小関裕太
ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』
この作品が持つ皮肉さを、
誰よりも自分らしく表現したい
ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』にて、ロミオ役でW主演を務める小関裕太さん。稽古を通して感じた本作の魅力や、共演者の印象などをお聞きしました。シェイクスピア作品に興味を持っていたというだけに、原作やロミオという人物に対する追求心の強さ、そして、理解の深さが伝わってくるインタビューです。
<あらすじ>
ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』は、シェイクスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』を基に、2001年にフランスで生まれた舞台作品。日本では2010年、小池修一郎氏の演出により宝塚歌劇団で初演。2011年には日本オリジナルバージョンが生まれ、本作が6度目の上演となる。
ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』に出演が決まった経緯を教えてください。
オーディションで選んでいただきました。ここ数年、舞台への出演が続いていたなかで、シェイクスピア作品や、蜷川(幸雄)さんの演出作によく出演されている共演者の方から色々なエピソードを聞く機会があり、僕のなかで、シェイクスピア作品への興味が大きくなっていたんです。そんなときにこの作品のオーディションがあることを知り、この運命的なタイミングを逃したくないなと思って手を挙げました。
ご自身の演じられるロミオという人物を
どのようにとらえていますか?
彼は、周りからマジメと言われるタイプに見えますが、そう言われるのが嫌いだと思うんです。自分の家柄がよいぶん、マーキューシオやベンヴォーリオのような少しくだけた人物と言いますか、外の仲間たちとの時間を大切にしているのではないかなと思います。だから、意外に複雑なのかもしれないです。興味はいろいろあるけれど、家柄に縛られたくないという反発心もすごくある気がします。
ロミオに共感できる部分はありますか?
ロミオはジュリエットにひと目ボレをしたわけですが、僕もわりとひと目ボレをするほうです。でも、そこぐらいかな。僕は、最初に話したときの感じでいろいろと察してしまうので、“こういう方なのかな”という印象が、その後もブレないんですよ。だからこそ、直感で“あっ、好き!”となります。
恋への情熱と叶わぬ恋の絶望感という両極の
感情を演じるにあたり、どのように役作りを?
ロミオがいかに恋をしたことがないか、という部分を大切にしています。たぶん彼は、家柄もよく、お金もあって、才能もあるので、男女問わず周りの人たちから求められる環境下にいたと思うんです。だからこそ、“はたして求められているのは僕自身なのか”と疑ってしまう。自分から誰かを求めたことがないだろうし、純粋な恋というものをしたこともない。“僕は、一生のうちに恋ができるんだろうか”という悩みもあったんじゃないかなと。今まで恋をしたことがないということが、ジュリエットに恋をする引き金にもなり、彼が死に至る引き金にもなったのではないかなと思います。
稽古をするなかで感じた、
本作ならではの魅力は?
本番1カ月前にして(取材は4月中旬)、もう全部通してできてしまうのではないかというくらい、稽古はほぼ最後までできている状態です。改めて愛と憎しみの物語だなと思うと同時に、最近は、運命について考えさせられる話でもあるなと思うようになりました。
というと?
すでに決められているかもしれない運命を、どう辿っているのか。僕たちは『ロミオとジュリエット』が悲劇の物語だとわかっているから、(ロミオとジュリエットが)死に導かれているというのがわかると思うのですが・・・。例えば、どういう場面でロミオはイヤな予感がしていて、どういう場面では予期していないのか、とか。そういうことを考えていくと、運命ってどこまで続いているんだろう?と。はたして二人が死を引き寄せているのか、それとも死の運命は最初から決まっていて、二人がそれをなぞっているだけなのか……そんなことを、最近はよく考えます。
結末がわかっている物語だからこそ
生まれる思いかもしれませんね。
ロミオが死んだ理由を考えたときに、彼自身の言動だけが引き金になったわけではなくて、みんながそこに関与していると思うんです。もしも、ロミオがあそこでみんなと交わっていたら死ななかったかもしれない。ベンヴォーリオやマーキューシオがあそこでロミオを呼ばなかったら、あそこでいたずらをしなかったら。なぜジュリエットと出会ってしまい、恋心に導かれてジュリエットに会いにいってしまったのか、とか。今さらどうにもならないことですが、もしもこの作品を観た方が、そういった部分をもう一つのメッセージとして受けとって、自分の一つひとつの行動を考え直すきっかけになれば、この作品を上演する意味がまた一つ増えるのかなと思います。
ロミオ役はこれまで様々な役者によって演じられてきましたが、小関さんが本作で挑戦したいことはありますか?
僕は、こういったクラシカルベースな楽曲がたくさんある作品に出演するのは初めてなんです。さらに、劇中では17曲歌うのですが、それだけの曲数を歌うのも初めて。ミュージカルや舞台自体は長くやらせてもらっていますが、初めてのことが多いので。僕自身の挑戦として、ロミオを演じることを通して戦っていけたらいいなという気持ちと、この作品が持つ皮肉さを、誰よりも自分らしく表現できたらいいなと思っています。
今回ロミオ役はWキャストですが、
岡宮来夢さんの存在は刺激になりますか?
それが……今、来夢くんが舞台の公演中で、週に1回会えるか会えないかなんです。ただ、歌稽古期間はわりと一緒にいられる時間があったので、そのときの印象でいうと、来夢くんと僕の声質がだいぶ違うなと思いました。彼は包み込む男性ボイスで、僕はわりと声が細いほうなので、それだけでもキャラクターが違って見えるのではないかな。来夢くんはすごく器用で、覚えも早いんです。だから準備稽古の通しのときには、「これ、どうやるんだっけ?」と来夢くんによく確認して、頼りにしていました。
ジュリエットもWキャストですが、相手役を
務めるうえで難しさを感じる部分も?
二人が全然違うんです。声質も、これまでの経験やバックボーンも。だから、同じ動きをしているのに、まったく違うジュリエットに見えて。そうすると、こちらのお芝居も自然と変わっているんです。
そういう感覚は、これまでWキャストを
務めた作品でもありましたか?
そうですね。例えば今回だったら、(吉柳)咲良さんの回は咲良さんと、(奥田)いろはさんの回はいろはさんとその回の作品を作るという意識が強いので。相手役の人によって変わってしまうし、僕自身、変えたいという意識があります。
稽古場の雰囲気を教えてください。
とても明るいです。自分の同世代や若い俳優さんもたくさんいるので、みんなで切磋琢磨しながらガッと集中してやっています。ただ、この作品は覚えなければいけない要素がものすごく多くて……セット転換、ダンスの立ち位置。何より、今回は新国立劇場での上演ということで、(潤色・演出の)小池(修一郎)先生が(新国立劇場の)扇形の客席に向けた見せ方を考えていらっしゃって、過去に上演された作品のコンセプトを大事にしながら、けっこう大胆に変えているところは変えているので。2024年版『ロミオ&ジュリエット』のオリジナリティを出そうと、みんなで作り上げている実感があって楽しいです。
これまで上演された『ロミオ&ジュリエット』をご覧になった方も楽しめる作品になっていると。
そうですね。もとになる楽曲や大まかな動きは今までと一緒なので、“あっ、あの役、数年前に観たときと同じ動きをしてる!”みたいな面白さもあると思います。逆に“ここをこう変えたんだ!”という箇所もあるだろうし。振りも、演じる人に合わせて少しずつ変えたりしているので、いろんな視点で楽しんでもらえるのではないかなと思います。
体を動かすこと自体は楽しいですか?
この作品にはセットを使った上り下りをするという演出があるのですが、あれはもはやダンスのようですね。ずっとロッククライミングをしているみたい(笑)。なので、総合的に考えると、毎日ジムに通っているような感覚で、大変ですが、運動するときの爽快感があります。
小池さんの演出を受けてみて、いかがですか?
すごく楽しいです。小池さんは、この作品が持っているものをものすごく理解したうえで、別のバージョン……フランスバージョン、イギリスバージョンとか、様々な描かれ方をしている『ロミオとジュリエット』の真髄を改めて理解しながら、それにワクワクしながらやっていらっしゃるんだなと感じます。
それは、どういったところに
感じるのでしょうか。
例えば、小池さんがロミオのことを夢想家と表現したことがあったんです。僕はどちらかというと、ロミオは正義感が強い、恋をしたことがないとか、勘が鋭いといった要素の比率を高めようとしていて、夢想家であるなんて考えたことがありませんでした。でも、言われてみるとたしかにしっくりきました。それも、僕がロミオを演じるうえでの要素の一つになると思い、そのときに、どんな描かれ方をされても変わらないロミオ像の核の部分を、小池さんはしっかりと見出していらっしゃるんだなと感じました。
初めて触れる楽曲のジャンルだとおっしゃって
いましたが、歌に関して心がけようと
思っていることは?
僕が普段聴く楽曲は、J-POPやR&B、ブラックミュージック、ネオソウルなどが多くて、今回のようなクラシカルな楽曲というのは、あまり触れてこなかったジャンルなんです。自分の持っている音楽性も出せるところは出したいとは思いながらも、基本的には、『ロミオ&ジュリエット』の楽曲の音楽性や、音楽家がミソだと感じるであろう部分の引き出しを、もっともっと多くしていきたいです。
そのために努力していることはありますか?
もう必死に、毎日練習しています。
家で自主練なども?
消費カロリーがものすごくある楽曲が多いうえに、稽古場では昼の11時から夜の8時まで歌い続けているんです。準備稽古期間は、家で自分なりに練習していたのですが、ここからは本番に向けて、声帯を保たせながら、いかに力を抜くのではなく、力を使いすぎないか。第一幕の初めから第二幕の終わりまで、いかに均一なエネルギーで持っていけるかという時期になるので。今は、家に帰ったらとにかく氷をなめたり、喉のケアをするようにしています。
ダンスの見どころは?
まず、ダンスメンバーのクオリティーがとにかく高いです。パフォーマンスをする際のパワーもスゴいし、しなやかさもスゴい。アクロバットをすれば技術力も高くて、結束力もある。ダンスのなかでのお芝居もすごくステキで、毎日圧倒されています。これはダンスメンバーだから当たり前といえば当たり前なのかもしれませんが、みなさん、ものすごく振り覚えが早いんですよ!しかもクオリティーも高い状態を保ち続ける姿は、ホントに圧巻です。
ジャンルとしてはどのようなダンスに?
小㞍(健太)さんが振付を担当される『死のダンサー』は、コンテンポラリーやジャズ要素が強めのナンバーだったり。『世界の王』という楽曲は、ヒップホップっぽいダンスナンバーになっていたり。ジャンルの違いによって歌っているときの感覚がだいぶ違うので、ロミオとしても小関としても、その違いを楽しんでいただけるのではないかと。“小関はこういう楽曲もできるんだ!”という一面を見てもらえるのではないかなと思います。
みなさんのプロフェッショナルな
パフォーマンスも楽しみです。
はい。あっ、あと!僕は小さい頃、タップダンスのスクールに通っていたのですが、今回のダンサーメンバーのなかに、そこで一緒だった方がいるんです。ここまでの年月のなかで、その方はダンス、僕はお芝居と違う道に進み、またこうして再会できたという。運命なのか奇跡なのか、ものすごく感動しました。
小関裕太
こせき ゆうた
1995年6月8日生まれ。
撮影前の段階からこちらに気さくに話に来てくださっていた、小関さん。FASTの撮影開始の時もスマートに「お待たせしました。」とスーツ姿でおっしゃられ、かっこよく登場されました。朝からの取材で撮影も終盤でしたが、疲れていますか?と伺うも、「こんな大きい取材、久々なので嬉しいです!」と答えてくださりました。そして朝から多く撮影をこなしているにも関わらず増していく小関さんのかっこよさにスタッフ一同感謝でした。小さなお顔とすらっと伸びた足の抜群のスタイルで夜景をバックにネオンでミステリアスな雰囲気とたくさんのかっこいいをたくさん演出してくれました。
子役として芸能活動をスタート。その後、ミュージカルや舞台、様々のドラマや映画に出演。最近の出演作はドラマ「不適切にもほどがある!」「大奥」「癒やしのお隣さんには秘密がある」、ミュージカル『四月は君の嘘』、舞台『ジャンヌ・ダルク』『キングダム』など。
6月8日にフォトグラファーとして初の作品集「LIKES」が発売する。
【公演名称】ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』
【原作】ウィリアム・シェイクスピア
【作】ジェラール・プレスギュルヴィック
【潤色・演出】小池修一郎(宝塚歌劇団)
【出演】
小関裕太/岡宮来夢、吉柳咲良/奥田いろは(乃木坂46)
内海啓貴/石川凌雅、伊藤あさひ/笹森裕貴、太田基裕/水田航生
栗山廉(K BALLET TOKYO) /キム・セジョン 東京シティ・バレエ団
彩吹真央、吉沢梨絵、津田英佑、田村雄一、ユン・フィス、雷太、渡辺大輔、岡田浩暉 ほか
【東京公演】〈公演期間〉2024年5月16日(木)~6月10日(月)
〈会場〉新国立劇場 中劇場
【愛知公演】〈公演期間〉2024年6月22日(土)・6月23日(日)
〈会場〉刈谷市総合文化センター
【大阪公演】〈公演期間〉2024年7月3日(水)~7月15日(月・祝)
〈会場〉梅田芸術劇場メインホール
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:Emiy(エミー)
スタイリスト:能城匠
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿