世古口凌
土曜ドラマ『探偵ロマンス』
作品を通じて現代が抱える問題と向き合う
2018年に舞台『MEMORYBOYS~想い出を売る店~』でデビューし、2021年には『機界戦隊ゼンカイジャー』にステイシー役で出演した世古口凌さん。そんな彼が、2023年1月21日からNHK総合の「土曜ドラマ」枠で放送中のテレビドラマ『探偵ロマンス』に出演。物語に登場する舞台『華炎城の舞姫』のヒロインを務める蠱惑的な踊り子、お百を演じる彼に、物語の見どころや演じた役柄についてなどを伺いました。
<あらすじ>
新進気鋭の脚本家・坪田文が書き下ろすオリジナルドラマ。1923年に作家デビューを果たした江戸川乱歩。それから100年という節目にお届けする“知られざる江戸川乱歩誕生秘話”。連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」制作チームがNHK大阪放送局よりお送りするロマンスあり、笑いあり、涙あり、魂の叫びあり、アクションあり……。今を生きる人々の心に響く珠玉のエンターテイメント活劇。
2話では、平井太郎(濱田岳)と白井三郎(草刈正雄)が、画商・廻戸(原田龍二)殺しの真犯人を求め動き出す。太郎は、手がかりを求め、廻戸がパトロンだった人気の踊り子・お百(世古口凌)に近づくが、その美しさに魅了されていく。一方、美摩子(松本若菜)は、お百のパトロンとなった外務次官・後工田(近藤芳正)に接近する。そんなとき、隆子(石橋静河)が帝都にやってくる。
『探偵ロマンス』へのご出演や、ご自身の役柄が決まった時の感想をお聞かせください。
初めてお話をいただいた時は驚きました。ええ、っていう(笑)。役柄については最初はあまり詳しくは聞けていなかったんです。でも蓋を開けてみたら、“女性ではないけど見た目が女性らしい男の子の役”で。うわあ、こういうのできるの嬉しいなあ、俳優業をやっていてよかったな、と素直に嬉しかったです。それからNHKさんとお仕事をできる喜びも大きくて、本当にハッピーな気持ちで一杯でしたね。ただ、役作りとしては難易度が高いなあとやる前からずっと感じていて……。僕が演じるお百のようなジェンダーレスなキャラクターが出てくる映画などの作品を漁ったりして、そういう風にだんだん自分と役との距離を詰めていこうと工夫を重ねていきました。
お百という役柄に対しては、
どういう印象を持ちましたか?
愛されたいというか、生きていくうえで、自分らしさを認めてもらえない悲しさ、もどかしさ、虚しさみたいなものを抱えている人物なんだなあと思いました。現代社会が抱えているような問題―ジェンダーに関するような問題がこの作品の舞台である100年以上前の時代からあるんだな……いや、もしかしたらもっともっと前からあるのかなあと想像すると、心が痛くなってしまったりもしました。
今回は、“女性らしい男性の踊り子”という難しい役柄だと思うのですが、稽古や役作りで
大変だったことはありますか?
物語に登場するA公園のオペラ館で、お百は舞台『華炎城の舞姫』のヒロインを務めているのですが、そこで披露する舞の稽古にはやはり少し苦戦しましたね。ヒールを履いて、踊り子としてのひとつの舞台を作ったのですが、踊りのキレや、女性っぽい滑らかさや色気などを表現するのが大変で、たくさん稽古を重ねました。スタッフの皆さんと、そうしてひとつ役や作品全体の雰囲気、空気感を作っていく作業が、凄く印象に残っています。
作品の見どころがあれば教えてください!
やっぱり流れというか、物語としての全体の流れを一番に見てほしいと思っています。僕が演じるお百だけでなく、登場するキャラクターのほとんどがそれぞれの葛藤を抱えて生きているので、そこに注目してもらいたいという風にも思いますね。たとえばお百は、先ほども少し触れましたが、ジェンダーも含めいろいろな問題や世間のしがらみから解放される時代を待ち続けている人物なんです。他にも素敵なキャストの方々が演じる魅力的な登場人物たちの、『探偵ロマンス』の世界観をお楽しみいただけたら嬉しいです。
今回、ほとんどの方と初共演だったとのことですが、現場の雰囲気はいかがでしたか?
本当に楽しかったですね。なんというか明るいなっていう印象で……、現場のみなさんのテンションが上々してました(笑)。その空気に僕自身助けられたなという印象が凄くあって。僕は自分から結構コミュニケーションを取りにいくタイプなんですけど、やっぱり先輩が多い現場だったのもあってちょっと気を張ってしまうじゃないですか。でも共演者の方々もみなさん優しくて、とてもありがたかったんです。僕はもしかしたら空回りしてしまっていたかもしれないですが、自分なりにお話させていただけて良かったなと思っています!
共演者の方との何かエピソードがあれば
教えてください!
草刈正雄さんが僕の隣に座っていらっしゃった時があって、「草刈さん、普段は何をされているんですか?」って勇気を出して話しかけさせていただいたんです。反応がなく、あれって顔を見たら、眠っていらっしゃいました(笑)。僕は思わず小声で「あ……すいません……」って(笑)。ついさっきまで撮影していたのに、スゥって寝られてるんですよ。切り替えというか、集中力が凄いんですよね。流石だなあと思って。かっこいいです。
世古口さんといえば、ジェンダーレスなお洋服が
似合いそうな印象ですが、この冬に着たい
ファッションなどはありますか?
服は好きで、今年の冬服も最近まとめて買ったくらいよく服を買うんです。でも去年くらいですかね、ニット帽を結構な数捨ててしまって。この間、今ひとつしか持っていないことに気が付いたんです(笑)。だから改めて、たくさんいろんなバリエーションのニット帽を買い漁りたいなあって思っています。ポンポンとか付いてるの、可愛くていいですよね。男性の服も女性の服もどっちも着られるほうが二倍楽しめるから、それはやっぱり二倍楽しみたいという考えがあるんです。今年はポンポンニット帽を買って冬を楽しみたいな。
仕事やプライベートにおいて、
2023年の目標や展望はありますか?
来年は、平和に楽しく働きたい(笑)。もう、それに尽きるなと思っています。単純に仕事を楽しんでやりたいというのと、ひとつひとつのお仕事を丁寧にやっていきたいという気持ちが今大きくて。だから自分がお仕事を選ぶというよりも、選んでもらえるようになるという初心にかえって、イチからまた頑張りたいなと思っています。プライベートの方は、お酒をもうちょっと飲めるようになりたいなあと思っています(笑)。最近飲み始めたんですよ、お酒。だんだんと気軽に飲みの場に呼んでもらえるようになりたいなと思います。いろんなお酒の味を知って、コミュニケーションの場や人との輪を広げていきたいですね!
最後になりますが、この記事の読者に向けて
メッセージをお願いします!
『探偵ロマンス』は物語が本当に素敵なんです!初めて台本を読んだ時から「めっちゃ面白いじゃん!」って率直に思ったんですよね。そして撮影を進めていくうちに、キャラクター1人1人がどんどん愛らしく見えてくるんです。なによりそれを素敵なキャストの方々が演じられていて、スタッフの方々もひとつのゴールに向けて全力で準備をしてくださっていて。そんな背景を見てきたから、凄く良い作品になっているんだろうなという期待と確信があるんです。物語は一本の軸を持って進んでいくのだけれど、そのメインストーリーの部分はもちろん見てほしいのですが、その横にあるお話というか、それに付随するいろんな登場人物のサイドストーリー、人生にも注目してほしいです。要は全部見逃さないでほしいということですね(笑)! なにかひとつに注目するのももちろん面白いと思いますが、どこを切り取ってもキャストやスタッフ全員の想いが詰まっている、そんな作品になっていると思います。
世古口凌
せこぐち りょう
衣装を決める際に前回出たときの衣装とのバランスも考えくれ、すごく迷って、編集部スタッフ全員に多数決をとり、今回の衣装になりました。世古口さんは場をひとつにする天才です!撮影が始まり小道具を使うと天性のかわいさが爆発。インタビュー時はお菓子を食べたり、リラックスして答えてくださったので、スタッフもとても楽しい時間となりました!今はモンスターを捕まえるゲームをやっていらっしゃるそうです!
『探偵ロマンス』
◆ 毎週土曜 NHK 総合 夜10:00~10:49
<全4話>
◆脚本: 坪田文
◆音楽・主題歌: 大橋トリオ
◆出演: 濱田岳 石橋静河
泉澤祐希 森本慎太郎 世古口凌 本上まなみ 浅香航大 浜田学
/ 松本若菜 近藤芳正 大友康平 / 岸部一徳 尾上菊之助 草刈正雄 ほか
◆撮影場所: 京都東映撮影所、関西近郊ロケ ほか
◆制作統括: 櫻井賢
◆プロデューサー: 葛西勇也
◆演出: 安達もじり 大嶋慧介
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:花房みなみ
スタイリスト:カワセ136
ディレクション:半澤暁
インタビュー:近谷奈生
記事:小枝指優樹/近谷奈生