大西利空
映画『水は海に向かって流れる』
“あえて真っ白な状態で臨む”
自分のスタイルをつかむきっかけになった作品です
2023年6月9日より公開される映画『水は海に向かって流れる』にて、広瀬すずさん演じる主人公・榊千紗に想いを寄せる直達役に抜擢された大西利空さん。自分にとってターニングポイントになったと語る彼に、この作品に対する想いや見どころとなるシーンなどを伺いました。
<あらすじ>
通学のため、叔父・茂道の家に居候することになった高校生の直達。だが、どしゃぶりの雨の中、最寄りの駅に迎えにきたのは見知らぬ大人の女性、榊さんだった。案内されたのはまさかのシェアハウス。いつも不機嫌そうにしているが、気まぐれに美味しいご飯を振舞う26歳のOL・榊さんを始めとし、脱サラしたマンガ家の叔父・茂道(通称:ニゲミチ)、女装の占い師・泉谷、海外を放浪する大学教授・成瀬……と、どれもクセ者揃いの男女5人、さらには拾った猫・ミスタームーンライト(愛称:ムー)をきっかけにシェアハウスを訪れるようになった直達の同級生で泉谷の妹・楓も混ざり、想定外の共同生活が始まっていく。そして、日々を淡々と過ごす榊さんに淡い想いを抱き始める直達だったが、「恋愛はしない」と宣言する彼女との間には、過去に思いも寄らぬ因縁が……。榊さんが恋愛をやめてしまった《本当の理由》とは……?
原作や脚本を読んでの感想を教えてください。
すごく鮮やかで綺麗な作品という印象でした。オーディションに受かったと聞いてから初めて原作を読ませていただいたのですが、とても大きな役で驚きました(笑)。「自分にできるかな」という、疑問というか不安というか、それが最初に背負った感情でした。なので、初めは演じる上での難しさなどを考えながら読んでいたのですが、物語がすっと入ってきていつの間にかそんなことも忘れて夢中になって読んでました(笑)。
ご自身が演じる熊沢直達はどのような人物だと
捉えていらっしゃいますか?
自分の言いたいことなど、自分の心をしっかり持っていて、すごく正直で良い子だなという風に思っています。
ご自身との共通点はありますか?
自我をしっかり持っているというか、僕も結構正直に言うタイプなので、そういうところはすごく共感できますし、似ているところかもしれません。直達は年上の女性に憧れを抱くんですけど、僕は同い年の方が分かり合えるかなと思うタイプなので、そこは違うかもしれないですね(笑)。でも、そういった自分とは違う部分もある役を演じることができて楽しかったです。
役にはどのようにアプローチしていきましたか?
直達は序盤から中盤にかけてはあまり自分の想いを外に出さずに内に秘めていたのですが、一度想いをさらけ出した場面以降、榊さんや他の人に対する振る舞いが変わっていくんです。そういう変化の表現やバランスなどを自分で考えながら、大切に演じました。
直達は高校生ですが、
大人っぽい印象も受けました。
そうですね。直達を取り巻く環境は普通の16歳が過ごす環境とはまた違ったものですし、大人に対する意見なども同年代の子とはちょっと違うものを持っている子なのかなと思いました。年齢的には僕自身と同世代ですが、考え方や価値観みたいなものは僕よりちょっと大人なのかなって。
主演の広瀬すずさんの印象はいかがでしたか?
言うまでもなく本当にいろいろな作品に出演されている女優さんですし、表現力もすごくて、前々から憧れていた存在でした。そんな方の相手役として作品を成り立たせていくことにプレッシャーも感じました。喜びももちろんありましたが、最初の頃はプレッシャーのほうが大きかったです(笑)。
広瀬さんとの撮影で
印象に残っているシーンはありますか?
広瀬さん演じる榊さんは普段はあまり感情を表に出さないタイプなのですが、とあるシーンでそれを吐き出す場面があって、その撮影ですごく感動したことを覚えています。それは直達に向けて吐き出されたものではないのですが、隣に立っているだけで圧倒されました。
直達が思いを寄せる榊さんの魅力は
どんなところにあると感じていますか?
ちょっと怖いなと感じるところがあると思ったら、ご飯を振舞ってくれたり優しいところもあったりと、波があってどこかつかめないようなミステリアスな雰囲気が魅力的だと思います。直達は好奇心が旺盛な性格だと思うんですが、そういうところに惹かれたのかなと思います。
見どころを挙げるとしたら
どの場面になりますか?
直達が感情を露わにして涙を流すシーンがあるのですが、とても重要な場面だと思うので、見ていただきたいです。そこからの直達の感情、行動の変化、物語がどう進んでいくのかにも注目していただけると嬉しいです。
その場面は
2日に分けて撮影されたとのことですが、
それは予定通りだったのですか?
元々は1日で撮影しきる予定でした。でも僕が上手く感情表現できなくて、監督が「次の日にまたやろう」と話してくださり、2日間になりました。上手くいかなかったことが本当に悔しくて、僕自身いろいろな感情はあったのですが、監督や他のスタッフ、キャストの方々など本当にいろいろな方から励ましていただいて、切り替えることができたんです。1日目の撮影のあと帰宅してから次の日の撮影まではあえて考えることをやめて、真っ白な状態で2日目を迎えました。
真っ白な状態で臨めたのは良いことだった?
はい。普段からあまり考えすぎずにお芝居をすることが僕的には合っているのかなと思っていて、今までもそれを無意識的に意識してやってきたんです。でも、やっぱり最初に台本を読んだときからそのシーンの大事さ、この作品においてそのシーンが与える影響の大きさを自分の中で分かっていたので、クランクインしてからその日が来るまでずっとどこかで気にしていました(笑)。それが普段の自分らしくない感じでした。
1日目は
少し考えすぎていたということでしょうか?
そうですね。それが自分にとってあまり良くないことだと分かってはいながら、それでも考えずにいられなかったんです。でも周りの方のおかげで切り替えることができて、その日はゆっくりお風呂に入って、次の日の撮影に臨めました。
今回の作品に携わったことによって
ご自身に何か影響はありましたか?
さっきお話ししたシーンでつまずいたことが僕にとって一番大きなことかなと思っています。今までできていたことができなかったので、大事なシーンに向けての心の持ち方とか、気持ちの切り替え方などはすごく勉強になりました。自分自身のスタイルというものも何となくつかめてきた気がします。人生においてターニングポイントになったのかなと思います。
大西利空
おおにし りく
インタビュー中も撮影中も、16歳(取材当時)とは思えないほどの落ち着きをみせていた大西さん。じっとカメラを見据える瞳がとても印象的でした。少しだけ見せてくださった笑顔の破壊力も抜群です! 後編では、撮影現場の様子や普段の大西さんについて探っていきます。お楽しみに!
2006年5月16日生まれ。
近年の出演作に、映画『キングダム』(19)、『るろうに剣心 最終章The Final』(21)、NHK『引きこもり先生シーズン2』(22)、Hulu『君と世界が終わる日に Season4』 (23)などがある。
映画『水は海に向かって流れる』
2023年6月9日(金)公開
出演:広瀬すず
大西利空 高良健吾 戸塚純貴 當真あみ/勝村政信
北村有起哉 坂井真紀 生瀬勝久
監督:前田哲
原作:田島列島「水は海に向かって流れる」(講談社「少年マガジンKCDX」刊)
脚本:大島里美
音楽:羽毛田丈史
主題歌:スピッツ「ときめきpart1」(Polydor Records)
©2023映画「水は海に向かって流れる」製作委員会 ©田島列島/講談社
※Item Credit
ニット ¥23,100 (NKNIT)
シューズ ¥32,780 (DUSK STUDIO)
その他スタイリスト私物
※Team Credit
カメラマン:塩谷哲平
ヘアメイク:Emiy
スタイリスト:MASAYA
インタビュー:小枝指優樹
記事:小枝指優樹/緒方百恵