笠松 将
ドラマ『TOKYO VICE Season2』
こんなにたくさんのリアクションをもらった役はない
日米共同制作によるドラマ『TOKYO VICE』シリーズに、Season1から出演している笠松 将さん。さらにパワーアップし、スリリングな展開が待ち受けるSeason2では、どんな芝居で魅せてくれるのか。本作への出演を機に海外からの注目度も上がったという彼に、Season2の撮影秘話や、撮影を終えての率直な思いなどを伺いました。
©Photo: James Lisle/WOWOW
<あらすじ>
明調新聞の記者・ジェイク(アンセル・エルゴート)は、クラブホステスのポリーナが殺害された事件にヤクザの戸澤(谷田歩)が関与しているとにらみ、刑事の片桐(渡辺謙)と組んで調査を進める。一方、腹を刺された千原会の佐藤(笠松将)は無理やり意識不明のまま退院。彼を刺した若いヤクザは、戸澤組に接触をはかる。ヤクザの世界で何かが動き始めた……。
ドラマ『TOKYO VICE Season2』への出演が決まったときの気持ちを教えてください。
“Season2”は、“Season1”のときとは別のプレッシャーがあったんですよ。とてもありがたいことに、“Season1”を経て、僕の演じる佐藤がとても人気らしくて。僕は今まで人気のキャラクターなんて演じたことがなかったから、“がんばらないと大変じゃん!”“注目されてるってことは、手を抜いたらバレるじゃん!”って(笑)。撮影中は、“どうしたらもっとよくなるんだろう”ってずっと考えながら、いろいろと試しながら演じていました。
たしかに“Season2”ならではの
プレッシャーですね。
僕、クランクインして最初に撮影したのが病院で寝ているシーンだったんですけど。めちゃくちゃ気合いを入れて、カメラが回っていないときもずっとベッドの上にいました(笑)。よく、「死ぬ役だから、棺桶のなかにずっといました」みたいな俳優エピソードがあるじゃないですか。だから、そうしたほうが俳優っぽいかなと思って(笑)。
“Season1”のときは、どんな準備をして撮影に臨んだのですか?
セリフが英語なので、僕の英語レベルだと相手から言われたことに反応して返すことができないんですね。だから、とにかくセリフは完璧に入れて。なんなら、(ジェイク・アデルスティーン役の)アンセル(・エルゴート)はきっとこういうことを言ってくるだろうなっていうのを想定して、何パターンかアドリブを考えていったんですよ。完成した作品を観たときに、自分のアドリブが採用されているとうれしかったですね。
“Season2”でも、笠松さんのアドリブが
採用されたシーンはありますか?
ありますよ。5、6話あたりにバッティングセンターのシーンがあるんですが、最後の英語のセリフはアドリブです。あれはうれしかったなー。使われているのを観たとき、「はっ!」って声が出ました(笑)。
英語力という部分では、前作の撮影時と
くらべていかがですか?
英語の勉強は今でも続けているんですけど……話題によるかな。もうね、自己紹介はめちゃくちゃうまいですよ!だけど、お芝居の演出についてとか、業界についてみたいな話をされたりすると、“ごめん、それはどういう意味?”ってなっちゃいます。でも、英語に対する怖さはだいぶなくなりましたね。「いや、そんな言い回しはしないよ」とか言われても、全然気にならなくなったというか。“間違えても伝わればいいじゃん”という心持ちになりました。もちろん、セリフの場合は別ですよ。
“Season2”では新キャストとして窪塚洋介さんが加わりましたが、共演していかがでしたか?
いやぁ、楽しかったです。めちゃくちゃ!お会いする前はちょっと怖い方なのかなとか思っていたんですが、とても丁寧でやさしくて。今でも定期的に、洋服とかいろんなものを送ってくれるんですよ。「この本、おもしろいよ」とか「こんなおいしいものがあるよ」とかって。プライベートでも、何かあると連絡させてもらっています。
“Season1”は、海外でも
大きな反響を呼びました。
僕、(取材日の)3日前までオーストラリアで仕事をしていたんですが、現地の人たちから「『TOKYO VICE』観たよ」と言ってもらえて、ビックリしました。“オーストラリアでも観ている人がいるんだ!?”って。
“Season1”のオンエア後、海外からの
オファーもあったそうですね。
WOWOWはそんなスゴい作品を作っているということですよね。まぁ、「初めて映画を作るんだけど、出演してくれないか」みたいなフランス語のメールが来たりもしましたけど(笑)。ハリウッドやイギリスからもいただきましたね。とても魅力的な作品もあってやりたかったんですが、すでに『TOKYO VICE』“Season2”の撮影が始まっていたのであきらめました。でも、今となってはこっち(『TOKYO VICE Season2』)を選んでよかったなと思います。たぶんそのほうが、今後の僕の俳優人生がおもしろくなるだろうなって。
なぜそう思うのですか?
僕、一緒に仕事をしている人たちのことを大切にできるようになりたくて。(自分の出演した)作品を観てくれた人まで含めて、自分のチームだと思っているんですね。『TOKYO VICE』って、WOWOWに加入しなきゃいけなかったり、“観よう”という意思がないと観られないじゃないですか。今後はそういう作品を増やしていって、そのチームをどんどん広げていきたいんです。
あっ、お芝居の話ではないのですね。
お芝居は、どっちにしてもこだわっちゃうから。好きなんだもん、だって。だから、それよりも自分に欠けている部分……人を大切にするとか、そういうことを大事にしていきたいなと思うんです。
『TOKYO VICE』の現場では、
ご自身も大切にされているという実感があった?
そうですね、“Season2”は特に。そういうのって、(作品の)編集のしかたを見てもわかるじゃないですか。やっぱり、撮影中は不安もあるんですよ。そんなときに現場で照明部の人に「光をこう当てたほうが、顔がキレイに見えるね」とか、録音部の人に「ちゃんと歯ぎしりする音まで聞こえたよ」とか言ってもらえたりすると、“あぁ、そんなことまで考えながらやってくれてるんだ”ってうれしくなるし、自信にもつながる。僕にできることは少ないですけど、この作品を一人でも多くの人に観てもらえることが恩返しになるのかなって。
期待に応えたいという気持ちが
強いのでしょうか。
僕と一緒にやりたいと思ってくれることが、めちゃくちゃ原動力になっていますね。お仕事の依頼をいただいたときに、“こんなにおもしろい脚本で、こんなにいい役で僕に声をかけてくれるの!?”と思ったら、やっぱり応えたいですよね。だから、作品の宣伝もめちゃくちゃしますよ。公の場だけじゃなく、プライベートで会った人に「たのむ!WOWOWに登録してドラマを見てくれ!」とか言うこともあるし(笑)。いや、ガンガン宣伝したのに全然観てもらえなかった場合、恥ずかしいじゃないですか。でもその恥ずかしさを背負って、めちゃくちゃ宣伝してやろうと思っています。
作品を一緒に作り上げていく方たちと、
信頼関係を築いていきたい?
もちろん、それもあります。あと、僕よりお芝居がうまいとか華があるとか、人気があるとか数字(視聴率)を持っているとかって人は、いっぱいいるわけじゃないですか。なのに、僕に声をかけてくれたわけですよね。ある意味、リスクを犯して。そんなラブレターをもらったら、破いて捨てるわけにはいかないでしょう。それはお芝居に限らず、バラエティー番組でもうれしいですよ。
“Season2”の撮影を終えて、
充実感はありましたか?
ありました。こういう作品にまた出会えるのかなって。こんなにも大切にしてもらえる役には、人生であまり出会えない気がするから。
というと?
世の中には、流しながらやる仕事も多いでしょ。もちろん、どれもこれも全力でやるのがいいとも思わないですけど、今はできるだけそういう作品はやらないようにしようと思っているんです。全力でやって全力で宣伝して、全力でその結果を受け入れられる作品しかやらないでおこうって。とはいえ、わからないですよ。3年後とかにはどんな仕事でもやっているかもしれないけど(笑)、今はそういうフェーズになっていますね。だから、キチンと吟味して、やるとなったらもう全力でやる。それで仕事がなくなってもいいと。『TOKYO VICE』を経験して、いろいろと考えが変わりましたね。
それはなぜでしょう?
僕、こんなにいろんな人から「よかったよ」というリアクションをもらうことがなかったんですよ。それが大きかったかもしれないですね。たくさんの人に観てもらって、それを認めてもらえたというのがうれしかったのかもしれないです。
では改めて、本作の放送を楽しみにしている方へメッセージをお願いします!
楽しみにしてくれている方は、楽しみにしてくれてありがとうございます。もうね、うれしい!ホントに。問題は、それ以外の人たちですよね(笑)。だから、これを読んでいるあなた!ぜひ、周りの人5人に「WOWOWへ加入しましょう」と声をかけてください(笑)。この作品を観ると、昨今のニュースが若干きな臭いと思えてくるとかこないとか……そんなところも含めて、このスキャンダラスな物語を楽しんでください。
笠松将
かさまつ しょう
1992年11月4日生まれ。
他のメディア取材を受けた後で、多くの人がいることにびっくりされた表情をして現れた笠松さん。すごく親しみやすい雰囲気で、インタビューでは、質問を聞いて答えると言うよりも会話のキャッチボールを意識されているのがとても印象的でした。そして何よりお話が大好きなのはとてもギャップに感じました。ありのままの笠松さんはとても面白く、お話が上手でどんな内容にも必ずクスッと笑いを誘う発言に現場は笑顔で溢れるようなお時間となりました。
最近の出演作に、テレビドラマでは、WOWOW『TOKYO VICE Season2』(‘24)、NHK『連続テレビ小説 らんまん』(‘23)。映画では、金子雅和監督作『リング・ワンダリング』(‘22)、土屋貴史監督作『花と雨』(’20)。配信ドラマでは、Disney+Star『ガン二バル』(‘22)Hulu『君と世界が終わる日に Season3』(’22)。国外へ活動の幅を広げ、原作がイギリスのブッカー賞を受賞した「The Narrow Road to the Deep North」(Amazon Australia)にも出演が決定している。
©Photo: James Lisle/WOWOW
ハリウッド共同制作オリジナルドラマ『TOKYO VICE Season2』
WOWOWにて 4 月 6 日(土)スタート
毎週土曜午後 9:00 放送・配信(全 10 話)〔第 1 話無料放送〕
※WOWOWオンデマンドにて、Season1全 8 話配信中
アンセル・エルゴート 渡辺謙 レイチェル・ケラー 菊地凛子 笠松将 窪塚洋介 真矢ミキ ほか
監督:アラン・プール ジョセフ・クボタ・ラディカ 福永壮志 エヴァ・ソーハウグ
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:松田陵(Y’s C)
スタイリスト:柴原啓介
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿