一ノ瀬 颯
“一ノ瀬にまかせてよかった”と思ってもらえる実力をつけたい
2019年に『騎士竜戦隊リュウソウジャー』で主演デビュー後、大河ドラマ『麒麟がくる』や、ドラマ『いちばんすきな花』など多くの話題作に出演。現在は、ドラマ『Believe―君にかける橋―』で重要な役どころを演じるなど、注目度急上昇中の一ノ瀬 颯さん。俳優デビュー5周年を迎えた心境から将来の展望まで、現在の思いを伺いました。
©テレビ朝日
今年で俳優デビュー5周年を迎え、一つの節目かと思いますが、振り返ってみるとどんな5年でしたか?
今のお仕事を始めたときはまだ学生でしたし、お芝居とは無縁の世界で生きていたので、まったく想像のつかない未来に向かって、ただひたすら目の前の仕事をしているという感じでした。僕はもともとすごく緊張するタイプなので、人前でしゃべるのが苦手だし、そもそも人前に立つのが苦手だったんです。
そうなんですか!?
今、こんなにベラベラしゃべっているから、信憑性がないですよね(笑)。でも学生時代も、みんながやらないからしかたなく学級委員長をやったりもしたけど、人前でしゃべろうとするとホントに言葉が出てこなくなっちゃうんです。それは、『騎士竜戦隊リュウソウジャー』の制作発表のときもそうで。いまだにそのときの動画を見て、友達に笑われたりするんですけど。ずっと髪を切ってもらっている美容師さんにも、「(その動画を見て)むしろ、もっと(一ノ瀬のことを)好きになった」と言われました(笑)。
でも戦隊作品は、舞台挨拶など人前でコメントをする機会も多いですよね。
しかも僕は主演だったので、そういうときに締めの言葉を言うことが多くて。さすがに一年もやっていたら少しは慣れましたけど、いまだにお芝居のときもカメラがこっちに向くと緊張しちゃうんです。ただ、この5年で少しずついい意味で慣れて、その緊張とうまく付き合えるようになったかなって。緊張をプラスのほうに使えるようになってきた気はします。お芝居のときも、緊張が少なくなったぶん、相手の芝居を受けて返すということに以前よりもちゃんと集中できるようになったので。そこは、一番変化した部分かなと思います。
戦隊作品でのデビューというのは、役者としてとても恵まれているスタートだったと思いますが、今振り返って、ご自身でよかったと思うことはありますか?
僕は、当時からホントにものすごく感謝していて、ありがたいなと思っています。さっき話したように、戦隊では人前で話す機会をたくさんいただいたので、しゃべるという自分の得意ではないことへの抵抗がなくなったり。話し出す前にいろんなことを考えすぎちゃうところを克服できたことは大きいですね。お芝居の面でも、『~リュウソウジャー』の監督は、いいものを撮りたいというこだわりがすごく強い方だったので、鍛えられました。
それは、どんなふうに?
当時、事務所で演技レッスンを受けさせてもらってはいたんですが、実際に現場でお芝居をしたことがなかったので、どうすればいいかまったくわからない状態だったんです。そんな僕に対しても、粘って粘って撮ってくださって。「違う、もう1回!」を、何回聞いたことか……。テイク40ぐらい重ねたこともありました。でも、そうやって時間をかけて撮ってくださったおかげで、キャラクターを自分のなかでしっかりと作って、そのうえで作品の世界に生きることの大切さがわかりましたし。“とりあえず、セリフをちゃんと言えたからOK”という中途半端な納得のしかたをすることもなかったので、僕のなかでの合格点の基準を高く設定してもらえたと思います。
では、ここから5年後、どんな景色を見られたらいいなと思いますか?
5年後……32歳かぁ。今はまだ30代って遠くに感じるし、(年齢の)10の位が変わるってどんな感覚なんだろうと想像することしかできないんですけど。よく大人の方が、自分が子どもの頃に思い描いていた30代のイメージとは全然違うって言うじゃないですか。なので、あまり年齢は関係ないというか。年を重ねること自体には、あまり意味がないのかなと思うんですよね。でも、いただいたお仕事をただこなすのではなく、自分から新しいものにチャレンジできるようにはなっていたいですね。
今後、チャレンジしてみたいお仕事は?
まだ舞台をやったことがないので、経験してみたいですし、声だけで表現するお仕事もやってみたい。あと、歌やダンスも好きなので、もしそういうこともやらせてもらえたら、また新しい自分の見せ方ができるのかな、なんて思います。
役者としての展望があれば教えてください。
今まで演じたことのない役にも挑戦して、自分の引き出しをもっともっと増やしたいです。経験を積んでいくと、今までやったことのある役と似たようなキャラクターを演じることも増えてくると思うんです。例えば、会社員の役とか。そういうときに、作品ごとにちゃんと違いを出すことができるような。それぞれの役を唯一無二のキャラクターにできて、どんな役でも“一ノ瀬にまかせてよかった”と思ってもらえる実力をつけたいですね。あとはやっぱり、役者をやっているからには主演を張れるようになりたいです。
それは素晴らしい目標ですね!
今、『Believe~』でご一緒している役者さんは、木村さんをはじめ、みなさんスゴい方ばかりですが、そういう方々と堂々と肩を並べられるように。自分もがんばりつつ、ほかの人のことを活かすことができる余裕を持ちながら、気配りもできるようになりたいです。役者としても、人としても。それで、(木村さんのように)共演者の方から「おかげで助かりました」と言われたときに、「何のこと? 俺はやることをやっただけだよ」と返してみたいです(笑)。
2023年2月に「FAST」にご登場いただいた際、「東京生まれ、東京暮らしの一ノ瀬さんが、海外や他県から東京に来た人におすすめスポットを紹介するなら?」という質問の回答がすぐに思い浮かばず、一年後の自分へのメッセージとして「東京のおすすめスポットぐらいパッと答えられるようになっていますか?」と送っていたのですが。
あー!思い出しました!でも最近は、以前とくらべて外出するようになりましたし、カーシェアなどを利用して車を運転する機会も増えたので、まかせてください!東京のおすすめスポットですよね?どうしよう……最初に出てきたのが横浜で……東京じゃなかった(笑)。その取材を受けた後、2回ぐらい浅草に行ったんですが、浅草いいですよね~。いや、でも、王道すぎてつまらないので、もうちょっと考えますね。
ちなみに、浅草でのメインは観光ですか?食べ歩きですか?
食べ歩きです。あっ、でも、やっぱり神楽坂にします!最近、古きよき日本の街並みが減ってきているなって思うから。そういう意味で、神楽坂の石畳とかは風情があっていいなって。
石畳推し?
はい、石畳推しです!僕、外観に重きを置くタイプで。日本らしい雰囲気はもちろん、異国情緒にも魅かれるんですよ。なので、夢の国やハウステンボスとか、あと、横浜赤レンガ倉庫とかも好きです。すみません。まさかその質問がまたくるとは思わず、すっかり油断していました……。
では、また一年後の自分へメッセージを送っておきますか?
じゃあ、今のおすすめスポットは浅草と神楽坂ということにしていただいて。これからも毎年同じ質問をしていただくということで、末永くよろしくお願いします(笑)!
一ノ瀬 颯
いちのせ はやて
1997年4月8日生まれ。
インタビューでは、ドラマの撮影での裏話や最終回に向けてのお話だけでなく、以前の出演での内容と今後のこと色々お話をしていただきました。お話ししている中で、一ノ瀬さんの少し可愛らしくシャイな部分とお話をたくさんしてくださるうちに人と話すことが今ではとても好きなのだと感じる場面が多くありました。また、共演エピソードからも数々の現場で先輩方に可愛がられる愛嬌も持っていて、一ノ瀬さんの持つしっかりしているようで弟のようなお人柄を終始見せていただきました。これからも役者業だけでなく、ダンスや色んなことに挑戦していきたいという向上心を常に持たれている一ノ瀬さんの活躍を応援しております!
最近の出演作に、テレビドラマでは、フジテレビ『いちばんすきな花』(‘23)、TX『SHUTUP』(‘23)、映画では、アクターズ・ショート・フィルム『ハルモニア』(‘24)主演、『仕掛人・藤枝梅安』(‘22)、11/1には『十一人の賊軍』が公開予定。TBS「王様のブランチ」にレギュラー出演中。
©テレビ朝日
【作品情報】
「Believe―君にかける橋―」(テレビ朝日系)
毎週木曜 よる9時~
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿