曽田陵介
映画『惑星ラブソング』
大学時代の自分と似ているので等身大で演じられた
映画『惑星ラブソング』は、終戦80年の広島市を舞台に繰り広げられる、不思議で壮大なストーリー。幻想的な物語を描くことに定評があり、広島県に活動拠点を置く時川英之さんが監督・脚本を手掛け、プロデューサーの横山雄二さんと完成させました。本作で主演を務める曽田陵介さんに、自身の演じる役の印象や撮影時の思い出などを伺いました。

©映画『惑星ラブソング』製作委員会
<あらすじ>
ある日、広島の若者・モッチ(曽田)とアヤカ(秋田汐梨)は、謎めいたアメリカ人観光客・ジョン(チェイス・ジーグラー)と出会い、広島の街を案内することに。ジョンには奇妙な力があり、街の至るところで何かを見つけていく。一方、小学校で原爆の歴史を学び、怖くなった少年ユウヤ(西川 諄)はその夜、夢を見る。夢のなかの少女は、ユウヤを戦時中の広島の街へと誘う。彼らに起こる不思議な物語は混ざり合い、大きな渦に。この街の過去と現代が交錯し、幻と現実が融合し始める。やがて、忘れられていた愛の歌が街に響き、人々は一つの奇跡を見つめる。広島が放つ。愛と平和のファンタジー。

曽田さん演じるモッチは、表情で見せる繊細なお芝居が印象的でした。
そうですね。直接的というよりは、“内に秘めた思いが、ふとこぼれる”みたいなお芝居が多かったかもしれません。言葉と行動が裏腹というか。アヤカに対しても、ちょっとキツいことを言っているけど、“ホントにアヤカのためを思って言っているんだよ”みたいな。それは、モッチのよくない部分でもあるんですけど。
演じるうえで、心がけていたことはありますか?
脚本を読んだときに、とてもリアルに描かれていると感じたんです。モッチって、大学時代の僕と似ているんです。まぁ僕自身は、そこまで悲観的ではなかったですけど(笑)。だからこそ、等身大で演じられたと思います。
モッチのどんなところに共感できましたか?
やりたいことが、なかなか見つからないところとか。僕も大学時代、就活をしてはみたものの、“これは、ホントに自分のやりたいことなのかな”みたいに考えてしまうことがあって。先の見えない未来へ焦りを感じているところが似ていると思いました。当時の僕は、初めての就職ということで、“自分の人生をここで決めなきゃいけない”と思い込んでしまっていたんです。今思うと、全然そんなことはないんですけど。

作品の舞台が広島県ということで、モッチは広島弁を話します。曽田さんも広島の大学に通っていたそうですが、当時は広島弁を話していたのですか?
いや、全然しゃべってはいなかったです。でも、周りの友達には広島の方もいましたし、語尾につける「じゃけぇ」とかには聞き馴染みがあったので、今回のセリフもすんなりと入ってきました。ただ、広島の言葉って特有のイントネーションがあったりするので、そこは教えていただきながら。
特に思い出に残っているシーンを教えてください。
ラストシーンは、すごく印象深いです。ジョン役のチェイス(・ジーグラー)とのやり取りは英語なので、まず、言語自体の難しさがあるし。チェイスのセリフを受けての芝居も、すごく難しかったです。あと、原爆ドームの前で撮影をさせていただいたのですが、ホントにここで撮影をしていいのかな、という気持ちにもなりました。
それは、どういう意味で?
戦争は、現実にあった出来事で……何といえばいいのかな……世界平和を祈念する象徴的な場所を、映画というエンターテインメントに使っていいのか。ここで、このセリフを言っていいのか、とか。そういうところは、撮影中もすごく気になりました。

先日、広島県先行公開舞台挨拶付き上映会が行われましたが、地元の方々の反応はいかがでしたか?
みなさん、すごく前向きに受け入れてくださっているのが伝わってきて、ホッとしました。広島の方がそういう反応をしてくださって、ひと安心というか。
ひさしぶりの広島はいかがでしたか?
大学時代は、街なかには数えるぐらいしか行ったことがなかったんです。なので今回、新しく広島を知れたというか。“この建物は、戦前からあるんだ?”とか、初めて知ることが多くて新鮮でした。
空き時間にはお好み焼きも召し上がったそうですが、大学時代より量を食べられなくなった、みたいな変化も?
たしかに、ムリはしなくなりました(笑)。大学生の頃は、お酒を飲んだ後にお好み焼きを食べることが多かったんです。フツーは飲みの締めっていうと、ラーメンとかじゃないですか。でも、広島のお好み焼きには麺も入っているから、締めとして食べることが多かったです。

ちなみに、好きな具材は?
シンプルに豚玉ですね。ソースたっぷりで(笑)!あと、マヨネーズもマストですね。
では、曽田さんが広島を案内するとしたら?
「ほの湯」!温泉施設なんですけど、岩盤浴とかサウナとか露天風呂とか、いろいろあって、大学時代によく行っていたんです。今回の撮影のときも、空き時間に行きました。また、路面電車で帰るのもいいんです。ホントは宮島とかも行きたかったんですけど。残念ながら、時間がなくて……。
劇中で流れるテーマソング『Peace Song』は胸に沁みる名曲ですが、曽田さんが世界平和を願って街に流すとしたら、どんな楽曲を選びますか?
うわっ、難しい!平和を願ってですもんね?なんだろうな…………あっ、『上を向いて歩こう』はどうでしょう。歌詞もステキだし、曲調も好きなんです。

改めて、本作を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。
この作品は平和がメインテーマになっていますが、恋愛要素やファンタジー要素も入っていて、いろいろな視点から観ていただける映画です。あまり構えずに、映画館に遊びにいくような感覚で観ていただけたらうれしいです。

曽田陵介
そた りょうすけ
1997年10月24日生まれ。
普段しっかり者の役やクールな役を演じることの多い曽田さんですが、インタビュー中は、気さくに柔らかく砕けた雰囲気でお話してくださいました。地元にも近く、学生時代を過ごされているのもあり、作品への感情の思い入れもすごく伝わってきました。また空き時間での過ごし方やおすすめスポットも過ごされたならではの回答で、誇らしげの表情は可愛らしかったです。後編では、これまでの役者人生を振り返っていただきました。お楽しみに!
最近の出演作に、テレビドラマでは、ABCテレビ・テレビ朝日『いつかヒーロー』(‘25)、関テレ・フジテレビ『スノードロップの初恋』(‘24)、TBS『笑うマトリョーシカ』(‘24)、映画では、『交換ウソ日記』(‘23)、『なのに、千輝くんが甘すぎる』(‘23)などがあり、7月期のドラマ『放送局占拠』や7月4日『映画おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』も控えている。

©映画『惑星ラブソング』製作委員会
『惑星ラブソング』は広島県先行公開中、
6月13日(金)よりシネマート新宿、池袋シネマ・ロサほか全国で公開中。
監督・脚本・編集:時川英之
出演:曽田陵介/秋田汐梨、Chase Ziegler、八嶋智人
西川諄、Raimu、谷村美月/川平慈英
さいねい龍二、塚本恋乃葉、西村瑞樹、キコ・ウィルソン、松本裕見子、田口智也、HIPPY
配給:ラビットハウス
©映画『惑星ラブソング』製作委員会
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:仙波夏海
スタイリスト:岡村春輝(FJYM inc.)
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿