中沢元紀
映画『ファストブレイク』
やりたいと思ったことはすぐに実行に移すようになった
『ファストブレイク』で映画初主演を務める中沢元紀さん。バスケットボールにすべてをささげた高校生たちを描いたスポーツ青春物語だが、自身の高校時代にも重なるそう。当時の思い出も含め、役作りや撮影時の裏話、迫力あるバスケシーンの撮影についてなども伺いました。
Ⓒ 2024 ファストブレイク製作委員会
<あらすじ>
草村駿斗(中沢元紀)は、中学卒業と同時に不良を卒業。母を安心させようと高校に進学し、大学推薦を目当てに部活をすることを決意する。バスケ部に入部したものの、実は部員数が足りず、廃部の危機にあった。バスケをしたい一心で練習に励み、新入部員を勧誘し、幽霊部員も復活させた駿斗。ようやく公式戦への出場が決まるも、すぐに状況は一変。駿斗の過去のケンカが発覚し、バスケ部に活動停止処分が下ることに。不良に絡まれた女子高生を救ったというのがケンカの理由なのだが、教師たちには信用してもらえない。せめてバスケ部の仲間を守ろうと、駿斗がとった行動とは――。
本作に出演が決まったときの気持ちを教えてください。
すごく不安でした。ちょうど並行して、ドラマ『ひだまりが聴こえる』を撮影していたということもありますし。『ファストブレイク』も6日間という短期間での撮影だったので、心に余裕がなかったと思います。
撮影が進むうちに、その不安は軽減しましたか?
いや~、全然(苦笑)!次のシーン、次のシーンという感じでノンストップで撮影が進んだので。しかも、この作品はお芝居以外にバスケシーンの撮影もあったので、最後までずーっと頭をフル回転させている状態でした。
クランクイン前に、バスケの練習期間もあったのですか?
はい。そのおかげで、バスケシーンに関してはあまり不安なく臨むことができてました。(バスケ部員役のキャスト)みんなであたふたしながらも(笑)、協力して頑張りました。
一発でゴールを決めないといけないシーンなどもありましたよね。
ありました。あと、「リングのこっち側に(ボールを)外してくれるとうれしいです」という指示もあったりしたので、難しかったです。常に“できるかな!?”と不安でした。
でも、本番ではほとんどNGなく?
はい!奇跡的に(笑)。
中沢さん演じる草村駿斗という役ヘは、どのようにアプローチしていったのでしょうか。
駿斗のキャラクターは、自分のなかにはないものでしたし。『ひだまりが聴こえる』で演じていたのが駿斗と正反対の役どころだったので、演じるのが難しいなと思っていたのですが、外見が変わることで、気持ちも切り替えることができたので。衣装やヘアセットに助けられた部分は結構あるかなと思います。
現場でヘアメイクをしてもらうと、スイッチが切り替わった?
はい、まさにそうですね。
駿斗の、強がっているなかでふと見せる笑顔がかわいかったです。
わっ、ありがとうございます(笑)。そうですね、仲間にしか見せない笑顔がありました。
特に印象に残っているシーンは?
駿斗がバスケにハマる瞬間です。キャプテン(根本正道/小林亮太)と1on1をするシーンなのですが、撮影も長回しで、二人とも本気で戦っていたので。カットがかかった瞬間はとても気持ちよくて、バシッとハマった感覚がありました。
そのシーンの撮影前には、小林さんと打ち合わせをしたのですか?
いや、ほとんどしなかったです。寄りで撮るときの動きは決まっていましたが、引きで撮るときは自由に動いていたので。撮影中は、ホントに1on1の勝負をしている感覚でした。
撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?
ホントにギュッと集中して撮影していたので、キャストのみなさんともあんまりお話しできなかったんです。もちろん、みんなでバスケをするシーンとかは意見を出し合いながら撮影したので、まったくコミュニケーションをとれなかったわけではないんですけど。
撮影期間中は、みんなでごはんに行く余裕がなかった?
そうなんです。ただ、オールアップの日にみんなでごはんに行くことができて。そこでプライベートなお話とか、「また共演したいね」という話ができたのが、すごくうれしかったです。
撮影の合間にお話しするときは、主にお芝居について?
そうですね。それぞれのキャラクターを考えつつ、お芝居のテンポについて話し合ったりとか。
みんなで話し合ったことで、さらによくなったというシーンはありますか?
駿斗が(バスケ部の)キャプテンとマネージャー(角野慎之助/荒井啓志)と、部室で着替えながら話すという長めのシーンがあるんですけど。やっぱり何かをしながら話すというのは難しいので、そこのテンポ感は、リハーサルをやった後に監督と4人で話し合いました。最終的に、テンポよくいけるように全部の動きを決めてしまって、ホントに男子高校生の会話に見えるように改善しました。
座長として、現場で心がけていたことがあれば教えてください。
いや~、もう自分のことで精一杯で余裕がなくて……。積極的に「頑張ろう!」とみんなに声をかけるタイプでもないし、ホントに探り探りで。ただ、その分、お芝居の部分では積極的に意見を言おうというのは意識していました。
ご自身は高校時代、どんな生徒でしたか?
あんまり前に出るタイプではなかったので、クラスの中心にいる感じでもなく、ずっと部活のハンドボールに打ち込んでいました。
部活に打ち込んでいるという部分は、駿斗と似ていますね。
そうですね、そこは駿斗と自分自身がすごく重なりました。実際にハンドボール部もギリギリの部員数で、みんなで協力しながら1勝を目指してがんばっていたので。そこも似ています。
本作のタイトルにちなんで……中沢さんは、“ファストブレイク”タイプか、それとも、いったん時間を置いてじっくり考えるタイプか、どちらでしょうか。
この仕事を始めるまでは、いったん考えるタイプだったんですけど。この仕事を始めてからは、自分がやりたいと思ったことはすぐに実行に移すようになったかもしれないです。
それは、何かきっかけがあって変化したのですか?
やっぱり、待っているだけではチャンスを逃すこともありますし。そういう経験もいっぱいして、“ああしておけばよかった”と後悔することがあったので、まず飛び込むことも大事だなと思うようになりました。
例えば、どんな後悔が?
ホントに細かいことなんですけど……通っていた高校が、1年生のときに特進クラスか普通クラスかを選択しなければいけなくて。僕は特進クラスを選んだものの、友達をいっぱい作って、部活をがんばりたいという思いもあったので。やっぱり普通クラスにすればよかったかな、とか考えているうちに期限がきてしまって。結局、特進クラスに入ったんですけど、そのせいで部活の時間が削られてしまったりとか。
そんなに違いがあるのですね。
特進クラスは、普通クラスより1時限多いので、部活に行ける時間が遅くなってしまうんです。なので、当時はすごく後悔しました。
「この仕事を始めてからは、自分がやりたいと思ったことはすぐに実行に移す」とおっしゃっていましたが、例えばどんなことですか?
以前、玉木宏さんと映画『沈黙の艦隊』でご一緒したとき、空き時間に、玉木さんがブラジリアン柔術をやってるというお話をされていたんです。もともと僕もアクションに興味があったので、玉木さんが柔術に誘ってくださったときは、もう迷うことなく「行かせてください!」と言いました。次につながりそうなことには、自分から貪欲にいかなきゃいけないなって。すぐに実行に移すという部分で一番よかったなと思うのは、それですね。
ブラジリアン柔術を始めたことでの変化は感じますか?
カラダの使い方が上手になったような気がします。ブラジリアン柔術というのはすごく難しくて、力が強ければ勝てるわけではなく、ホントに経験が物をいうんです。そういう意味では、続けていることによって、カラダの使い方だったりがお芝居にも自然と取り入れられている実感があるので。始めてよかったなと思います。
中沢元紀
なかざわ もとき
2000年2月20日生まれ。
始まるまで外を眺めて束の間の休憩をされていた中沢さん。ですが、取材が始まるとすぐに仕事モードに切り替わり、インタビューではこれまでのことから今のこと、これからのことなどたくさんお話をしてくださいました。お話中では終始とても真剣な表情で、伝える相手に敬意を示し、わかりやすい言葉で相手に伝える、聞いている側にも心に届くように伝わるように話してくださるお話の仕方がすごく魅力的でした。また会話の中でたまに見せるニコッとした表情は周りを柔らかくしてくれる力があり、中沢さんの周りの人に対する優しさを感じるインタビューのお時間となりました。
後編ではこれからの目標に迫っております。お楽しみに。
最近の出演作に、テレビドラマでは、テレビ東京『ひだまりが聴こえる』(‘24)、フジテレビ『366日』(‘24)、TBS『下剋上球児』(‘23)映画では、『さよならモノトーン』(‘23)、『沈黙の艦隊』(‘23)などがあり、2025年放送予定のNHK『連続テレビ小説 あんぱん』も控えている。
Ⓒ 2024 ファストブレイク製作委員会
作品名:ファストブレイク
CAST:中沢元紀
押田岳 小林亮太 中山優貴 谷水力 荒井啓志 奥谷知弘 京山陽春
校條拳太朗 田中柊羽 佐久間あゆみ 福留光帆 中根もにゃ 麻弥 田中沙季
鈴木千佳子 芹沢尚哉
大鶴義丹
川上麻衣子
STAFF:脚本・監督:長谷川徹
製作総指揮:大村恵一
ゼネラルプロデューサー:吉本暁弘 プロデューサー:明石大助 古谷洋行 古川秀明 神谷光
ラインプロデューサー:佐藤悠 アソシエイトプロデューサー:神田明子
音楽:後藤冬樹/[オープニング]ジュリアナの祟り/[挿入歌]大江翔萌美/[エンディング]STARMARIE
撮影・編集:西川祐司 照明:親川龍之介 録音:竹内勝一郎
スタイリスト:後原利基 ヘアメイク:田中紫央 助監督:中根克
製作:ファストブレイク製作委員会
配給:ムービック
2024年度作品/上映時間:83分
Ⓒ 2024 ファストブレイク製作委員会
11月22日(金)より、グランドシネマサンシャイン池袋他にて公開
※Item Credit
衣装協力
コムデギャルソンとヨウジヤマモトだけの古着屋ONthe CORNER、LAPIIS
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:速水昭仁
スタイリスト:田中トモコ
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿