町田啓太
Netflixオリジナルドラマ
『今際の国のアリス』
「大切な人を大切に・・・」
今際の国で向き合ったのは“自身と人との絆の糸”
「話す」という行動はどんなタイミングであれ、どんな内容であれ「瞬発力」が試されるものだと思う。そして「瞬発力」が試される時というのは、大抵の場合その人のアイデンティティが表立って見えるもの。町田さんにお話を伺う時、どの作品の話にも共通していること。それは「言葉によって形成される“作品”、“共演者”に対する敬意と思いやり」だ。“町田啓太”というアイデンティティを通して表現される対象たち。彼の愛に包まれた作品と2人の親友の話―
Netflixオリジナルドラマ
『今際の国のアリス』
© 麻生羽呂・小学館/ROBOT
<あらすじ>
人生に夢を見出せず曖昧に生きてきたアリスと、どんな苦境でも「生きる意味」を探し続けるウサギが、突然放り込まれた謎の世界で共に信頼を築き、「生き延びる」ために理不尽な現実に挑む姿を壮大なスケールで描く。
<カルベ>
アリスの親友。腕っ節が強く、大人びた雰囲気を身にまとっている青年でBARで働いている。アリスの優れた観察力と洞察力に気づいており、彼に対して一目置いている。“今際の国”では持ち前の冷静さと身体能力の高さを駆使してアリスたちを引っ張ってくものの…
カルベ × 町田啓太
カルベは基本的に「守る人生」を生きている人。アリス(山﨑賢人)とチョータ(森永悠希)に対してもそうなんですけど、きっと人を守ることで自分も救われてきたんだと思います。自分がアリスたちを励ましたり、勇気を与えたりすることで自分の中にある勇気を感じている人物なんじゃないかな、と。あとは「げぇむ」の中に入ってからずっと持っている彼の「怒り」の熱量は絶対的に表現するように意識していました。
映像化が難しいと言われていた原作。
オファーを受けた時の印象を教えてください。
高揚感しかなかったですね。僕自身、もともとNetflixが大好きで「いつか関わりたいな」と思っていたので、Netflixの作品に携わらせていただけることに対してまず高揚感を感じました。それに加えて今作は『OVER DRIVE』でもお世話になったROBOTさんと、これまた僕が絶対にご一緒したいと思っていた佐藤信介監督の組み合わせ…。一番最初に抱いたのは「ここが揃ったら、やばいことになるだろうな」という思いでした。で、原作を読ませていただいたらカルベがすごく魅力的な男で。普段の僕とは少し異なる印象のキャラクターだったんですけど、そんなカルベを任せていただけたのが本当に嬉しかったですし、気合も入りましたね。
「普段の僕とは異なる印象」とのことですが
カルベに対してどんな印象を持たれましたか?
カルベには「フィジカルな力を持っているアグレッシブな人」という印象を持ちました。僕、アリス、チョータ、カルベの3人ってすごくバランスの良い3人だと思うんです。バランスとしては、アリスは知能、カルベはフィジカル、チョータは人としてのユーモア。一見バラバラだけれど、3人ともどこか世間から浮いている…。そこに対しては共感する部分もありましたし、僕に持たれているパブリックイメージと違う役柄だからこそ「共感できる部分からカルベを広げていけたらいいな」という思いで演じていました。
「世間から浮いている」、
共感される感情なんですね。
世間から「どうせこうでしょ」と見た目だけで判断されることって多々あると思うんです。それってやっぱり息苦しいものですし、やりたいようにやることが出来ず「本来だったらこうでありたい」という自分に近づけないもどかしさもあるじゃないですか。エネルギーはあるのにどう出していいのかも分からない…その気持ちは僕も感じることがあったのですごく共感を持てました。
世間から浮いている同士の3人、
そんな3人の回想シーンに胸を打たれました。
撮影のエピソードがあったら教えてください。
回想ではカルベのバーでの3人のシーンが結構使われていたんですが、あのシーンのお芝居って実はクランクイン後、割とすぐに撮ったものなんですよ。お互い関係性も探り探りの中、セリフがほぼ書かれていないト書きだけの台本だったので、現場でエチュード的に3人で作り上げて。ただ、3人で「どんな風にやろうか?」と話し合ったおかげで打ち解けることができたような気がします。賢人くんも悠希くんも原作をそれぞれに深堀りされていたので、役としてちゃんと会話が成立してすごく楽しかったですし、個人的に「カルベ」というキャラクターをあのシーンを通して確信的に掴むことが出来たな、と思います。佐藤さんも回想シーン撮影後に僕らのところに来て「ちょっと泣きそうだったわ」と仰ってくださって。親友の3人のイメージがそこで出来たこと、そして佐藤さんからの言葉がすごく強みになりました。僕にとっても思い出の深いシーンです。
3人乗りの自転車を漕がれていて
シンプルに「すごい」と思いました(笑)。
あはは(笑)。あのシーンは最初「これ出来る?町田くん大丈夫?」と聞かれてやることになったんですが、現場の道がちょっと傾斜になっていたので「これはやばいぞ…」と思って(笑)。それからジムで自転車を漕いだり、ちょっと重めの負荷をかけてトレーニングをしたりして準備をしました。で、いざ3人乗りをしたら、後ろに乗っている賢人くんと悠希くんのバランスのとり方が上手くて!そのおかげで上手に自転車を漕ぐことが出来たんです。そこでもチームワークの良さを感じました。3人乗りのシーンは2人に感謝ですね。
そんな3人のシーンを経ての“げぇむ”撮影。
“今際の国”での撮影をしている時に
町田さん自身が考えさせられたことはありましたか?
普段生活していて命の危険が及ぶことってなかなかないじゃないですか。カルベみたいに「げぇむ」に参加させられることになった時に「一緒に生き残ろうとできる存在」がいることって素晴らしいことだと思いましたし、自分に置き換えた時に「そういう人って僕の中にどのくらいいるだろう」と考えさせられました。この作品をやらせていただいて、改めて「1人じゃ生きていけない」、「近くにいる人を大切にしていかなきゃいけないな」と感じることが出来ましたね。
町田さんは「役を丁寧に考察される」
イメージがあるのですが、
カルベに関してはどういった考察をされましたか?
まず、アリスとチョータというタイプが全然違う2人と仲良しなのは、きっと同じ痛みを持っているからだと思いました。そして同じ痛みを抱えるアリスやチョータを「勇気を与えて応援すること」で彼自身も力を得ることが出来ている人物なんだろうな、と。原作ではカルベの生い立ちや親との関係性の話が出てくるんですが、それを踏まえてもやっぱり彼は「守ること」をし続ける人生を歩んでいる人なんですよね。それこそが自分の救いにもなっているような。そしてその根本にあるのは「守るべき対象を苦しめるもの」に対する「怒り」のエネルギーなんです。だからこそ傍から見ると雰囲気も言葉遣いも荒くれ者にも見えてしまう。「強くあろう」という彼の想いが透けているのだと思いました。
Highlight of 『今際の国のアリス』
完成作を見せていただいて、一言で言うのなら「感無量」でした。僕自身この作品に携わらせていただけて本当に嬉しかったですし、次へ向かう活力にもなりました。絶対に「楽しんでもらえる作品が出来た」と確信したので、とにかく観ていただきたいです。物語自体に大きなメッセージ性がありますし、いろんなことを考えるキッカケにもなるんじゃないかな、と思います。もちろん単純に「わー!」という爽快感で楽しんでもらうことも出来る作品なので、それぞれの楽しみ方でとにかく観てください!
町田啓太
まちだ けいた
1990年7月4日生まれ。
ささやかな気遣いと嫋やかに表顕される「彼の瞳に映る人々」、 “温情”の風花が陽射しに透けて柔らかに舞う30歳。
Netflixオリジナルドラマ「今際の国のアリス」/カルベ役
Netflixにて12月10日全世界独占配信開始
原作:麻生羽呂「今際の国のアリス」(小学館「少年サンデーコミックス」刊)
監督:佐藤信介
出演:山﨑賢人 土屋太鳳/村上虹郎 森永悠希 町田啓太 三吉彩花 桜田通 朝比奈彩
栁俊太郎 渡辺佑太朗 水崎綾女 吉田美月喜 阿部力 金子ノブアキ 青柳翔 仲里依紗
© 麻生羽呂・小学館/ROBOT
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:KOHEY
スタイリスト:Hirohito Honda(Hirohito Hondaスタイリング オフィス)
ディレクション:町山博彦
インタビュー・記事:満斗りょう