豊田裕大
映画『火喰鳥を、喰う』
「生きていくうえで、後悔も執着もしたくない」
「第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞」で大賞を受賞した原浩さんによる同名小説を、水上恒司さん主演で映画化された「火喰鳥を、喰う」が10月3日より公開します。本作で、山下美月さん演じる久喜雄司(水上)の妻・夕里子の弟・瀧田亮を演じた豊田裕大さんが、FASTに2度目のご登場!演じた役や祖父から聞いた戦争体験、作品の見どころやラストシーンの捉え方などをお話しいただきました。

©2025「火喰鳥を、喰う」製作委員会
<あらすじ>
信州のとある村に暮らす久喜雄司(水上恒司)と夕里子(山本美月)の夫婦のもとに、謎めいた日記が届く。それは雄司の祖父の兄で、太平洋戦争末期に戦死したとされる久喜貞市の遺品だった。日記には異様なほどの生への執着が記され、最後のページには「ヒクイドリ、クイタイ」という文字がつづられていた。その日を境に、墓石の損壊や祖父の失踪など、雄司と夕里子のまわりで不可解な出来事が起こり始める。2人は夕里子の大学時代の先輩で、怪異現象に造詣が深い北斗総一郎(宮舘涼太)に、不可解な現象の解明を依頼する。しかし、存在しないはずの過去が現実を侵食していき、彼らはやがて驚愕の真相にたどり着くが……。

今作の原作や脚本を読んでどんな感想を持ちましたか?
実は僕、ホラーが苦手なのでドキドキしながら読んでいたんです。一回目に読んだ時は少し複雑で「これはどういうことなんだろう」という感想を抱いたのですが、何回も読んでいくうちにどんどん理解が深まって、いろいろな解釈があって読み応えのある本だなと思いました。現実世界では起こり得ない怪異が起こる話で、僕自身は、執着というか、思い描いて強く念じることで自分に暗示をかける部分があるので、そこが物語の中でリンクしてるのも面白くて、もしかしたらこうしたことってあるのかも、と思いながら読んでいました。
瀧田亮をどのような人物と捉えて撮影に臨まれたのでしょうか。
見ている方と同じ立場に立てる役でもあるし、物語の中で別の鍵を握っていて、また別の形で導いていくような人物だなという印象を持ちました。冗談を言ったり人の懐に入るのがうまかったりして、少し軽薄に見られるところもありますが、実はそうじゃないんだよ、という部分を大切に役を作っていきました。

「自分の思った通りにチャレンジしてみようと思える現場だった」とコメントされていましたが、具体的に自身にとってチャレンジングだったことは?
日記を見て気が動転してしまう状況や、水上恒司さん演じる雄司に思いを託すところは自分にとって初めてのシーンだったので、そこをフランクに、心がキュッと緊張しないように開放することに挑戦した、という感じです。毎回作品ごとに緊張するのですが、現場を楽しませてくれる皆さんと一緒にできたので、とてもやりやすかったです。
演じていて難しかったところを教えてください。
やっぱり最後のシーンです。ほかの人も含めて、亮も少し人間を逸脱したような存在だなと本を読んでいて思ったので、その雰囲気を表現できればいいなと思っていたのですが、雄司に思いを伝えていくうちにどんどん人間味が出てきてしまって、声色もちょっと強くなったので、そこは難しかったです。

共演者の方から刺激になったことはありましたか?
皆さん刺激になりました。それは自分が役者を始めてからずっとそうで、毎回ご一緒する方から色々な刺激をもらっています。今作も主演の水上さんと山下美月さんは同い年なのですが、お二人ともご活躍されていてすごいなと思いますし、他の作品で見ていた森田望智さんやマルチに活躍されている宮舘涼太(Snow Man)さんなど、みなさんの濃いパワーに自分も乗っかっていくぞという気持ちもありました。
ミステリー作品ではあるものの、戦争というギリギリの極限状態で「火喰鳥」を見ておかしくなってしまうという人の心理も描かれていましたね。
キレイごとだけじゃなく描かれているのが、個人的にすごく好きなところでした。僕の祖父は満州での戦争経験があるのですが、日本に戻るときに金品や色々ものを奪われたり、出会った人が次の日には亡くなっていたりするといった話を聞いたことがあったんです。だから、改めて戦争が起こらない世の中になってほしいと思いました。

おじい様から戦争に行ったお話を聞いたのは、いつ頃だったのですか?
僕が大人になって戦争映画を見た時に、祖父に「どうだったの?」と聞いたら、涙を流して当時のことを話してくれたんです。祖父が泣く姿をそれまで見たことがなかったし、その時に初めて祖父が戦争へ行き、壮絶な体験をしたことを知りました。
「執着」という感情も本作のキーワードの一つかと思いますが、今作の出演をへて「執着」という感情にどんな思いがありますか?
これまではあまり意識していなかったんですけど、僕は生きていくうえで執着したくないと思っています。それは「後悔を残したくない」みたいなことと一緒で、できる限りのことを尽くして人生を歩んでいきたいと改めて思いました。思いの強さがあるからこそ手に入れられるものもあるし、自分の背中を少し押してくれることもあるものなんだと再確認しました。

ラストシーンをどう解釈したら、とずっと考えているのですが、豊田さんは今作のラストシーンをどのように解釈され、受け止めていますか?
「残念だな」という思いと、信じる力や、自分が欲しいと思うものが出来たら、なりふり構わず手に入れたいと強く思って行動を起こすことって大事だよなという2つの思いが湧きました。あとは「お互いを覚えていない2人」というのはちょっと切なかったです……。
もしこの作品に希望があるとしたら、どんなところに見出せますか?
今回の作品のラストは、見方によってはバッドエンドに見えるかもしれませんが、思いをつないでいくための力や強い思いって、やっぱりあるんだと思いました。雄司も一見1人で戦っているように見えるけど、亮が助けたり、夕子が橋渡ししてくれたりする見方もあるので、それは希望だよなと思います。

豊田裕大
とよだ ゆうだい
1999年4月10日生まれ。
前回に引き続き、夜に取材の時間をいただいた、豊田さん。ちょうど半年前に取材をさせていただきましたが、この半年の間でより大人っぽくなられていて、インタビューでのお話もさらに厚みを感じるお話っぷりでした。そして豊田さんといえば食のイメージでしたが今回のインタビューでまた新たな豊田さんと言えばを発見することができ、すごく嬉しかったです。後編では、そんな新たな豊田さんにちなんだことを伺っております。お楽しみに!
最近の出演作に、テレビドラマでは、TBS『DOPE 麻薬取締部特捜課』(‘25)、TBS日曜劇場『御上先生』(‘25)、フジテレビ『コスメティック・プレイラバー』(‘24)、フジテレビ『高額当選しちゃいました』(‘24)、映画では、『法廷遊戯』(‘23)、『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』(‘23)などがあり、2026年1月期にはドラマ『コスメティック・プレイラバー Season2』の放送が控えている。

©2025「火喰鳥を、喰う」製作委員会
タイトル:『火喰鳥を、喰う』
公開表記:10月3日(金)公開
キャスト:水上恒司 山下美月
森田望智 吉澤健 カトウシンスケ 豊田裕大
佐伯日菜子 足立正生 小野塚勇人/麻生祐未
宮舘涼太(Snow Man)
監督:本木克英
原作:原浩「火喰鳥を喰う」(角川ホラー文庫/KADOKAWA刊)
脚本;林民夫
音楽:富貴晴美
主題詩歌マカロニえんぴつ「化け物」
配給:KADOKAWA GAGA
©2025「火喰鳥を、喰う」製作委員会
※Item Credit
・ジャケット〈ADDIXY/https://www.addixy.com〉
・パンツ〈THE JEAN PIERRE / ADONUST 03-5456-5821〉
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
インタビュー:根津香菜子
記事:根津香菜子/有松駿
