藤原大祐×窪塚愛流
映画『大きな玉ねぎの下で』
本当の幼馴染みのような気分で役に挑めたのは愛流のおかげ
映画『大きな玉ねぎの下で』に、虎太郎役で出演している藤原大祐さんと、大樹役で出演している窪塚愛流さん。80年代に生きるキャラクターを演じるにあたっての役作りや、撮影エピソードなどを伺いました。今回で共演が3度目となる二人だけに、互いへの信頼感は絶大!息の合った掛け合いをお届けします。

©©2024 映画「大きな玉ねぎの下で」製作委員会
<あらすじ>
丈流(神尾楓珠)と美優(桜田ひより)は、夜はバー、昼はカフェになる「Double」でそれぞれ働いている。“夜の人”と“昼の人”をつなぐのは、連絡用の〈バイトノート〉。最初は業務連絡だけだったが、次第に趣味についてや悩みもつづるようになった。実は顔見知りの二人だったが、まったくそりが合わず、関係は最悪。互いの素性を知らないまま、大きな玉ねぎの下(武道館)で初めて会う約束をするが――。一方、あるラジオ番組では、30年前の文通相手との恋が語られていた。顔は知らないが、武道館で初めて会う約束をする二人。2組は、出会うことができるのか?令和と平成、二つの恋が交錯し、一つの奇跡が待ち受ける――。

©2024 映画「大きな玉ねぎの下で」製作委員会
お互いに、役とご本人の共通点を教えてください。
藤原大祐(以下、藤原):僕、台本を読みながら、大樹を演じるのは愛流がいいなと思ったんです。そうしたらホントに愛流だったので、うれしかったです。
窪塚愛流(以下、窪塚):そう言ってくれたよね。
藤原:愛流とは3回目の共演で、もともとの距離感が近いというのもありますし。大樹のビジュアルのイメージも、僕より背が高くてクールな人がいいなと思っていたし、キャラクターもハマりそうだなって。“これ、愛流じゃん”と思いながら台本を読んでいたんです。
窪塚:うれしい!
藤原:ただ、愛流はルックスはクールだけど、中身はキュートかな。それに今回、大樹はオーバーに演じるというプランだったから、愛流は結構役作りをしていたよね。
窪塚:たしかに、カラダを大きく使って表現するようにしていました。普段、僕はどちらかというとボソボソ話すので、そこも大樹と違います。
役作りは、どのように?
窪塚:80年代を生きている人を演じるのは初めてだったので、現場で探り探り作っていきました。だから、相手役が大祐ですごく安心しました。大祐には、なんでも受けとめてくれる包容力があるので。
藤原:フフッ。
窪塚:僕が思う虎太郎と大祐の共通点は、マジメなところ。あと、丁寧!大祐が僕を……というより、大樹のことをわかってくれているから、芝居をしていてすごく楽しかったです。
藤原:楽しかったね。

実際に撮影が始まって、そういったあうんの呼吸を感じた場面はありますか?
窪塚:読み合わせの時点で、すごく噛み合ったというか。大祐となら、いろんな挑戦ができるなって思いました。
藤原:芝居に関しては、あまり決めすぎずにやっていたよね。
窪塚:そう。いい意味で適当というか、自由に。
藤原:放送室のシーンとかも、一応、監督から「こういうふうに動いて、ここへ行ってほしい」みたいなアングルの話はあったけど、それ以外はマジで自由に動いていたよね。その場で起きたハプニングにアドリブでツッコんだりとか。
窪塚:あったね。
藤原:まぁ、実際の映像には使われていなかったりもするんですけど。監督が、シーンが終わるごとに「ホントによかった!」と言ってくださって、それが励みになりました。言葉として発する以上の情報を、お互いに投げて受け取っていたなと思う瞬間がいっぱいあります。
撮影前に二人で連絡を取り合ったり、お話ししたりも?
窪塚:僕たちが演じるのは回想シーンだけど、観ていただいた人の記憶に残る二人にしたいねって話したよね。
藤原:そうだね。台本を読んでいるときに、この二人の役がすごく際立って見えたんですよ。だから、「台本を超えるぐらい、爪痕を残そうぜ」という話をしましたね。台本の時点で虎太郎も大樹もすごくいい役だったので、二人で演じきりたいねって。
窪塚:そういう話をして、すごく気合いが入りました。

演技プランなども事前に話し合いましたか?
窪塚:お互いにどういう芝居をするかは、もうホントに本番の「用意、スタート!」までわからなかったです。そこで起きるハプニングだったりも、お互いに信頼しているからこそ自由にできるし、すごく楽しいんです。放送室で、大樹がドタバタ動きながら一生懸命虎太郎に伝えるシーンがあるんですけど、台本を読んだときにはまったく想像していなかった、いい意味での……。
藤原:化学反応?
窪塚:そう!化学反応が本当に楽しかったです。
藤原:楽しかったね、マジで。昔から愛流は、台本からは想像できない芝居をしてくれるので。話し方とかも含めて、“こういうお芝居でくるんだ!?”って毎回楽しみなんです。だから、玉手箱を開けるみたいな気持ちで……。
窪塚:こちらこそです。
藤原:いやいやいや!最初に愛流と共演したときは、(芝居を)こちらから投げて始めようと思っていたんです。同世代だし。けど、いつも愛流のほうから投げてくれることが多いので、今回も、わりと受け(の芝居)でいこうというスタンスでいました。
今回、一緒にお芝居をしていて驚かされたとか、グッときたエピソードなどがあれば教えてください。
藤原:もともとの僕たちの関係値が関係しているのかわからないですけど、愛流とお芝居していると、台本に書かれている以前の背景まで想像できるんです。
窪塚:あー。
藤原:「ふざけんなよ!」というひと言でも、“めっちゃ昔から、こういうことを言ってきた関係なんだろうな”みたいに自然と思える。それがスッと入ってくるのが愛流の芝居の魅力だし、説得力がすごくあるんです。

それは、演じやすい?
藤原:そうですね。例えば、役のうえでは幼馴染でも、それを演じる役者同士は幼馴染ではないじゃないですか。僕は役を演じるうえで、そういった背景をつかむのが一番大事だと思っているんですけど。愛流と演じると、そこがもう全然問題にならないというか、それを前提として進められるんです。今回、本当の幼馴染みのような気分で役に挑めたのは愛流のおかげでもあるので、改めて愛流のスゴさを実感しました。
窪塚:いやいやいや!大祐とは同世代の俳優のなかで一番共演していて、信頼関係もできているので、「用意、スタート!」がかかった瞬間、二人だけの世界に入り込めました。ホントに役にのめり込んでしまって、芝居をしているという感覚がなくなるんです。
藤原:うんうん。
窪塚:芝居をしているうちに、いろんなアイディアや感情が湧き出てくるし、すごく安心して気持ちよくお芝居できる。そんなふうに感じられるのって、大祐だけなので。大祐のおかげで役に没頭できたなって、ホントに感謝しています。
藤原:ありがとうございます(照)。
本作の舞台は1980年代ですが、演じるにあたり、事前に準備したことはありますか?
窪塚:監督が、参考になればということで、当時の映画を教えてくださって。
藤原:そうそう。「平成初期の映画っぽい雰囲気で作りたい」という監督の意図もあったので、当時の映像をいくつか拝見しました。
窪塚:はい。
藤原:監督曰く、平成初期の映画は、現代のものよりテンポが速かったり、若干早口でしゃべっていたりするらしいんです。なので、『大きな玉ねぎの下で』でも会話のラリーのテンポを上げてほしいと言われました。

この作品に携わる前から、この時代について興味のあることはありましたか?
窪塚:僕は、カラオケでその年代の曲を歌うことが多いです。
藤原:へー!僕は音楽好きなので、ラジカセとかにすごい興味があります。家では、レコードで音楽を聴いたりもします。
窪塚:おしゃれだね。
藤原:そう、ちょっとおしゃれなのよ。カッコつけてるのよ(笑)。
窪塚:あははは!
藤原:この作品の撮影現場で、カセットテープもいいなって思いました。僕たちは放送部員という設定なので、カセットテープに触るシーンが多いんです。
本作は文通で心を通わせるストーリーですが、お二人にとって手紙というのはどんな存在ですか?
藤原:僕、めちゃくちゃ手紙を書くんです。記念にと思って、家族や友達、仕事でご一緒した方とかに送ったりとかするので、手紙には馴染みがあります。
窪塚:僕も、家族や友達の誕生日には、モノをあげるより手紙を書いて渡すことが多いので。手紙はすごく馴染み深いというか、好きです。

本作は、爆風スランプの「大きな玉ねぎの下で」にインスパイアされた物語です。この歌のお気に入りフレーズを教えてください。
窪塚:「若すぎるから 遠すぎるから」という歌詞が好きです。若いときって、お互いに自分のことで手一杯で、気持ちをちゃんと伝えられないし、伝わらないんです。自分も、そういうことがあったなって。ちゃんと伝えれば分かち合えるのに、強がって突き放しちゃったこともある。
藤原:へー。
窪塚:僕は、いざ大事な場面で人に気持ちを伝えようとすると、うまく伝えられないんです。言葉足らずだし、天邪鬼になっちゃったりもする。そんなふうに、うまくいかないもどかしさが自分と重なって、すごく共感しました。
藤原:僕は、「つのるほどに 悲しくなるのが宿命」がめっちゃわかります。手紙って、書いているうちに思いが乗ってくるんです。感謝の言葉でも、口で伝えるより感情的になるんですよね。たぶん、そういう思いが文字にも乗るから、届くときにいい感じになるのかなと思います。僕自身、手紙を書きながら泣くこともあるので、この部分に共感できます。
藤原さんはシンガーソングライターとしても活動されていますが、こういった80年代の楽曲にはどんな印象を持っていますか?
藤原:現代の曲って、セオリーがあったりとか。音の配置や語感にこだわったり、結構テクニカルな部分も増えてきているんですけど。この時代って、ホントに魂で言葉を綴っていて、魂で楽器を弾いているんだろうな、というのが伝わってくるので、やっぱりグッときますね。今よりライブ感があるなと思います。

窪塚さんは、現代の楽曲と80年代の楽曲の違いはどんなところに感じますか?
窪塚:共感することが多いのは、80年代とか昭和時代の歌かな。歌詞がストレートだし、魂がこもっているし。自分が経験したことないことでも、自分の経験と重ねて想像できたりするので、すごく刺さるのが昔の曲なのかなと思います。
本作では、asmiさんのカバーされた「大きな玉ねぎの下で」が主題歌になっていますね。
藤原:この映画に、すごく合っていますよね。トラックは若干、現代的にしているけど、歌詞とメロディーは……キーは変わっていますが、昔のままなので。この作品には昔のシーンと現代のシーンがありますが、そういった部分で現代と過去の融合みたいなところも表現しているのがいいなと思いながら聴いていました。
窪塚:本家は力強さがあって。asmiさんのバージョンは、ちょっと歌声が甘くて、桜田(ひより)さんが演じている役の目線というか。また全然違う印象で、とてもいいなと思います。

撮影では今回は全て屋上で行いましたが、天気も良いいのもあって、ノリノリで撮影に入ってくれたお二人。撮影中でも合間では仲良く話しているので、本当に仲のいいお二人なんだと微笑ましく周りも見守っていました。写真は学生の頃に戻ったようなエモい風景の写真から、動いたり、飛んだりと見ているこちらもとても楽しくなるような写真を撮ることができました。インタビューも後編は作品とは少し離れたお二人のプライベートなどにも迫っております。今回は2ショットだったのですが、後編では少し違った写真の仕様になっております。お楽しみに!
藤原大祐
ふじわら たいゆ
2003年10月5日生まれ。
最近の出演作に、テレビ朝日『伝説の頭 翔』(‘24)、関西テレビ、フジテレビ『リビングの松永さん』(‘24)、NHK総合『柚木さんちの四兄弟。』(‘24)、映画では、『リゾートバイト』(‘23)、『追想ジャーニー』(‘22)、がある。
窪塚愛流
くぼづか あいる
2003年10月3日生まれ。
最近の出演作に、テレビ朝日『顔に泥を塗る』 (‘24)、NHK BS『藤子・F・不二雄 SF短編ドラマ シーズン2「じじぬき」』(‘24)、東海テレビ・フジテレビ『あたりのキッチン!』(‘23)、映画では、『恋を知らない僕たちは』(‘24)、『ハピネス』(‘24)、『愛のゆくえ』(‘24)などがある。

©2024 映画「大きな玉ねぎの下で」製作委員会
映画『大きな玉ねぎの下で』
2025年2月7日(金)Roadshow
出演者:神尾楓珠 桜田ひより
山本美月 / 中川大輔 / 伊東蒼 藤原大祐 窪塚愛流 瀧七海
伊藤あさひ 休日課長 和田正人 asmi / 飯島直子
西田尚美 原田泰造 / 江口洋介
監督:草野翔吾 脚本:髙橋泉 ストーリー原案:中村航 音楽:大友良英
主題歌:asmi「大きな玉ねぎの下で」(Sony Music Labels Inc.)
製作プロダクション:ダブ
製作委員会:東映 U-NEXT ダブ ニッポン放送
配給:東映
※Item Credit
藤原さん
・ニット ¥4,950
・シャツ ¥4,950
・パンツ ¥6,600 /すべて CASPER JOHN(キャスパージョン)
その他、全てスタイリスト私物。
※Team Credit
藤原さん
スタイリスト:勝見宜人(Koa Hple inc.)
ヘアメイク:佐々木麻里子
窪塚さん
スタイリスト:上野健太郎
ヘアメイク:WANI(orange)
カメラマン:鈴木寿教
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿