小関裕太
思っていたよりずっと明るい未来だった
幼少期からドラマや映画など多くの作品に出演。2008年に『FROGS』で初主演を務めてからは、舞台への出演も精力的に行っている小関裕太さん。2024年で俳優デビュー20周年を迎えるにあたり、これまでに転機となった作品などを伺いました。デビュー当時の自身にかけてあげたい言葉からは、現在の充実ぶりが伝わってきます。
2024年で俳優デビュー20周年を迎えます。
これまでの最大の転機というと?
そうですね。どの作品も転機ではあるのですが……舞台『FROGS』は、すごく自分について考えさせられるきっかけになりました。俳優という仕事について、お芝居について、進路や人生について。10代後半の頃は、“自分は何をやりたいんだろう?”ということをずっと考えていましたが、ちょうどそんなときにいただいた、しかも初主演をやらせていただいた作品なので、大きな岐路になったのではないかなと思います。
考えさせられたというのは、
稽古や公演期間中に?
そうですね。『FROGS』は、初演のときも再演のときも、ちょうど学校の中間テストと期末テストの期間に重なったんです。なので、学業と仕事の両立についてもすごく考えましたし、お芝居に対する自分の不甲斐なさと向き合いながら、もがいてもいました。『FROGS』の演出は岸谷五朗さんだったのですが、俳優としても人生の先輩としても、五朗さんからいただく言葉一つひとつが心に刺さりました。
特に刺さった言葉は?
言葉もそうなんですが、ものすごく印象に残っているのは、五朗さんが向かい合って怒りの芝居をぶつけてくださるシーンですね。「いや、ちょっと待って。ここはこうやってやるんだよ」と、実際に動いて見せてくださる五朗さんと対峙したとき、まるで雷に打たれたような衝撃を感じました。今考えると、俳優としての力量の差というか、届ける力が圧倒的に違うのは当たり前なのですが、当時は“やられた!”という感覚になって。僕もこうなりたい! と思うと同時に、なんて自分はできないんだ!と、できない自分に悔しさを感じました。きっと初座長ということで、肩に力が入っていたんでしょうね。
デビュー当時に思い描いていた20年後の姿と、
現在のご自身をくらべると?
僕は“歌って踊れる大工さんになる”と思っていたので、だいぶ違いますね(笑)。でも、思っていたよりずっと明るい未来でした。
当時の夢は、叶えられましたか?
もう叶いすぎて、当時の自分にいっぱい自慢したいです。「未来は明るいぞ」と。もちろん、作品のなかでいろんな方とご一緒したことや、自分の出会っていなかった自分と出会えたことも自慢したいことの一つなのですが……僕は『ハリー・ポッター』が大好きで。そんな大好きな作品のキャストの方々と、お仕事でお会いすることができたり。原作者のJ・K・ローリングさんにインタビューすることができたり。まさかそういう形で、当時の僕の幼い頃からの僕の夢が叶うなんて!というのが、ものすごく大きいですね。僕、自分の部屋にハリー・ポッター棚というのを作っていて、そこにたくさんの宝物を置いているんですけど。その棚を作った当時の自分に自慢したいし、「心配しなくて大丈夫だよ」と言ってあげたいです。
幼少期から活動していると、現場でずっと一番年下である時期が長かったと思いますが、徐々に年下の共演者が増えてきたときに焦りなどはありましたか?
あー、焦りはなかったです。二十歳を超えてからいろんな先輩方とお酒を飲めるようになって、“実はあのとき、こんなことを思っていたよ”というお話を聞く機会が増えたんです。例えば、中学3年生だった僕と舞台で共演した方が、「おもしろいヤツが来たと思ったよ」とか。そういう、お兄さんたちが当時こう思っていたというエピソードをいろいろ聞くと、“えーっ、年下の子たちが出てくるとソワソワするのかな”とか“ちょっとお兄さんでいなきゃ”とか、“責任感が生まれたりするのかな”と思っていました。実際は、そんなことはなかったですね(笑)。
それは、なぜでしょう?
僕がご一緒したお兄さんたちは、ちゃんと目線を合わせてくれる方が多くて。そんな先輩方に感動したんです。こんなに歳が違うのに、同じ目線で話してくれるんだ!?と。なので、僕もそういう人になりたいと思って過ごしてきたことも大きいのかなぁ。今回の『ロミオ&ジュリエット』でも、ジュリエット役のお二人は年下ですけど、勉強させてもらうことも多いですし。年齢が上とか下とか関係なくステキな方がたくさんいるので、最近は、自分はずっとこのまま変わらないような気がしています。
変わらないというのは?
30代になっても40代になっても50代になっても、10代の役者さんからもいい影響を受けて、切磋琢磨し合える大人になっていくんじゃないかなと。僕は現場で、あんまりお兄さんらしくもないし。かといって弟らしくもない。わりとフラットにいさせてもらえているなと、各現場で感じます。
『ロミオとジュリエット』といえば悲劇の物語ですが、それにちなんで……最近、小関さんの身に起きたプチ悲劇があれば教えてください。
えーーーっ、なんだろう!?……あっ、この間、雨の日にお気に入りの傘が折れました。お仕事で行った施設でお客さんに配っている傘があって、それをいただいたんですが、真っ青ですごくステキだったんですよ!まぁ、そんなに強度がある感じではなかったので、仕方ないといえば仕方ないのですが。えーっ、好きだったのになぁ……って。もう使えないのに、その傘、まだ捨てられないでいます。(笑)
小関裕太
こせき ゆうた
1995年6月8日生まれ。
今作品の稽古の合間にお時間をいただいてのインタビューだったので、たくさん見所や作品のことをお話ししてくださった小関さん。この作品に対してどう向き合ってきたのか、稽古場でのやり取りをお話ししている時の顔つきはとても真剣で、小関さんの作品に対する熱い想いが溢れ出ていました。また今までの歩まれてきた役者業についてのお話の時は周囲への感謝をしつつも、次の世代に対しての思いについて話されている表情は、とっても素敵な優しいお兄さんの顔つきでした。これからもどんな時もありのままで、たくさんの人から愛される無敵の愛嬌と優しく温かい小関さんの活躍を心から応援しております!ご出演ありがとうございました!
子役として芸能活動をスタート。その後、ミュージカルや舞台、様々のドラマや映画に出演。最近の出演作はドラマ「不適切にもほどがある!」「大奥」「癒やしのお隣さんには秘密がある」、ミュージカル『四月は君の嘘』、舞台『ジャンヌ・ダルク』『キングダム』など。
6月8日にフォトグラファーとして初の作品集「LIKES」が発売する。
【公演名称】ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』
【原作】ウィリアム・シェイクスピア
【作】ジェラール・プレスギュルヴィック
【潤色・演出】小池修一郎(宝塚歌劇団)
【出演】
小関裕太/岡宮来夢、吉柳咲良/奥田いろは(乃木坂46)
内海啓貴/石川凌雅、伊藤あさひ/笹森裕貴、太田基裕/水田航生
栗山廉(K BALLET TOKYO) /キム・セジョン 東京シティ・バレエ団
彩吹真央、吉沢梨絵、津田英佑、田村雄一、ユン・フィス、雷太、渡辺大輔、岡田浩暉 ほか
【東京公演】〈公演期間〉2024年5月16日(木)~6月10日(月)
〈会場〉新国立劇場 中劇場
【愛知公演】〈公演期間〉2024年6月22日(土)・6月23日(日)
〈会場〉刈谷市総合文化センター
【大阪公演】〈公演期間〉2024年7月3日(水)~7月15日(月・祝)
〈会場〉梅田芸術劇場メインホール
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:Emiy(エミー)
スタイリスト:能城匠
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿