板垣李光人
映画『約束のネバーランド』
彼を演じることで見えたのは
“ノーマン”の優しさを超える「人間らしさ」
映画『約束のネバーランド』
©白井カイウ・出水ぽすか/集英社
©2020映画「約束のネバーランド」製作委員会
<あらすじ>
幸せに満ち溢れた楽園のような孤児院、「グレイス=フィールドハウス」。そこで暮らす孤児たちは、母親代わりでみんなから“ママ”と呼ばれている、イザベラ(北川景子)のもと、里親に引き取られる年齢になる日を待ちわびていた。エマ(浜辺美波)、レイ(城桧吏)、ノーマン(板垣李光人)の3人も、いつか外の世界で暮らすことで、より幸せな日々がやってくると信じていた。“その日”が来るまでは…。里親が見つかり、孤児院を笑顔で後にするコニーを見送ったエマとノーマンは、彼女が肌身離さず抱きしめていた人形が食堂に落ちているのを偶然見つける。忘れ物の人形を届けるため、決して近づいてはいけないと、ママから教わっていた「門」に向かった2人がそこで目にしたのは、無残にも命を奪われ、食料として出荷されるコニーの姿だった。そう…。みんなが「楽園だと信じていた孤児院」は、実は「鬼に献上する食用児を育てる農園」で、さらには母親のように慕っていたママは、「最上級の食用児を育てる飼育監」だったのだ。全てが偽りだったと気がついた3人は、孤児たち全員を引き連れた、無謀ともいえる脱獄計画をスタートさせる…。
<ノーマン>
首の認識番号は22194。優れた分析力と冷静な判断力を備えたGF(グレイスフィールド)ハウスイチの天才。エマ、レイ同様日々行われるテストではフルスコアを記録。常に笑顔で、子供達を優しく包み込むリーダー的存在。
ノーマン × 板垣李光人
エマとレイにも言えることなんですが、原作では12歳の設定の彼らがあそこまでの強さを持っているのはすごいことだな、と思います。中でもノーマンの優しさからくる自己犠牲には大きな凄みを覚えました。
自分が演じたからこそ気づいた
「ノーマンの感情」があれば教えてください。
ノーマンは自分が想っていることを外に出さない人間なので、恐怖心などいろいろな感情が自分の中に溜まっていく子なんです。加えて、エマたちの恐怖心まで包んであげるところもあって。とにかく自分の中に溜め込んでいってしまう人。それをいざ自分が演じるとなると、きついものがありましたね。
シビアなシーンも多い今作。
演じている時の感情の起伏はありましたか?
前半、中盤、そして後半のノーマンにとあることが告げられる前までは、彼の「優しさ」でエマたちの不安を和らげようとするんです。そのために自分の気持ちを出さないようにして。なので、気持ち的には起伏がなるべく分からないように、フラットな状態を保ちながら演じていました。だからこそ玄関でエマに気持ちをぶつけるシーンが活きてくるかな、と。
確かにノーマンは淡々としていますよね。
今回、目に見える動作で
ノーマンとして何か意識はされましたか?
今回はすでに正解が出ている作品だったので、その通りに演じていました。脚本自体、原作のまんまのシーンが多かったこともあり、自分で台本に同じ場面の漫画のコピーを貼ってオリジナルの台本を作って。特に正解がないものであれば自分の癖を出してもいいと思うんですが、ノーマンは正解がある分大変だったかな。「もともとある型に自分を当てはめていく」という作業なので考えながら演じなければいけない難しさがありました。
エマとレイ、2人とのシーンが多いですが
浜辺さんと城さんとの撮影はいかがでしたか?
初めて浜辺さんにお会いした時に「すごくエマだな」と思いました。エマは笑顔が印象的な子なんですが、浜辺さん自身も笑顔がとても印象的で。台本読みの前で扮装もしていないにも関わらず、浜辺さん自身が「エマの持っているものを持ち合わせている方だな」と感じましたね。現場に入ってからはキャストに小さい子たちが多かったので、浜辺さんと僕はその子たちに混ざるというよりは、2人で見守っていました。おじいちゃんとおばあちゃんになったような気分で(笑)。とは言え、僕自身もノーマンを演じている間の精神的な大きな疲労を元気な子供たちの姿に癒してもらっていましたね。
ノーマン自身もGFの子供たちに
癒されていたのかもしれないですよね。
今回、北川景子さんや渡辺直美さんと
ノーマンとして対峙されたと思うのですが
お二人との共演はいかがでしたか?
北川さんは、北川さんが現場にいらっしゃると、助監督さんが怒ってもあまり言うことを聞かなかった子供たちが「ちゃんとしないと」って静かになるんです(笑)。北川さん自身もうるさくしている子がいたらちゃんと言ってあげたりしていて。5歳、6歳の小さい子たちの目にも、ずっと「ママ・イザベラ」として映っていたんだと思います。そのくらい空気感から「イザベラ」を感じましたね。直美さんは原作には色濃くは出ていない「クローネのエンターテイメント性」をすごくデフォルメして演じられていて、それが本当に面白かったです。孤児院の子たちの中でも、ある程度上の年齢の子たちは笑いをギリギリ我慢出来るんですけど、小学生の子たちは笑っちゃうんですよ(笑)。それで3~4回NGを出しちゃったり。やっぱり世界を舞台に活躍されている方の「お芝居としてのコメディー」を間近で体感させていただけたのはすごく嬉しい経験でしたね。
アニメのクローネの動きと
渡辺さんのクローネの動きが
すごくリンクしていて驚きました。
原作のクローネって背が高くてゴツめなイメージなので、渡辺さんの体格的にもビジュアルに関しては割と遠いはずなんです。でもやっぱりクローネなんですよね。そこがすごいなって。僕は原作のある作品の時には自分の色を消して演じるようにしていたので、直美さんのクローネを見て衝撃を受けました。直美さんのクローネは「直美さんの良いところ」と「クローネの良いところ」が融合しているんですよ。僕自身の今までの考え方からするとそれがすごく新鮮で、勉強になりましたね。
Highlight of 映画『約束のネバーランド』
『約束のネバーランド』は「生と死」、そして、人が「生きる」ということについて深く描かれている作品です。その作品を生身の人間が演じることで血が通って、よりリアリティを感じていただけると思います。「死」というものを今までより考えさせられることが多くなった状況で、この映画が公開されることも何か不思議な巡り合わせだな、と。「死」に抗っていくエマやGFの子供たちからきっと「生きる」ことへの勇気をもらえるはずです。
Highlight of ノーマン
ノーマンは自分よりエマやGFのみんなのことを考えて、自分を犠牲に出来るほどの優しさを持っている人。そんな人、なかなかいないと思うんですよね。結局、人間は自分が一番可愛いじゃないですか。「ノーマンみたいに」というのは無理な話ですが、ノーマンの優しさや温かい気持ちは感じていただけると思うので、是非、そこに触れていただけると嬉しいです。
板垣李光人
いたがき りひと
2002年1月28日生まれ。
刹那に駆ける婚星のように、吸引的な光を放ちながら見る者の心を釘付けにする18歳。
映画『約束のネバーランド』
2020年12月18日(金)全国ロードショー
原作:白井カイウ・出水ぽすか(集英社『週刊少年ジャンプ』)
監督:平川雄一朗 脚本:後藤法子
出演:浜辺美波 城桧吏 板垣李光人/北川景子 渡辺直美 ほか
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:宮本愛
スタイリスト:カワセ136
ディレクション:半澤暁
ページデザイン:吉田彩華
インタビュー・記事:満斗りょう