【杉野遥亮×齋藤潤】映画『ストロベリームーン余命半年の恋』「観終わった後に、温かさを感じてもらえたら」

2025年10月17日

杉野遥亮×齋藤潤

映画『ストロベリームーン余命半年の恋』

「観終わった後に、温かさを感じてもらえたら」

余命半年と宣告された少女が、高校1年生の春に体験する一生分の恋を描いた芥川なおさんの小説を映画化した『ストロベリームーン余命半年の恋』が10月17日から公開します。本作で、医師から余命が残りわずかであることを宣告された萌に突然告白される佐藤日向の13年後を演じた杉野遥亮さんと、高校時代の日向を演じた齋藤潤さんに、作品の魅力や演じた役への思いなどを伺いました。

＜あらすじ＞

小さい頃から病弱だった萌（當真あみ）は学校にも通えず家の中だけで日々を過ごしていたが、余命宣告され高校に通うことを決意。そして高校入学式の日、初対面にも関わらず萌は同じクラスになった佐藤日向（齋藤潤）に突然の告白をする。

今作の脚本を読んだ感想をそれぞれ教えてください。

齋藤潤（以下、齋藤）： 原作を読んだ時から、純粋さと優しさがあふれているなと感じていました。脚本をいただいて、改めて自分が日向を演じるんだなという実感が湧いたのと、脚本から人の温かさを感じたので、台本を読んだだけでもすごく感情が揺らぎました。

杉野遥亮（以下、杉野）： 僕も温かさを感じましたし、そこが一番伝わってくるものがありました。例えば「……」だけでも感情が伝わってきたので、すごいなと思いながら本を読んでいました。こういう脚本で自分が作品に携われることにとても喜びを感じました。

今作は、「最後から二番目の恋」などを書かれた岡田惠和さんが脚本を担当されていますが、どんなところに岡田さんらしさを感じましたか？

杉野：僕は岡田さんとご一緒するのが初めてなので、「岡田さんらしさ」というのは経験がないので分からないですが、セリフの感じが独特だなという印象を受けました。どう言葉で表現すればいいのか分からないんですけど、セリフの間尺までイメージして書かれているというか、特に高校生時代の萌と日向のところはセリフの間に「……」が多いんです。そういうところを見て「こういうイメージなのかな」といったことを全体的に感じました。

齋藤：今回共演したユースケ（・サンタマリア）さんが「岡田さんの脚本は一人芝居で泣くことが多いんだよ」と仰っていて、改めてこの作品を思い返してみるとそこがすごく大事なシーンになっているので、そういうところもすごいなと感じました。元々岡田さんの作品が好きで「余命10年」や「さよならのつづき」も拝見しました。

杉野：岡田さんが書く作品は、どれも心が温かくなるんです。僕は書くことができないので、こんなことを言うのもおこがましいですが「どういう人が書いているんだろう？」と思っていたら、先日、岡田さんが担当されているNHKのラジオ番組に呼んでいただいたんです。表現の先輩という感じがすごくしましたし、威厳があってかっこよかったです。その時に、この作品のキャスティングが決まったタイミングにプロデューサーとケーキとお茶で乾杯していただいたみたいです。

齋藤：そうだったんですね！僕もいつかお会いしたいです。

杉野さんはこの作品の中で、特に心が揺れたシーンはありましたか？

杉野：萌の母親を演じた田中麗奈さんがとても素敵な表現をされていて、いいなと思って観ていました。僕はまだ親になったことがないので、同じ立場になった時にどうするかは正直分からないですけど、原作を読んだ方の中には萌と両親のシーンで泣いたという声もよく聞くので、やっぱり胸が痛みます。

それぞれ「日向」という人をどのように捉えて撮影に臨まれましたか。

齋藤：日向は優しくて心が温かくて繊細なのですが、成長する強さを持っている男の子なので、萌と出会うことで変化していくキャラクターなのかなと思っていました。なので、見るもの、聞くものを純粋に受け取って、それを素直に表現できたらという思いで演じました。

杉野：僕がやることは、今齋藤君が言ってくれた日向を背負った状態で「大人になった日向」を演じるということだったので、根本的に感じていることは同じです。大人になった日向も、一生懸命生きている人だと思っていました。ただ、僕は彼が大人になった時に、自分の中で色々なものを手放すのかなということは何となく思っていました。

日向とご自身で似ているなと思うところはありましたか？

齋藤：自然が好きなところです。日向は実家の醤油工場でヤギを飼っていて、自然の中で生まれ育ってきたようなところがあるし、僕は日向のことを向日葵のような男の子だと思っています。僕自身はあんなにまっすぐではないですけど、自然の中に幸せを感じられるところは一緒なんじゃないかなって思いました。

杉野：僕も自然が好きだから、そこが似ているところです。その人のことをどう捉えるかはそれぞれだと思いますが、僕は日向もちょっと抱えているものがあるのかなって思ったんです。だから、もしかしたらその明るさは人に見せている明るさなのかもしれないと思った時に、僕にはそれはできないかもって思うから、そこはすごいところだなと思います。

齋藤さんは杉野さんが演じた13年後の日向をご覧になっていかがでしたか？

齋藤：僕は現場で自分のことでいっぱいいっぱいになっちゃったのですが、試写で全編を通して観たときに、僕が演じた日向と杉野さんが演じた13年後の日向がちゃんと繋がって、一体となって見えたし、過去を前向きにとらえている大人の日向くんが存在してこそ、この映画が完成したんだなということをとても感じました。

杉野さんには、齋藤さんが演じた高校生時代の日向はどう映りましたか？また、13年後の日向をどうのように想像して役に臨まれたのでしょうか。

杉野：齋藤くんが持つ日向のベースが素敵でしたから、具体的には全く想像していませんでした。自分の中にも通ずるものがあるなという部分をちょっと引っ張り出して意識したくらいです。それに今作では、高校生時代に大きな出来事があるので、その前後や日向のバックボーンはあまり描かれていないんです。以前は、自分の演じる役を表現する際に「この人はこういうことがあったから、今これが出ているんだ」ということを考えてみたこともありましたけど、今回僕は大人になった日向を演じているので、役のトリガーみたいなポイントは全部高校生の時の日向が背負ってくれていると思っていたから、その間を埋めようとはしなかったです。

特に見てほしいところと、映画を楽しみにしている人にメッセージをお願いします。

齋藤：撮影中、共演者の皆さんと過ごす時間がすごく幸せでしたし、「青春だったな」と思う時間が色々なシーンにも出ているんじゃないかなと思っています。特に、同級生のみんなと過ごしている時間は特に幸せと感じたので、きっとそれはスクリーンでも感じ取れると思いますし、悲しい物語かもしれないけど、観ていただいた方の気持ちが温かくなる作品だと思います。

杉野：齋藤くんをはじめ、若いキャストの皆さんがすごく一生懸命だし、その姿が青春だなと思いました。映画を見終わった後に心が洗われるような、清らかで温かい気持ちになれると思います。観てくださる方にも何か感じていただけたら嬉しいです。

お芝居の時は素の雰囲気を感じさせないお二人ですが、一歩お芝居や役から離れるとハツラツとした明るさとお茶目さが共通している、杉野さんと齋藤さん。インタビューはどんなお話が繰り広げられるのか楽しみにしていましたが、予想以上に笑いと明るさをこちらにくださいました。共演シーンはないながらも同じ役を演じられて、考えていることや定めていたものがすごくピッタリと重なっていて、役に対する捉え方や考え方がどこか似ているように感じてすごく微笑ましく感じました。後編ではお二人の印象なども伺っております。お楽しみに。

杉野遥亮

すぎの　ようすけ

1995年9月18日生まれ。

最近の出演作に、テレビ朝日『しあわせな結婚』 (‘25)、NHK『永遠についての証明』(‘25)、フジテレビ『オクラ〜迷宮入り事件捜査〜』(‘24)、関西テレビ・フジテレビ『マウンテンドクター』(‘24)、映画では、『東京リベンジャーズ』シリーズ(‘23)、『バイオレンスアクション』(‘22)、『やがて海へと届く』(‘22)、などがある。2025年11月から舞台『シッダールタ』も控えている。

齋藤潤

さいとう　じゅん

2007年6月11日生まれ。

最近の出演作に、日本テレビ『ちはやふる-めぐり-』(‘25)、NHK時代劇『あきない世傳金と銀2』(‘25)、TBS『9ボーダー』(‘24)、映画では、『366日』(‘25)、『室井慎次』二部作(‘24)、『カラオケ行こ！』(‘24)、があり、2026年1月1日公開予定の『迷宮のしおり』も控えている。