のせりん
映画『近畿地方のある場所について』
今年の夏はこの作品を観てヒヤッとなってほしい
発行部数70万部を突破するなど、話題沸騰中の小説『近畿地方のある場所について』が、ついに実写映画化されます。怪異に巻き込まれる大学生・目黒裕司を演じるのせりんさんに、役作りについてや、撮影時の思い出などをお聞きしました。自身もホラー作品が苦手とのことで、克服法も教えてもらいました。

©2025「近畿地方のある場所について」製作委員会
<あらすじ>
行方不明になったオカルト雑誌の編集長。彼が消息を絶つ直前まで調べていたのは、幼女失踪、中学生の集団ヒステリー、心霊スポットでの動画配信騒動など、過去の未解決事件と怪現象だった。彼は、なぜ消息を絶ったのか?今どこにいるのか?オカルトライター・瀬野千紘(菅野美穂)と雑誌編集者・小沢悠生(赤楚衛二)は、彼の行方を探すうちに、恐るべき事実に気がついた。すべての謎は“近畿地方のある場所”へとつながっていたのだった……。

目黒役はオーディションで決まったそうですが、オーディションで印象に残っていることを教えてください。
極端に言うと、「お芝居はしなくていい」と。それぐらい「自然に」と、何回も言われました。普段しゃべっているときに、「あのー」とか「こう」みたいな言葉が無意識に出ることがありますが、セリフにそういう言葉をつけて言ったりしてもいいと。だから、できるだけ自然にセリフを言うことをすごく意識しました。
オーディションが終わったときは、手応えはありましたか?
まったくなかったんです。
そうなのですか!?出演が決まったときは、どんな気持ちでしたか?
うれしかったです。映画のお仕事はこれが2本目なのですが、また映画に携われるのもうれしかったし、白石監督の作品に出られるんだ!といううれしさもありました。
もともと、白石監督の作品はご覧になっていたのですか?
はい。ホラーは苦手なのですが、今回のオーディションの前にも「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」シリーズや『サユリ』を観ました。すごくおもしろかったです。

原作はお読みになりましたか?
はい、オーディションの前に読みました。
そのうえで、脚本を読んだ際の感想を教えてください。
僕、普段はあまり小説を読まないんです。それに加えて、ホラーもあまり通ってこなかったので、原作の文字で読むホラー小説がすごく怖くて。これが映像になるとどうなるんだろうと思いながら読んでいたんですけど、脚本を読んで原作とは全然違うふうになるんだろうなと思いました。でも、原作の気持ち悪さというか、不穏な感じはそのまま継承されていたので、読みながら“うわっ!”となりました。
のせりんさんの出演が発表された際には、SNSなどにたくさんの期待コメントが寄せられていましたね。
DMでも「楽しみ!」といただいたり、友達からも「えっ、ヤバ!」みたいな反応がありました(笑)。エゴサーチはほとんどしないので、世間の反応はあまりわからないのですが、直接いただいたものは結構好反応で、うれしかったです。
今回、初めて特殊メイクに挑戦されたとか。
特殊メイクをしてもらうのは初めてだったのでドキドキしていたのですが、すごくおもしろかったです。皮膚を伸ばした状態でファンデーションを塗って、そのまま乾燥させてから元に戻すと、皮膚が縮まってシワシワになるらしくて。それを、1時間ちょっとかけて顔と手に施してもらいました。撮影自体は2、3日だったのですが、毎回、楽しみでした。

“自分の顔がこんなに変わるんだ!?”と。
はい。あのメイクをすると、ホントに元気がなくなってくるんです(笑)。見た目から入るって、大きなことなんだなと思いました。
目黒のビジュアルは、ご自身の意見も反映されているのでしょうか。
メガネは、フィッティングのときに「これ、いいな」「これもいいかな」とか、たくさんかけてみた中から自分で決めました。ほかにも、時計とか小道具がいっぱいあって。スタッフさんと相談しながらフィッティングするのが、楽しかったです。
普段SNSなどで拝見するのせりんさんとは、まったく違う印象ですよね。
そうですね。服も、普段あまり着ない感じのものですし。でも、この作品に限らず、ドラマや映画のなかで着ている衣装は、僕が着ないようなものが多いかもしれないです。だから、演じる役柄に沿った洋服を衣装として着られるのがすごくうれしいです。
のせりんさんは、個性的な服を着こなしているイメージがあります。
わりと奇抜なものが好きで、普段着る洋服とは違う服がずらっと並んでいると、逆に“どれがいいんですか!?”となってしまうので、基本的にはおまかせすることが多いんですけど、今回は、相談しながら決めました。

オーディションと同様、リアリティを求められる撮影だったかと思いますが、監督とはどんなお話をしましたか?
監督には、初日から「もっと自然に」「もっと間が空いてもいいよ」「台本を忘れて」と言われました。怪異に巻き込まれた目黒がオカルト雑誌からインタビューを受けるシーンで、「今、こうやってしゃべっているように、そこにたまたまカメラがある感じで」とご指導いただいたのですが、演じているうちにホントに取材を受けている気持ちになりました。
ナチュラルにお芝居をするのは難しかったですか?
そういうお芝居のほうが難しいとよく聞くので、大丈夫かな!?と思っていたんですけど……自分的には、結構やりやすかったです。僕は、どちらかというとカロリーを使う役のほうが、緊張したりカメラを意識しちゃったりするタイプなので、ナチュラルなお芝居は、意外に向いているのかもしれないと思いました。
作品の公式Xで、のせりんさんの紹介コメントに「絶賛の演技」とありましたが、監督からはどのような絶賛を?
目黒が、とある怪異を目撃するシーンで、「男の子の首がこうなっていて~」とインタビューで説明をするセリフを言うとき、実際に首をカコンって倒したんです。それが、思っていた以上に後ろに倒れたみたいで、「あれはよかった」「首、柔らかいね」と褒められました(笑)。すごくうれしくて、「ありがとうございます!光栄です」と言いました。
目黒がお祓いを受けるシーンも、心理的な恐怖を感じました。
怖かったです。あのシーンの撮影が行われたのは、僕がクランクインした日だったのですが、本編では結構日数が経っているシーンだった中盤なので、どこまでやっていいのかな、というのはすごく悩んで。「目黒は今、どこまで蝕まれているんだろうか」というのを考えながらお芝居しました。

動物に囲まれるシーンもありましたが、撮影はいかがでしたか?
(ネコなどの)動物って、段取りとテストと本番とで、同じ動きをするのって難しいじゃないですか。だからどうするんだろうと思っていたのですが、すごく賢くて。最初は僕、ネコちゃんにギャーギャー言われて(笑)、「あー、ごめんね、ごめんね」とか言いながらやっていたんです。でも、トレーナーさんから「本当の飼い主の気持ちになって、ガッと強めにいって大丈夫です」とアドバイスをいただいて、そのおかげで、とてもスムーズにできました。
完成した作品をご覧になっての感想を教えてください。
台本は全部読んでいるので展開はわかっているはずなのに、映像になるとホントに怖くて、こんなにも見るのが怖くなるものなんだ!?と思いました。昔のビデオを再現した映像の質感から劇中に出てくる細かい資料まで、本当に実在するんじゃないかと思うくらいリアルですし、効果音やBGMもすごかったです。
というと?
暗闇を歩くときの「ギシギシ」みたいな音や、山から聞こえてくる謎の声も想像していたものと全然違って、ホントに怖かったです。
特に恐怖を感じたシーンは?
いっぱいあるんですけど……僕、“ビックリ”が苦手で。地下の資料室で、千紘(菅野美穂)が小沢(赤楚衛二)の肩に手を置いて、小沢が驚くシーンがあるんです。そこも、千紘の手だとわかってはいるのに、絶対にビックリしちゃうんです。あとは……でも、中盤から後半にかけてはもう、(両手で目を覆いながら)ずっとこうやっていたかもしれない。資料映像が流れる場面とかでも、“きそう”だなっていう雰囲気なのに“いや、こないんかい!”みたいなところが結構あって、ハラハラするんです。

©2025「近畿地方のある場所について」製作委員会
“見てはいけない動画”も怖いですよね。
撮影のときはスマホで見ていたんですが、スクリーンの大画面で見たときは絶対に直視できないと思ったので、手で目隠ししていました(笑)。あの動画、ホントにクオリティが高くて怖いんですよ!でも逆に、菅野さんと赤楚さんがトンネルで車を飛ばすシーンとかは大丈夫……というか、わりと好きです(笑)、飛び抜けて変なものや絶対にないと思えるものは大丈夫で、リアリティのあるものが苦手なのかもしれないです。
『近畿地方のある場所について』を観たいけど、怖いのは苦手という方に、克服法などがあれば。
怖さは、手で耳をふさいでいれば大丈夫!ただ、ずっと押さえていると慣れてしまって音が聞こえてきちゃうので、細かく開けたり閉じたりするのがコツです(笑)。それを、“わっ、怖そうな演出がくる!”という瞬間にやるのがいいと思います。なるべくちゃんと見てほしいですけどね(笑)。
あらためて、本作の公開を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。
今年の夏もすごく暑いので、ぜひこの作品を観てヒヤッとなってください。「ホラーは夏に見るもの」というのが、僕、今までよくわからなかったのですが、この作品に携わってわかった気がします。どうしても怖いという人は、誰かと一緒に観にいくのもおすすめです!

のせりん
2003年3月25日生まれ。
インタビューが始まる前は、少し緊張気味だったのせりんさん。お話しをし始めるとインタビューではお芝居に対してはしっかりとしたイメージや目標、やりたいことを明確に持たれていて、22歳とは思えぬしっかりとした答えでした。しかし、徐々に慣れてきて、時折見せる若々しく可愛らしい一面や、恥ずかしそうに照れて答える場面等、いろんな質問にも真面目に、時に楽しそうに答えていただきました。その質問は後編に!どの質問かはぜひ探してみてください。
後編では初登場ということもあり、色々なのせりんさんに迫っています。お楽しみに!
最近の出演作に、テレビドラマでは、カンテレ・フジテレビ系『僕達はまだその星の校則を知らない』(‘25)、TBS『毒恋〜毒もすぎれば恋となる〜』(‘24)、日本テレビ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(‘23)、映画では、2026年公開予定の深川栄洋監督オリジナル作品『あなたの息子引き出します!』が控えている。

©2025「近畿地方のある場所について」製作委員会
原作:背筋「近畿地方のある場所について」(KADOKAWA)
出演:菅野美穂、赤楚衛二
監督:白石晃士
脚本:大石哲也 白石晃士
脚本協力:背筋
音楽:ゲイリー芦屋 重盛康平
主題歌:椎名林檎「白日のもと」(EMI Records/UNIVERSAL MUSIC)
配給:ワーナー・ブラザース映画
オフィシャル:公式サイト KINKI-MOVIE.JP/公式X @kinki_movie
コピーライト:©2025「近畿地方のある場所について」製作委員会
ハッシュタグ:#近畿地方のある場所について
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿