中川大輔
舞台『鴨川ホルモー、ワンスモア』
毎日どれだけ変化を感じられるか楽しみ
舞台『鴨川ホルモー、ワンスモア』で舞台初主演を務める中川大輔さん。出演が決まったときの気持ちや、劇中で演じる主人公・安倍という役へのアプローチ法、座長としての意気込みなど、くるくると表情を変えながらお話ししてくれました。役者という仕事に悩みながらも、充実している様子が伝わってくるインタビューです。
<あらすじ>
二浪したのち京都大学に入学した安倍(中川)が、怪しい先輩の誘いと早良さん(八木莉可子)への一目惚れをきっかけに入った「京大青竜会」は、1000年前から脈々と受け継がれる謎の競技「ホルモー」をするサークルだった。当惑とときめき、そして、この世ならざる「奴ら」との邂逅……京都の大学生たちの青春群像劇であり、リグレット劇。
本作への出演が決まったときの
気持ちを教えてください。
ある日事務所に呼ばれて、マネージャーさんから「舞台が決まりました。ヨーロッパ企画の(手掛ける)作品です。」と言われたんです。僕はもともとヨーロッパ企画さんのお芝居が好きだったのでうれしいなと思っていたら、「作品は『鴨川ホルモー』です。」と言われて。“ヨーロッパ企画と鴨川ホルモー!?めちゃくちゃおもしろそう!”とテンションが上がっていたら、まさかの「主演です!」って!もう、喜びのトリプルコンボでした(笑)。
本作に出演が決まって、
原作をお読みになったそうですね。
はい。この作品に出演が決まってから『鴨川ホルモー』と『ホルモー六景』を読みました。僕の演じる安倍はさだまさしさんが好きで、作中に『親父の一番長い日』という曲が出てきたので、実際に『親父の~』を聴いてみました。そうしたら、ものすごく感動して。自分は結婚しているわけでも娘がいるわけでもないのに、歌詞に出てくるお父さんの気持ちになって泣いちゃいました。特に、結婚する娘を見送るところにグッときましたね。
安倍の趣向をなぞってみたのですね。
その人の好きなものから人物像を想像したら、自然に役がつかめるかなと思って。安倍は鼻フェチでもあるので、僕も人の鼻を観察してみたりもしました。今まで人の鼻をよく見たことはなかったのですが、人によって全然違って興味深いです。役を通して新たな発見をすることはよくありますが、それは安倍から教えてもらった発見の一つです。それに、鼻って注目されるとすごく恥ずかしいじゃないですか。そういう場所だということも含めて安倍は好きなのかな、とか。今は、原作からいろいろと想像を膨らませています。
ちなみに、中川さん自身が
ステキだなと感じる鼻は?
もちろん、ただただ美しい鼻もステキですけど、表情がある鼻というか。ちょっと個性のある鼻に惹かれますね。安倍は早良さん(八木莉可子)の鼻に惹かれるという設定だったんですが、この間、合同取材会のときに何気なく八木さんの鼻を見たら、すごくステキな鼻だったんですよ。なので、そこはそのまま作品の世界に入れそうだなって思いました。
今回、脚本・演出をヨーロッパ企画の
上田 誠さんが担当されます。
ヨーロッパ企画の舞台って、最初は台本がない状態で、役者同士のアドリブから作っていくと聞いたんです。まず上田さんが俳優さんたちのエチュードを見て、その場でぶわーって書いた台本を俳優さんたちが演じて、言いにくいセリフがあったら直して~みたいな。先日、「私が女優になる日_season3」というテレビ番組に上田さんが講師として出演されているのを見たら、ホントにそういう作り方をされていたので楽しみです。僕は日常的に演技レッスンを受けているのですが、エチュードの時間がすごく楽しいです。今回の共演者の方々とも、いい空気感を作っていけたらいいなと思っています。
今は、不安よりも楽しみのほうが大きい?
そうですね。ご一緒させていただくみなさんはそういう舞台の作り方に慣れていらっしゃると思うので、僕も負けないように食らいついていって。ちゃんと主人公として存在感のある安倍を出せたらいいなと思っています。
上田さんとは、どんなお話をしましたか?
まだ、この作品について深く語ったことはないのですが、ラジオ番組(「ヨーロッパ企画の数撃っていこう2024」)と本作の合同取材会でお会いして、僕とちょっと似ているかもしれないと思いました。
具体的にどのへんが?
僕はこういう取材とかでたくさんしゃべっちゃうタイプなのですが、上田さんも負けないくらいたくさんしゃべっている印象を持ちました。いろんな話で盛り上がれそうだなって。あと、『鴨川ホルモー、ワンスモア』は、自分の黒歴史や恥ずかしい部分をどう乗り越えていくか、ということもテーマだと思うんですね。僕が合同取材会で「外を歩いているときに黒歴史を思い出して、恥ずかしくなって叫んじゃったりする。」という話をしたら、上田さんも「家にいるときに恥ずかしかったことを思い出して、ソファをわーって叩いちゃう。」みたいな話をされて(笑)。すごくわかる! と思ったんです。
外でいきなり叫ぶんですか!?
青春時代に突飛な行動しちゃったとか、そういう今でも恥ずかしいことをいきなり思い出したりして。フラッシュバックするというか。安倍も、傍から見ると恥ずかしい行動をしているんですよね。恋愛で暴走して恋敵になぎ倒される、みたいな。それこそ、僕だったら後々フラッシュバックしそうな黒歴史だと思うんですけど(笑)。それを乗り越えていくところも描かれているのが、この物語の魅力かなって。
共演者も多彩な顔ぶれですね。
稽古はまだ始まっていないのですが(取材は2月中旬)、この作品のプロモーション活動で(キャストの)半分ぐらいの方とはお会いできました。合同取材会のときに、八木さんと男性ブランコのお二人と4人で寸劇風の台本を演じるコーナーがあったのですが、そこでなんとなくつかめた部分もあったと思います。清宮(レイ)さんも、先ほどお話ししたラジオでご一緒しました。鳥越(裕貴)さんと佐藤(寛太)さんにはまだお会いできていないのですが、佐藤さんは僕の出演作品を見てくれたことがあるらしくて。(本作の)公式サイトの動画コメントで「共演するのが楽しみです。」と言ってくださっているのを見て、すでに佐藤さんのことが好きになっています(笑)。
鳥越さんは、舞台に関しては百戦錬磨という印象があります。
安倍は、鳥越さん演じる高村と一番関係性が深いですし、高村は原作だとスゴいビジュアルに変わったりもするので(笑)、どうなるのか楽しみですね。
たしかに(笑)。
ヨーロッパ企画さんの舞台って、プロジェクションマッピングのクオリティがすごく高いと個人的に思っていて、『切り裂かないけど攫いはするジャック』を拝見したとき、オープニングだけで作品の世界にひき込まれてしまったんです。今回も、映像での表現がどうなるのか楽しみです。
今回、座長として心がけたいと思っていることはありますか?
今までたくさんの現場でいろんな座長の方々とご一緒させていただきましたが、ホントに人によってタイプが全然違って。座長というとみんなを引っ張っていくというイメージが強いですが、僕はそういうタイプではないので。引っ張っていくというよりは、周りのいろんなものや人との間に入る……緩衝材みたいな座長になれたらいいなと思っています。
中川さんにとって初めての舞台出演が2021年の『MOTHERLAND』ですが、どんな経験になりましたか?
発声のしかたとかお芝居のやり方とか……それまで映像作品しか経験してこなかったので、稽古ではだいぶ苦戦しました。僕のお芝居に対してダメ出しもされて、ショックを受けることもありました。
それは、過剰に動きすぎたということですか?
映像だったら切りとれる動きでも、舞台だと余計なものになってしまうっていう。そんなふうにこの作品では舞台の洗礼を受けましたけど、そういうことを知れたのはよかったと思います。(会場が)明治座という大きな舞台だったこともあり、演じる際の勇気みたいなものが自分のなかで生まれたような気がします。お芝居の大胆さというか。
初舞台で明治座に立つというのは、
なかなかできない経験ですよね。
そうですよね。舞台から見た客席は、ホントに広かったです。それに、『MOTHERLAND』では大声で怒鳴るような役だったので、発声という点でいうとやりやすかったんです。今回演じる安倍は、原作を読んだ感じだと大声を張り上げるタイプの人ではないし、つらつらと細かいことを言うようなキャラクターなので。安倍という役を聞きやすい声で演じるということを課題の一つにして、注意深く演じていきたいなと思っています。
実際に舞台に立ってみて、映像作品とはまったく違いましたか?
そうですね。まず、同じ共演者と1カ月ぐらい一緒に稽古をしたり、地方公演に行ったりするところが(映像作品とは)違いますよね。それに、毎日同じ作品をやっているのに、毎日違う芝居になるんですよ。同じシーンを演じていても、怒りが強いような感情になる日もあれば、悲しみが強いような感情になる日もあったりして。『MOTHERLAND』で、僕の出番はそんなに多くなかったのにそれを感じたということは、今回主役で舞台に立ったら、毎日どれだけ変化を感じられるのだろうって今から楽しみです。
変化を楽しみたいと。
僕は映像の現場でもそうなんですが、テストをやって本番をやって。OKが出なくてもう1回本番となった場合、自分のなかで反省点を見つけて、その都度お芝居を変えられるようにしているので、今回の舞台でも毎日反省点を見つけて、恐れずに変えていきたいと思っています。
初日と千穐楽では、違う中川大輔を見せられそうですね。
はい。あと、お芝居って、その日のメンタリティとかによっても変わると思うので。その変化をたしかめに、何回も見にきていただけたらうれしいです。
本作の上演を楽しみにしている方へメッセージをお願いします!
上田さんが、この作品のことを“巨大なコメディ”、略して“巨メディ”と表現しているんですね。僕、ヨーロッパ企画さんの関わっているお芝居って、心の底から笑っちゃうところが好きで。一人で観にいっても、思わず声を出して笑ってしまうくらいおもしろいんです。上田さんは「さらに巨大なコメディ」にすると言っていたので、絶対に笑える作品になると思います。ぜひ笑いにきてください!
中川大輔
なかがわ だいすけ
1998年1月5日生まれ。
撮影時では圧倒的な背の高さでカメラマンもスタッフもびっくりしっぱなしでした。撮影では何度中川さんに「身長高いですね!」と発したかわからないぐらいでした。そして身長もさることながらスタイルも抜群でした。手足もとても長く綺麗な青空をバックにしても大迫力の素敵な撮影となりました。俳優業もやられながらのモデル業もやられている中川さん。屋上でも階段でもどこでもカメラマンが求めるポージングをササっとこなす姿はとてもスマートなかっこよさがありました。
「MEN’S NON-NO」モデル。最近の出演作には、テレビドラマでは、毎日放送『彼女と彼氏の明るい未来』(‘24)、テレビ東京『パティスリーMON』(‘24)、映画では、瑠東東一郎監督作『極主夫道 ザ・シネマ』(‘24)舞台では、ニッポン放送開局70周年記念公園『鴨川ホルモー、ワンスモア』が控えている。
『作品情報』
ニッポン放送開局70周年記念公演『鴨川ホルモー、ワンスモア』
2024年4月12日(金)~29日(月・祝)東京・サンシャイン劇場
5月3日(金・祝)・4日(土)大阪・サンケイホールブリーゼにて上演。
原作:万城目学(『鴨川ホルモー』『ホルモー六景』/角川文庫 刊)
脚本・演出:上田誠(ヨーロッパ企画)
出演:中川大輔/八木莉可子/鳥越裕貴/清宮レイ(乃木坂46)/佐藤寛太ほか。
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿