中沢元紀
写真集「ルート」
写真集は求めてくださる方がいるから出せるものなので本当にありがたい
2025年上半期のNHK連続テレビ小説『あんぱん』の柳井千尋役で一気に注目を集めた中沢元紀さんが、待望のファースト写真集を発売!撮影の思い出や、完成したものを見て感じたことなどを伺ったほか、役者人生に大きな影響を与えたという『あんぱん』についても、今の気持ちを率直に語っていただきました。

©中沢元紀 ファースト写真集『ルート』/ワニブックス刊
<内容>
2024年5月から2025年7月まで、中沢元紀の四季を追った珠玉の1冊。春夏秋冬を歩む姿はもちろんのこと、スタジオでのポートレイト撮影や故郷への旅も収録。かけがえのない役柄との出逢いによって変化する顔つき、佇まい、心象風景。写真だけでなく、ロングインタビューでもその軌跡を感じられる永久保存版!

初の写真集の発売が決まったときの、率直な思いを教えてください。
素直にすごくうれしかったです。僕のなかで写真集というのは、求めてくださる方がいないと作れないというイメージがあったので。求めてくださる方がいたから出せるという意味でも、本当にありがたいなと思いました。
タイトルはトリプルミーニングになっているそうですが、「ルート」に決まった経緯と、そこに込めた思いとは?
タイトルは、もう即決でした。特に打ち合わせ中とかではなく、マネージャーさんと話しているときに、「あっ、『ルートだね』」という感じで。
いくつかの選択肢のなかから選んだのではなく。
はい。一年かけて撮っていただくということで、道のりという意味の「ROUTE」と。地元に帰ったり、インタビューでデビューまでのことを話したりといった、僕自身としてはもちろん、役者としての根っこの部分を見ていただくという意味での「ROOT」。そして、飼いネコの名前である「ルート」という3つの意味を入れたいなと思ったんです。
撮影は4人のカメラマンが担当されたということで、各章で雰囲気も違いますが、ご自身でも撮られ方を変えてみようと意識した部分はありましたか?
僕のなかで大きく変えたつもりはなくて。意識して変えずとも、撮ってくださる方によって絶対に変わってくるものだと思ったので、そこは自然体に、変に無理することなく撮っていただきました。あとは、光の加減などによっても変わりますよね。たとえば、冬の章では映画っぽい雰囲気で撮っていただいたりとか。あまりカメラを意識しなかったからこそ、気張らずに自然体でいられたのかなと思います。

役を背負わず、中沢元紀としてカメラの前に立つということでの難しさもあるのでしょうか。
うーん、でも、あんまり難しいと感じることはなかったです。それは、「カメラを意識せずに自然体でいていいよ」と言っていただけたというのもありますし。ただ、「映画っぽく」と言われたときは、自分のなかで勝手に役を作っていたかもしれません。
というと?
冬パートの撮影中、スタッフさんに「先輩みたいだね」と言われて、「先輩」って呼ばれていたんです。実際に上がってきた写真を見ると、自分でも先輩っぽい感じに見えてくるというか。そのカットは群馬県で撮影したんですけど、すごく馴染んでいて、地元の先輩に見えてくるというか(笑)。それは、自分でもビックリしました。今、振り返ると、自分のなかでそういう役を作って、撮ってもらっていたのかなって。
特に気に入っている1枚や、自分らしいなと思うカットがあれば教えてください。
ほんっっっとに選べないんですよね……全季節にお気に入りの写真があって……でも、冬の写真かな。駅で電車を待っているシチュエーションのカットなんですけど、撮影中に雪が降ってきて、ちゃんとその雪の粒も写っているんです。その1枚だけでもストーリーが思い浮かぶようなカットになっているので、一番好きです。
さまざまな場所で撮影されていますが、特に印象に残っているのは?
地元である茨城県で撮ったパートがあって、小学生くらいまで住んでいたところとかも回ったんですけど。よく遊んでいた公園だったり、家族でよく行っていたパン屋さんでも撮らせてもらって、懐かしい気持ちになりました。でも、“この道、こんなに狭かったっけ?”と感じるところもあって。幼少期の記憶のまま止まっていたけど、やっぱり成長しているんだなーって。なんていうんですかね……エモい(笑)?そういう気持ちになりました。

訪れたのはひさしぶり?
たぶん、5年以上は経っています。たまに実家に帰った時に、きょうだいで「行ってみようか」みたいなことはあったんですけど、そこまでしっかりと回ることはなくて。パン屋さんとかも、車で前を通るぐらいだったので、すごく懐かしかったですし。友達やきょうだいと遊んだ思い出も蘇ってきました。
景色自体は、当時とあまり変わっていない?
変わっているところもありましたけど、公園とかはホントにそのままでした。
約1年にわたり撮影したものが1冊になったものを見て、ご自身で変化を感じましたか?
感じました。まず、顔が最初と最後で全然違って。周りの方から「顔が変わった」と言われることもよくあったのですが、あまり自覚がなかったんです。もちろん体重の増減とかもありますけど、その時期に演じていた役によって……役として生きていた時の表情というか、まとっている空気感も全然違いましたし、けっこう衝撃的でした。
その変化というのは、ご自身ではプラスにとらえていますか?
そうですね。この表現が合っているかはわからないですが、洗礼されていってるというか。大きな作品にも携わらせていただいて、揉まれながらもがんばっているような……自分で言うのもあれですけど(笑)、そんな雰囲気が、表情にも出ていると思いました。

先ほど、地元でも撮影されたというお話もありましたが、今回の写真集の内容や構成に関して、ご自身のアイデアも反映されているのでしょうか。
はい。地元にいるときによく行っていたパン屋さんや公園とか、撮影場所に関しては、マネージャーさんを含めスタッフさんたちと話し合いながら決めていきました。
撮影秘話があれば、ぜひ教えてください。
地元での撮影は、飼いネコのルートも登場しているのですが、家ネコなので、普段はあまり外に出ることがないんです。だから、最初は大丈夫だったんですけど、撮影が進むにつれて機嫌が変わってきちゃって。最後のほうは、ただただ散歩しているだけ、みたいな(笑)。もうホントにルート主導の撮影でした。
ルートさんのご機嫌をとりながら(笑)。
ご機嫌をとりながら(笑)。
撮影後は、何かご褒美をあげたのですか?
たぶん、お家でちゅ~るをもらったと思います(笑)。

割れた腹筋が目を引く写真などもありますが、普段からカラダは鍛えているのですか?
普段から運動は好きで、筋トレやランニングをするのが習慣になっています。
では、写真集のためというよりは、運動をしていたら自然とついた筋肉だと。
そうですね。役者はやっぱり体が資本なので、カラダづくりも大事にしています。“いつでも脱げますよ”という状態にしておきたいなと思って。
なるほど。
でも今回、筋肉が見えるカットの撮影前には、パンプアップをしてから臨みました(笑)。
インタビューパートも、かなりボリュームがあります。約1年にわたりインタビューを受けるなかで、ご自身での新たな発見などもありましたか?
主に、連続テレビ小説『あんぱん』の撮影前から撮影中、撮影後にかけてのインタビューっだったんですけど。お芝居のことだったりとか、撮影現場での居方だったりとか、そういうものも一年でかなり変わった感覚があります。やっぱり、現場で揉まれながらというか……第一線で活躍されている先輩方とお芝居をしていくなかで、役者としての気持ちの変化も大きかったので。読み応えがあると思いますし、そういう意味での“ルート”も、読んでくださる方に感じていただけるんじゃないかなと思います。

『あんぱん』で演じた柳井千尋にとっても、大事なタイミングでのインタビューだったのですね。
そうですね。千尋が戦争に行く前に、兄貴(柳井嵩/北村匠海)と二人で会話をするという大事なシーンを撮る数週間前にもインタビューがあったんです。そこでお話ししたことと、撮影後のインタビューで話していることもまた少し違うと思いますし。ホントに鮮度の高いインタビューになっていると思うので、楽しみにしていただけたらうれしいです。
朝ドラ出演は、かなり反響が大きかったのではないかと思いますが。
朝ドラというのは、ホントに多くの方が観ている作品なのだと実感しました。同世代の役者さんも、朝ドラ出演を目標にしている方は多いと思うのですが、同世代の役者の方から「観たよ」と言っていただけることも多いですし。あとはやっぱり、自分に千尋のイメージが強くついたところが大きく変わりました。会う人会う人、「朝ドラよかったよ」と言ってくださるので、影響力の大きさをすごく感じています。
街を歩いていて、今まで声かけられなかった世代の方から声をかけられたりとか。
僕、街で声をかけられたことがないんです。だから、そこはあんまり実感の材料としてはないんですけど。でも実家や、祖父母の家に帰ったりすると、祖父母の知り合いや、上の世代の方たちから「観てるよ」という連絡がきたりすることがよくあって。そういう経験は初めてでした。
中沢さんにとって、『あんぱん』との出会いは、どういうものになりましたか?
うーん……(噛み締めながら)本当に大きな出会いだったと思います。この先いろんな作品に携わっていったとしても、10年後に役者人生を振り返ったときに、絶対に色濃く残っている役だし、作品だと思います。撮影期間も長く、役者としての考え方も、共演者のみなさんとお話ししたり、お芝居を見て得るものがあった現場でもあるし。それに、千尋の精神というか性格というか、そういうのも僕のなかに投影されていて。今も“千尋だったら、どうするかな?”と考えることがあるんです。僕自身、千尋みたいなカッコいい男になっていきたいな、という思いもあります。

中沢元紀
なかざわ もとき
2000年2月20日生まれ。
登場と同時に必ずスタッフに目を合わせてご挨拶をしてくださる中沢さん。インタビューでは、1年間を振り返りながら、写真集の出来上がりを話してくださいました。スタッフはインタビューのため、先に写真集を少し見せていただきましたが、お話を聞いてからの改めて拝見すると、飾らない素の中沢さんはより素敵に感じました。また朝ドラに対しても少しお話をいただき、さらに多忙になってもより役とも向き合う時間を大切にされている姿勢に感銘を受けました。後編では、前回のインタビューから変化したこと、変わらない軸を伺っております。お楽しみに。
最近の出演作に、テレビドラマでは、フジテレビ『最後の鑑定人』(‘25)、NHK連続テレビ小説『あんぱん』(‘25)、テレビ東京『ひだまりが聴こえる』(‘24)、フジテレビ『366日』(‘24)、映画では、『ファストブレイク』(‘24)、『さよならモノトーン』(‘23)などがあり、10月31日より配信開始の『連続ドラマW-30 ストロボ・エッジ Season1』、11月14日公開予定『君の顔では泣けない』、12月5日公開予定『WIND BREAKER / ウィンドブレイカー』を控えている。

©中沢元紀 ファースト写真集『ルート』/ワニブックス刊
〈書誌情報〉
中沢元紀 1st PHOTOBOOK
『ルート』
ワニブックス刊
※Item Credit
衣装協力:CULLNI、ロックポート
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:速水昭仁
スタイリスト:田中トモコ
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿
