綱 啓永×樋口幸平
映画『ネムルバカ』
僕たちの関係性がそのまま作品に出ている
2021年に共演して以来、親友を公言する綱 啓永さんと樋口幸平さん。『ネムルバカ』で映画初共演をはたしたお二人に、今回の役を演じる際に心がけたことや、撮影秘話などをお聞きしました。

Ⓒ石黒正数・徳間書店/映画『ネムルバカ』製作委員会
<あらすじ>
大学の女子寮で、同じ部屋に住む〈後輩〉入巣柚実(久保 史緒里)と、その先輩・鯨井ルカ(平 祐奈)。入巣は特に打ち込むものもなく、古本屋でバイトをする日々を送っている。一方、ルカはいつも金欠状態だが、インディーズバンド「ピートモス」のギター・ヴォーカルとして夢を追いかけている。二人は、安い居酒屋でダラダラ飲んだり、暇つぶしに古い海外ドラマを観たり……緩くもどこか心地よい日々を過ごしていた。ある日、ルカは大手音楽レコード会社から連絡を受け、二人の日常に大きな変化が訪れる……。

田口役の綱さんと、伊藤役の樋口さん。演じる際に心がけていたことを教えてください。
綱 啓永(以下、綱):原作では日常が描かれていて、すごくほんわかした空気感があったので、実写になってもそれを大事にしたいなと思いました。だから、僕ら二人のシーンもそうだし、(入巣とルカと)4人でいるときの会話もそうですが、そういう空気を大事にしながら演じることを心がけていました。
樋口幸平(以下、樋口):事前に原作を読んだとき、日常を描きながら、キャラクター一人ひとりの人生もとても濃く描かれている印象を受けたんです。映画版でも、それぞれの色を濃く出さなきゃいけないと思いましたし、実写ではどうなるんだろうと楽しみにもなりました。実際に、めちゃくちゃキャラクターの濃い4人になったと思います。
原作のドラマ化の役を演じる際に心がけていることはありますか?
綱:もちろん、原作のイメージや空気感を大事にするのは心がけているんですけど。あまりにも細かく再現してしまうのは、違うのかなって。それだと単なるモノマネになっちゃうので、実写ならではの表現も大切にしたいなと思っています。
樋口:以前、『体感予報』というマンガ原作のドラマに出演させていただいたんですけど。原作者の鯛野ニッケ先生から「原作のキャラクターをそのまま演じるのであれば、別にあなたじゃなくてもいい。だけどプロデューサーさんが、このキャラクターにあなたの色をプラスしたいからキャスティングされたと思うので。原作を気にしすぎず、あなたの思うキャラクターの色を入れてほしい」と言われたんです。
綱:へー!
樋口:「私が生んだキャラクターとあなたを、足して割ってほしい」って。原作の実写化って、イメージが違うと感じる人がいるのはしかたないことですけど。そう言ってもらったことで、すごく気持ちがラクになって助けられたんです。だから今回の伊藤も、その言葉を胸に演りました。
綱:『体感予報』といえば、転機となった作品ですよね?
樋口:あれ?インタビュアーさん、替わった(笑)!?
綱:あははは!
樋口:急に隣から声がするから、ビックリしたー(笑)!

本作の公式サイトで、綱さんが「お芝居中、笑っている(監督の)阪元(裕吾)さんが視界に入ったときの興奮と喜びは忘れられません」とコメントされていますが……。
樋口:はい、うれしかったね。
綱:そうそう。
監督から一番の笑いを引き出せたシーンというと?
綱:えーっ、難しいな。なんだろう……?
樋口:きっと、久保さんと平さんのシーンでも大笑いしているだろうから、一番というのは難しいけど……田口が入巣に殴られるところとか、笑ってたよね?
綱:うん、笑ってたと思う。
樋口:あとは、田口と伊藤が川沿いでタバコを吸うシーンとか。
綱:うんうんうんうん。あと、レストランでの4人のシーンも。
樋口:あっ、笑ってたね。

Ⓒ石黒正数・徳間書店/映画『ネムルバカ』製作委員会
レストランで4人が話すシーンは印象的ですが、アドリブも多かったのですか?
樋口:多かったんじゃないかな……(その後も口は動いているが、声が聞こえない)。
綱:あの~、ちゃんと声に出してくれる?ずっと、歯がカタカタカタカタいってる音しか聞こえないけど(笑)。
樋口:いや、どうだったっけ?って考えてたの(笑)。でも、テーブルに突っ伏したのもアドリブだし。
綱:うんうん。
樋口:伊藤が田口の背中をさすってなぐさめているところへ料理が運ばれてきたから、突っ伏している田口越しにフォークとスプーンをとったりとか。そういうちっちゃなアドリブがちょこちょこあるんですけど、それは(阪元監督が)笑ってくれていた気がします。
そういったアドリブは、事前に打ち合わせをしたのでしょうか。それとも、その場で自然と生まれたもの?
綱:どっちもありますね。さっき言った川沿いのシーンは、幸平とサウナに入りながら話し合った記憶があります。
樋口:うん。
綱:どのタイミングで田口が伊藤のタバコに火をつけて、どこで吸って~というのを、セリフを言いながら考えたりしました。

では改めて、本作の公開を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。
樋口:W主演の久保史緒里さんと平 祐奈さんが、この作品をとても明るくとてもキレイに、且つ、おもしろく照らしてくれて。映像が完成する前から、“あっ、この作品は絶対におもしろくなるな”と確信できるぐらい、二人が雰囲気作りをしてくれました。そのなかで僕たち二人も、この作品においていいスパイスになるように全力を注ぎましたし。長年、一緒に過ごしてきたからこその空気感が全面的に出ていると思うので。ぜひ、そこにも注目しながら観てほしいです。
綱:この映画は、夢や才能というのがテーマになっています。夢がある人、ない人。才能がある人、ない人。それを、入巣とルカを対比させながら描いていて。しかも、すごくリアリティがあるんです。その辺を歩いていたらいるんじゃないかって思うくらい……もちろんそれは、主演二人のお芝居の力も大きいんですけど。僕らの演じた田口と伊藤も含めて、フツーに街にいるような登場人物がたくさん出てくるので。誰かに共感して、一つでも何かを受けとって、おウチに持ち帰ってもらえたらいいなと思っています。ぜひ、劇場でご覧いただけたらうれしいです!

楽しそうな雰囲気でとても仲良く登場された綱さんと樋口さん。やはり普段からプライベートでも交流があるため、仲の良さがすごく際立っていました。インタビュー中もお二人の阿吽の呼吸で話が広がっていき、お二人のツッコんだり、ツッコまれたりと楽しそうな空気が部屋にいる周りの人たちに自然と笑顔を与えていました。少しだけFASTのスタッフも普段お2人でいる時の雰囲気だったり、和やかな空気感をお話の中で感じることができました。後編では、作品の、セリフからご自身についてなどお聞きしております。これまでのお二人の歩みからきっと前向きになれるお話です。お楽しみに!
綱啓永
つな けいと
1998年12月24日生まれ。
最近の出演作に、NHK総合『未来の私にブッかまされる!?』(‘24)、フジテレビ『366日』(‘24)、TBS『恋愛のすゝめ』(‘23)、映画では、『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』(‘24)、『恋わずらいのエリー』(‘24)、があり、『女神降臨 Before/ After』(‘25)『#真相をお話しします』(‘25)の公開、控えている。
樋口幸平
ひぐち こうへい
2000年11月30日生まれ。
最近の出演作に、日本テレビ『離婚弁護士 スパイダー〜慰謝料争奪編〜』 (‘24)、BS-TBS『江戸川乱歩原作 名探偵・明智小五郎「黒蜥蜴」』(‘24)、読売テレビ・日本テレビ『約束 〜16年目の真実〜』(‘24)、映画では、『追想ジャーニー リエナクト』(‘24)などがある。 4月期カンテレ×FOD「MADDER~その事件、ワタシが犯人です」に出演を控えている。

Ⓒ石黒正数・徳間書店/映画『ネムルバカ』製作委員会
作品:『ネムルバカ』
キャスト:久保史緒里 平祐奈
綱啓永 樋口幸平/兎(ロングコートダディ)
儀間陽柄(the dadadadys)高尾悠希 長谷川大
志田こはく 伊能昌幸 山下徳久/水澤紳吾
原作:石黒正数『ネムルバカ』(徳間書店 COMIC リュウ)
監督:阪本裕吾
脚本:皐月彩 阪本裕吾
音楽:立山秋航
主題歌:「ネムルバカ」/平祐奈 as 鯨井ルカ
製作プロダクション:Libertas
配給:ポニーキャニオン
※Team Credit
綱さん
スタイリスト:三宅剛
ヘアメイク:牧野裕大(vierge)
樋口さん
スタイリスト:横山凌
ヘアメイク:吉村健
カメラマン:鈴木寿教
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿