溝口琢矢
『春は彼方』
第5話の執筆裏話と作品のお話
5月からスタートしたFAST新コンテンツ「俳優たちの物語リレー」。どの原稿も改訂箇所はほぼなく、執筆いただいた原稿をそのままの形でお届けした『春は彼方』。その中で第5話を担当してくださった溝口さんに、執筆の裏話と作品を読んだ感想をお聞きしました。
執筆ありがとうございました!
第5話をどういった気持ちで執筆いただきましたか?
制作の裏話なんですけど、一番最初、実は「ゆりちゃんの目線で書こうかな」と思っていたんですよ。前の話からの流れと構成を一晩考えて、次の日マネージャーさんに連絡したんです。何度かゆりちゃんバージョンを書いたものの、どうもしっくりこなくて…。一人で悩むよりは人の意見も聞こうと思い「今、こういう風に書いているんですけど、何か違うんです」と相談したら、「一回頭で思ったからってそれに捉われなくていいんじゃない?琢矢みたいに第5話ではゆりちゃんの目線が描かれるかもしれないって予想してる人もいるかもしれないから、そこを裏切っていくような書き方をしてみたら?」と言ってくれて。それで、一度M!LKさんの書かれていた原点に戻ったんです。秋人目線で書き始めてからはスラスラと書けました。
そうだったんですか!
その溝口さんの想いが繋がったのか、
第6話では松岡広大さんがゆりちゃん目線で
書いてくれていました。
そう!広大のを読んだ時に「ゆりちゃん来た!」と思いました(笑)。ただ、広大の第6話を読んでみて思ったのは僕単純に女心が分かっていない説があったんです(笑)。微妙な心の揺れとか、女の子ならではの感情の起伏があると思うんですよ。それを考えた時に、正直「秋人が一番等身大だな」と思って。だから書きやすかったのかもしれないです。
秋人のゆりちゃんへの返信の葛藤シーン、
とても愛らしかったです(笑)。
僕自身、人と話すはすごい好きだけど女性と一対一でどこかへ行くようなことがあまりないので、秋人がゆりちゃんに誘われた時の気持ちがすごく分かりました(笑)。僕だったらすぐに返信できないと思うんですよ。でもきっと向こうは早く連絡をとって、いろいろ決めたいと思ってるはずだし…そう考えた時に秋人のあの焦燥感は分かりやすくイメージすることができました。本稿では書いていない表現で「電話で急かされる」というのもあったんですけど、読み直した時に「ここまで書かなくていっか」と思って。きっと読んでくださる方たちは僕がそこまで言わなくても秋人の人間性は分かっていると思ったので、「そっとアクションを添えるくらいがベストかな」と思ってカットしました。
では溝口さんが読んでいて、
印象的だった表現はありますか?
「丸めた紙に文字を書いても歪んでみえる。何かを包もうとしても、ごわついてしまうし、激しく広げようとすると破れてしまう。どんなに心尽くして広げてみても、もう二度とシワが消えることはないだろう。」(第2話)の表現が衝撃的でしたね。この表現はどこかで見かけて「いいな」と思ったものなのか、しわくちゃになっている何かを見て「あぁ、これはもう伸びないんだよな…」と思ったのか聞きたいと思ったくらい。言われたら「確かに」と思うけれど、自分の中からその表現が出てきたとしても、僕だったら「これ、受け入れられるかな…」と思って書くのを怖がっちゃうと思うんです。でも、その恐れを感じずに書かれていて、実際に表現を見て「面白い!」と思っている一読者の僕に気づいた時に「大正解なんだな」と感じましたね。比喩の感性が本当に素晴らしかったです。
十人十色の表現方法があって、
とても読んでいて楽しかったです。
本当に表現のタイプが分かれますよね!ただ、やっぱり一番すごいと思うのはトップバッターの方。ゼロから作り上げることができるのは本当にすごいことだと思います。一番がなければ僕らは書けなかったわけですし、一話を読んで誰がどんな子なのかがきちんと分かるようになっていたことも素晴らしかったです。他の方の話に比べたら確かに説明の文章が多い。でもそれは当たり前のことで、たった一人でたった一話で全ての人物をきちんと抑えている技術に感動しました。
溝口琢矢
みぞぐち たくや
1995年5月9日生まれ。
淀みなく「人を好きだ」と言える愛情深さと鈴のような笑い声で空気を朗らかに浄化する25歳。
舞台『かがみの孤城』 リオン役
2020年8月28日(金)~9月6日(日):サンシャイン劇場
その後、大阪・愛知にて上演予定
詳細は公式HPにて!
※Item Credit
Outer:ランチシャツ/オリーブ/¥24,000+tax(wonderland)
Tops:kerryGets/ブラック/¥11,000+tax(JOHN MASON SMITH)
Pants:ランチパンツ/オリーブ/¥22,000+tax(wonderland)
Shoes:スウェードコンビランニング/ホワイト/¥27,000+tax(TOSS)
お問い合わせ先
【wonderland】【TOSS】【JOHN MASON SMITH】
HEMT PR
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前2-31-8 FKビル3F
TEL 03-6721-0882
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:金田紗世子(MAKE ON)
スタイリング:町山博彦
ディレクション:半澤暁
インタビュー・記事:満斗りょう