萩原利久
縁や出会いにつないでもらって今がある
26歳にして芸歴17年という実力派俳優・萩原利久さん。ドラマに映画に引っ張りだこでしたが、なかでもW主演を務めた2021年放送のドラマ『美しい彼』が大きな話題を呼び、その演技力を世間に知らしめました。最旬俳優としてますます輝きを増す萩原さんに、これまでの役者人生を振り返りながら、ユニークな人生観も語っていただきました。

長い芸能生活を改めて振り返ると、どんな役者人生でしたか?
どんな人生……運がよかったなと思います。もともと役者の仕事にあこがれて始めたわけではないので、だからこそ、一つひとつの出来事がつながって今日に至っているんだなとしか思えないというか。出会いだったり縁だったりの積み重ねで。たぶん、自分の携わってきた作品のどれか一つでも抜けていたら、今、この仕事をやっていないだろうなと感じるんです。そう考えると、縁だったり出会いだったりにつなげてもらった今日だなと思います。
そのなかでも、特別強い縁を感じる出会いは?
うーん、ある気もするけど、たどっていくと結局、“これがあったから、こうなった”と思えてくるので……もう、全部が必要なピースだった気がします。とはいえ、小島よしおさんにあこがれなければ、この世界に興味を持つこともなかったと考えると、小島さんは特別な存在かもしれません。あとは、菅田将暉さん。菅田さんと同じ事務所に入りたいと思ったのがきっかけで、今の事務所に所属することができたので。環境的な意味では、この二つの出会いが、一番自分を変えてくれたかなと思います。なにしろ、小島よしおさんに会いたいと思わなかったら(役者の仕事を)始めてもいないので、全然違う世界線があった説は大いにあります。

全然違う世界線だったら、何をしていると思いますか?
いや、わからないです。何をしているんだろう……!?
そこは、大好きなバスケットボール関係ではないのですね。
バスケを始めたときは、すでにこのお仕事を始めていたので、日焼けをしないスポーツということで選んだんです。だから、役者をやっていなければ、こんなにバスケを観ていないかもしれない。結局、それも役者を始めたことにつながっているんです。

ご自身がかつて菅田さんにあこがれたように、今、萩原さんにあこがれる後輩俳優の方も多いと思いますが、何か言葉をかけてあげるとしたら?
いやぁ~、僕にあこがれるなんて、やめたほうがいいです。僕、普段はスポーツしか観てないし、参考にならないから。
でも、役者の世界で長く活躍するって大変なことじゃないですか。
そうですね……でも、“やってみる” に尽きるんじゃないですか。縁を大事にして、出会いに感謝して、あとはやってみる!僕自身、基本的にやってみた結果があって次につながっているというか。やってみて、これはおもしろいからやってみよう、これはあんまりおもしろくなかったからやめようって選択してきた結果、今こうなっているけど。それは、やる前から予想できたわけじゃなく、全部やってみた後での判断でしかないから。行動すること、アクションを起こすことは、僕の実体験のなかで極めて大事な要素になっているなと感じます。

2月に公開された、北村匠海さん監督・脚本の映画『世界征服やめた』に出演されました。それを機に、作品の制作側も経験してみたいと思うことはありましたか?
それはなかったです。匠海が脚本を書いている段階から話を聞いていて。そこにかける時間だったり、一つひとつの作業だったりを見ていたら、僕らが普段、現場で見ている監督の姿って、ほんの一部でしかないんだなって。ものすごく時間と労力がかかるし、思っていた何倍も大変なことがわかりました。現時点ではまだ(制作を)“やってみたい”まで至ってないけど、もしもやってみたい!となったら、そのときは何も考えずにやってみるのが正解な気がします。
やってみたいと思う日がくる可能性もあるのですね!
大事なのは、自分の興味にウソをつかないこと。もちろん、興味がなくてもやってみることに価値はあると思うけど、人生は有限なので。僕は、興味のないものへの継続率が尋常じゃなく低くて。ホントにどうしようもないくらい低いんですけど、逆に“自分の興味に逆らわず、興味の湧いたものをやってみる”を続けた結果が今かなと思います。

これまで何度かFASTにご登場くださっていますが、これから2019年にご登場時と同じ質問をするので、回答をアップデートしていただきたいと思います。まず、「萩原利久の軸となっているものは?」。
ステフィン・カリーです。いや、もうね、人類は“彼か、彼じゃないか”ですから!それぐらい、僕のなかで特別な人です。
ちなみに、2019年の回答は「直感で決める」でした。
あー!でも、それも変わってないと思います。ただ、ちょっと細かく説明するならば、直感で選びはするんですけど、「これ、どうしますか?」と聞かれて「こうします」ってパッと決めるわけではないんです。最終的には、「どうしますか?」で最初に浮かんだものに決めるんですけど、即決するのではなく、1回考えるんです。どうしよう、どうしようって考えて考えて考えて。考えた結果、直感で選んだ答えになるという。でも、この考えるという過程が、僕のなかですごく大事なんです。“考えた末の直感”がベストだと、無意識に判断しているんでしょうね。

では、「座右の銘は?」。
「マンバ・メンタリティ」です。これは、もう亡くなってしまったコービー・ブライアントというNBAのスーパースター選手の言葉で。彼の仕事に対するアプローチ法やメンタルを言語化したものなんですが、ものすごく噛み砕いて僕なりに解釈すると、「明日が今日よりいいものになるように準備しようよ」っていう。つまり、「あくなき向上心を持とう」ということだと思うんです。彼は、「練習でやったことがないことを本番でやらない。1000回練習して、1001回目を本番でやっているだけ」と言っているんです。どんなにスーパープレイに見えるものも、すべて練習でやってきたことをやっているだけだと。当たり前のことといえばそうですけど、あのレベルのプロフェッショナルな人が言うと、尋常じゃなく重い言葉に聞こえます。
本当にそうですね。
彼は、バスケットボールの技術において自分で天井を決めなかったけど、僕らにおける役作りにも天井がないじゃないですか。やろうと思えば無限にできる。だからこそ、マンバ・メンタリティの精神で臨んだらいいものを作れるんじゃないかなと思って。とても好きな言葉です。

こちらの2019年の回答は、「エネルギー」でした。
あっ、だから、そのときの答えがもうちょっと細分化されたんです。さっきの「直感」もそうですけど、すごく漠然としていたものに対して、少しだけ細かくポイントを作れるようになったというか。エネルギーを持ってやらなければ、意味がなくて。そのエネルギーをどう使うか、というところが細かくなったものがマンバ・メンタリティなのかなと思います。
ちゃんと成長がありましたね。
お~!やっぱり6年も経つと、人は変わります。

萩原利久
はぎわら りく
1999年2月28日生まれ。
インタビュー同様、すごく爽やかに穏やかな空気感で進んだ撮影。カメラマンの色々なパターンにもスッと対応されている姿は流石の一言でした。エメラルドの爽やかな萩原さんも布で柔らかさがありつつもパキッとかっこいい萩原さんもどちらもとても素敵でした。またFASTの取材が終わって、スタッフ1人1人の顔をみて丁寧にご挨拶をされ退出されるお姿に、最後まで丁寧で仕事に対して隙のない素敵なお人柄だなと感じました。
これからも多様なものの見方・考え方をしつつ、冷静さの中に情熱を持って挑まれる萩原さんのご活躍を応援しております!
お久しぶりのご登場ありがとうございました!
最近の出演作に、テレビドラマでは、NHK総合・NHK BSプレミアム4K『リラの花咲くけものみち』(‘25)、読売テレビ・日本テレビ『降り積もれ孤独な死よ』(‘24)、日本テレビ『めぐる未来』(‘24)、映画では、『世界征服やめた』(‘25)、『朽ちないサクラ』(‘24)、『ミステリと言う勿れ』(‘23)などがある。また、映画『花緑青が明ける日に』の公開を控えている。

©2025「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」
タイトル:今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は
4月25日(金)全国公開
配給:日活
原作:福徳秀介『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』(小学館刊)
監督・脚本:大九明子
出演:萩原利久
河合優実 伊東蒼 黒崎煌代
- 安齋肇 浅香航大 松本穂香/古田 新太
製作:吉本興業 NTT ドコモ・スタジオ&ライブ 日活 ザフール プロジェクトドーン
製作幹事:吉本興業
制作プロダクション:ザフール
配給:日活
©2025「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿