岡本圭人
舞台『オイディプス王』
これからも語り継がれている意味を探し続けていきたい

古代ギリシャ三大悲劇詩人の一人であるソポクレスが、紀元前427年ごろに執筆した戯曲で、約2500年もの間、世界で観客を惹きつけてきた鮮烈な作品。岡本圭人もお気に入りの劇場という「パルテノン多摩」で2023年7月に上演された本作が、演出家・石丸さち子氏続投で、新たに2月再演!「クレオン」役として抜擢された岡本圭人さんに、ギリシャ悲劇への思いや日本で上演する意味、そして主演の三浦涼介さんのことなど、いろいろ伺いました。
ギリシャ悲劇のイメージからお聞かせください。
悲劇の中でも紀元前に書かれたもっとも古く、しかもギリシャ悲劇の中でも最高峰と言われている作品に憧れもありました。だから、今回挑戦させていただくというのはとても光栄ですし、お話をいただいたときはとても嬉しかったです。また、古典は昔からすごく好きで、ずっと語り継がれている意味というのを僕なりに感じとるようにしています。人の教えになっていたり、人のためになっていたり……。僕自身も舞台を観に行ったときに、自分の人生が何か少しでも変わるような作品が好きなのですが、よく考えるとそういう気づきが起きるのはやっぱり古典が多いような気がします。まだ仕事を始める前、子どものころに“シェークスピア”を観て、“舞台に出たいな”と思っていたのを覚えていますし。今回自分がクレオンという役を演じて、少しでも誰かの教えになるのかもしれない、その人の人生を少しでも豊かにできるかもしれない、というのを思い描きながら皆様に届けられることを楽しみにしています。
クレオンという役どころと聞いたときはどんな気持ちでしたか。
アメリカの演劇学校に通っていたとき、オイディプス王がどれだけ大変な役かというのも勉強して分かっているので、三浦さんが演じるオイディプス王を少しでも支え、考えに影響を与えて、前回のオイディプス王とは違った旅路をクレオンとして導くことができたらなと思っています。

コンプレックスを持つオイディプス王を支える役どころですが、ご自身はそういう方へどんな寄り添い方をしますか?
自分自身コンプレックスはあるけれども受け入れて、“それも自分だからなぁ”と生きているので、そういう方へは特に何も言わないかもしれないです。“人と違う”とか“なんで普通にできないんだ”と言われることが子どものころはよくありましたが、今考えるとそれが自分だし、個性だと思うんです。他人からコンプレックスを指摘されると嫌じゃないですか。その人なりに向き合っていくだろうし、コンプレックスという言葉を自分の辞書からなくすほうがいいのかなと思います。そのほうがラクかもしれないですよね。
オイディプス王を演じる三浦さんは、どういう役者さんだと思いますか?
ものすごく華がありますし、声もすごくよくて。強さの中に儚さを秘めていて、見れば見るほど果てしない魅力に吸い込まれるような力をもっている役者さんだと思います。前回ご一緒した際には会話をするシーンがなかったので、今回対峙してセリフを言えることがすごく楽しみです。

2500年以上前の作品を今の日本で上演すると、どんなことが映し出されると思いますか?
お客様と一緒にその世界にタイムスリップするような力が劇場や舞台にはあると思うし、悲劇を繰り返さないために、悲劇というジャンルがあるんだろうなと思います。『オイディプス王』ほどの悲劇は現代ではなかなかないにしても、観終わった後、“悲劇にならないように、自分も努力して生きていこう”と勉強になることもあると思います。演劇に興味のある方もこの作品を楽しめたら、全ての演劇作品を楽しく観られるんじゃないかというくらい、大悲劇です。それくらい何かを感じられると思いますし、僕が出演することによって、初めてギリシャ劇にふれる方も増えてくれたらありがたいです。クラシックの原点に戻りながら当時の人たちが着ている衣裳や、当時の人たちが考えている思いの強さというのを現代的にアレンジせず、あえてその戯曲が持つ力やその人たちが考えていたであろうことをしっかりとした演出を受け、表現して届けていけたらなと感じます。衣裳もセットもかっこいいです。
クレオンを演じるにあたり、どんな準備をしていますか?
稽古に入る前は、自分が演じる役はこういう役でということをしっかりとは考えすぎないようにしています。ただ、クレオンは葛藤がすごく多い人物だと思います。セリフの裏に書かれている葛藤や抱えている思いなどが、他の役よりも多いのかなと感じています。演出家の石丸(さち子)さん自身がクレオンをどういう人物だと思っているのかお聞きするのがすごく楽しみです。

最後に舞台への意気込みを効かせてください。
“僕って悲劇しか出たことなくない?”とたまに思うんです。“舞台で涙が出なかったことがないな”と最近思い返しているんですが、そんな中でも悲劇の最高峰と言われるギリシャ悲劇に挑戦できるというのは、本当に楽しみです。紀元前に書かれた作品を日本で上演すること自体も古典好きからすると、挑戦でもありますし、すごく楽しみでもあります。世界中で約2500年に亘って語り継がれている作品の意味を僕なりに探していかないといけないし、この作品を皆様に届けて、もっと語り継いでいけたらなと思います。一生懸命、稽古を頑張りますので、観に来てください。
2024年の振り返りと、2025年の目標を教えてください。
2024年は何本舞台やらせていただいたんだろう。1月に「ラヴ・レターズ〜2024 New Year Special〜」、4月~6月の夏前に「La Mère 母」と「Le Fils 息子」を同時上演。7.8.9月はずっとワークショップに通っていました。そして10月には「リーディングシアター GOTT 神」をやらせていただいて、11月は「「あこがれいづる」源氏物語より」、12月は「NOT TALKING」に出演させていただいたので、計6本か……。ありがたいです。ジャンルは全部違う舞台でしたので、ものすごく勉強になりましたし、「源氏物語」では舞台で初めて日本人役をやらせていただいて、それはそれですごく勉強になりました。もっといろんなことが挑戦できるかもという希望も見えてきました。「源氏物語」で「若村麻由美の劇世界」に出演させていただいたんですが、30分くらいの「夕顔」という源氏物語の作品をテーマにした、ほとんどひとり芝居だったんです。ひとり芝居もすごく楽しいんだと新しい世界が見えた感じがしました。これまで演劇や舞台をやってきて、自分は人のよさを引き出すのが好きなんだなと思っていたんです。自分がこうしたいからこういうふうにしようというよりも、相手のよさを引き出そうとすれば、向こうも返してくれる相乗効果をずっと考えているのが楽しくて。ひとりで芝居をすることへの不安からか、めちゃくちゃセリフを忘れる夢を見ていたけれど、無事に終えることができたので、またいずれ挑戦できたらと思います。
僕にとってもみなさんにとっても、2025年がいい年になればいいですね。

岡本圭人
おかもと けいと
1993年4月1日生まれ。
お待たせしました〜と少し足早に登場された岡本さん。インタビューではお芝居に対する想いが溢れ出るほど熱く真剣に語ってくれました。また時折周りをクスリと笑わせる、天然であざとく引き込むような可愛らしさも魅せてくれました。撮影時にはインタビューとはまた違ったスイッチが入ってカッコよく、そして、岡本さんの魅力が溢れる表情をたくさんカメラに向けてくれました。これからも舞台に対する真剣な思いと周りの懐にスッと入っていくお人柄で舞台でのたくさんのご活躍を応援しております。
初登場ありがとうございました。
最近の出演作に、テレビドラマでは、NHK総合『大奥 Season2「医療編」』(‘23)、フジテレビ『リズム』(‘22)、舞台では、『NOT TALKING』(‘24)、『若村麻由美の劇世界「あこがれいづる」源氏物語より』(‘24)、『リーディングシアター GOTT 神』(‛24)がある。第五十九回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。

公演名 『オイディプス王』
作 ソポクレス
翻訳 河合祥一郎
演出 石丸さち子
出演 三浦涼介 大空ゆうひ 岡本圭人
浅野雅博 外山誠二 大石継太 今井朋彦
福間むつみ 小野妃香里 池下重大 若松力 相馬一貴 岡野一平 津賀保乃
林田航平 小田龍哉
笠井瑞丈 宮河愛一郎 碓井菜央 鷹野梨恵子 嶋崎綾乃 モテギミユ 沼舘美央
久米俊輔 渡邊美咲子 渡邊明咲子
企画・製作 パルテノン多摩共同事業体
【東京公演】
公演日程 2025年2月21日(金)〜24日(月・休)
21日(金)15:00* 22日(土)14:00 18:30* 23日(日)14:00 18:30*
24日(月・休)14:00 *=アフタートークあり。
会場 パルテノン多摩 大ホール
チケット料金 ¥9,800(全席指定・税込) 未就学児ご入場不可
ご予約・お問い合わせ パルテノン多摩 042-376-8181(10:00~19:00 休館日を除く)
https://www.parthenon.or.jp/
【大阪公演】
SkyシアターMBSオープニングシリーズ
公演日程 2025年3月1日(土) 12:30開演/17:00開演
会場 SkyシアターMBS
チケット料金 ¥11,500(全席指定・税込) U-25チケット¥5,000(全席指定・税込) 未就学児ご入場不可
お問い合わせ SkyシアターMBS 06-6676-8466(10:00~18:00 休館日を除く)
※Team Credit
カメラマン:濱田茉里
ヘアメイク:山口梓
スタイリスト:ゴウダアツコ
インタビュー:相原郁美
記事:相原郁美/有松駿