佐藤大樹
ドラマ『風のふく島』
ダンスを始めた頃の自分と似ていて共感できた
『風のふく島』は、福島12市町村を舞台に、実在する12名の移住者に着想を得た、1話完結のオムニバスドラマ。第1話で主演を務める佐藤大樹さんに、実在する人物を演じる難しさや、撮影時のエピソードなどをお話しいただきました。幼少期から福島県に縁があったことから、東日本大震災に対する特別な思いも伝わってくるインタビューです。
©「風のふく島」製作委員会
<あらすじ>
かつて馬術競技で日本一に輝くも、就職することを決めた東京出身の中村優神(なかむらゆうしん)(佐藤)だったが、再び、馬文化が根づく南相馬市への移住を決め、馬の事業を始めることに。まずは、1000年以上の伝統を守る“野馬追会”に認めてもらうべく気合十分の中村だったが、会員の牛来(オクイシュージ)からは厳しい評価を受けてしまう。そこで、神事である騎馬会に参加し、自分の熱量を受け入れてもらおうと試みるが…。伝統という名の壁に、中村は打ち勝つことができるのか!?
佐藤さん演じる中村優神は実在の人物をモデルにした役柄ですが、役ヘのアプローチはどのようにしていきましたか?
プロデューサーさんが、優神のモデルになった方に1時間ぐらいリモートインタビューをされたと伺って、素の部分というのはそういうときに出るのかなと思い、その映像をお借りしたのですが、それが役作りをするうえで一番大きかったです。モデルになった方が車の中からつないでいて、途中、郵便物を開け出したり、歩きながら受け答えをしたり(笑)。好奇心旺盛な方なんだと思いました。
まさに、素の部分を見られたわけですね。
そうです。僕自身はプロデューサーさんにそんな態度はとれないので、ビックリしました(笑)。言っていることはすごく興味深いし、予想もつかない返答もするし。実際に、そのインタビュー中に言った言葉がセリフになっているんです。実話をもとにしたドラマって、こんなふうに作られるんだなって思いましたし、とてもおもしろかったです。
撮影前に、実際にお会いしたと伺いました。
クランクインの前日に南相馬市に行って、乗馬の練習を含め、3時間ぐらい話せたことも、役作りにおいて大きかったです。僕からたくさん質問をしました。ご本人は、リモートインタビューを僕が見たことを知らないから、「それ、どこで調べたんですか!?」みたいな反応が返ってきました(笑)。そういう他愛もない会話の中から“この人って、こうなんだろうな”というヒントを盗もうとしたのが、今回の役作りでした。
実在する人物をモデルにした作品ならではのやり方ですね。
今までしたことのない試みだったので新鮮でした。(優神の)モデルになった方と僕は同い年で、背丈も足のサイズも脚の細さも同じだったんです!だから、その方が実際に使っている馬術の制服や道具を使わせてもらえたのも、すごく嬉しかったです。あと、馬にずっとEXILEの曲を聴かせていたらしく、「マジで聴くんですよ、EXILE」と教えてくれて。チャラいな~と思いつつ(笑)、でも、気さくな方でよかったなと思いました。
お話しして、共感できる部分はありましたか?
お話ししたとき、「自分は昔から、根拠のない自信があった」とおっしゃっていて。彼には馬の社会的地位を高めるという夢があって、その目標に対しては、周りが見えなくなるくらい熱量をもって打ち込む方なんです。そういうところが、16歳でダンスを始めて、絶対にEXILE(のメンバー)になる!と勝手に思い描いていた自分とすごく似ていて、すごく共感できました。あっという間に意気投合しました。
逆に、ご自身と優神とはここが違うなと感じた部分はありますか?
僕、監督に「ものすごく根がマジメだ」と言われたんです。たしかに否定できないし(笑)、そこが一番、優神と違うかなと思います。優神はある意味チャラいというか、誰に対しても取り繕うこともなくフラットな人物なのですが、自分が演じたときに、最初はどうしても根のマジメさが出てしまって……。優神は物怖じしないし、人にどう思われるかもあまり考えないタイプなのですが、僕は職業柄もあって、そういうところを考えてしまうんです。でも、優神が持っている自信や行動力というのは、ものすごく憧れる部分でもあって、できればそういう人間になりたかったな、という思いも改めて抱きました。
人前に立つ際に、自分のパフォーマンスがどう見られるかが気になる?
そうですね。ステージに立って踊るときも、ある意味“パフォーマーの佐藤大樹”を演じているので、“こう見られたいから、こうする”みたいなことは常に意識しています。パフォーマンスし終わった後の評価やお客さんの感想も、すごく気になりますね。ダメなポイントがあったら次に活かそうと反省もたくさんします。そういう意味で、自分はちょっとマジメなのかなと思います。
そうやって実際にお会いしたことで、演じる難しさが増した部分もありますか?
モデルになった方をそのままコピーするだけなら、僕がやる必要はないかな、という思いがありました。佐藤大樹が演じる中村優神ってこうだよな、というところは自分なりにすごく考えました。声のトーンや歩き方とかは自分の演じやすいようにさせていただきつつ、実際にお会いした僕だからこそ発見した違いも出したいなと思ったので、そこはすごく工夫したというか、苦労した部分でもあります。
劇中には馬を扱うシーンもありますが、事前にどんな練習を?
子どもの頃に動物園で乗馬体験をしたことがあったのですが、それ以来だったので、クランクイン前に実際に馬に乗って走る練習をした際は、思った以上に苦戦しました。撮影本番で乗る馬を選んでいただく際も、自分に合うのはどういう馬か…やっぱり相性も大事なので、それをつかむまでにすごく苦労しました。
©「風のふく島」製作委員会
そこから、どのように慣れていったのですか?
優神のモデルになった方がアドバイスをくださったり、励ましてくれたりしたおかげで、2日ぐらい経ったら想像以上に馬とコミュニケーションをとれるようになりました。実際に撮影が始まったら、一番苦労すると思っていた馬とのシーンが一番うまくいったんです。撮影最終日には、馬と対面してせつない気持ちになったり、涙を流したりするシーンがあったのですが、ホントに心が通じたような気がして。最終的には、もうちょっと馬とのシーンをたくさん撮りたかったなと思うほど、馬が恋しくなりながら福島から帰ってきました。
具体的に、どのようなアドバイスをいただいたのでしょうか。
馬はストレスを感じやすい生き物なので、乗った後は必ず首を叩いて褒めてあげる。こうすることで、馬が“あっ、今の自分はよかったんだ”と思えると教えていただきました。ツラい思いをさせてしまったり、練習をいっぱいさせてしまったりしたときは、「よく頑張ったね」という思いを込めて撫でるとそれが伝わるので、時間があれば首を撫でてあげるようにしました。あと、毛並みを揃えたり、馬の毛を掃除したりするシーンがあるのですが、カメラの回っていないところでもそれをやってあげるなど、馬との距離を縮めるのに大事なことを教えていただきました。
馬との撮影中、ハプニングなどは?
今回、ラストシーンから撮影したのですが、僕自身も初めての馬とのシーンでしたし、馬も、普段は目にすることのないカメラやマイクが近くにあることによって、恐怖心をすごく抱いていました。撮影中、砂浜にダーンと寝っ転がって駄々をこねちゃったりとか、急に発進しちゃったりとか。顔につけるマスクを長時間つけているのもイヤみたいで、顔を揺らしちゃってNGになることもありました。
佐藤さん自身も慣れていない環境で、大変でしたね。
監督やスタッフ陣は遠くから撮っているので、その馬をコントロールできるのは僕だけという状況でした。もう、セリフを言うとか映り方を気にするとか、そんなことを考えられないレベルで“この馬をとにかく暴れさせちゃいけない!”というプレッシャーでいっぱいでした。でも、撮影がうまくいった後に、初めて僕がニンジンを5本ぐらいあげたんです。そのときの馬の嬉しそうな顔が忘れられなくて!よかったと心から思いました。
佐藤さんにとって福島県は、子どもの頃から毎年訪れる大好きな場所だそうですね。
祖父母の家が福島県にあるのですが、行くたびに心が洗われるというか、浄化されるようなイメージがあったので、今回福島県で撮影できると聞いてとても嬉しかったです。ただ、祖母と祖父に会えなかったのは、ちょっと残念でした。
地元の方とのエピソードがあれば教えてください。
福島の方たちって、ホントに人を信頼しているイメージがありました。地域の人たちの輪を大切にしているから信頼しているんだなと思いました。今回、南相馬市で撮影したときも、僕が馬の練習をする際に手取り足取り細かく教えてくれて、人の温かさに触れることができてホントに嬉しかったし、改めて素敵な町だなと感じました。
地元の方の協力もあって、撮影がスムーズに進んだと。
エキストラも地元の方がたくさんいらっしゃって。僕、福島県の方言をいくつか知っていたので、カメラが回っていないときには「こういう言い方で合っていますか?」と聞くと、「もうちょっと、こういう言い回しのほうが本物っぽく聞こえるよ」と教えてくれました。お酒を飲んでいる設定のシーンも、最初はみなさん緊張されていたのですが、僕から積極的に話しかけて、本番では自然な空気感をみんなで作ることができたし、ホントに温かい方ばかりでした。
東日本大震災のとき、佐藤さんは高校生でしたが、そのときに感じたことや、今の福島に対して思うことは?
震災が起こった瞬間は、僕はダンスの練習中でした。その後、EXILEが復興を目的に『Rising Sun』という曲をリリースして。「日本を元気に」というテーマを掲げ、アーティストとして活動している姿を見て、僕も自分のパフォーマンスで日本を勇気づけられる存在になりたいと、より強く思ったのを覚えています。小さい頃から何度も訪れている町なので、僕にできることは何だろうかと模索もしました。そこから年月が経った今、この作品がオンエアされることで、少しは僕も、親戚や応援してくれている方に勇気をあげられるかもしれないなと思います。
本作は、広い年齢層の方がご覧になるドラマかと思います。佐藤さんは、若い世代に向けた作品に出演されることが多いように感じますが、本作でのご自身をどのように見てほしいと思いますか?
福島は第二の故郷ともいえる場所で、子どもの頃から育ててもらった場所です。『風のふく島』への出演が決まって、最初に報告したのは親戚のみんなで、一番観てほしい人たちでもあります。特に、移住した人たちがどういう思いでそこにいて、どういう夢や熱意を持っているのかというところは、描かれる機会があまりなかったと思うので。今回、このオムニバスドラマを観た方が、“福島県のこの市町村に行ってみたい”とか。優神を見て、馬についてもっと知りたいと思ってくれたり、野馬追とは何なんだろう?と調べてもらえたりしたら嬉しいです。
佐藤大樹
さとう たいき
1995年1月25日生まれ。EXILE、FANTASTICSのパフォーマー。
インタビューではデニムのセットアップがとっても似合っていて、可愛らしい表情で登場されました佐藤さん。お話中は常に相手の目を見て伝える意識がすごく伝わってきました。またお話も伝えたい内容をうまく伝えてくださるので、佐藤さんが頭の中で描いているビジョンや目標などが終始伝わった、濃いインタビューのお時間となりました。真剣にお話しを進めてくださるのですが、圧迫感などは一切なく、むしろ佐藤さんのお人柄や出す雰囲気なのか、とでも楽しく朗らかは雰囲気でした。
後編では今後の抱負なども伺っております。お楽しみに!
俳優として、最近の出演作に、テレビドラマでは、毎日放送『愛人転生 -サレ妻は死んだ後に復讐する-』(‘24)、読売テレビ・日本テレビ『降り積もれ孤独な死よ』(‘24)、TBS『瓜を破る〜一線を越えた、その先には』(‘24)、映画では、『逃走中 THE MOVIE:TOKYO MISSION』(‘24)、『小説の神様 君としか描けない物語』(‘20)などがある。
©「風のふく島」製作委員会
【タイトル】 ドラマ 25「風のふく島」
【放送日時】 2025 年 1 月 10 日スタート 毎週金曜深夜 24 時 42 分〜25 時 13 分 【放送局】 テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ 九州放送
【BSテレ東】2025 年 1 月 13 日スタート 毎週月曜深夜 24 時 00 分〜24 時 30 分 【福島テレビ】2025 年 3 月放送予定
【配信】 広告付き無料配信サービス「ネットもテレ東」(テレ東 HP・TVer)にて見逃し配信
▶テレ東HP:https://video.tv-tokyo.co.jp/
▶TVer:https://tver.jp/series/srif80nxez
各話放送終了後から、動画配信サービス「U-NEXT」にて順次見放題配信
▶U-NEXT:https://t.unext.jp/r/tv-tokyo_pr
【主演】 佐藤大樹(EXILE/FANTASTICS) 駿河太郎 桜井ユキ 豊本明長(東京 03) 渋川清彦 北乃きい 本田響矢 三浦貴大 青木柚 大友康平 黒木華 小西桜子(話数順)
【声の出演】 釘宮理恵
【監督】 池田千尋 川元文太(ダブルブッキング) 住田崇 戸田彬弘 二宮健 広瀬奈々子 三木聡 (50 音順)
【脚本】 石黒麻衣 金子鈴幸 川元文太(ダブルブッキング) 熊本浩武 広瀬奈々子 深見シンジ 三木聡 (50 音順)
【音楽】 會田茂一
【オープニングテーマ】 和ぬか「夢路」(UNIVERSAL SIGMA)
【エンディングテーマ】 柴田聡子「Passing」(AWDR/LR2)
【企画・プロデュース】 青野華生子
【プロデューサー】 梅山文郁(テレビ東京) 植田郁子(テレビ東京) 伴健治(さざなみ) 三好保洋(さざなみ)
【制作】 テレビ東京 さざなみ
【制作協力】 福島イノベーション・コースト構想推進機構 ふくしま 12 市町村移住支援センター
【ハッシュタグ】 #風のふく島
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:大木利保【CONTINUE】
スタイリスト:平松正啓
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿