千葉雄大
アクターズ・ショート・フィルム2
『あんた』
自分の人生と照らし合わせて
色々な感想を持ってほしい
5人の俳優が製作費・制作日数など同じ条件で25分以内のショートフィルムを制作するWOWOWのプロジェクト「アクターズ・ショート・フィルム2」。初の監督・脚本を務めた千葉雄大さんは、ある男女の近くて遠い、絶妙な関係値を主軸に据えた作品『あんた』を制作した。初監督・初脚本とは思えないほどに鮮やかに描かれた物語は一体、千葉さんのどこから生まれてきたのか。制作で苦労したエピソードから今回の脚本の根幹、そして監督としての作品の魅力を語っていただきました。
今回初の監督・脚本を
務められたと思いますが、
感想をお聞かせください。
すごく楽しかったです。監督から脚本、主演もやらせてもらって、普通に役者をやっているだけではできないような経験をさせていただきました。見てくださる方がどう感じるのか、普段よりも気になってドキドキしています。
初監督とは思えないくらい
鮮やかに作られていたと思います。
この話はどこから発想を
得られたんですか?
そこはかなり迷いました。「アクターズ・ショート・フィルム2」という企画自体が何をやっても良いという、0から始まるものだったので。普段の役者の時は0から1ではなく、1をどう広げるかという感覚でやっているのですが、今回は0からのスタートで漠然としていました。選択肢が多いと、どうしても悩んでしまうじゃないですか。その中で、何が描きたいんだろうと考えていた時、ふと思い出しことがあったんです。僕、昔から女友達が多いんですよ。小さい頃からそうで、小学生の時は仲良く遊んでいました。でも中学生になると男女が割と分かれるようになると言うか、女の子と仲良くしているだけで、「好きなの?」みたいなことを言われてからかわれたりもしました。ずっとそこに違和感を持っていたんです。それは大人になってからも同じです。そういった思いを軸に今回、脚本を考えてみました。
物語の後半で印象的な
台詞がありますが、
あれは実際の体験に基づいた
台詞なのですか?
自分でもそこはよく分かっていないんです(笑)。僕が監督した作品だからといって、全部が実際に体験したことではない。それよりも見てくれた人に「こういう気持ち知ってる」と思ってもらうことを優先しました。ただ、作品を作る上で自分と向き合う時間は増えたので、自分のめんどくさい部分、人には見せない部分が出ているということは、あるかもしれません。
脚本を書く上で苦労した点は
どこですか?
頭の中に何となくあるものを書き起こして人に伝えるという工程が、想像以上に難しかったです。自分の中で脚本の軸となる物語はあったのですが、それをどうエンタメとして派生させていくか、と考えて書いているうちに、内容もどんどん変わっていきました。そうやって書き進めていく中で登場人物たちが勝手に動き始めてくれたので、その流れに任せたら今回の脚本に仕上がったという感じです。あとは、書き始めが割とエッセイに近い感じだったので、そこから登場人物たちの台詞を作るという点も難しかったです。
かなり書き直しされたんですか?
8〜9回くらいは直しました。どんどん原型から変わっていったし、何なら撮影前日に変えたりもしました。でも今回、監督も脚本も全部自分でやれて良かったと思っています。もし仮に別の方に脚本を書いてもらっていたら、こんなに変えられなかったと思うので(笑)。自分で書いたので、役者さんの質問にもすぐに答えられたり、面白さ重視で内容もその場で変えられたりと、フレキシブルに動けました!
キャスティングの決め手は何ですか?
また監督としてみる、
共演者の皆さんの魅力は?
今回、伊藤(沙莉)さんに出演をお願いしたのは、この作品でやりたかったものが会話劇だったというのが大きいです。あとは前半の「明るさ」が作品のキーポイントだと思っていて、その雰囲気を出してくれる人がいいなと思って色々と考えた時、ピッタリだなと思いました。伊藤さんの度胸と「とりあえずやってみよう!」という姿勢には、監督として助けられました。沖田(修一)さんは現場で間違えて何度か「監督」と呼んでしまって、ややこしい感じになったりしました(笑)。今回、沖田さんにお願いしたスナックの雇われママ役は変に演じている感じがないというか、自然と雰囲気に溶け込んでくれる方が良いと思っていて。色々な案が出る中で「沖田さんはどうだろう?」と。やってくれるのかな? みたいな感じでお願いしたらOKをいただけました。現場でも僕とスタイリストさんが衣装を話し合っている時、沖田さんはシーンの動きを再現して、役を膨らませてくれたりアイデアを出してくれたりと、素敵にサポートしていただけました。本当に色々と勉強になりました。YOUさんはあの雰囲気と言いますか、明確な個性があるじゃないですか。会話にツッコんでくれる感じだったり、その中にちょっと哀愁がある感じだったり。そこが良いなと思って、お声がけさせてもらいました。
監督をしながら演じるというのは、
どんな感覚でしたか?
不思議な感じでした。ただ今回、役者としては全然ダメでした(笑)。演じる時に監督の頭が残っているんですよね。いつもだったらカメラが回る前に集中できるのですが、今回監督なので直前までバタバタしていて、たくさんNG出してしまいました。
最後に監督として作品の
見どころをお願いします。
スタッフの方に編集段階の映像を見てもらった時、割と「こういう話だったんじゃないか」という意見が分かれたんです。そんな風に、見てくださった方には自由に受け取ってもらいたいと思っています。普段から「こういう作品だからこう見てください」という考えがないんですよね。例えばラブソングを聴いた時に、恋人同士の恋愛を想像する人もいれば、家族愛を想像する人もいると思います。そういう風に答えは一つじゃないと思うから、例えば今回の作品の二人の関係性がどう映るかというのは、見た人の人生観によると思います。自分の人生と照らし合わせて色んな感想を持っていただけたら嬉しいですね。
千葉雄大
ちば ゆうだい
お顔が小さく、目が零れ落ちそうなほど大きい。とにかく顔がいい千葉さん。撮影時は光の加減など自ら調整してくれました!インタビュー時の真剣にスタッフの目を見て答えてくださる表情にスタッフ一同、魅了されました。ある質問に答えてくださった時の笑顔は天使かと思うほどかわいかった千葉さん!SNSでもお馴染みのクスっと笑ってしまうような一言で、お茶目な一面も見せてくださりました!とても素敵な取材のお時間をありがとうございました!
「アクターズ・ショート・フィルム2」
2月6日(日) 17:00〜 WOWOWで放送・配信
『あんた』
監督・脚本:千葉雄大
出演:伊藤沙莉 千葉雄大 沖田修一 YOU
番組公式サイト:https://www.wowow.co.jp/movie/asf/
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:堤紗也香
スタイリスト:寒河江健
インタビュー:山根将悟
記事:山根将悟/近谷奈生