萩原利久
ドラマ『たとえあなたを忘れても』
空たちのセリフを通して
作品の持つ温度を伝えられたら
国内外を問わず大きな人気を獲得した『美しい彼』から、出演作が途切れることのない俳優の萩原利久さん。現在放送中のドラマ『たとえあなたを忘れても』(ABCテレビ・テレビ朝日系)では「解離性健忘」という障害を抱えながらキッチンカーを運営する青木空を演じています。夢や記憶といった大切なものを失いながらも、懸命に生きる男女が運命的にめぐり会う切ない純愛ストーリーに出演している萩原さんに、作品への思いや演じる役の難しさについてなどをお聞きしました。
<あらすじ>
ピアニストになる夢に挫折し、現実から逃れるように東京から神戸に引っ越してきた河野美璃(堀田真由)。音楽教室のピアノ講師という職はあるものの、収入は乏しく「社会の役に立たない」自分にため息をつきながら毎日をやり過ごしていた。そんなある日、大好きなメロンジュースをきっかけに出会ったのは、記憶障害がある青木空(萩原利久)。屈託のない笑顔を向ける空に、美璃は次第に惹かれていく。
本作の情報が解禁されるや
SNSでも大盛り上がりでしたが、
その反響は萩原さんのところにも
届いていましたか?
僕もその日にInstagramに投稿したのですが、みなさんからの反響はとても感じました。今回は役や話のテイストを含め、自分がここ最近やっていたものとは色味が全くといっていいほど違うので、期待してくださっている方が多かったのは嬉しかったです。その期待を裏切ることのないよう、僕自身もしっかり向き合っていきたいなと反響を受けてより強く感じました。
セリフひとつとっても
文学的な美しさがあるなと感じましたが、
脚本の魅力をどんなところに感じますか?
僕も最初に脚本を読んだ時、描かれている人物がとても丁寧で、情景や2人のやり取りなどの具体的な画がすぐに想像できて、すごく温度を持っている作品だなと感じました。言葉の選び方や人と人との対話、登場人物の存在の仕方がすごく温かいので、どうしたらその温度を視聴者の皆様に届けられるかなって考えたんです。そのためには、言葉のやり取りひとつにしても淡泊に見せたくないし、そこの厚みは空を通じて出したいなと思っています。
情報解禁第一報のコメントで
「空は難しい役」と仰っていましたね。
関西弁でセリフを話すことの難しさもありますし、「解離性健忘」という障害を抱える役どころや、物語の特性など複合的な意味でも、今まで演じてきた中でトップレベルに入るくらい難しいんじゃないかなと思っていました。なので、いつも以上に必要な情報や準備が多く、クランクインの前からこれは難しいなと思っていました。
そんな空をどんな人と捉えていますか。
表面的な部分で言うと、心根のまっすぐな好青年になるように演じたいと思っています。一方で、そこと反する部分も多少自分の中にあって、見せ方や動きが「ナチュラル」から少し外れる瞬間もあるんです。でも、そういう部分って色々な役をやる上では必要なスキルでもあるなと感じていて、自分の中で元々やりたかったものと、やっていく中で「こうしたい」と思うことにどうやって繋げられるか。解離するのではなく、どう寄り添えられるかといったことは、役者として必要なスキルだなと最近すごく感じています。
演じる中でどこまで自分らしさを出せるか、
ということですね。
僕の中でその人物を演じる上での究極形は、その時の感情のまま動けるのが1番理想ではあるんですけど、時には感情のまま、衝動的にというわけにはいかないこともあります。特に恋愛ものではそこをより立たせたい瞬間や象徴的にする部分は絶対にあると思うし、僕も視聴者として見たいところでもあるので、できるだけ思いと動きが1つの線で繋がったまま芝居に着地できたらいいなと思います。
その他に、
これまでの作品と今作の違いを
どんなところに感じていますか?
今まで色々な役をやらせてもらいましたけど、それぞれの性格や環境があって、話が進むにつれて何かを感じたり思ったりすることでその人になっていく。それが積み重なってラストまで進んでいくというのが割と当たり前だったし、シーンの前後でその後に繋がるように撮っていることが多かったんです。今回もそういう所はあるのですが、一番の違いはポイントごとにリセットされて、それまで重ねてきたものをもう一度積み上げ直すような過程があるので、そこは自分の中でも未知なことでした。
堀田(真由)さんと
現場で話し合いはしましたか?
堀田さんとは4回目の共演なので、本読みの段階から普通にコミュニケーションを取れたのはありがたかったなと思います。今回の難しいところでいうと、美璃と空のやり取りの中でその関係性がリセットされるというか、空の記憶がなくなる分、ある程度美璃に委ねるシチュエーションがどうしてもあるんです。そこで生じるモヤモヤといった感情は空からほぼ出せないし、相手にも見せないので、その辺は演じる上でも難しい部分だし、すごく特殊だなと思っています。
©ABCテレビ
特殊というのは
具体的にどういったところでしょうか?
作品の中で、こんなにも片側に比重が振り切ることはめったにないんじゃないかなと思います。ある程度会話の積み重ねで物語が成立するところがある以上、お互いにそこが作用しているはずなんだけど、今作ではかなり一方的なシチュエーションが要所要所にあるので、演じる上でもコミュニケーションを取る上でも「その過程を丁寧にやりたいね」といったことは堀田さんとよく話しています。
美璃を演じる堀田さんとは
今作が初めての恋人役ですが、
照れはありましたか?
ビジュアル撮影の時、「共演回数も多いし1周回って緊張しないかな」って二人で話していたんですけど、2周回って変な緊張はありました(笑)。これまで色々なシチュエーションで共演してきたのですが、きっと順番が逆だったらそんなこともなかったんじゃないかな。今作が先だったら、その後どんな作品で共演をしてもある程度フラットでいられるかなと思ったんですけど、変に知っている部分もあるからこそ、見ちゃいけないものを見ているような感覚になったところはありました。
今後の展開も目が離せませんが、
萩原さんがこの作品や役を通して
伝えたいことを教えてください。
空も記憶を忘れる前はきっとごく普通の男の子で、環境などが違えばそのまま平穏な生活を送っているはずだったと思うんです。でも、彼にとって大きなトラウマができたことによって色々なことが変化していくのですが、空にはちゃんと積み重ねてきたものがあるのに、それを1度リセットされて「ないもの」になってしまう。自分が自分である証となる過去を忘れてしまうのは、すごく切ないことですよね。そこは客観的に見ても「報われてほしいな」と思う部分だけど、空は周りの人の支えもあって、記憶をなくした後もその中で日常生活ができる環境を作っているし、人の温度を感じながら今を懸命に生きている男の子だと思うので、その温度感をみなさんにお伝えできたらと思っています。
萩原利久
はぎわら りく
お似合いの柔らかな色味の衣装で登場した萩原さん。ご本人セレクトの玉置浩二さんの音楽が流れるリラックスした雰囲気の中、様々な表情を見せてくださいました。葉の緑もよく似合う萩原さんですが、後編ではさらに緑に囲まれていただきました。インタビューでは先輩後輩に対する思いも伺っております! お楽しみに!
1999年2月28日生まれ。
最近の出演作に、ドラマ『真夏のシンデレラ』(‘23)、『月読くんの禁断お夜食』(‘23)、『美しい彼 シーズン2』(‘23)、映画『ミステリと言う勿れ』(‘23)、『キングダム 運命の炎』(‘23)、『おとななじみ』(‘23)、『劇場版 美しい彼〜eternal〜』(‘23)などがある。
©ABCテレビ
『たとえあなたを忘れても』
ABCテレビ・テレビ朝日系
毎週日曜よる10時放送
出演 ・ 堀田真由 萩原利久
風間俊介 岡田結実 畑芽育
/ 松井玲奈 森香澄
丸山智己 須藤理彩 加藤貴子 / 檀れい
※Item Credit
シャツ¥99,000
タンクトップ ¥39,050
パンツ ¥126,500
(すべてアミ パリス/アミ パリス ジャパン)
その他はスタイリスト私物
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:カスヤユウスケ(ADDICT_CASE)
スタイリスト:Shinya Tokita
インタビュー:根津香菜子
記事:根津香菜子/緒方百恵