一ノ瀬 颯
ドラマ『119エマージェンシーコール』
指令管制員の重要さが多くの人に伝わったらうれしい
ドラマ『119エマージェンシーコール』に、指令管制員・与呉 心之介役で出演する一ノ瀬 颯さん。役作りの一環として、実際に消防局の通信指令センターを訪れたそうで、演じる際に心がけていることなどをアツく語ってくれました。一ノ瀬さんの素顔が垣間見える共演者とのエピソードも必読です。
©フジテレビ
<あらすじ>
119番の緊急通報に応答し、適切に救急車、消防車の出動を指令する指令管制員たち。様々なスキルを持った消防・救急のスペシャリスト集団である彼らが、通信技能と医療知識を駆使し、危機に瀕した“命”を救っている。救命が始まる最初の現場である「119=エマージェンシーコール」を支える指令管制員たちのリアルを描いた物語。
一ノ瀬さん演じる与呉 心之介は、消防局の指令管制員という役どころ。役作りはどのように?
指令管制員について、ネットや動画サイトで自分なりに調べたり。プロデューサーさんや監督とお話ししていく中で、(指令管制員の)実情を聞いたりもしました。その後、横浜市消防局の指令管制員の方々が働かれているところを見学させていただきました。
実際の現場を見られたのは、大きいですね。
そうですね。電話の内容も、ホントに緊急度が高いものもあれば、“これ、救急車が必要?”というものもあって。僕自身は、119番というのはホントに緊急じゃないとかけないものだと思っていましたが、そうじゃない人もいるのだと感じたんです。ドラマの中ではそういうテーマも描かれるので、観ている人も、正しい知識を身につけられるんじゃないかなと思います。
衣装である指令管制員の制服を着ると、お芝居のスイッチが入りやすかったりしますか?
はい、わかりやすくバチッと入ります。やっぱり、視覚的なところは僕にとって大きいので、衣装を着たりすると気持ちの入り方が明らかに違います。今回の衣装は、実際に横浜市消防局の方々が着用されているものと同じなんです。現場のセットも、美術部の方々がすごくて…配置やシステムも、実際に用いられているものと同じように作られているんです。
再現度の高い現場なのですね。
電話を受けるシーンでも、実際にヘッドホンから音声が聞こえるようになっているんです。通報者から伝えられる内容をパネルにタッチしながら、口では次のことをしゃべらなければいけないので、動作に時差があるんです。それを慣れた動作に見せるには、適当にしゃべってパネルにタッチして~とやったほうがラクなのかもしれないですが、僕はできるだけ“自分がやっている”感覚を大切に、自分ごととしてお芝居をしたいので。そういう現場でやらせてもらえるのは、とてもありがたいです。
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演じる際に心がけていることはありますか?
こういう緊迫感のある現場を描く作品では、マジメなトーンでバババババッとセリフを言うイメージがあったんですけど、実際に指令管制員の現場を見たときには、パニックになって通報してくる人たちを落ち着かせて、ほしい情報をきちんと効果的に引き出すために、むしろゆっくりしゃべっていたんです。もちろん、相手によっては早口でしゃべるパターンもあると思うのですが、基本的には聞きとりやすい声で、大事なところを強調してしゃべるようにしています。与呉は、特にそういう要素の強い人物だと思うので。
与呉は、物腰が柔らかく生真面目というキャラクターですよね。
基本的には、相手に寄り添える人なんですけど、相手のことを思うからこそ、非協力的な人にはちょっと強く出ちゃったりする一面もあります。
共感できる部分はありますか?
目の前の人を救いたいという正義感みたいなところは、とても共感できます。困っている人を放っておけないというか、自分が関わったからには、その人のために尽くしたいという。彼は、特にそういう気持ちが強いと思うんです。僕自身も、自分と関わっている人にはお節介を焼いちゃったりするし、できればいい状態であってほしいと願っているので、そういうところは近いのかなと思います。
非協力的な人には強く当たってしまう、という面にも共感できますか?
自分にもそういう面はあるのかなと。指令管制員は、電話をしてきた人の目の前を通りかかった方に、お手伝いをお願いするように指示することもあるんです。たとえば、倒れている人の心臓マッサージや止血作業に協力してもらったりとか。それって、生死に関わることじゃないですか。だから、「自分の体に血がつくのがイヤだ」とか言われたら、僕も「いや、そんなことを言っている場合じゃないだろう!」って思うような気がします。なんだろう……みんなやさしくあってほしい、みたいな気持ちが強いのかな。
たしかに、そういう状況だったらイライラしてしまうかもしれませんね。
でも、そう思ってしまう人の気持ちもわかるんです。たまたま通りがかっただけだし、救急車が到着するまでの間に処置をすることが、その後の生死や症状に大きく作用するなんて、わからないだろうし。僕自身も、車の免許を取る際にAEDの使い方や心臓マッサージの方法を習いはしたけど、使うことはないだろうって、どこか人ごとだと思っている部分があったので。だからこそこのドラマを通して、あなたの行動一つで誰かの人生が大きく変わることもある、ということを伝えられたらいいなと思います。
そこまで深刻ではないにしても、ご自身のプチ正義感エピソードがあれば教えてください。
うーん、自転車を倒しちゃった人を助けたりとかっていうのは、よくあります。基本的に、見て見ぬふりをできないんです。見ぬふりをしている自分もイヤだし。昔、予備校時代に、受付の方が棚の高いところにあるものを取れずに困っていたことがあって、それを取るのを手伝ったとか、そんなレベルですが(笑)、自分ができることがあるなら手助けをしたいなっていう……まぁ、自己満足なのかもしれないけど…おせっかいだと思われちゃうパターンもありますしね。
そこは、微妙なラインがありますよね。
そうなんです。学生時代、僕はバスケ部だったんですけど、部員の子が理不尽に怒られているのを見て、本人より僕が怒っちゃったことがあって。でも、その子は穏便に終わらせたかった、みたいな(苦笑)。正しいが正義ではないこともあるので、難しいです……。
主人公・粕原 雪を演じる清野菜名さんの印象は?
とてもやさしい方です。前室にL字型のソファがあって。待機しているとき、キャストの方の座る場所がなんとなく決まっているんです。中村ゆりさん、前原(滉)さん、瀬戸(康史)さん、僕、見上(愛)さん、清野さん、みたいな感じで。清野さんは主演だから、「どうぞ、真ん中に」と言うと、「あっ、あっ、あっ、いい、いい!大丈夫」って。すごく気遣いの方なんだけど、ノリがよくて。自分からわーっとはいかないけど、みんなが盛り上がっていると一緒に盛り上がる、みたいな。今は空き時間になると、ずーっとみんなでカードゲームやボードゲームをやっています。
仲がいいですね!
中村ゆりさんと見上さんが、それぞれ(ゲームを)1個持ってきてくれて、清野さんが6、7個ぐらい持ってきてくれて。この間は、(佐藤)浩市さんの「オセロやろうよ」というひと言から、みんなでトーナメント表を書いて戦いました。あっ、浩市さんといえば! 前室でイスに座っていることもあるんですけど、「基本的に俺は座らないんだよね」と言って立っていらしたりするんです。だから、“僕も立たなきゃ!”ってなるんですけど、「いいから、いいから」って。ホントにみなさん、やさしいんです。
現場のいい雰囲気が伝わってきます。
そうやって盛り上がっていても、「本番!」になるとパッと切り替えられるのがステキだなと思います。みなさん完ペキにセリフが入っているので、前室では台本を全然見ないんです。たまに撮影の順番が前後したりすることがあるので、そういうときは、割り本を見ながら「今、どこだ?」って確認したりはしますけど。
では、共演者のみなさんともすでに打ち解けて。
もう、撮影初日ですっごく距離が近くなりました。前原さんとは、ドラマ『若草物語―恋する姉妹と恋せぬ私―』でも少しですがご一緒したときに、ちょうど僕の空き時間と前原さんの終わりの時間が一緒だった日があって。“2度目まして”だったにもかかわらず、「ちょっとカフェに行きませんか」とお誘いして、一緒にカフェに行ったんです。そのおかげで今回、いいスタートを切れました。瀬戸さんにも、クランクインした日からめちゃめちゃイジられて(笑)。お昼ごはんで食堂へ行くときも、「イッチー(一ノ瀬)、マエコウ(前田)、行くよー」って誘ってくれたり。いつもかまってくれるので、楽しく過ごしています。
改めて、本作の放送を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。
指令管制員、今まであまり焦点の当たってこなかった職業かもしれません。でも、陰でみんなを支えてくれる大事な存在で。119番に通報してくる人はかなり不安だと思うので、最初の受け答えによって状況が全然変わると思うんです。通報した人の気持ちもそうですし、その後の救急車が到着するまでの時間でできることとか。生死にかかわることも多々ある重要な仕事であることが、このドラマを通して多くの人に伝わったらうれしいですし、119番に電話をかけることへのリテラシーがより深まったらいいなと思います。
一ノ瀬颯
いちのせ はやて
1997年4月8日生まれ。
インタビューでは、作品に対する熱量が溢れすぎている姿が何度もあった一ノ瀬さん。お話ししてくださっている最中も、あれも〜、これも〜とたくさん振り返って、実際に見学を行ったことで見つけた新しい気づきや発見をFASTスタッフにも余すことなく伝えてくださいました。また半年前のインタビューでお話をしていた目標のお話しも着実に進んでいて、人を惹きつける力が素晴らしい方だと改めて感じました。後編では、7年目の目標や2024年の作品について少し振り返ってお話をお聞きしております!お楽しみに!
最近の出演作に、テレビドラマでは、日本テレビ『若草物語―恋する姉妹と恋せぬ私―』(‘24)、テレビ朝日『Believe―君にかける橋―』(‘24)、フジテレビ『いちばんすきな花』(‘23)、テレビ東京『SHUT UP』(‘23)、映画では、『十一人の賊軍』(‘24)、アクターズ・ショート・フィルム『ハルモニア』(‘24)主演、『仕掛人・藤枝梅安 第二作』(‘23)、などがある。TBS「王様のブランチ」にレギュラー出演中。
©フジテレビ
タイトル:119エマージェンシーコール
放送日時:2025年1月13日スタート 毎週月曜よる9時
キャスト:主演 清野菜名
瀬戸康史 見上愛 一ノ瀬颯 前原滉 酒井大成 三浦獠太
蓮佛美沙子 堀内敬子 遠山俊也 中村ゆり 佐藤浩市 他
脚本:橋本夏 小柳啓伍
プロデュース:渡辺恒也
主題歌:羊文学『声』
制作協力:C.A.L
制作著作:フジテレビ
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿