笠松 将
今、めっちゃいい精神状態で仕事ができている
2013年に俳優デビューするも、不遇の時代が続いたという笠松 将さん。不屈の精神を武器に芝居の道を邁進し、現在では引っ張りだこの実力派俳優に。2023年に出演した連続テレビ小説『らんまん』では酒造りにまっすぐな蔵人の役を演じて話題を呼びました。昨今は海外進出にも積極的で、ますます活躍の場を広げている彼に、役者としての現在の心境を伺いました。
ドラマ『TOKYO VICE』では90年代の日本が舞台ですが、コンプライアンスの問題などが
現代と比較されることも多いですよね。
僕は、今の時代は今の時代でめっちゃ面白いって思いますけどね。そりゃあ、価値観が変わればルールも変わりますから。“昔は面白かった”と過去にとらわれるより、どうやって未来をよくしていくかということのほうが大切じゃないかなって。
では、本作の世界観にもすんなりとけ込めた?
台本にどれだけ馴染めるかって、プロとしての器が試されると思うんですよ。僕は、お芝居をするうえで、(自分の演じる)キャラクターとなるべく多くの価値観を共有できることが一番大切だと思っているんですね。そういう意味ではとけ込めました。それに、(『TOKYO VICE』は)わりと好きな世界観なんですよ。ルールやしきたりみたいなものはしっかりありながら、価値観を変えていくっていう。あくまでも役としてですが、90年代という過渡期の“時代の変わる音が聞こえる”みたいな瞬間に立ち会えたことは、よかったなと思います。
笠松さん演じる佐藤と価値観を共有することで、役とご自身の共通点が見つかったと。
そうですね。それに、あこがれのような気持ちもあります。“自分も、時代を大きくいい方向に変えることができたらいいな”みたいな。
本作は東京が舞台の物語です。笠松さんは
18歳のときに愛知県から上京しましたが、
どんな思いを持って東京に来たのでしょうか。
夢を持って東京に出てきて、今はより大きな夢を持ちながら東京にいますね。上京するときは、何も知らないからこその不安とドキドキがありました。気持ちとしては、“東京で戦うんだ!”みたいな。今は東京だけじゃなく、東京も含めた世界と戦っているので、一つひとつの出来事や話の規模が大きくなっていますよね。「じゃあ、来月アメリカへ行きます」みたいな会話を、マネージャーとフツーにしているので。でも、ものすごく変わったようで、何も変わってないような気もします。
なぜ、そう思うのですか?
東京に出てきたばかりの頃は、次の日の予定も決まっていないわけですよ。今の僕も、次の作品が決まっているわけじゃないから。でもこれ、いいのか悪いのかわからないんですけど、あまり焦りはなくて、“いつか、おもしろい作品(の依頼)がくるっしょ”みたいな気持ちなんです。衣食住のために仕事をすることがなくなったぶん、作品選びがシビアになっている気がします。
昔は生活のために仕事をしていた?
生活のためでもある一方で、俳優としてステップアップしたいという気持ちもありました。でも、どんなにいろんな作品をやりたいと思っても、オーディションで勝ちとるしかなかったから。とにかくオーディションを受けまくっていたし、プロフィールには載らないようなエキストラみたいな役もたくさんやっていました。
そう考えると、お仕事へのモチベーションが
変わるのも自然ですよね。
当時は、自分が東京にいていい理由がほしかったんですよね。だけど今は、別に理由なんていらなくて。僕が住みたいから住んでいるんだと思えるようになった。まぁ、自己満ですけどね。
今、とてもいい精神状態でお仕事が
できているんですね。
うん、今、めっちゃいいですよ。この状態がいいのかわからないですけどね。こんな楽観的でいいのかなとも思いますし。
でも、それで成立しているのならOKなのでは?
たしかに。あと、昔は映画でもドラマでも、いただいたお仕事はなんでもやるのがいいと思っていましたけど、それは作品に対して失礼だなと思うようになったことも大きいかな。
どうして、そう思うようになったのですか?
お芝居の仕事を始めた頃は、がむしゃらにオーディションを受けて一生懸命やっていたんです。そんな僕からすると、適当に仕事を受けているように見える先輩たちもいるわけですよ。だったら、そこをどいて自分に席を空けてくれよと。空けてくれないなら、こっちからとりにいきますよ、みたいな気持ちだったんです。でも今になってみると、譲ってもらえなきゃ座れないようなイスなら、そもそも座れなかっただろうし。自分が座るべき……べきというか、座りたいイスにしか座らないと思うようになった。だからといって、「あなたの座るべきイスはどういうものですか?」と聞かれても、ハッキリとは答えられないんですけど。
では、“座りたいイス”とは?
うーん……なんだかんだ言いながら、最後は熱意なのかもしれない。例えば、“笠松将と一緒にやりたい”みたいなアツい気持ちの感じられる作品。予算とか才能、スタッフィング、キャスティングとか、作品を作るために必要な要素はいろいろとあるけど、結局は熱意なんじゃない?っていう。
そうすると、ひょっとしたらインスタのDMに届いた「初めて映画を作るんだけど、出演してくれないか」というようなチームと一緒に仕事をする可能性も……。
そうそう!『スター・ウォーズ』だって、最初は製作会社に売り込みにいっても却下されたりしたわけだから。未来なんて、ホントにどうなるかわからないですよね。
笠松将
かさまつ しょう
1992年11月4日生まれ。
撮影時ではカメラマンや周囲とお話しをしながら時にかっこよく、時にニコッと笑った表情などとても余裕があり、スマートにお仕事をされている姿が印象的だった笠松さん。そしてお話も面白い笠松さんですが、スタイルも文句なし!でした。黒のスラッとしたセットアップを着こなされていながらも、笠松さんの漢らしい部分は最大限に生かされていました。普段ドラマに出演している時の役の熱くクールなお姿と撮影時の明るく気さくに接してくださるギャップに終始びっくりされられっぱなしのスタッフでしたが、周りの雰囲気をお茶目に明るくしてくださるお人柄でした。初出演ありがとうございました!これからも役では漢らしく、プライベートではとても面白く素敵な笠松さんのご活躍を応援しております!
最近の出演作に、テレビドラマでは、WOWOW『TOKYO VICE Season2』(‘24)、NHK『連続テレビ小説 らんまん』(‘23)。映画では、金子雅和監督作『リング・ワンダリング』(‘22)、土屋貴史監督作『花と雨』(’20)。配信ドラマでは、Disney+Star『ガン二バル』(‘22)Hulu『君と世界が終わる日に Season3』(’22)。国外へ活動の幅を広げ、原作がイギリスのブッカー賞を受賞した「The Narrow Road to the Deep North」(Amazon Australia)にも出演が決定している。
©Photo: James Lisle/WOWOW
ハリウッド共同制作オリジナルドラマ『TOKYO VICE Season2』
WOWOWにて 4 月 6 日(土)スタート
毎週土曜午後 9:00 放送・配信(全 10 話)〔第 1 話無料放送〕
※WOWOWオンデマンドにて、Season1全 8 話配信中
アンセル・エルゴート 渡辺謙 レイチェル・ケラー 菊地凛子 笠松将 窪塚洋介 真矢ミキ ほか
監督:アラン・プール ジョセフ・クボタ・ラディカ 福永壮志 エヴァ・ソーハウグ
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:松田陵(Y’s C)
スタイリスト:柴原啓介
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿