太陽って眩しいな。花ってこんなに微笑んでいたんだ。水って優しく光を吸い込んでるんだな…。彼の見ている世界を感じる時、「私たちの世界はこんなに美しかったのか」と思い知らされる。草木の、空の「感じて!」の声をいつだって受け止め、感受し、私たちに共有してくれる小関さん。“小関裕太”というレンズ越しに映る景色を受け取れば、きっと誰もが「この場所が好きだ。愛おしい。」そう思うことができるだろう。自分の声に寄り添って丁寧に歩みを進める彼に聞いた自身の話と作品の話―
―作品編―
映画『みをつくし料理帖』
<あらすじ>
時代は享和二年の大坂。暮らし向きは違えども8歳の澪と野江は、まるで姉妹のように仲の良い幼なじみだった。「何があってもずっと一緒や」。しかしそんな二人が暮らす大坂を大洪水が襲い、澪と野江は生き別れてしまう。それから10年後。大洪水で両親を亡くした澪(松本穂香)は引き取られ、江戸の神田にある蕎麦処「つる家」で女料理人に。野江(奈緒)は吉原にある遊郭に買い受けられ、幻の花魁・あさひ太夫と名乗っていた。澪が苦心して生み出した料理が、別々の人生を歩む2人を再び引き寄せていく。
永田源斎 × 小関裕太
源斎は家柄が良くて、お殿様の周りを診察するような医者家系の人。にも関わらず「いろんな人に医療が届いてほしい」「上流階級の人にしか医療が行き届かないのはおかしい」という信念と疑問を抱いて家を出て下町へ行くんです。人思いで、医療が叶える幸せを届けたいと切に願っている人だと思いました。上流階級を知っているからこそ、年齢に比べると落ち着きがあるな、とも感じましたね。
物語のキーパーソンでもありますよね。
そうなんです。そしてまさかの恋敵が窪塚洋介さんという…(笑)。僕、窪塚さんが主演されていた『Laundry』(2001)という作品が大好きで、学生時代によくDVDで観ていたんですよ。当時から「かっこいいな」と思っていた俳優さんだったので、このタイミングで恋敵役ができるなんて、すごく嬉しかったです。
それは嬉しいですね。
お話はされましたか?
「一緒に飲みに行こうね」と言ってくださったんですが、撮影スケジュールの関係上行けず…。ただ、撮影場所が地方だったので同じホテルのロビーなどでお話させていただくことはできました。お会いするまではパワフルで「男!」というイメージが強かったんですけど、実際にお話しすると物腰の柔らかい優しい方で。お話ししていると素の部分が見え隠れするのに、全部が全部分かるわけじゃない…すごくミステリアスな方である一方で、すごく人間的でもある方。今まで遠い存在の方だと思っていたのが、いい意味で「あ、本当に存在するんだ…」と現実味を帯びました。優しくて魅力的な兄貴分な方だな…と肌で感じましたね。
澪に「食は人の天なり」
と説く源斎ですが、
小関さんの命を繋ぐ食べ物は何ですか?
何だろうな…。僕「食」に目を向けたのがここ最近なんですよ。それもこの映画がきっかけと言っても過言ではないんですけど。「食は人の天なり」という言葉を聞いて、「人は食べる物でしかできてないんだ」と改めて実感させられました。それまでは「食」に対して「発酵食品食べると身体にいいんでしょ」くらいの観点でしか選んでいなくて、僕が大事にしていたものって「納豆」だけだったんです(笑)。今はこの映画を経て、ビタミンや食物繊維を意識的に摂ったり、温かい物を選んだり、朝いちばんに食べる物を考えるようになったりと「食」を大切に考えるようになりました。
最近、朝食は何を?
納豆ご飯は引き続き身体にいいので食べています。あとはヨーグルトを常温に戻してなるべく内臓に優しいように取り入れたり、あとはプロテインを飲んだり。プロテインって人によっては筋トレやダイエットのために摂取すると思うんですけど、結局のところ内臓も筋肉なので内臓を作ってくれる働きもあるらしくて。朝起きて運動やストレッチをする前と寝る前に飲むようにしています。
へ~!勉強になります。
今回は初めての角川組ですよね。
現場はいかがでしたか?
やっぱり重みがありましたね。作品に携わっていらっしゃるスタッフの方、キャストの方も、みなさん昔から角川監督(角川春樹)と一緒にお仕事をされてきた方が多い現場だったので、安心感とともに重圧もあり…僕が一人で勝手に緊張していました(笑)。
小関さん自身もかなり場数を
踏んでこられてると思いますが
それでも緊張するような?
あの空気感は独特ですね。薬師丸ひろ子さんをはじめとするキャストの方々も、みなさんそれぞれの角川監督のヒット作の中で生きてこられた方々なので絆も強いですし、雰囲気もすでに完成されているんですよ。だからこそ本番のテイク数もすごく少なくて。一発一発の世界の中での芝居だったので、かなり緊張しました。
Highlight of Yuta Koseki
時代劇の中で大きな役割を担いながら、映画の世界の中で唯一無二の考え方を持つ医者、「永田源斎」のような若者の役は僕にとって初挑戦。角川監督と現場でディスカッションをする中で「監督の中にある源斎のイメージをちゃんと演じられているかな」と不安な部分もありつつ、楽しんで演じさせていただきました。撮影中はその都度監督のところへ行って「今の大丈夫でしたか?」とお聞きして。「今の良かったよ」と言ってくださることもあれば、「もうちょっとゆっくり言って」など、現場では割と厳しく教えていただいていた方だったので、作品が完成して「どういう源斎になっているんだろう…」と正直不安な部分も多かったです。「僕が現場に入る前にイメージしていた源斎と全く違うものになっていたらどうしよう…」と、正直怖いくらいで。ただ、実際に作品を観た時にすごくいい意味で裏切られました。自分でも見たことのない自分が見えたんですよ。ちゃんと永田源斎という人物が「源斎先生」として完成されていて、「あ、監督が言っていたのはこういうことだったのか!」と完成作品を観てようやく分かりました。僕にとってもサプライズだったんですけど、普段から僕を応援してくださっている方には今までに観たことのない小関裕太を観ていただけると思うので、是非、劇場に足を運んでいただければと思います。
Highlight of『みをつくし料理帖』
作品自体は人の温かさをすごく感じるヒューマンドラマで、現代を生きる僕たちにも「運命って何だろう」と問いかけてくる映画になっていると思います。運命って良い方に転ぶこともあれば、悪い方に転ぶこともある。人って「自分には運がないのかな」や「才能がないのかな」と運命に翻弄されがちじゃないですか。そんな思いをふっと救ってくれるような映画。日本映画らしいぬくもりのある作品なので、是非、映画館でコーヒー片手にくつろぎながら観ていただきたいです。
小関裕太
こせき ゆうた
1995年6月8日生まれ。
その穏やかなフィルターを通して映るもの全てを慈しみ、自分の“心の声”にも耳を傾けることの大切さを教えてくれる25歳。
映画『みをつくし料理帖』
2020年10月16日(金) 全国ロードショー
制作・監督:角川春樹
出演:松本穂香 奈緒 若村麻由美 浅野温子 窪塚洋介 小関裕太 藤井 隆
野村宏伸 衛藤美彩 渡辺典子 村上 淳/永島敏行 松山ケンイチ 反町隆史 榎木孝明 鹿賀丈史/薬師丸ひろ子/石坂浩二(特別出演)/中村獅童
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:金田紗世子
スタイリスト:吉本知嗣
ディレクション:町山博彦
インタビュー・記事:満斗りょう