井上祐貴
舞台『奇跡の人』
想像の何倍も緻密に作り上げられている
アニー・サリヴァンとヘレン・ケラー、そしてその二人を取り巻くケラー一家を描いた歴史的名作『奇跡の人』が舞台化されることとなった。その中でヘレン・ケラーの兄、ジェイムズ・ケラーを演じることとなった井上さん。今回人生2回目の舞台でありながら、極めて人間的で難しい役を演じることとなった彼は、一体どのように作品、そして役と向き合っていくのか。作品、そして舞台についてのインタビューを通して、井上さんの作品への想いを紐解いていく。
<あらすじ>
アラバマのケラー家。アーサー・ケラー大尉(池田成志)とその妻ケイト(村川絵梨)がベビー・ベッドを心配そうに覗き込んでいる。1歳半の娘ヘレン・ケラー(平 祐奈)が熱を出したのだ。やっと熱が下がり安心したのも束の間、ヘレンは音にも光にも全く反応しなくなっていた……。
それから5年。それ以降、ヘレンは見えない、聞こえない、話せない世界を生きている。そして、それゆえ甘やかされて育てられたヘレンは、わがまま放題。まるで暴君のように振る舞うヘレンを、家族はどうすることもできない。そんな折、ボストン・パーキンス盲学校の生徒アニー・サリヴァン(高畑充希)の元に、ヘレンの家庭教師の話が舞い込んでくる。誰もがお手上げの仕事ではあったが、孤独で貧しい環境を20才まで生きてきたアニーは、自立という人生の目標を達成するため、初めて得た仕事に果敢に挑戦しようとする。
はるばる汽車を乗り継いでケラー家にたどり着いたアニー。アーサー、そしてヘレンの義兄ジェイムズ(井上祐貴)は、余りにも若い家庭教師に疑念を抱くが、ケイトだけはアニーに望みを掛ける。そして、アニーとヘレンの初対面の時。ヘレンはアニーに近づき、その全身を手で探る。それはふたりの闘いのはじまりだった……
今回で2回目の舞台になりますが、どういったお気持ちですか?
1回目がミュージカルだったので、お芝居だけの舞台、ストレートプレイは初めての経験なんですよね。映像の経験もまだまだ浅いのですが、その中でも映像と舞台は全然違うなと感じています。今まさに苦戦しているところです(笑)。でも同時に映像には無い面白さも感じています。
歴史ある作品に出演されますが、出演が決まった時はどんな気持ちでしたか?
実は僕、前回の『奇跡の人』の公演をたまたま観に行っていたんです。もちろん出演も決まっていない時で、勉強の一環として観劇しました。その当時はヘレン・ケラーのことはほとんど知らなかったのですが、舞台を観て、ちょっとすぐには立てなくなるくらい衝撃を受けたことを覚えています。役者さんたちのパワーと繊細さを肌で感じて圧倒されました。同時に自分もいつかこのくらいできるようになりたいと強く思いました。そこから今回のお話をいただいて、当然嬉しさもありましたが、「僕に務まるのだろうか」という気持ちもありました。ワクワクもありつつ、不安もありますね。
舞台に向けてどういった準備をされていますか?
とにかくヘレン・ケラーに関すること、どういう風に生きたか、どういう風に家族と触れ合ったかなど、映像を中心に沢山見ました。
演じるジェイムズ・ケラーはどのように作り上げていきましたか?
事前に色々と調べました。あとは、稽古の中で演出の森さんに体当たりでどんどん質問して、イメージを作り上げていきました。ジェイムズは物語を動かす役割があると思っていて、特に父親との確執もあって、ついつい悪気なく嫌味を言ってしまったりします。悪い人ではないけど悪いことをしてしまう、そういう繊細な演技が難しいと感じました。
稽古の雰囲気はいかがですか?
すごくいい雰囲気です。もちろん内容が内容なので緊張感はありますが、休憩時間は他愛の話をしたりとか、オンオフの切り替えがしっかりあって。苦しい芝居の後に、みんなであ~疲れた! みたいな(笑)。あと稽古を通して感じるのが、内容はもちろん一緒なのですが、“同じ公演は絶対ない”ということです。全く同じシーンも無いと思います。間だったり、呼吸だったり、そういうので全然変わってくるんですよね。こんなに一つのシーンを何回も何回もやることって今までなかったので、そこが楽しいです。
演出家の森さんは非常に熱い指導をされる方だと思いますが、どういったお話をされますか?
森さんは本当に熱い方です!本当にこの作品を良くしたいという想いが凄く伝わってきます。それに原作へのリスペクトも凄くて、常に資料を手に持たれていて、ちょっとお芝居の面で役者と森さんの考えが違う部分があったら、すぐ調べたりされていて。英語ではこうてでも日本語に訳すとこうなるというディスカッションが結構あって、僕の想像の何倍も緻密に作品を作られていました。
井上さんの考える舞台の見どころはどこでしょうか?
ジェイムズ目線でお話させていただくと、お父さんに一番認められたくて生きてきて、結果認められずに今に至るという状況で。その中でサリヴァン先生という存在が現れて、自分が変えられなかったケラー家をちょっとずつ変えていく。そこにもまた苛立って。最終的にイライラが積もって、お父さんに今まで言えなかったものを言うシーンがあるんです。そこを一番見て欲しい。ケラー家を自分で変えたかったというジェイムズの想いが、そのシーンで伝えられたらいいなと思います。
井上祐貴
いのうえ ゆうき
とてもまじめで礼儀正しい印象の井上さん。実際にお会いするとスタイルの良さ、顔の小ささ、お顔の綺麗さに圧倒されました。気さくでスタッフともドラマの話や出身地広島のお話や、少し天然?な井上さんのかわいい一面も垣間見え、とても楽しい取材となりました!インタビュー中も雑談中も目を見て話してくださるので、その目力に魅了され、吸い込まれてしまいそうになりました!
ドラマ『卒業タイムリミット』
NHKオンデマンドにて2022年5月19日(木)まで最終話配信中
原作:卒業タイムリミット(辻堂ゆめ)
出演:井上祐貴 桜田ひより 西山潤 紺野彩夏 滝沢カレン 池内万作 峯村リエ 木村達成足立梨花 森田甘路 本間朋晃 仙道敦子 中尾明慶 北山宏光
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:金田紗世子
スタイリスト:カワセ136
ディレクション:半澤暁
インタビュー:山根将悟
記事:山根将悟/近谷奈生