「潔く自分の考えに沿って歩む」というのは何歳になっても難しいことだ。「こうあって欲しい」という他人の理想に当てはまろうと頑張るのも、ある種、人の性だから。しかし彼の場合は違う。「彼が彼らしくあること」を私たちは望み、願う。伸びやかでサッパリとした魅力と同時にあるのは一筋縄では解けない不思議な愛嬌。その複雑な響きを感じ続けたいと願わずにはいられない“独自の重奏”を掻き鳴らす彼に聞いた、作品の話と自身の話。
―作品編―
ドラマ「love⇄distance」
<あらすじ>
2020年初夏。人と人との繋がりが制限され、自宅で過ごすことも多くなった「今」。結婚3年目の仲良し夫婦、写真家の青年、動画配信チャンネルNewTubeで人気の3人組、同じマンションに暮らす男女6人が、出会い、心通わせていく。「人との距離(ディスタンス)」を意識せざるを得なくなった今だからこそ大切にしたい「心の距離」を描く、“愛”と“キョリ”のものがたり。
撮影現場でも
「ソーシャルディスタンス」を
心がけていたという今作。
今までの現場と
違った部分はありましたか?
新鮮な部分は多かったですね。正直僕たちキャスト側はそんなに変わったところはなかったんですが、スタッフさんたちは普段よりも少人数だったので一人ひとりの稼働力がかなり多かったと思います。今まではアシスタントさんなどサポートする方が何名もいらっしゃったところを全部一人でやられていて、その上フェイスシールドやマスク、ゴム手袋もつけていらっしゃったのですごく大変そうでした。
徹底されていたんですね。
キャストとしての苦労はありましたか?
「なるべく人と接触しないこと」を心がけていた現場だったので、監督も別のモニター部屋にいらっしゃったんですよ。本番や段取りを確認するドライという作業も、本来であればスタッフさんが全員集合して僕ら役者陣の動きを確認しつつ照明の位置やカメラワークを決めていくんですけど、監督が現場にはいらっしゃらないので、モニターからの監督の指示で全てを決めないといけなくて。シーバーを通して「こういったカット割りでいきましょう」などの指示を受けながら一つのシーンをすごく手間ひまかけて撮影していました。苦労したことで言えば物語自体がベランダ to ベランダだったのでやりづらかったことですかね(笑)。
美和さん(水川あさみ)とも
結構距離がありますよね?
そうなんですよ。NewTuberとの会話は壁一枚隔てて横並びでやっていたのでそこまで大変ではなかったんですけど、水川さんと清原さん(清原翔)の部屋は少しくぼんでいるんですよね。で、僕の部屋のベランダには大きな柱があるので普通に過ごしていたら水川さんの姿なんて見えないわけですよ。ベランダからものすごい身を乗り出して写真を撮って水川さんと会話する、というシーンはなかなか大変でした。水川さん側から僕のアップを撮ろうとしても柱が邪魔して本当に少ししか映らなくて(笑)。すごい体力を使った記憶があります(笑)。しかももどかしいんですよ。普段であれば「こうやって手を伸ばしたり、使ったりしているんだろうな」というシーンでも上半身を乗り出すことしかできなくて。感情との折り合いをつけるのが難しかったですね。
なるほど。試行錯誤があったんですね。
物語は自粛期間中のお話ですが、
渡邊さんは何をされていましたか?
自粛期間中は完全にエンターテイメントに助けられていましたね。ずっと動画配信サービスを観ていました。あとは友達とオンラインで飲み会をしていたかな。家でお酒を飲むことがかなり多くなった自粛期間でした(笑)。地元に帰らなくても友達と飲めるのは嬉しかったし楽しかったです。
オンライン飲み会、最高ですよね(笑)。
千秋は「いいと思った瞬間」を
写真に収めていますが、
渡邊さん自身が「いいと思った瞬間」は
何かありますか?
難しいですね…。作り話でもいいですか(笑)?あ、僕「love⇄distance」のお話をいただく少し前からカメラを始めていて、自粛期間中にマスクをして公園を散歩しながら写真を撮っていたんです。走っている方やスケボーをしている方、上半身裸で原っぱに寝ている外国の方など色んな方がいらっしゃる中で、ふと、おじいちゃんとおばあちゃんが水辺の横から手を繋いで歩いてきたんですよ。これはさすがに「いいな」と思いましたね。「自分もあんな風に関係を築けたらいいな」と思いながら、そのご夫婦に憧れを抱いて。その瞬間が自粛期間中でのベストでした。ちなみにノンフィクションです(笑)。
素敵なワンシーンです!
では、この作品の見どころをお願いします。
今は前まで当たり前だったことが当たり前じゃなくなったり、もともと出来ていたことが出来なくなってしまったり、もどかしいことがたくさんあると思うんですが、そんな中でも「こんなに日常に愛は溢れているんだよ」ということに気づける作品になっていると思います。これから新しい何かを始めようとしている方や今あるもので自分に出来る何かをしようとしている方たちの背中を押せるような作品にもなっていると思うので、是非、ご覧になってください。
Paraviオリジナルドラマ「love⇄distance」
Paraviにて独占配信中(https://www.paravi.jp/static/lovedistance/)
出演:水川あさみ 清原翔 渡邊圭祐 馬場ふみか 板垣瑞生 中尾暢樹
ドラマ『MIU404』
<あらすじ>
警視庁には現在3つの機動捜査隊が存在するが、本作は、警視庁の働き方改革の一環で作られたという架空の設定の臨時部隊「警視庁刑事部・第4機動捜査隊」が舞台。主人公の伊吹藍(いぶき・あい)と志摩一未(しま・かずみ)はその第4機捜に所属し、第1〜3機捜のヘルプだけでなく、捜査1課などの各部署のヘルプも行う。普段は覆面パトカーで地域をパトロールし、110番通報があれば事件現場に急行、迅速に初動捜査を行う。勤務は24時間、3交代制。3日で1サイクルを繰り返す。初動捜査で事件が解決できない場合は専門の課に捜査を引き継ぎ、継続捜査は行わない。つまり、街中で勃発する各事案に対し、24時間でできうる限り対処するのが彼らの仕事だ。機動力と運動神経はピカイチだが機捜経験がなく、刑事の常識にも欠ける“野生のバカ”伊吹と、観察眼と社交力に長けており、常に先回り思考で道理を見極める、自分も他人も信用しない理性的な刑事・志摩。第4機捜の隊長から伊吹とバディを組むことを命じられた志摩は、隙あらば暴走する“野生のバカ”に振り回されながら、犯人を追う羽目になる。志摩は“ハンドラー”として任務を遂行できるのか?数々の事件を乗り越え、二人は信頼しあうバディになれるのか…!?
特派員RECの撮影裏話はありますか?
最初の頃は他の出演者の方との絡みがなかったので、撮影の段取りや本番も本当に僕一人しか話さないというシュールな現場でした (笑)。NowTubeの映像も僕が全部カメラをコントロールしていて。本当のカメラは僕自身ではなくて、僕が映っているホームビデオの小さいディスプレイの中の僕を狙って撮っているので、ホームビデオのハンディカムをいじっているのは僕の手元にあるリモコンなんですよ。塚原監督と「一話のRECは編集力も力もない素人だからどんどんミスっていこう」とお話して、興奮のあまり立ち上がってフレームアウトしたり、ズームしすぎて画面からはみ出したりとめちゃくちゃにやらせていただきました。
最初の頃はお一人で寂しかったのでは?
めちゃくちゃ寂しそうでしたよね、僕(笑)。僕のスケジュールさえOKであればまとめて撮影ができていたので、セリフ量が結構えげつなかったのを覚えています。「早口で」と言われてはカメラを動かしながら一人撮影をして…と。僕『仮面ライダージオウ』でも一人の空間で一人喋りをする役だったんです。「何かそういった役に縁があるのかな」と思って、楽しみながらRECをやらせていただきました(笑)。
一人喋りと他のキャストさんが居ての撮影は
だいぶ違うものでしたか?
特段違う意識はしていなかったと思います。他のキャストさんがいらっしゃる時は、その方からアクション・感情・言葉を頂いたうえで僕も言葉を発するようにしていたけれど、一人でのお芝居の時は見えない人に向かって引っ掛かりのあるワードだけでも作れればいいと思いながら演じていました。僕自身、正直RECが初期に話していた内容ってあまり重要ではないと思っていて。ただ彼がNowTuberとして事件の感想などを一人走りで話してしまっている部分はしっかりと観ている方に伝わるように意識していたかな。「引っ掛かりのあるワードがきちんと引っ掛かるように」というのは心掛けていました。
NowTuber役として、
実際にYouTubeはご覧になりましたか?
元々少しは観ていたんですが、『MIU404』のお話を頂いてからYouTubeを観まくりました。芸人さんからタレントさん、それこそHIKAKINさんやはじめしゃちょーさんも観ていました。あとはきまぐれクックさん。あの方のYouTubeは一生観ていられますね。魚を捌く動画を撮られている方なんですけど、きまぐれクックさんの映像を観ていると捌ける気になっちゃうんです。それでいざ自分でやろうとすると自分の家の包丁の砥げてなさにまずびっくりすると言う(笑)。「背骨全然いかないじゃん」とか「皮が綺麗に剥けない」とか(笑)。
分かります。
出来るような気がしちゃうんですよね(笑)。
では、渡邊さんがもし
YouTuberだったとしたら
どんなチャンネルにしたいですか?
僕、気づいたんですけど、どうやら仲の良い人たちが好きみたいなんです。バナナマンさんの『バナナTV』やアキナさんの『アキナいチャンネル』で「仲の良い2人がただ旅をする」という企画があるんですが、それを観ているだけでも2人の仲の良さが伝わってくるんですよ。加えてお互いの中でしか分かりえない面白さと僕らでも分かるような面白さの両方があって。「うわ、これって多分身内だから面白いんだよな」というような内容を地元の友達とやってみたいですね。周りは笑わなくてもいいので、僕らが楽しめるYouTubeをやりたいかな。
では最後に
『MIU404』をこれから観るという方、
もう一度観る方に向けて
ご自身の見どころと作品の見どころを
お願いします。
個人の見どころとしては、僕自身、RECを演じていた時に達成感を感じていたんです。一人でずっと喋っているシーンが多かったので「噛まないで言えた」とか(笑)。そういった部分を想像しつつ楽しんでいただけたら嬉しいですね。作品に関しては、まずは綾野剛さんと星野源さんのお二人の掛け合いを観て欲しい。僕、初めて顔合わせで本読みをした際にお二人のやりとりを見て声を出して笑ったんです。本当にめちゃくちゃ面白くて。どんどんと進んでいくテンポの中でお二人の掛け合いが良い塩梅で入ってきて飽きることなく一気に観てしまうはずです。そして何より、MIUの現場には常に「『MIU404』をすごいもんにしてやろうぜ!」といったチームの心意気が漂っていました。最高のキャスト陣と最高のスタッフ、チームの全ての人が最高のものを作ろうとして完成した作品なので、最高なものを最高なままに受け取ってもらえれば、と思います。
ドラマ『MIU404』
Paraviにて見逃し配信中(https://www.paravi.jp/)
脚本:野木亜紀子
出演:綾野剛 星野源 岡田健史 橋本じゅん 黒川智花 渡邊圭祐 金井勇太 /
菅田将暉 生瀬勝久 麻生久美子
渡邊圭祐
わたなべ けいすけ
1993年11月21日生まれ。
力強い独歩の足跡を残しつつ、心に溢れる軽やかな愛嬌と質感のある旋律で自分だけの音を奏でる26歳。
※Item Credit
Shirt:¥16,800
Pants:¥17,800
(ともにMAISON SPECIAL / MAISON SPECIAL AOYAMA 03-6451-1660)
Tops:¥9,000
(リーセンシィ オブ マイン アバハウス / アバハウス 池袋パルコ店 03-3987-8025)
Shoes:¥10,000
(tk.TAKEO KIKUCHI ️03-6851-4604)
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:木内真奈美
スタイリスト:吉本知嗣
ディレクション:町山博彦
インタビュー・記事:満斗りょう