市原隼人
「人生で一番大切なのは、命や愛を繋いでいくこと」
今週金曜日から公開となる映画『おいしい給食 Road to イカメシ』に出演している市原隼人さん。14歳の時に、初映画にして初主演を務めた『リリイ・シュシュのすべて』で鮮烈なデビューを飾り、その後も次々と話題作に出演。俳優としての成熟度が年々増していく市原さんに、本作で大切にしていることや後輩たちへの思いなどをうかがいました。
『おいしい給食』というタイトルにちなみ、これまで食べた給食の中で一番おいしかったものを教えてください。
おいしかったものはたくさんあって選べないのですが、やはりきな粉揚げパンには勝てないです。口についた粉を手でパパっと取ってね(笑)。
給食は人生初めての会食と言われますが、好きな人たちと食べるからこそ、よりおいしく感じたり、学校や友達を好きになれたりして。給食の時間は、義務教育から離れ、少し違う時間が流れているような気がして、僕も精一杯楽しんでいました。
給食を待っている時間も気持ちをかき立てられますし、生徒と一緒に並んでいる時、密かに給食当番の人に「ちょっと大きいのを入れてくれよ」と願いを込めている時間もすごく愛おしいです。
今のお話を聞いて、「おいしい」と思えるのは、ただその味が良いだけじゃなく、その時の環境や自分の気持ちが合わさって『おいしい』という思い出になるんだとあらめて思いました。
本当にその通りだと思います。今回、給食をどういう形で食べるのが正解なのかということもテーマのひとつになっているのですが、給食を提供する側にも、頂く側にもマナーがあるということを感じました。提供するということはプレゼントのようなもので、様々な方たちが色々な思いを乗せて給食を作っていらっしゃる。栄養面や、地産地消を考えて、後世に繋げていきたい食材や作り方、歴史や文化も含めて食していただきたいという「想い」を届けてくださっていると思うので、頂く方は「給食ってこういうもの」と伝えられている瞬間を味わっているのだなと感じています。
私は本作を見て、給食の時間が楽しかった気持ちを思い出させてもらえました。
この作品をやってから「学校に行けなかったけど、学校に行く勇気が出ました」とか「『おいしい給食』を見て、給食の時間が楽しみになりました」などたくさんの声をいただき、もう涙が出るほど嬉しかったです。「このために僕は役者をやってきたんだな」と思わせていただいた作品のひとつですので、精一杯尽くせるよう、それだけを思っていつも現場にいました。
本作で一番大切にしていることは何ですか?
命や愛など、色々なものを繋げるということが、僕は人生の中で一番大切なのかなと思うんです。そういうことを学校でも社会でも教えてもらって、子供たちに伝えていく。僕はあくまでも、子供たちのための時代であり、社会でなければいけないと考えています。ですから、今回の「給食」の一番良い形とは果たしてどういうものなのかということも含めて、映画を見終わった後にみなさまで考えて話し合っていただき、この作品が人と人を繋ぐ架け橋になれたら嬉しいです。
給食が楽しみすぎて、毎回校歌にあわせたゴキゲンなダンスをする甘利田のように、市原さんが思わず体が動いてしまうウキウキすることがあれば教えてください。
芝居をしている時こそが楽しみになっているのかもしれません。きっと無意識だと思うのですが、1人で歩いている時や、外食して注文した料理を待っている間もずっと甘利田のセリフを話したり「あそこのシーン、早く演じたいな」と思ったりしています。「おいしい給食」と甘利田幸男はもう自分の人生の一部であり、帰る場所のような感覚なんです。
そこまで役とご自身がリンクしているからこそ、あの演技につながるんですね!生徒役の方をはじめ、若い人が多い現場でもありましたが、年下の俳優さんたちにどんなことを伝えたいですか?
芝居をさせていただける場所があるというのはすごく贅沢なことですので、その与えられた時間を精一杯有効に使ってほしいです。僕は無駄な仕事はないと思っているので、本編で使用されないカットがあったとしても何度も試してみるんです。みなさまにも限られた中で色々なことを考えながら、色々なことを試していただきたいなと思っています。
本来なら、生徒役の子どもたちは仕事をしなくていい年齢で、だからこそ、僕は現場に「来させる」のではなく、子供たちが「行きたくなる」ような環境作りからまず始めます。押し付けるのではなく、彼らが自発的に現場に行きたくなって、ちょっとした遊びの延長線上に芝居があればいいなというのが僕の理想です。芝居は1人では絶対にできないですし、結局は人が作るものなので、相手や作品に対する愛情を大切にしてほしいです。
そして楽しむところはしっかり楽しんでいただきです。もちろん自他を守るために規律やルール、秩序など守らなくてはいけないものもありますが、お互いをどんどん好きになれるような時間を重ねていけたらいいなと思いながら一緒に過ごさせていただきました。
市原隼人
いちはら はやと
1987年2月6日生まれ。
インタビューでは、撮影時のお話やお芝居、役作りについてとても楽しそうに話してくださいました。お話を聞いているとやはり胸に熱いものを持たれてお仕事をされているのがとても伝わりました。作品の共演者の方や出演している子供たちのことを常に考えて環境づくりをしてきた。というお話している市原さんの目はとてもキラキラしていて、写真撮影時の周りを気遣う優しさと思いやりの姿とお話しから、現場での出立が想像できるくらいの熱量でした。情熱的で、それでいてクシャッと笑った笑顔とたまに見せるシャイな部分と色々な市原さんを見せていただきました。これからも周りのことを大切に気遣い思いやる強さと漢らしさを武器に今後のご活躍も応援しております!
初出演ありがとうございました!
近年の出演では、テレビドラマでは、NHK『正直不動産2』(‘24)、『おいしい給食』(‘23)、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(‘22)、映画では、雑賀俊朗監督作『レッドシューズ』(‘23)、舞台では『中村仲蔵 ~歌舞伎王国 下剋上異聞~』(‘24)などがある。
©2024「おいしい給食」製作委員会
『おいしい給食 Road to イカメシ』
出演:市原隼人 大原優乃 田澤泰粋 栄信 石黒賢 いとうまい子 六平直政 高畑淳子 小堺一機
監督:綾部真弥
企画・脚本:永森裕二 プロデューサー:岩淵規
©2024「おいしい給食」製作委員会
5月24日より新宿ピカデリーほか全国公開
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:大森裕行(VANITÉS)
スタイリスト:小野和美
インタビュー:根津香菜子
記事:根津香菜子/有松駿