阪本奨悟
演劇調異譚「xxxHOLiC 」
作品が問う「偶然か必然か」の答え
ダークでコミカルな独特の雰囲気を持つ『xxxHOLiC』。その物語の中でさまざまな出来事に翻弄される高校生・四月一日君尋を演じる阪本さん。インタビューPart2では映画や実写ドラマ、アニメ化とさまざまなメディアミックスを展開してきた『xxxHOLiC』がオールメイルで上演されることへの想い、そして同作品の重要なあるキーワードについての阪本さんならではの見解をお聞きしました。
演劇調異譚「xxxHOLiC 」
<あらすじ>
アナタの願い、叶えましょうーー
“アヤカシ”を視たり、引き寄せたりする体質に悩む高校生・四月一日君尋。“ミセ”と呼ばれる屋敷で来客者の願いを叶え続ける女主人・壱原侑子。侑子は“アヤカシ”が視える体質をどうにかしたいと悩む四月一日の願いを見抜く。しかし、その願いを叶えるためにはそれに見合った「対価」が必要だという。「対価」を生むために半ば強引に“ミセ”でのアルバイト生活が始まるーーこの世に偶然なんてない、あるのは……必然だけ。
今回の演劇調異譚「xxxHOLiC」は
オールメイルでの上演となりますが、
最初の知った時はどんな気持ちでしたか?
シンプルに衝撃でしたね。正直、最初は男性が女性を演じるのはハードルが高いんじゃないのか、と思っていました。でも女性役をやる方たちが今の段階から役作りを突き詰めていこうとしている姿を見て、そういった姿を見ると、男性だから男性役を演じる、女性だから女性役を演じるということではなく、誰がどんな役をどうやって演じるのか、ということが重要なんだと思うようになりました。それに男性だからこそできる女性的な表現というのもあると思いますし。『xxxHOLiC』はこれまで実写からアニメまでさまざまな形で展開されてきましたが、今回の舞台は一味違った仕上がりになると思います。オールメイルでやるからこそ摩訶不思議で謎めいた魅力が生まれるんじゃないかと、今からドキドキしています。
ファンの皆さまからすると、
美しい男性が女性の格好をするというのは
一種のアート鑑賞的な
楽しみもあると思います。
確かにそういった楽しみもあると思います。ビジュアル撮影の時、太田さんが演じる侑子さんが衝撃的だったんですよね! 本当に侑子さんがそのまんま現実世界に出てきたような感じで。近寄り難い雰囲気で周りに結界はられてる? と思うくらい、そこだけ空気が違いましたね。恐らくその時が初のフルメイクだったと思うんですけど、完成度が高すぎて。太田さんとは何度か共演させていただいているんですけど、もはや別人でした(笑)。
阪本さんは四月一日を演じられる訳ですが、
ここは気をつけようというポイントはありますか?
四月一日って基本的に、相手の行動や言葉を受け取る側じゃないですか。特に序盤は。『xxxHOLiC』は登場キャラクター同士の掛け合いが面白いと思うんですけど、その最終到達地点が四月一日なんですよね。なので、言葉へのリアクションには注意したいと思っています。話している相手で四月一日の感情はガラリと変わるし、気持ちも180度変わったりして。相手からの言葉をどう受け止めるか。そこの演技はしっかり考えたいし演じる時に体力をつかうんだろうな、と思っています。
「xxxHOLiC」という作品のキーワードに
「偶然はない、あるのは必然」という
言葉がありますが、
阪本さんは偶然と必然、
どちらを信じていますか?
僕は基本的には「偶然派」です。誰も予測できないことが不意に訪れて未来は簡単に何度でも変わっていくと思っていて。実際、僕の仕事でも思いがけない出会いから仕事の流れが変わったりしますしね。全ては必然と思う素晴らしさはあると思うんですけど、何か大きな流れがあって、自分はその中の小さな一部、という考え方なんです。最終的に人間は大きな流れに身を委ねて生きていくしかないんじゃないかなと。
でも、僕はカテゴリーによっては「これは必然だ」と思っているところもあります。今回舞台「xxxHOLiC」で四月一日を演じることに関しては必然だと感じていて。というのも僕、10代の頃に一度役者としての活動をストップして音楽活動を始めたんですよ。1本に集中する方が良いと思って。そこからひたすらに音楽を続けていたんですけど、歌に感情を乗せる時、歌詞を書いている時などに、役者をやっていた時のことを思い出すことが多くて。「思い出させられた」と言いますか。役者としてのこれまでの活動が、音楽にも自然と流れ込んでいたんですよね。例えば役者って台本を読み込んで咀嚼して役を作り上げていくんですけど、そういった“深く読み解く”という作業は音楽にも活きていて。音楽をやればやるほど二つは繋がっているんだと突きつけられて、また役者をやりたいと思い始めたんですよ。10代の頃は音楽は音楽、役者は役者、という考え方だったんですけど、自分で表現して届けるというプロセスに何も違いはなくて。分けるのではなく掛け合わせた方がより先に進めるんだと痛感しました。そうやって自己表現についてずっと考えてきた人生のなかで、今役者をやっているのは絶対的な必然だと思っています。
最後に舞台を楽しみにされている
ファンの皆さまへメッセージをお願いします。
原作の『xxxHOLiC』を読ませていただき、とにかくその世界観を大事にしたいと思っています。ファンの皆さまが劇場に来られた時には、そこはもはや別の空間、浮世離れした世界で足を踏み入れただけで何かを感じる、それくらい作り上げていきたいですね。この舞台を見た後で世の中の見え方が変わるくらいの影響を与えられるよう頑張りたいと思います。
阪本奨悟
さかもと しょうご
1993年6月13日生まれ。
彼が紡ぐ言葉の柔らかさと力強さが、混在する世界で人々を魅了する28歳。
演劇調異譚「xxxHOLiC」
天王洲 銀河劇場(東京):2021年9月17日(金)~9月26日(日)
京都劇場(京都):2021年10月1日(金)~10月3日(日)
企画:大川七瀬/松田誠
原作:CLAMP『xxxHOLiC』(講談社)
演出:松崎史也
脚本:畑雅文
出演:太田基裕/阪本奨悟/「松島勇之介/赤澤遼太郎
末次寿樹 西山蓮都(Wキャスト)/前田武蔵 升谷天(Wキャスト)
櫻井圭登/梅澤裕介(梅棒) 遠藤誠(梅棒) 五十嵐結也
大平峻也/三上俊 ほか
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:目代遥
スタイリスト:カワセ136
インタビュー・記事:山根将悟