渡邊圭祐×松岡広大
映画『八犬伝』
僕らのアクションを含め、ぜひ劇場で観てほしい
これまでに何度となく映像化、舞台化されてきた「八犬伝」が、新たなアプローチで描かれ、いまだかつてない映画体験へと導かれること間違いなしの映画『八犬伝』。犬塚信乃役で出演する渡邊圭祐さんと、犬村大角役で出演する松岡広大さんに、撮影中の苦労や裏話、お互いの役者としての印象などを伺いました。また、八犬伝にちなんだ質問では、松岡さんに対する渡邊さんの愛あればこそのイジりが……!?
©2024 『八犬伝』FILM PARTNERS.
<あらすじ>
里見家の呪いを解くため、8つの珠に引き寄せられた8人の犬士の運命を描く「八犬伝パート」。そして、その物語を生み出す作家・滝沢馬琴(役所広司)と、浮世絵師・葛飾北斎(内野聖陽)の奇妙な友情を通じて描かれる「創作パート」が交錯するという、新たな「八犬伝」。北斎も魅了した馬琴の紡ぎ出す物語は人気を集め、長期連載となるが、クライマックスに差しかかったときに馬琴は失明してしまう。それでもなお、28年の歳月をかけて書き続けた馬琴が、「八犬伝」に込めた想いとは――。
本作で共演することが決まったときの気持ちを教えてください。
渡邊圭祐(以下、渡邊):作品で共演するのは初めてでしたが、今回はアクションがメインの作品だったので、いろいろと教えてもらおうかなと思いました。広大はアクション経験もあって、頼りになるので。
松岡広大(以下、松岡):アクションに関しては、曽利(文彦)監督とご一緒したことのある人が、圭祐をはじめ何人かいらっしゃったので、僕はそこにおんぶに抱っこでもいいのかなと思っていました(笑)。
渡邊:たしかに(笑)。
松岡:「(監督が)どういう人なの?」と聞くよりは、圭祐の現場での空気感とかを見たほうが早いかなと思ったので、(渡邊を)勝手に頼りにしていました。
撮影中、渡邊さんは松岡さんにアドバイスをいただきましたか?
渡邊:はい。撮影の始まる1、2カ月ぐらい前から殺陣稽古があったんですが、広大と一緒になった日にはいろいろと聞いたりしました。具体的には……。
松岡:柳(受け)とか?
渡邊:(身振りで見せながら)柳って、これ?
松岡:そう。
渡邊:それだ!あと、納刀のしかたとか。
松岡:納刀と抜刀は大事だから。あと、鯉口を切る所作とかも。
渡邊:でも結局、劇中では柳をやってないんだよね。
松岡:そうなの?
渡邊:納刀も(劇中で)やっていないので、結局披露できなかったですけど(笑)。
松岡:あら(笑)!でも、チラッとはやっているんじゃない?
渡邊:そうなのかな。柳って、相手が頭の斜め上から下に振り下ろしてきた刀をいなすみたいなことなんですが、「こうやるとやりやすいよ」とか、そういう基礎的なこと以外にも、納刀のカッコいい……あれは、魅せ方だよね?
松岡:うん、“魅せ殺陣”だね。
渡邊:僕は、そういうわかりやすいのが好きなので(笑)、いろいろと教えてもらいました。「カッコよく見える納刀って、どうやるの?」とか。
松岡:あははは!
渡邊:僕の演じる信乃は、剣術ができる役柄でもいなきゃいけない。ということは、そういう遊びができてもいいのかなって。むしろそういうものを入れることで、よりうまさが引き立つかなと思ったので。
松岡:うんうん。
渡邊:実際には映像になっていないところも多いですが、教わったことはとても役に立ちました。
松岡:いやいや、恐縮です。
松岡さんは、殺陣で大変だったことはありますか?
松岡:僕は、(刀を)わりと振りすぎてしまうところがあるんです。そうすると、刀の軌道が大きくなったりもするので、刀の軌道と軌跡をすごく意識して振っていました。あと、刀を振ったときに、ちゃんと(刀が)反射するようにっていうのは計算していました。
刀を振る角度によって、反射のしかたが変わってくる?
松岡:そうなんです。あと、鈍く光らせたほうが映える場面もあったりとか。なので、できるだけ刀の面の部分を途中途中で見せるようにして。刀がどういうふうに動いて、どういうふうに切っているのかが、水のように流れて見えたらいいなと思って、それはすごく意識しました。
渡邊:へ~!
松岡:舞台では刀をたくさん扱ってきましたけど、実は映像で扱うのは初めてだったので。カメラの角度と照明と、いろんなセクションの方との呼吸の合わせ方みたいなものは、非常に意識したところです。
渡邊:大角は、八犬士のなかでは一番アクロバティックな動きが多いのかなと。一番軽やかで。
松岡:軽やかさだったら、(犬坂)毛野(板垣李光人)じゃない?
渡邊:そうかな?
松岡:(毛野は)跳んでたよ(笑)。
渡邊:(笑)。大角は、カラダを駆使した動きが多いのかなって。
松岡:あー、そうかも。
渡邊:なので、そこは注目ポイントの一つだと思います。
松岡:ありがとうございます。
本作では、仁義八行の珠に引き寄せられた8人の犬士たちのお話が描かれますが、お互いのことを漢字一文字で表すとしたら?
渡邊:難しいですね。
松岡:この質問は考えますよ。
渡邊:これを言うと、悪口になっちゃうもんな~(笑)。
松岡:おい、「小」だろう?絶対!
渡邊:「小」とか、いろいろ出てくるんですけど(笑)じゃあ、「明」で。
松岡:おー!なんで?
渡邊:2020年にコロナ禍になり、緊急事態宣言も出されたりとか、各々が家のなかでいろいろなことを考える時間が増えたじゃないですか。そんなときに、広大がちょっと悩んでいた時があって。
松岡:あったね。
渡邊:インスタライブとかでも、“真っ暗ななかバスローブを着て、壁に手をついてワインをくるくるさせてる”みたいな暗黒期があったんです。
松岡:あったあった。それ、もうイジってるけど。
渡邊:本人には言わなかったですけど、そこから考えるとだいぶ明るくなったなって。髪色も含め。
松岡:うん、今ね。
渡邊:明るくいい方向に……。
松岡:いや、違うって!その前から、一緒に飲んだときとかに言ってたよ。「絶対に陰キャだ」って。
渡邊:そんなこと言ってないですよ!(笑)僕はそんなふうに、陰キャだの陽キャだのって分けたりしないです。
松岡:いや!(鈴木)仁が、隣で「うん」って頷いてたもん。
渡邊:仁もいたとき?
松岡:そう。
渡邊:僕が言いたいのは、広大はだいぶ明るくなったってことです。方向性が、少しポジティブになったというか。
松岡:あー。でも、それは本当にそうかも。
では、渡邊さんを漢字一文字で表すと?
松岡:圭祐はなんだろうなー。うーん……「朗」!
渡邊:ほぅ。
松岡:「悟」ともちょっと迷ったんですけど、「朗」のほうがたぶん合っていると思う。圭祐ってどんなときでも、誰が上だ下だ、みたいな優劣や序列っていうものがないんです。
渡邊:たしかに。
松岡:それは、話してみたらすごくわかる。まぁ、僕のことをバカにはしてくるけど(笑)。
渡邊:いや、イジりですよ。
松岡:そうね。愛あるイジりですけど。
渡邊:愛がありますから。
松岡:あと、彼は大人の方たちの懐に入るのが上手なんです。
渡邊:(笑)
松岡:でも、それが決してあざとくないところが僕は好きで。きっと、その朗らかさというのは、本人の生得的なものなんじゃないかなと。だって圭祐、(仕事の)現場を経験していくごとに、いろんな人が周りに増えているよね。
渡邊:そうなのかな。
松岡:彼の人脈だったりが、すごく広がっているんです。
渡邊:たしかに、結構最近増えたかも。
松岡:でしょ?最近、なんか雰囲気が変わったよ。
渡邊:そうなんだ?
松岡:いろんな人からいい影響を受けているのかもしれないけど、もともとの朗らかさが、さらにいい感じになった気がする。
渡邊:丸くなってきた?
松岡:うん。過去には、角がある時期もあったんです。
渡邊:あはは!たしかに(笑)。
松岡:今は、いろいろとバランスがとれてきたのかなと勝手に思っています。
改めて、本作の公開を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。
渡邊:この作品は、原作を知らなかったり、「八犬伝」に触れたことがない人でも楽しめる映画になっています。【実】のパートでの、役所広司さんと内野聖陽さんのやり取りがすごくユーモラスで、ストーリーが進むにつれてどんどん深くなっていくんですけど。その間に、僕らの【虚】のパートである「八犬伝」の物語が進んでいくことで、実と虚がお互いを盛り立てている、そんな構図になっています。【虚】はアクションがメインなので、疾走感も楽しんでもらえると思いますし、全体的には泣けるとも思います。僕は、お百(寺島しのぶ)の最後のひと言が大好きなので、ぜひそこにも注目して頂きたいです。冒頭からの積み重ねがあってのそのセリフなので。夫婦のあり方といいますか、そういったものを経てのあのひと言はもう最高です。僕らのアクションを含め、ぜひ劇場でご覧になっていただけるとありがたいです。
松岡:時代劇がそこまで堅苦しくないものだということを、まず第一に伝えたいです。それは、「八犬伝」という作品の力を借りて見やすくなっているところもあって。ただただファンタジー要素を強めに出した演出になっているわけではないので、【実】と【虚】が非常にいいバランスを保って、この作品をお届けできると思います。今まで時代劇に抵抗があったとか、見る機会がなかったという方も、【虚】のパートには近い世代のキャストもいると思うので、それが観てくださるきっかけの一助となれば幸いです。そして、「時代劇っておもしろい」と思ってもらえたらうれしいです。
渡邊:あと、素晴らしい美術とVFXも見どころです!それを、最後にピッと入れておいてください(笑)。
インタビューでもとても仲良しのお二人、渡邊さんは優しく聞いている周りを落ち着かせるような温かいトーンが印象的で、松岡さんは周りをクスリと引き込むような言葉で、一つ一つに明るさがあるトーンで話されるのがとても印象的でした。たまに見せる、松岡さんをいじる渡邊さんのニヤリとした表情もとても素敵で、いじられる松岡さんも嬉しそうにされていて。普段のプライベートのお二人の絡みをインタビューでも見せてくださいました。
後編ではお二人の役者業を作品と絡めてお話を伺っております。お楽しみに!
渡邊圭祐
わたなべ けいすけ
1993年11月21日生まれ。
最近の出演作に、ドラマではNHK『光る君へ』(‘24)、朝日放送テレビ『あなたの恋人、強奪します。』(‘24)、テレビ東京『95』(‘24)、映画では、『三日月とネコ』(‘24)などがある。12月13日『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』、2025年3月20日と5月1日には『女神降臨 Before/After』が公開予定。
松岡広大
まつおか こうだい
1997年8月9日生まれ。
最近の出演作に、テレビ東京『錦糸町パラダイス~渋谷から一本~』 (‘24)、NHK連続テレビ小説『らんまん』(‘23)、映画では、『赤羽骨子のボディーガード』(‘24)、『沈黙の艦隊』(‘23)などがある。
©2024 『八犬伝』FILM PARTNERS.
原作:『八犬伝 上・下』 山田風太郎(角川文庫刊) 監督・脚本:曽利文彦
出演:役所広司、内野聖陽、土屋太鳳、渡邊圭祐、鈴木 仁、板垣李光人、水上恒司、松岡広大、佳久 創、藤岡真威人、上杉柊平、河合優実、栗山千明、中村獅童、尾上右近、磯村勇斗、大貫勇輔、立川談春、黒木華、寺島しのぶ
製作:木下グループ 制作プロダクション:unfilm 配給:キノフィルムズ 2023/日本 G
※Team Credit
渡邊さん
スタイリスト: 岡本健太郎
ヘアメイク: 荒木美穂(KOOGEN)
松岡さん
スタイリスト:岡本健太郎
ヘアメイク:堤紗也香
カメラマン:鈴木寿教
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿