中川大志
舞台『儚き光のラプソディ』
みなさんと充実した濃厚な時間を一緒に作りたい
かつて、客席から観た地球ゴージャスの舞台に強く感銘を受けたという中川大志さん。この度、Daiwa House Special 地球ゴージャス 三十周年記念公演『儚き光のラプソディ』でその舞台に立つことになった彼に、岸谷五朗さん、寺脇康文さんをはじめとする共演者の印象や、稽古場における日々の奮闘ぶりなどをお話しいただきました。
<あらすじ>
それぞれの「逃げたい」という強い感情があふれそうになった瞬間に、目の前に現れたという“扉”。その扉を開いて集まったのは、生きていた場所も時代も様々な7人の男女。部屋のなかで繰り広げられる会話により、互いの関係が変化していく。なぜこの人と、なぜこの部屋で、なぜこのときに出逢ったのか――。
地球ゴージャス作品との出会いは?
お芝居の仕事を始めてからこれまでは、映像作品への出演が多かったのですが、演劇にものすごくあこがれがあって、舞台をやりたいと言い続けていたんです。もちろん、舞台を観るのも好きで。そんななかで出会ったのが、地球ゴージャスさんの『The Love Bugs』という作品でした。そのときの衝撃がものスゴくて!客席で観ながら気持ちが高ぶって、エンターテインメントの仕事って最高だなと思いました。
『The Love Bugs』のどんなところに
衝撃を受けたのでしょうか?
まずは、ショーとしてのパフォーマンスのエネルギーやパワフルさに圧倒されました。本作に出演するにあたり、風間(俊介)さんと取材を受ける機会もあったんですが、カンパニーのみなさんの……うーん、これは安っぽい言葉に聞こえたらイヤなんですけど、結束力をすごく感じるんですよね。“この人たちは、なんて楽しそうなんだ!”“この人たちは、なんて仲がよさそうなんだ!”みたいな。それは、岸谷(五朗)さんと寺脇(康文)さんの作り出す空気感でもあるんでしょうけど。
それは大きな要素かもしれませんね。
あと、作品のテーマとしてはものすごくシンプルなんだけど、そこにいろいろと肉づけされることで、いろいろな角度から刺さるといいますか。シンプルなのに、ものすごく明確なメッセージがある。その両方が兼ね備わっているところにとても惹かれます。
中川大志さんの舞台出演は、2022年の
『歌妖曲~中川大志之丞変化~』以来、
2作目となります。
『歌妖曲~』では、初めて自分が座長として長期にわたる公演を、それも明治座という大舞台でやらせていただいて、とても大きな経験になりました。公演中は、もうとにかく痺れる日々で。改めて舞台は生モノであることを実感しましたし、今後も絶対に舞台の仕事をやり続けたいと思ったんです。そうしたら、まさかの地球ゴージャスさんからお声がけいただいて!しかも、岸谷(五朗)さんが『歌妖曲~』を見てくださったことがきっかけになったとお聞きして、ホントにどこで誰が見てくださっているかわからないなと思いました。
岸谷さんからは、『歌妖曲~』に対して
どんな感想をいただきましたか?
岸谷さんとお食事に行かせていただいたんですが、そのときにうれしいお言葉をたくさんいただきました。僕の作品への向き合い方だったり、役へのアプローチのしかただったり、“そんなところまで見てくださっているんだ!?”って。やっぱり、演出家であり、役者であるからこそのお言葉だったので、身が引き締まる思いでした。
本作での中川さんの役どころは、
あて書きだとお聞きしました。
自分ではあまりわからないのですが……きっと岸谷さんからのメッセージが入っていると思うので、“こういうことを僕に言わせたいと思って書いてくれたんだな”ということを想像しながら(脚本を)読んでいます。でも、“だからこうしよう”と考えるのではなく、いつも作品に向き合うときと変わらず、純粋にその役をどういうふうに作っていくかを考えていて。今、稽古を重ねながら、ちょっとずつ見えてきているところですね。
実際に地球ゴージャスさんの
稽古に参加してみて、いかがですか?
ウワサに聞いていた通り、約1時間かけてみんなでウォーミングアップをするところから始まるんですね。ストレッチから声出しまで、毎日同じメニューを全員でやるのですが、アップしながら“あっ、これがウワサの地球ゴージャスの(稽古か)!”って実感するというか。たぶん(地球ゴージャスの稽古に)初参加のメンバーは、みんなそうだと思います。
以前、岸谷さんにお話を伺った際に、
アップの時間にみなさんの体調などを
見ているとおっしゃっていました。
うん、きっとそういうことなんでしょうね。体力や基礎づくりを丁寧にしていくということ以外に、朝、みんなで一斉にあいさつをして、用意ドンで同じことをやることによって、一緒にお芝居をする、一緒にダンスをする、一緒に歌を歌っていくという……同じ方向を向いてモノを作っていく仲間としての意識というか、つながりみたいなものがすごく生まれるんですよね。なので、身体的に鍛えられているところはもちろんあるのですが、毎日毎日そういう時間を丁寧にルーティンとして持つことが、より、その後の稽古の充実感につながっているのかなと思います。
一般的に、舞台は稽古期間が長く設けられるのも特徴ですよね。
そうですね。映像作品の場合、準備や撮影期間が限られていることが多いので、瞬発力も大事なんですね。舞台は、稽古期間が1カ月とか1カ月半……公演期間も入れると2カ月以上、自分の役と共に時間を過ごすからこその境地がある。『歌妖曲~』で僕が演じた役は、肉体的なアプローチも大変だったし、心の部分でもツラい役だったんですが、ホントにもう一心同体というか、演じているという感覚ではなくなるというか。本当の意味で自由になれたというか。でも、それにはやっぱり物理的に時間が必要なんですよね。舞台にはそれがあるから、到達できる領域があるということを知れたのが、自分にとっては貴重な経験でした。だから今回も、ポエムという役をどういうふうに作っていけるのか楽しみです。
昨年は「アクターズ・ショート・フィルム3」の
『いつまで』で監督を務め、制作側の立場を
経験しました。今回、演出も手がける岸谷さんと
ご一緒するうえで、楽しみなことは?
去年、「アクターズ~」で映画を作ったときにも感じたのですが、僕は基本的にマルチタスクが苦手なので。プレイヤーとして出演しながらカンパニー全体を見て、さらに作品の生みの親としてみんなを導いて~ということを、岸谷さんがどういうふうにやるのか、その姿を見られるのが楽しみでした。
寺脇さんとは、ひさしぶりの共演ですよね。
そうですね。寺脇さんと初めてご一緒したのは、僕が小学校6年生のときだったんです。なので、親戚のおじさんみたいな感覚で。この間、ポスター撮りのときに久々にお会いしたら、「大きくなったな」と言われました。その後も2回共演させていただいたんですが、今回、まさかの地球ゴージャスさんの舞台に一緒に立たせていただくということで、いろいろな面で大きくなった姿を見せられたらいいなと思っています。寺脇さんは、子どもだった頃に現場でよく遊んでもらいましたし、大好きな方なので。
共演者の風間俊介さんや鈴木福さんは、
どんな印象ですか?
風間さんとは初めてご一緒するのですが、長い間このお仕事に関わっていらっしゃるので、時代ごとにいろんな変化をしてきたんだろうなって。その年輪や強さを感じます。風間さんにはスマートで知的でやさしい印象があるので、崩れた風間さんを見てみたいですね(笑)。隙のある姿というか。
それは、たしかに見てみたいですね(笑)。
福くんも一緒にお仕事をするのは初めてなんですが、12、13年前、同じクールに同じ局のドラマに出演していたことがあって。隣のスタジオで福くんが撮影しているときに、ちらっと楽屋でお会いしたんです。この間、(『儚き光のラプソディ』の)ポスター撮りのときに「あのときに会いましたよね」という話で盛り上がりました。僕は今まで、どの現場でも年齢が一番下のことが多かったんですが、最近は下の世代がいる現場も増えてきて。今回も福くんが自分より年下なので、うれしくもあり楽しみでもあります。
佐奈宏紀さんとは、
約10年ぶりの共演だと伺いました。
あー、佐奈っちはそうですね。前回共演したのはドラマだったんですが、10年の間、お互いにやってきたことも違うし。佐奈くんは舞台をたくさん経験されているので、稽古中の姿を見ていても、純粋にスゴいなと思うことがいっぱいあります。現場のムードメーカーでもあるし、ホントに盗めるところは盗みたいなと思っています。
稽古の休憩時間などは、
どんなふうに過ごしていますか?
みんなでダンスの振りや歌のハモりパートを確認し合ったりとか。セリフを合わせたり、“このシーンについてどう思うか”という話をしたり。稽古が始まってしまうと、ほとんど作品の話しかしないですね。朝、最初に会ったときには「調子はどう?」みたいな他愛のない話もしますけど。
共演者から刺激を受けることも?
歌だったりダンスだったり、僕が普段からやっていないことも多いので、慣れていないぶん、いつも以上にカロリーを使うんですけど。“こんなふうに踊れたらな”とか、“こんなふうに歌いたいな”とリスペクトできる方ばかりなので、すごく刺激になっていますし。そんなレベルの高いみなさんと一緒に作品を作れることが、ホントに楽しいです。
地球ゴージャスさんの稽古は心身ともに
鍛えられる印象がありますが、
今回、ご自身のなかでの課題は?
やっぱり、芝居以外の要素が僕にとってのチャレンジですね。ダンス、歌……もしかしたらアクションもあるかもしれないし。稽古期間で、周りのみなさん以上に努力しないと。まずは、ハードな上演時間と公演期間に耐え得る身体をしっかりと作っていかないといけないなと思っています。あとは、この脚本においての課題といいますか、目標もたくさんあります。
例えば?
この作品は、各キャラクターに対してホントにいろんな解釈のできるお話なんですね。一つのストーリーなんだけど、登場人物それぞれのドラマを見ているような。深めていけばいくほど、可能性が無限に思えてくるんです。いい意味で、自分たちもこの作品がどこにゴールするのかを想像しきれていない部分がまだまだあるので、そこも楽しみにしながら稽古に臨んでいます。
中川大志さんの思う、本作のテーマとは?
漠然とした言い方になってしまいますが、今回は“時”がテーマになっていて。時代が流れて変わってきたものと変われていないこと、変わっていかなきゃいけないこと、みたいなところが描かれると思います。なので、いろんな世代の方に観ていただきたいですが、特に10代、20代の若い世代の方に観ていただきたい作品です。
本作の開幕を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。
心待ちにしてくださっているみなさんがたくさんいらっしゃると思いますが、僕たちもお客様の前に立てることを心待ちにしています。初日に幕が上がってお客様の前に立ったときに、“地球ゴージャスの舞台に自分が出ているんだ”ということ、地球ゴージャスの歴史の一部に参加できているんだということを、初めて本当の意味で実感するのかなと。今は、それも含めてドキドキしているところではありますが、稽古場では必死に作品のことを、役のことを考えてやっています。地球ゴージャス30周年という節目の公演でもあるので、みなさんとお祭りのように楽しくて、充実した濃厚な時間を一緒に作れたらいいなと思っています。
明治座公演では、ご自身の名前の入った幟を
見ると、より実感が湧くかもしれませんね。
そうですね。幟を見たら、もう逃げらんねぇなって覚悟が決まりそう(笑)。そんな高揚感も、また実感の一つですよね。
中川大志
なかがわ たいし
1998年6月14日生まれ。
とてもフラットに登場されてきた中川さんでしたが、カメラを向けると、広いスタジオの中でもどんなポーズにも圧倒的な存在感があり、さすがの一言でした。撮影後もモニターを見てチェックされているお姿は前回と変わらずとても印象的でした。遅い時間で、たくさんのメディア取材の中でも疲れた様子一切見せずに最後までかっこいい姿を貫き通してくださった中川さんに頭の上がらないスタッフでした。
最近の出演作に、テレビドラマでは、TBS『Eye Love You』(‘24)、フジテレビ『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』(‘23)、NHK 連続テレビ小説『らんまん』(‘23)、映画では、5月公開予定キノフィルムズ『碁盤斬り』(‘24)、映画『スクロール』(‘23)、4月期のドラマでは、テレビ東京『95』(‘24)に出演中。
【作品情報】
Daiwa House Special 地球ゴージャス三十周年記念公演
『儚き光のラプソディ』
【作・演出】 岸谷五朗
【出演】 中川大志 風間俊介 鈴木福 三浦涼介 佐奈宏紀 保坂知寿/岸谷五朗 寺脇康文 他
【東京公演】 2024年4月28日(日)~5月26日(日) 明治座
【大阪公演】 2024年5月31日(金)~6月9日(日) SkyシアターMBS
※Item Credit
衣装:ブルゾン¥64,900、シャツ¥49,500、パンツ¥47,300/UJOH(M)
その他、スタイリスト私物
【問い合わせ先】
- M
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前3-18-25
03-6721-0406
※Team Credit
カメラマン:八重樫ケイン
ヘアメイク:堤紗也香
スタイリスト:徳永貴士
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿