松本怜生
毎回違う世界に存在していられる役者の仕事は天職だと思う
大学1年生時に開設したTikTokをきっかけに、芸能界での仕事をスタートさせた松本怜生さん。2022年、ドラマ『不幸くんはキスするしかない!』で俳優デビュー後は、映像を中心に多数の作品に出演。9月30日から放送開始の連続テレビ小説『おむすび』への出演も決まり、勢いに乗る松本さんに、役者を目指したきっかけから芝居への思い、今後の展望まで、根掘り葉掘り伺いました。
©NHK
『おむすび』は、ヒロインが栄養士になり、人の心と未来を結んでいくというお話ですが、松本さんは人やモノとの縁を大切にするタイプですか?
すごく大切にして生きています。これは、ご縁に感謝しなければいけないと教えてくれた母のおかげでもあるのですが、何というのかな……縁を大切にすることが、僕のなかで当たり前のことになっているというか。今の自分があるのも、僕一人の努力によるものではないと心から思っていますし。“もし、あのタイミングでああしていなかったら、どうなっていたんだろう”って、たまに考えることがあるんですけど。いいことも悪いことも、すべてが今につながっていて。関わってくれた人が一人でも欠けていたら、今の自分はないんだなって。
そのなかでも、特に大きな転機になったのは?
いくつもありますけど、一番大きな出来事は、野球をやめるきっかけになったケガをしたことです。僕は6歳から野球をやっていて、甲子園に行くのを目標にがんばっていたんです。でも、高校に入学してから2年間で2回、膝の靭帯を切って手術をすることになって。しかも2回目は、甲子園予選の2ヶ月前というタイミングだったので、そこで僕の夢が終わってしまったんです。当時は、すべてを否定された気分になりました。
そこから、どのように立ち直ったのですか?
入院中にいろいろな映像作品を観ているうちに、俳優という職業に興味が湧いたんです。でも、僕の実家があるのは田舎の方なので、地元で就職して~結婚して~という人生設計が、子どもの頃からなんとなく決まっているんです。しかも、いきなり俳優になりたいなんて、親を説得する自信がまったくなかったから。勉強したいからとウソをついて(笑)、大阪の大学に行きたいとお願いしました。とりあえず、大阪で何かしらの自己発信をして、ある程度、知名度を上げようと……あっ、その自己発信をするきっかけをくれた大学の友達との出会いも、大きな縁ですね。その友達に「TikTokを始めて1カ月でフォロワーが1万人になったら、プレゼントを買ってあげる」と言われて、TikTokを始めたので。
それがきっかけで、芸能界への道がひらけたわけですね。
そうです。フォロワーがたくさんいれば、どこかの芸能事務所が興味を持ってくれるかもしれないという気持ちが僕のなかにあったので。フォロワーが増えたそのタイミングで、東京で挑戦したいなと思って、親に頭を下げたんです。父には反対されたんですけど、母と姉は背中を押してくれて。二人があの場にいなかったら、東京へ来られていなかったかもしれないです。でも、そんな父も、今では一番応援してくれています。
いきなり東京ではなく、とりあえず大阪へ行こうと思ったのはなぜですか?
愛媛からいきなり東京へ行くのは、絶対に無理ですね。
親御さんが許してくれない?
そうです。愛媛を出るとなったら、とりあえず高知、広島、岡山とかに行くんです。大阪へ行けたらスゴいことだし、東京へ行くなら家族で引っ越すぐらいの感覚なんです。しかも、高校時代に野球をやっていたりすると、地元の工場とかに就職しやすかったりするんですけど、それも自ら捨てて俳優の道を選んだわけなので。挑戦させてくれた親には、ホントに感謝しています。
上京した当時、夢や目標はありましたか?
夢とかを描く余裕はなくて、とりあえず有名になってみたいとか、そんな感じだったと思います。まずは役者にならないと何も始まらないし。もし(役者に)なれたら、その先のことはまた考えようって。この仕事での具体的な目標を考えるようになったのは、ホントにここ最近なんです。今考えると、自分でも恐ろしくなります。何の自信があって、あんなことができたんだろうって。あのときの自分は、なんてまっすぐで勇敢だったんだろうと思います。突き進んでいたなって。
でも、初めて受けたオーディションに合格して映画デビュー。その後もドラマ出演が続いたりと、とても恵まれた経歴だと思うのですが。
(しみじみと)ホントにそうです。本当に恵まれているんです。今まで声をかけてくださったプロデューサーさんには、「僕のことを見つけてくださって、ありがとうございます」という気持ちです。でも僕、自分の芝居に満足したことがなくて。「今の芝居、よかったよ」と言われても、“どこがよかったんだろう?”と思ってしまうんです。
どこがよかったのか、聞いたりはしないのですか?
聞かないです。たまに、ドラマの撮影中、モニターに映った自分の芝居を撮ってもらったものを見て、帰りの車のなかで、マネージャーさんに「客観的に見て、どうでしたか?」と聞くことはありますけど。
自分のお芝居を客観的に見た感想を聞くわけですね。
はい。いいところだけじゃなく、思ったことはちゃんと言ってほしいとお願いしているので、歩き方や姿勢まで、気になったことは言ってくれます。でも、基本的には家族にも誰にも感想は聞かないです。ドラマのオンエアで自分の芝居を見て、“うわっ、ヤバ!”って。客観的に見ると、まだまだだなーと思うこともあります。
でも、お芝居するのは楽しいですか?
楽しいです!僕、飽き性なんです。なので、いろんな人物になれて、毎回違う世界に存在していられるこの仕事は、天職だなと思います。
“今の自分のここを強化できたら、役者としてさらに進化できるのではないか”と思う部分はありますか?
声の太さですかね。声の出し方というか。もっといろんな声の出し方をできるようになりたいと思って、今、腹式呼吸の練習をしているんですけど。
それは、自主練ということ?
そうです。腹式呼吸をマスターできるマウスピースがあって、それを使ってお風呂でトレーニングしています。お芝居は役を演じる中で色々な面を作っていかないといけないと思うのですが、一つの側面として僕、声を使い分けて芝居ができる人にあこがれていまして。二宮(和也)さんとか、ドラマ『ブラックペアン シーズン2』を観ていても、二人の人物を全く違う声で演じ分けているじゃないですか。僕もそうですけど、地声が高い人って、低い声を出したときにちょっと違和感があったりするのですが、その違和感をまったく感じさせないのがプロなんだなと。今、活躍されている役者の方って、みなさん声がいいというか、いろんな声を持っているなと思うんですけど。自分はまだ、そこは修行中です。
では、いずれは声のお仕事なども?
やりたいですね。めちゃめちゃやりたいです!
現時点での目標を教えてください。
んふふ。僕ね、(目標を)あんまり言わないんです。でも、言ったほうがいいのかな。言うのが正解なのかな(笑)?まぁ、“これをやりたい”ということはあって……一つ挙げるなら、日本アカデミー賞の会場に行きたいですね。
賞を受賞するのではなく?(笑)
もちろん賞も受賞したいです。でも、あの会場に呼ばれるのって、スゴい作品で主演を務めていたりする人ばかりじゃないですか。まずは、いろんな作品に呼んでもらえる俳優になって、その仲間入りをしたいです。賞を目指すのは、その先……というか、賞は目指すものではなく、自分の努力の積み重ねによって、後からついてくるものなのかなって。うーん、だから、目標というか……“こうなりたい”という自分の姿はいっぱいあるんですけど。
例えば?
絶対に決めているのは、どんな方にも礼儀正しい人間であること。それは、野球をやっていて自然に身についた部分でもありますけど。この世界に入って、年上にも年下にも変わらない愛嬌と礼儀正しさを持って接している方を見て、スゴいなってあこがれるようになったんです。ロールモデルが周りにいっぱいいすぎるんですけど、その人たち全員に共通しているのが、初心を忘れないことなのかなと思うので。僕も、一生それを忘れない人間でありたいです。
松本怜生
まつもと れお
2000年4月27日生まれ。
インタビューでは撮影のかっこいい雰囲気とはガラリと変わりお話が大好きな新たな松本さんの一面を拝見することができました。周りのスタッフも、担当のマネージャーさんも巻き込みながら楽しそうに話してくださり、とても充実したインタビューの時間となりました。またお話も面白いだけでなく、真面目な一面もあり、誠実さも兼ね備えたお人柄でした。朝ドラの出演に対する意気込みや方言など工夫されたことなど余すことなくお話をしていただきました!これからも周りも明るく変えてしまう溢れるパワーで一歩一歩着実に目標を辿り着き次々に挑戦される松本さんのご活躍を応援しております!
初出演ありがとうございました!
最近の出演作に、読売テレビ・日本テレビ系『降り積もれ孤独な死よ』(‘24)、NHK総合『柚木さんちの四兄弟。』(‘24)、NHK BS『あきない世傳 金と銀』(‘23)、9月30日からNHK 連続テレビ小説『おむすび』が始まる。
©NHK
連続テレビ小説『おむすび』
2024年9月30日(月)放送開始
毎週月曜〜土曜 午前8時〜8時15分 ※土曜は一週間の振り返り
【出演】橋本環奈 仲里依紗 佐野勇斗 麻生久美子 宮崎美子 北村有起哉 松平健 ほか
【作】根本ノンジ
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:中原ありさ
スタイリスト:岡村春輝
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿