してクランクインに臨みました。
独特な世界観なので、そこをイメージするのも大変だったのでは?
そうですね。正直、台本を読んだだけでは、頭で理解できなかった部分が結構あったんです。自分のセリフ部分のイメージは大体できていたのですが、作品全体のイメージをどうとらえたらいいんだろうと考えていました。
この作品はファンタジー要素もあるので、「そこをどういう風に映像として作っていくんだろう」というのが、台本を読んだだけでは全く想像ができなかったんです。でも、自分のセリフや全体的なストーリーを把握したうえでお芝居をさせてもらったし、完成した作品を見て「あぁ、こういう感じになるんだ」という驚きは、自分自身でもありました。
これまでもお芝居の経験はありますが「映画」という現場は、今までと何か違いは感じましたか?
撮影の仕方や方法はドラマとあまり変わらないと思いましたが、やはり上映されるのがスクリーンということや、お金を払って映画館に足を運んでくれるお客さんのために頑張ろうという気持ちになりました。

裕斗はガテン系で、ちょっと砕けた荒っぽさもある役柄でしたが、演じる上で大事にしたことを教えてください。
英語で話すシーンがあるのですが、そこで裕斗がどう感じるかというところを意識していました。男気あふれるキャラクター性や、人を守りたいというピュアな気持ちを持っているといった、すごく心強い性格を踏まえた上でのセリフだったので、そこは自分の中でもすごく印象に残っているシーンです。
役に岩橋さん自身の経歴が反映されたことについては、どのように感じられましたか?
そこは正直、台本を見て「あ、そうなんだ」と思いました。それまでは知らなくて「裕斗はこういうキャラクターなんだよ」といったことはある程度説明されていましたが、ここまで英語のセリフがあるということも全然知らなかったんです。でも、英語でセリフを言うのはすごく楽しかったですし、日本人っぽい英語という部分はあまり意識せずに、自分がやりたいように、全部アドリブでやりました。
そうだったんですか⁉
そうなんです。井上(雅貴)監督からそういうアドバイスがあったわけではなく、英語のセリフの部分に関しては、むしろ共演しているアーサー考古学教授役のチャールズ・グラバーさんが「こうした方がいいよ」とか「ここはこうしよう」というアドバイスをくれました。 もともとは違うセリフが台本に書かれていたんですが、そこをチャールズさんと話して、全部アドリブで行こうって決まったんです。チャールズさんがすごくリーダーシップを取ってくれて、自分の中で経験値がすごく上がったと思うのでとても感謝しています。

その場で芝居を変えて、現場を動かしていくという経験ができたんですね。
そういう対応力がないと、世界で通用できないと思うんです。それこそハリウッド映画ではよくあることらしいので、そこを経験できたのはすごく嬉しかったです。
最後の方で「裕斗、かっこいい!」と思うシーンがありました。
そこで裕斗の男気が見られるし、裕斗がいないと、遠藤さん演じる主人公の勇輝さんのことも助けられなかったと思うので、意外と(笑)いい役割をしているのかなと思います。
「穴の封印の儀式」は、現場でご覧になっていたのですか?
僕もそのシーンの撮影は現場で見ていました。でも実はカメラの見えないところで馬と戯れていました(笑)。作品に2頭出ているんですけど、その馬が現場に来ていて、撮影時は割と夜中だったので、乗ることはできずに触るだけでしたけど、結構懐いてくれて、めっちゃかわいかったです。その日の最後に、僕が重機で助けるシーンを撮ったのですが、馬のおかげで本当にリラックスした状態で臨めました。

古代縄文ミステリーにして、ファンタジーホラーでもある本作ですが、完成した作品をご覧になっていかがでしたか?
僕は役柄的に「根の国」(穴の底でつながっている禁断の地)の方を知らないので、完成した映像でしか見ていないんです。だから、僕もキャストとして作っている側と、一観客としての面と、ある意味客観的に見られたのですごく面白かったし、いろいろな見え方がありました。
特に、どんなところに面白さや魅力を感じましたか。
この「男神」という見えない存在を、インカメやドローンで表現していたのがすごいと思いました。台本を読んだ時に「男神をどうやって表現するのかな」と思っていたのですが、実際に現場に行ったら、スモークやカメラワーク、アングルなどにもこだわったり、ドローンを飛ばしたり。いろいろな方法で「目に見えない恐怖」というものを表現していたので、そこはすごく印象的でした。あとは、古代日本の自然も出てくるので、映像美も素敵だと思いました。実際に日本の観光名所でロケをしているので、ああいうところが実際に残っていて撮影できるのは、日本ならではの良さだと思いました。
映画の見どころを教えてください。
ホラーが苦手な方でもきっと入り込める作品になっていると思います。日本のカルチャーや、信仰の怖さみたいなものも出ている映画だと思うので、そういうことに興味がある人はすごく楽しめると思うし、ホラー作品の中でも、家族愛や人間愛も描かれているので、感動する部分もあります。全体的にシリアスな感じなので、そこで僕の演じた裕斗というキャラクターがいいアクセントになっていたら嬉しいです。
最後に、岩橋さん的・一押しポイントや「ここにも注目してみてほしい」というところがあれば、ぜひ!
そうですね……(と、考えてからパッと思い出したように)工事現場に馬がいるところです!僕はあそこに馬がいないと思って演じていたので、後からCGで付け足したそうなのですが、そういう設定だったことを僕は完成作を見てから知ったので驚きました(笑)。そういう細かいところもぜひ楽しんでいただければと思います。

岩橋玄樹
いわはし げんき
1996年12月17日生まれ。
落ち着かれていて、どんな質問にもすぐに答えてくださっていた岩橋さん。午前中からびっしりの取材でも、疲労感を一切見せず、色々なお話を余すことなく、お話をくださり、流石の一言でした。時折少年のような表情を見せて周りにお話を振ってくださることもあり、優しく気さくな一面も取材を通して、知ることができました。
後編では、日本とアメリカでの暮らしなど現在のプライベートの岩橋さんのお話を伺っています。お楽しみに!
2021年4月1日より、ソロアーティストとして日本とロサンゼルスを拠点に活動。過去の出演作には、日本テレビ『部活、好きじゃなきゃダメですか?』(‘18)、日本テレビ『ガードセンター24 広域警備指令室』(‘16)など。TOKYO MXにて主演ドラマ『恋愛ルビの正しいふりかた』(‘25)が放送中。

©2025「男神」製作委員会
監督・脚本:井上雅貴 原案:「男神」(八木商店)
ロケ地:愛知県日進市、岐阜県下呂市 協力 高山市、飛騨・高山観光コンベンション協会
支援 日進市企業ふるさと納税 下呂市ふるさと文化振興助成金
協賛 マテラ化粧品 ワンダーランド そうび社 龍の瞳 イオス コーポレーション 題字:小林芙蓉
2025年/日本/93分/カラー/シネスコ/5.1ch 配給:平成プロジェクト/配給協力:東京テアトル
©2025「男神」製作委員会
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:村澤柚香
スタイリスト:河田威尊
インタビュー:根津香菜子
記事:根津香菜子/有松駿