吉沢亮
映画『キングダム 運命の炎』
嬴政の内に秘めた炎に魅力を感じる
『青天を衝け』での大河初出演・初主演後も、次々と話題作に出演し、俳優としての成熟もめざましい吉沢亮さん。最新作の映画『キングダム 運命の炎』では、吉沢さんがシリーズ1から演じる秦の若き国王・嬴政の過去に深くかかわる女性、紫夏とのエピソードが描かれています。本作への思いや、役を演じる上で大切にしていることなどをお聞きしました。
<あらすじ>
天下の大将軍を志す信は、秦の若き国王・嬴政と運命的な出会いを果たし、ともに中華統一を目指すことに。魏との戦いに勝利をおさめた彼らのもとに、秦に対して積年の恨みを抱える隣国・趙の軍隊が攻め込んでくる。嬴政は伝説の大将軍・王騎を総大将に任命し、100人の兵士を率いる隊長となった信は、王騎から「飛信隊」という部隊名を授かり、別働隊として敵将を討つ任務に挑むが……。
1作目から演じられてきて、
どういうところに嬴政の魅力を感じますか?
言葉にすると軽くなりますが、カリスマ性みたいなものはあると思います。あれだけ若くして王の座に就いたので、最初のうちは将軍や家臣たちも「若造が戯言を言っているわ」みたいな雰囲気でしたが、特に何を成し遂げているわけでもないけれど、対峙した相手を黙らせる説得力や、彼が持っている内に秘めた炎みたいなものをとても感じます。その熱は決してギラギラしているわけではないけど、すごく温度が高くて「こいつだったら何かやり遂げるんじゃないか」と思わせる存在感がかっこいいなと思います。
嬴政のカリスマ性を出すために
意識した点はありますか?
芝居するときの意識としては、動きは最小限にすること。例え心の中では揺れていても、あまり動じずに、何事も最小限で抑えるといったことは1作目の時から意識してやっていました。
なるべく動じず、
感情を出さないという役どころは
辛いこともあったのでは?
今リアルに起きている物事に対して、みんなが色々な議論を重ねている中、嬴政だけは先を見て、考えがもう一歩先に及んでいる。その頭の良さや先を見据える力は原作を読んでいる時から感じていたので、そこは守ろうと思っていました。特に1作目の時は、信と嬴政、河了貂の若い3人で旅することが割と主軸の話だったので、感情がすぐに出る信を演じた(山﨑)賢人が羨ましかったし「楽しそうにやってるな」と思いながら見ていました(笑)。
今作の前半のメインパートである
「紫夏編」について
「そこありきの嬴政という意識は
常に持って演じていた」
と仰っていましたが、今回の撮影を経て、
最初に思っていたイメージと
変わったことはありましたか?
当初からイメージしていたものと変わったことは特にないです。この撮影を経て、本当に素晴らしい話だなということを改めて感じましたし、杏さんが演じた紫夏がイメージ的にもぴったりで本当に素敵なお芝居をされていたので、僕の中で勝手に想像していたものが形になっていた喜びが大きかったです。
嬴政にとって紫夏はどのような存在でしたか?
体全体で包み込んでくれるような優しさがあって、母性の塊みたいな存在だったと思います。杏さんが紫夏としてそういう存在でいてくださったことは、僕にとって大きな支えになっていました。
特に母性を感じたシーンは?
自分の弱さを吐露する嬴政を抱きしめてくれた場面です。きっと嬴政が人に抱きしめられたという経験は、紫夏しかいなかったと思うんです。そこで初めて人の優しさに触れた嬴政にとって、自分のために泣いてくれたり、人の愛情みたいなものを唯一与えてくれた人なんだと思います。
紫夏との出会いによって
感情を取り戻していく嬴政ですが、
心の機微を表現する上で
大切にしたところはありますか。
先ほどもお話ししましたが、嬴政が王になってからは、目の前で起きていることにどこか反応はしているんだけど、そこに捉われるというよりはその1歩先を常に見続けているというところを意識していたんです。逆に今回は、その場で起きたことや人から受けた憎しみや愛、そういうものをちゃんとその場で受け取って、感じたものを出すということは意識して演じていたところかもしれません。
自分のために犠牲になった人たちの思いも
背負っているところが、
他の王との大きな違いですよね。
そうですね。嬴政はただ優しい王というわけではないので、ちゃんと切り捨てるとこは切り捨てるけど、自分のことを想ってくれた人たちへの思いはずっとあるし、中華統一という夢のために自分がやってしまっていることもしっかり背負いながら前に進んでいるので、そういうところもいいなと思います。
原作はもちろん、公開された映画も
共に大ヒット作となりましたが、
これほど多くの人に支持される理由は
どんなところにあると思われますか。
この作品には色々なタイプの人間がいて様々な関係性があるので、『キングダム』という作品を基に、自分の仕事や環境に当てはめてみると色々な見方ができると思うんです。それに、他の漫画原作の実写作品と比べても、人から「見たよ」と言われる年齢層が圧倒的に広いんです。それくらいどの世代の人が見ても面白いと思える作品だと思うし、このスケールの大きさはほかではあまりないですよね。原作ファンはもちろん、映画ファンが見ても満足してもらえると思うし、映画を観たことがない人でも楽しめる話になっていると思います。
『キングダム』を見る度に
「もっと歴史の勉強しなきゃ」と思います。
僕も1作目の撮影に入る前に「ちょっと勉強しとかなきゃ」と思って歴史の本を少し読みましたが、 割と原作は史実に近いんですよね。エンターテインメントとして歴史をちゃんと知れるという点は大河ドラマも同じなので、漫画や映像作品を通して歴史が学べるのはいいことだなと思います。
今回の「運命の炎」は、シリーズの中で
どんなポジションになったと思われますか?
完成度でいったらこれまでの映画シリーズの中で確実に1番クオリティが高いと個人的には思っています。大沢さんも舞台挨拶で「これがキングダムの始まりだ」というようなお話をされていましたけど、本当にそう言ってもいいくらい、また新たな魅力がたくさん詰まった作品になったと思っています。これを機に『キングダム』という作品がたくさんの人に届いたら嬉しいです。
吉沢亮
よしざわ りょう
わずかな動きでも空気が動くような存在感と圧倒的なオーラを放ちながら、静かにカメラの前に立った吉沢さん。鋭さと柔らかさが共存したまっすぐな眼差しは力強く、息をのむほどの美しさでした。後編では最近のカニ事情などをお聞きしました!
1994年2月1日生まれ。
最近の出演作に、映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』(‘23)、『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』(‘23)、『ファミリア』(‘23)、『ブラックナイトパレード』(‘22)、ドラマ『PICU小児集中治療室』(‘22)などがある。
©原泰久/集英社 ©2023映画「キングダム」製作委員会
『キングダム 運命の炎』
全国東宝系にて公開中
監督:佐藤信介
脚本:黒岩 勉 原 泰久
音楽:やまだ豊
原作:「キングダム」原 泰久(集英社「週刊ヤングジャンプ」連載)
出演:山﨑賢人/吉沢 亮 橋本環奈 清野菜名/杏 山田裕貴/大沢たかお 他
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:木内真奈美(OTIE)
スタイリスト:荒木大輔
インタビュー:根津香菜子
記事:根津香菜子/緒方百恵