細田 佳央太
映画『人はなぜラブレターを書くのか』
ボクシングの練習期間に生まれてくる感情があった
2000年3月8日に発生した地下鉄脱線事故にまつわる奇跡のような実話をもとにした映画『人はなぜラブレターを書くのか』。本作で、地下鉄事故で亡くなった高校生・富久信介を演じている細田 佳央太さんに、役作りについてや、共演者とのエピソードなどをお聞きしました。

©2026 映画「人はなぜラブレターを書くのか」製作委員会
<あらすじ>
寺田ナズナ(綾瀬はるか)は、とある青年に手紙を書き始める。――24年前、17歳のナズナ(當真あみ)は、いつも電車で見かける高校生・富久信介(細田)にひそかな想いを抱いていた。一方、信介はボクシングに夢中な生活を送り、プロボクサーを目指していた。そんな彼らに、運命の日となる2000年3月8日が訪れる。――2024年。ナズナからの手紙を受け取った信介の父・隆治(佐藤浩市)は、そのなかに亡き息子の生きた証を感じ、知り得なかった信介の在りし日が明らかになっていく。そして、隆治はナズナにあてた手紙を綴り始めた。隆治とナズナの邂逅により、24年前の真実と、ナズナの手紙を書いた理由が明らかになる。人はなぜラブレターを書くのか――その手紙が“奇跡”を起こす。

今回、富久信介という役を演じるにあたり、どのようにアプローチしていきましたか?
事前に、信介さんを演じる上で、大切にしてほしいところを監督から言っていただいていたので、そこをポイントに作っていきました。主に無骨さであったり、正義感であったり……そのなかに愛嬌もあるという。信介さんは寡黙な男の子で、不愛想にも見えるんです。実際に、(信介さんのボクシングジムの先輩である)川嶋さん(菅田将暉)に見せる顔と、ナズナさんの前で出ちゃう顔と、お父さんやお母さんに見せる顔が、全然違います。特に、家族やナズナさんの前でバタバタしちゃう様子というか、素直になれない感じというのは、まさに男子高校生としての富久信介さん像なので。そこではなかなか出てこない愛嬌の部分が、川嶋さんの前では出るようにしようと考えました。さらに、4カ月のボクシングの練習期間でも、生まれてくるものがありました。
具体的に、どのような感覚が生まれたのでしょうか。
今回、松浦(慎一郎)さんにボクシング指導をしていただいたのですが、松浦さんは、普段から様々な方のボクシングの指導をされているんです。その方々と一緒にトレーニングに参加したときに、当たり前ですけど、みなさん、すごく上手で。さらに、菅田さんが自分より先にボクシング練習を始めていたので、自然と焦りが出てきたんです。でも、その僕自身が感じた焦りみたいなものと信介さんから出る強い生命エネルギーのようなものがリンクした瞬間がありました。
生命エネルギー?
ナズナさんが、電車のなかで富久信介さんという人間に惹かれ、目を引く存在になるには、やっぱり、ほかの人とは違うものが出ていなきゃいけないと思ったんです。じゃあ、それをどうやって出そうかと考えたときに、僕がボクシング練習のなかで感じた焦りみたいなものと重なるんじゃないかなと思いました。

なるほど。
菅田さんからも、ボクシングの練習中にいろいろなことを教わりました。劇中に、川嶋さんにミットを持ってもらうシーンがあるのですが、普段、ジムで練習している雰囲気をそのまま持っていけたというか。ジムのなかで菅田さんが作ってくださった距離感に委ねることができたので。そういう意味でも、ボクシング練習のなかだけでも、感じることや見えてきたことがいっぱいありました。
本作の公式ホームページで、菅田さんについて「撮影の内外問わず、役と同様に温かい距離を保ち続けてくださった」とコメントされていましたね。
実際に、川嶋さんと富久信介さんの間に流れていたような空気感を作れたのではないかなと思います。菅田さんとはいろんな話をしましたが、オンの時もオフの時も本作のなかでの2人のやり取りというものを常に重視してくださいました。
つかず離れずのいい距離感を保つことができたと。
そうです。一度、ビックリしたことがあって。菅田さんと夜から撮影をする日があったのですが、特にボクシングのミットやグローブを持ったりするシーンはなかったんです。でも、菅田さんが午前中にボクシングジムで練習をしていたらしく、ミットを持ってきていたんです。僕も僕で、たまたまグローブを持っていたので、自然とミット打ちが始まるっていう。撮影するのは、まったくボクシングシーンじゃないのに。そういうところも含めて、いい意味で、常にスイッチがオンの状態だったことにすごく救われました。

今回、菅田将暉さんとしっかりと共演して、いかがでしたか?
めちゃくちゃうれしかったです。いち役者として、菅田さんから影響を受けたものはすごく多かったですし。お芝居でも、信介さんが自分の夢とかを話しているときに、笑わずに聞いていてくれる川嶋さんの眼差しとか。そういったシーンでのやり取りは、今でも鮮明に残っていますし。とても刺激をうけました。
17歳のナズナを演じた當真さんとは、どんなお話をしましたか?
當真さんは、大河ドラマ『どうする家康』で僕の(演じる松平信康の)妹役を演じていたので、“2度目まして”だったんですけど。本作のなかでは、ナズナさんと信介さんは直接的な言葉を交わさない距離感であることも考慮して、現場では、オフの時間でもすごく砕けた話をするようなことはなかったです。
お芝居についても話し合うことはなく、お互いに持ってきたお芝居を本番でぶつけ合うという。
たぶん、當真さんも(監督の)石井(裕也)さんといっぱいお話しされているだろうし、お互いに感じていることや考えていることを、本番でぶつけるというイメージでした。

本作のストーリーにちなんで……過去に、ご自身が“渡せなかった想い”はありますか?
たくさんあります。だからたぶん、後悔という言葉がこの世から消えないんだろうなって思っていて、「このエピソードが、特別に印象に残っています」とかではなく、挙げればキリがないくらいであります。基本的に、僕も人付き合いがそんなに得意なほうではないので。言わなくてもよかったなとか、逆に言ったほうがよかったなという失敗は、いくらでもあります。でも、少なくとも今、自分の人生に満足しているので。今、“あれを言えばよかった”と思うことも、もしそのときに言っていたら、きっとこういう人生にはなっていないわけじゃないですか。今と同じ現実って、ありえないと思うので、本当に後悔するのは死ぬ間際でいいかなと思っています。
ステキな考え方ですね!
いやいやいや!後悔から逃げているだけです(笑)。

細田佳央太
ほそだ かなた
2001年12月12日生まれ。
イベント前に取材でしたが、快くインタビューにも答えてくださり、終始細田さん節が部屋を明るく笑顔にしてくれました。役どころについてはこちらも驚くぐらいストイックにトレーニングをされていて、お芝居に対して、真面目で真摯に向き合う方だなというイメージ通りの方でした。ご自身についての質問で冗談も交えつつ明るく話してくださり、すごく素敵な時間となりました。後編では過去のインタビューを24歳の細田さんらしくお答えいただきました。お楽しみに。
最近の出演作に、テレビドラマでは、TBS『ちるらん 新撰組鎮魂歌 』(‘26)、NHK総合『雪煙チェイス』(‘26)、NHK総合連続テレビ小説 『あんぱん』(‘25)、映画では、『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』(‘23)、『線は、僕を描く』(‘22)などがあり、現在放送中の4月期TBS『GIFT』に出演中や5月8日公開の『未来』の出演も控えている。

©2026 映画「人はなぜラブレターを書くのか」製作委員会
タイトル:人はなぜラブレターを書くのか
キャスト:綾瀬はるか 當真あみ 細田佳央太
妻夫木聡 音尾琢真 富田望生 西川愛莉
菅田将暉 笠原秀幸 津田寛治 原日出子 佐藤浩市
監督・脚本・編集:石井裕也
主題歌:『エルダーフラワー』Official髭男dism
コピーライト:©2026 映画「人はなぜラブレターを書くのか」製作委員会
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:菅野綾香
スタイリスト:Satoshi Yoshimoto
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿
