鈴鹿央士
Netflixシリーズ『君に届け』
日本アカデミー賞新人俳優賞受賞の俳優が想う
“風早像”とは?
椎名軽穂の人気漫画「君に届け」が、Netflixとテレビ東京の共同制作で実写ドラマ化が決定。今回、風早翔太を演じるのは『蜜蜂と遠雷』で第43回日本アカデミー賞 新人俳優賞を受賞した鈴鹿央士さん。世間一般に先行する風早の“爽やか”なイメージをどう表現するか悩んだという鈴鹿さんに、彼が追い求めた“風早像”と、作品の見どころなどについて伺いました。
©椎名軽穂/集英社・「君に届け」テレビ東京
<あらすじ>
高校1年生の黒沼爽子は、長い黒髪と青白い肌から「貞子」というあだ名で呼ばれ、クラスから孤立していた。ひとりぼっちの学校生活を送るなか、うわさを気にせずに爽子に話しかける男子生徒・風早翔太が現れる。彼だけは、爽子がクラスメイトのために嫌な作業を引き受けていることを知っていた。風早と接することで、ほかのクラスメイトとも徐々に打ち解けていく爽子。夢だった高校生活を過ごしていく中で、風早に対しての気持ちにも変化が訪れ…。原作は、2006年から2017年まで「別冊マーガレット」(集英社)で連載され、第32回講談社漫画賞(少女部門)を受賞した椎名軽穂の大人気コミック。高校生のリアルで甘酸っぱい恋愛模様が男女問わず人気を集め、アニメ化・実写映画化・ゲーム化など様々なジャンルで魅了し続けてきた。
出演が決まった時の感想をお聞かせください。
以前から知っていた人気のある作品なので、楽しみだなあというワクワクした気持ちももちろんあったのですが、さて、どう向き合っていこう? と悩む気持ちも同時に抱きました。『君に届け』といえば王道のキラキラした青春のラブストーリーというイメージだと思うのですが、僕自身がこれまでそういった作品に出演したことがあまりありませんでしたし……。僕の演じる風早は、世間的に“爽やか”というイメージが浸透していると思うので、僕に演じられるか正直不安な気持ちもありましたね。役作りをしていくうちにそんな役のイメージも少しずつ変わりはしたのですが、僕個人の性格とのギャップも感じましたし。でもだからこそ、今まで演じたことのないような“爽やか”でキラキラした役に挑戦できる嬉しさもありました。
原作を読んでみていかがでしたか?
どんどん続きが読みたくなる作品でしたし、何よりまず読者としてキュンキュンしました(笑)。「早く付き合っちゃえよ」ってもどかしくなっちゃって(笑)。でも高校生活を送っていくなかで爽子と週5くらいで会いながら二人のペースで仲を深めていく感じは、高校生の特別で素敵な権利だなあと思いました。それから世間に先行している風早のイメージを再確認できましたし、それとは異なる人間臭い部分――嫉妬深い一面や、独占欲が垣間見える性格など――も感じられて、それをどう表現するかを考えました。漫画の世界だけの現実に存在しなさそうなイケメンだと当初は思っていたのですが、そんなことはなく。誰しもが持っているような人間らしさや、そういうリアルな部分をどう表現するかを、監督さんなどとたくさん相談して固めていきました。
風早翔太を演じるにあたって、準備したことや
気をつけていたことはありますか?
まず原作を読んで、台本を読んで……。そしてそれらを読み比べて、ひとコマひとコマを照らし合わせたり、どういう風に描かれているのかを細かく確認したりしました。たとえばしゃがむという動作ひとつにしても、漫画だとひとコマの静止画で描かれていますが、それを映像にするにあたってその動作の合間を埋めていかなければならない。そしてその一連の動きを風早らしく演じるためにはどうすればいいか、凄く考えました。田舎の方で撮影をしたのですが、風早という自然に囲まれた場所で過ごす高校生ならではの視点がもしあるとしたらそれに慣れておかなければいけないと思って、現場近辺を散策して風景を観察したりもしましたね。
©椎名軽穂/集英社・「君に届け」テレビ東京
鈴鹿さんが想う“風早像”を教えてください。
『君に届け』はこれまでアニメ化も映画化もされてきている人気作品なので、どうしても世間的な“風早像”がある程度確立されていると感じていて。でも僕が僕自身をそこに持っていこうとして無理やり演じてしまうと、“頑張った爽やかさ”になってしまう。それに、風早自身は周りの人にイメージされている“爽やかさ”に囚われない一人の人間として生きているんだな、とも感じていたので、「風早だからこうしなければならない」という僕の固定観念を払拭する意識も重要だったり……。ギアはあげるんですけど、あげているようには見えないような演技を心がけ、監督さんや共演のキャストさんたちとも相談しながら、良いバランスを模索していきました。
印象に残っているシーンはありますか?
「肝試しにいく」とみんなの前に出て話すシーンですかね。特にこのシーンは本読みやリハーサルでも何度も演じて……。みんなの前で喋るということ自体、僕自身があまりやったことがなかったので、それを風早らしく演じるというのが大変でした。また、胡桃沢というキャラクターから風早がガンガンアタックされるのですが、そのシーンも印象に残っています。たとえばバレンタインデーの撮影でも、他人から好意を持たれていることに敏感になりすぎると風早じゃなくなってしまうというか、下心とかがなさそうなイメージなので、そういうことが頭に巡らないように意識してましたね(笑)。他のキャストの方が「今の風早っぽいな」と教えてくれたり、「今の爽やかだったよ」って言ってくれたりしながら、現場のみんなで風早を作っていきました。
作品の見所を教えてください。
何個かあるのですが、桜の木の下のシーンは何度もいろんなカットを撮影した象徴的な場面なので、注目して観て欲しいです! 原作においても回想で出てきたりする大事なシーンなので、僕も印象に残っています。あとは「そんな爽やかじゃねぇし」という風早のセリフがあるのですが、それも大切に演じたことのひとつです。もちろんすべてのセリフを大切にしているのですが、このセリフはとくに慎重に臨んだというか、世間的な“爽やか”というイメージ、作品の世界で風早が周囲に持たれているイメージ、でも本人はそれにとらわれず、人間らしさを持った一人の人間である……、という僕の想う“風早像”が詰められたセリフだと思います。現場では自分の出演する場面しか見ていないですが、作品ならではの素敵な色を感じられる作品になっていると思うので、僕も改めてすべて通して観てみたいなあと思っています。
鈴鹿央士
すずか おうじ
ひとつひとつしっかりとインタビューに答えてくださった鈴鹿さん。撮影ではカメラマンの指示にシュ!シュ!と言いながら、手をふりふりしてポーズを取ってくださったり、窓に付いた指紋を自ら拭いてくださったり、鈴鹿さんからは終始マイナスイオンが出ておりました…!スタッフ一同、鈴鹿さんに癒されました!
Netflix シリーズ「君に届け」
Netflix 3月30日 世界独占配信スタート
【原作】 椎名軽穂「君に届け」(集英社「マーガレット コミックス」刊)
【監督】 新城毅彦、菊地健雄
【脚本】 宮本勇人
【出演】 南沙良、鈴鹿央士
【プロデューサー】 松本拓(テレビ東京)、森川真行(ファイン)、清家優輝(ファイン)
【共同プロデューサー】 伊藤寿浩(ファイン)
【制作著作】 テレビ東京
【制作協力】 ファインエンターテイメント
※Item Credit
■ジャケット ¥121,000
■トップス ¥77,000
■パンツ ¥49,500
■シューズ ¥74,800
すべて ポール・スミス/ポール・スミス リミテッド(03-3478-5600)
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:後藤泰
スタイリスト:朝倉豊
ディレクション:半澤暁
インタビュー・記事:小枝指優樹