伊藤 健太郎
大変で不安な部分もあるけど、新しいことに出会いたい気持ちが大きい
2014年、ドラマ『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』で俳優デビュー後、『今日から俺は!!』、連続テレビ小説『スカーレット』など、話題作に次々と出演。3月には映画『鬼の花嫁』の公開、5月には舞台『赤坂檜町テキサスハウス』への出演が控えるなど、引っ張りだこ状態の伊藤 健太郎さん。ドラマ『TYPEなに? 性格診断で人生決めちゃいます』では新たなチャレンジがあったという伊藤さんですが、後編ではこれまでの歩みを振り返りつつ、役者として変化したことなどを伺いました。
俳優デビューから10年以上が経ちますが、お仕事への向き合い方に変化はありますか?
仕事のことを考えている時間が、どんどん増えています。今後、どういう作品をやっていくのがいいのかなとか、将来的に自分はどういう芝居をやりたいのかなとか、どこに向かっていってるんだろうとか。直近だと、5日間でドラマを撮るのかぁ……とか。
『TYPEなに? 性格診断で人生決めちゃいます』のことでしょうか(笑)。
あははは!それは冗談ですけど(笑)、でも、いろんなことを考えます。それは別に、ネガティブな意味じゃなくて。芝居に関すること……セリフのこともそうですし、どういうアプローチで表現しようかな、とか。そういうことを考えている時間は多いです。
伊藤さんは、考えることが苦手と言いつつも、実際にはいろいろなことを考えていますよね。
本当ですね!でも、実際はホントに苦手なんです。苦手なんですけど、たしかに考えてるな~(笑)。たぶん、考えようと思って考えるのは嫌いなんですけど、無意識のうちにふっと“あっ、考えてた”は好きなんです。“よしっ、じゃあ、この問題について考えましょう”から入る考え方が好きじゃないというか、得意じゃないのかなって思います。
そうなのですね。
でも、まったくなにも考えていない時間もいっぱいあります。ボケーっとして、頭のなかが、公園で遊んでいる子どもたちと変わらないんじゃないかってときもあるし(笑)。だけど、ふとしたときに、“あー、いろいろ考えてたな、今”みたいな瞬間が、たまにあるんです。だから、なんていうんだろう……そこまで頭で動いてないというか、感覚的というか。今、こうやって質問されてお話ししているから、思い返してみるとそうだなっていう感覚になるだけで。その瞬間でそう思ってるかというと、全然そうではないんです。僕のなかの“取材あるある”なんですけど、取材していただいて気づく部分もいっぱいありますし。思い返せば、たしかに自分はこうしているなーみたいなことがよくあるんです。
そんななかで、先ほど「どこに向かっているんだろう」とおっしゃっていましたが、将来の理想像はあるのですか?
いや、なので、考えてなにか答えが出るかというと、別にそうでもないんです。仮にじゃあ、そこでなにかしらの答えが出たとしても、数年後、ヘタしたら数分後には変わっていることもあるから。1つの答えを出すために考えているというよりは、自分のなかで選択肢を生み出している感覚なのかな。
選択肢?
はい。こうなりたい、ああなりたいとか、今、こういうことをやりたいと思っているんだなとか。答え合わせじゃないですけど、その瞬間……今でいうと、28歳の今日の自分はこういうことを考えているんだなって。それが続くときもあれば、明日になったら変わっていることもあるんですけど。
では、“今”の伊藤さんは、どうなりたいと思っているのでしょうか。
今、この瞬間ですか?今……どうなりたいんですかね。でも、ありがたいことに、ずっと続けて作品をやらせてもらっていて。そうすると、今回のドラマみたいに、新しく挑戦することとかもあったりするんです。新しいことに出会うのは、すごくおもしろいな、楽しいなと思ったので、これからも新しいことを見つけて、チャレンジしていくのもいいなって。やっぱり、次から次へと巡り会えるわけではないじゃないですか。新しいことに。だからこそ、巡り会えたときに、あっ、こういう感覚になるんだ!と思える。もちろん、それは楽しいことばかりじゃなくて、大変だし、不安な部分もたくさんありますけど。やっぱり、新しいことに出会いたい気持ちのほうが大きいです。
これまで先輩などからいただいた言葉で、ご自身の血肉になっていると感じるものはありますか?
「役者という仕事をするのであれば、いっぱい働いて、いっぱい遊びなさい」という言葉です。お芝居をするにしても、とにかくいろんな要素が必要になってくるから。もちろん仕事も大事だけど、遊び心も必要だし。普段、遊んだりすることで、それが結果的に仕事につながる部分もあると言われて、なるほどなって。だから、いっぱい働くぶん、いっぱい遊ぶし、いっぱい遊ぶぶん、いっぱい働くし。それは、どこか自分のモットーとして持っている部分があります。
伊藤さんは、サーフィンが趣味だったから、全編沖縄ロケの写真集につながったわけですしね。
そう!そうなんです。サーフィンをやっていてよかったー!と、心から思いました(笑)。
ちなみに、先ほどの言葉はどなたからいただいたものですか?
岩城滉一さんです。普段からかわいがってもらっていて、“自分の理想とするカッコいい大人といったら、岩城滉一”なんですけど。憧れつつも、ただ真似をするのではなく、自分なりのスタイルを作っていけたらなと思います。
伊藤さんは、2019年に日本アカデミー賞新人賞と話題賞を、2024年に日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞しています。賞を目標とする方もいらっしゃいますが、伊藤さんにとって賞とはどのようなものですか?
すっごく言い方が難しいんですけど……いや、めっちゃうれしいんです。賞をいただけるということは、いろんな方々に認めてもらえたと思える1つの形ですし、ものすごく自信にもなるし。ホントに純粋に、すごくうれしいし。もらえるものであれば、いっぱいもらいたいという思いはありますけど。仕事をするうえで、日頃から賞を目指してやっているかというと、そうではないというか。結果として賞というものがついてきたら、すっげぇハッピーだなっていう。
なるほど。
というか、そもそも賞というものについて、あんまり考えたことがないかもしれない。だから、『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』という映画で優秀助演男優賞をもらったときも、“えっ、あっ、そうなんだ!?”みたいな感覚が一番初めにきたんですよ。もちろん、その後、自分を認めてもらえたといううれしさが湧き上がってきましたけど。でも、それよりも、作品を観てくださった人たちの声のほうがうれしいというか、そちらに重きを置いているかなと思います。
自分の出演作に対する感想というのは、検索して見たりもしますか?
まったく見ないわけではないですけど。たとえば、自分が出ているドラマの放送中に、“みんな、観ながらどういう反応をしているんだろう?”と思って、作品名で検索することはありますけど、自分の名前で検索とかはあんまりしないです。あと、たまたま自分の名前が出てきたら、見てみたりとか。
最近は、ドラマ『略奪奪婚』での司役が話題になっていますが、感想をご覧になったりも?
最近、ネットニュースで「伊藤健太郎、最低」とか、「クズ男。複数の女性に手を出す」みたいな記事が多いんです。いや、俺じゃないから!って(笑)。でも、それはうれしいことですけどね。司を演じた身としては。もともと、(『略奪奪婚』の)最初の記者発表会で言っていたんです。「たぶん、ボロカス言われると思うし、(記事に)書かれると思いますけど、それはもう褒め言葉として受けとるので」って。だから、それぐらいに思われているのは、芝居が正解だったということだし、“よしよし”と思いながら見ております(笑)。
(笑)。さまざまな役どころを演じていらっしゃいますが、作品を選ぶ際の自分なりの基準というのはあるのでしょうか。
そんなにハードルは高くないですけど。求めてくださること自体に「ありがとうございます!」と思っているので。それこそ、直感なんです。脚本を読んで、おもしろいと思えばやりたいってなるし。あとは、共演者はどんな人で、監督は誰なんだろうとか。そのうえでハマったら、ですかね。
デビュー当時とくらべて、台本の読み方というのは変わってきていますか?
基本的には、「この役をやります。この台本を読んでください」というときに、自分の演じる役として読むというよりは、まずは視聴者というか、いち読者として、物語全体を読んでみるようになりました。この仕事を始めたばかりの頃は、自分の役のところばっかりを見て、どういうことをするんだろうとか、どういうふうに映るんだろう、どんなセリフを言うんだろうとか、そういうことばかりが気になっていたんです。今も、その感覚が全くないわけではないですけど、1歩引いたところでなるべく読むように……心がけてもいるし、自然とそういうふうになってきているかなと思います。
まずは、1つの物語として客観的に見てみると。
あとは、恋愛モノだったら、自分の役より、どちらかというとヒロインに注力して読んだりとか。自分がヒーローを演じるときは、悪役はどんな感じだろうと気になったりもします。僕、悪役が出てくる系の物語って、悪役がいっちばん大事だと思うんです。憎たらしければ憎たらしいほど、怖ければ怖いほど、イカれていればイカれているほどいい。それは、『バットマン』のジョーカーで学びました。あれは、ジョーカーありきの作品だと。だから、悪役が出てくる系のときは、脚本を読むときも、悪役のシーンを先に見ます。
恋愛モノの場合、ヒロインに注力して読むというのは?
物語にもよりますけど、恋愛モノって、わりとヒロイン主軸で進んでいくものが多いと思うんです。女性側がどういう感情になっていくかというところで物語が進んでいくし、視聴者も引っ張られていく部分があると思っていて。もちろん、男性側にも大事な部分はありますけど。あと、もっともっと女性的な目線を養えたらいいな、という思いもあります。
女性的な目線を養うことで、お芝居をする際に見えてくるものがあるのですか?
いや、演じるときはまた別なんですよね。作品を決めるとかっていう部分においては、女性側の目線が必要なんですけど。演じるときは、基本的に僕は、現場で生まれたものをなるべく増幅させようというタイプなので。
2024年末に受けられたインタビューを拝読したのですが、「2025年は、やったことのない作品や新たな役にもチャレンジしていきたい。応援してくださっているみなさまに、見せたことのない自分をたくさん発信していきたい」とおっしゃっていました。実際はいかがでしたか?
いや、もう、『TYPEなに? 性格診断で人生決めちゃいます』が、まさにそうです(笑)。
たしかに(笑)。ただ、2026年になってしまいましたが……。
あっ、そっか。ちょっと過ぎちゃったか。(『略奪奪婚』で演じた)司も、今年の1月からですもんね。2025年というと……『少年と犬』とか、『#真相をお話しします』もそうか。そう考えると、今まで見せたことのない部分をお届けできたかなとは思います。ただ、去年は、公開された作品もあるけど、どちらかというと撮影をしている時間のほうが多かったんです。そのなかには、今年、公開されるものも控えているので、ぜひ楽しみにしてもらえたらうれしいです。
伊藤健太郎
いとう けんたろう
1997年6月30日生まれ。
撮影では、ヘアメイクさんとスタッフが写真をみて「かっこいいですよね」と話しているのを照れながら撮影に臨んでくださり、かっこいいだけじゃない可愛らしい一面も撮影では見せてくださいました。撮影中に髪色の話になった時には、どんな色が似合うかな〜っとスタッフにも聞いてくださり、本当にどんな人に対しても上手にコミュニケーションを取ってくださる方だなと改めて実感いたしました。これからもお芝居に対して、ポジティブで前向きに挑戦されつつも、どんな人に対しても目線を合わせてくださる優しさでたくさんの場面でのご活躍を応援しております。ご登場ありがとうございました!
最近の出演作に、ドラマでは、WOWOW『水滸伝』(‘26)、テレビ東京『略奪奪婚』(‘26)、日本テレビ『彼女がそれも愛と呼ぶなら』(‘25)、『未恋〜かくれぼっちたち〜』(‘25)、映画では、『ストロベリームーン 余命半年の恋』(‘25)、『#真相をお話しします』(‘25)、『少年と犬』(‘25)、などがあり、今後ドラマは、フジテレビ『102回目のプロポーズ』が3月19日から配信予定、映画は『鬼の花嫁』が3月27日より公開が控えている。
©ABCTV
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:花村枝美(MARVEE)
スタイリスト:前田勇弥
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿