磯村勇斗
映画『最後まで行く』
キーマンとなる”死体役”に。
リスペクトする綾野剛とのサウナ寝落ち秘話も
2014年に韓国で公開され、中国、フランス、フィリピンでもリメイクされた大ヒット映画『最後まで行く』。岡田准一と綾野剛が共演し、映画『新聞記者』で知られる藤井道人がメガホンをとった本作が5月19日に公開。物語の鍵を握るのは、いかにも堅気の人間には見えない若い男の死体……。劇中の大半がそんな死体役だった磯村勇斗さんに、映画の撮影秘話や見どころなどを語っていただきました。
© 2023映画「最後まで行く」製作委員会
<あらすじ>
雨が降る年の瀬の12月29日。危篤の母親のもとに向かうため、刑事の工藤(岡田准一)は車で夜道を走っていた。そんな時彼は、とある事件への関与を署長から疑われた焦りと母親が亡くなった知らせで動揺し、目の前に突然現れた男をはねてしまう。やがて、男の遺体をどうにかしようと焦る工藤のもとに「お前は人を殺した。知っているぞ」というメッセージが届く。そのメッセージの送り主は、県警本部の監査官・矢崎(綾野剛)だった。工藤がはねた男には、矢崎が決して周囲の人間に知られてはいけない秘密があったのだ。追われる工藤と追う矢崎による、前代未聞の4日間の逃走劇が今始まる――!
『最後まで行く』に出演が決まった時の
率直な気持ちを聞かせてください。
これまで藤井監督と剛さんがタッグを組んだ映画『ヤクザと家族 The Family』やドラマ『アバランチ』に出演してきたので、こうしてまた藤井組の一員として参加できることが純粋に嬉しかったです。剛さんとの共演はかれこれ4~5回目で、岡田准一さんとは初めてだったんですけど、このふたりが演じる逃走劇は台本を読んでいる段階からドキドキしました。もう台本をめくる手が止まらなかったです。「この追う側と追われる側の攻防に自分がキーマンとして関われるんだ」って、すごく楽しみでした。まあ、僕が演じた尾田創は、劇中でほぼずっと死体なんですけど(笑)。
もしかして、
死体役を演じるのは初めてでしたか?
死んでしまう役は何度か演じたことがありますが、どの作品も死んだらだいたい出番がなくなるので、死んでからもずっと出番があるのは今回の尾田が初めてです。ほぼずっと死体役なので、動かないようにするのはもちろん、死後硬直の変化も意識して演じました。
藤井監督は作品ごとに登場人物の詳細をまとめた
「キャラクターシート」を作っているとのこと。
尾田はどんなキャラクターですか?
一言で表すと、「フラフラしていて芯がない人間」です。台本を読んでいる時から、「どこにも拠り所がない軽い男」だと感じていたので、台本とキャラクターシートの内容を合わせて自分の中で軽薄な人物像を作っていきました。
共演者との印象的なエピソードはありますか?
地方ロケの撮影後に剛さんとよくサウナに行っていたことが思い出に残っています。冬の時期に長時間外で撮影をしていて、冒頭の雨のシーンも含めて僕の出番は深夜が多かったので、とにかく寒かったんです。長期ロケ期間中は、撮影終わりに剛さんとサウナに入って冷えた体を温めてからホテルに帰るという暮らしをずっとしていました。撮影が終わるのが明け方で疲れているのもあって、絶対にどちらかが途中で寝ちゃうんですよ。なので、起きている方が寝ている方を起こすっていうのを毎日繰り返していました(笑)。
仲が良いんですね。
寝落ちはちょっと心配ですが……
名古屋の有名なサウナに行った時なんて、僕も剛さんも寝ちゃって……。外気浴エリアで目が覚めた時に体がめちゃくちゃ冷えていて、さすがにふたりとも焦りました。あのままぐっすり寝ていたら、僕も剛さんも確実に体調が悪くなっていたと思います。せっかく“ととのい”に行ったのに(笑)。ちなみに剛さんとはこの撮影期間に限らず、仲良くさせてもらっています。プライベートでもサウナに行きますし、食事に連れて行ってもらうことも多くて、いろいろ相談にも乗ってもらえて嬉しいです。
そんな綾野さんを含む
共演者の芝居を見ていかがでしたか?
岡田さんと剛さんの芝居は、どのシーンも本当に面白かったです。岡田さん演じる工藤がピンチに陥るたびにハラハラさせられて、所々描かれるコミカルなシーンで笑わせられて。ドタバタな逃亡劇に、きっと皆さんもクスッとしちゃうはずです。剛さん演じる矢崎は……とにかくめちゃくちゃ狂気的でヤバい。矢崎がとある策略に気づくシーンに震えます。山ほどある見どころの中でも、クライマックスの工藤と矢崎の対決は特に手に汗握ります!
では、磯村さんがおすすめする
尾田の見どころのシーンは?
ほぼ死体なのでないですよ(笑)。皆さんには「今回の磯村勇斗は死体役」と認識してもらえたらそれだけでいいです。強いて言うなら、矢崎を煽りまくった後に追いかけられるシーンは、尾田の生前唯一の見せ場じゃないかな(笑)。剛さんと一緒なのはこのシーンくらいだったので、非常に楽しく演じられました。撮影で結構何回も走って体力がかなり削られた中で、矢崎の迫りくる怖さがすごく記憶に残っています。拳銃を撃ちながら狂気に満ちた顔で追いかけてくるんですから……夢に出てきそう(笑)。
最近、工藤や矢崎たち並みに
ドキドキorヒヤヒヤしたことはありますか?
乗っていたタクシーが事故に遭った時はだいぶドキドキもヒヤヒヤもしました。車同士の軽い接触事故だったんですけど、乗っていた人全員にケガがなかったのが不幸中の幸いです。運転手さんってプロだし、タクシーって事故を起こさないものだと思い込んでいましたし、事故が起きる瞬間を見ることなんてなかなかないのでビックリでしたね。
『最後まで行く』のような
強烈な年の瀬の思い出はありますか?
『最後まで行く』並みの出来事があったら年を越せない(笑)。基本的にいつも年の瀬は家で静かに過ごしているので、記憶に残るほど強烈な出来事は特にないかもしれないです。外出するにしても、友達と深夜に初詣に行くくらいで毎年平和に過ごしています。
最後になりますが、磯村さんにとって
工藤と矢崎の関係みたいに
似た者同士あるいはライバルのような
存在はいますか?
ここまで「因縁の関係」みたいな存在は芸能界にいないですね。いたら一緒に仕事ができなさそう。ライバルもいない……というか、僕自身がライバルを作らないタイプで、そもそもこの業界ってライバルがいるものではないと思っています。どちらかと言うと「同志」という言葉がしっくりきますね。同業者の中でも特に自分と同世代の人たちのことは、みんな同志だと思っています。でもそうだなぁ……感性とか芝居観とかで似ている人物を挙げるなら剛さんですね。剛さん本人も「すごく似ている」って言ってくださっていました。
磯村勇斗
いそむら はやと
取材部屋に颯爽と入場され、とてもフランクに挨拶してくださった磯村さん。スタンバイ中の穏やかな表情のまま撮影に突入し、雨上がりの緑ともマッチした柔らかな雰囲気のお写真となりました! インタビューでは、ご自身の役や綾野さんとの交流について非常に楽しそうにお話しされていた姿が印象的でした。
1992年9月11日生まれ。
最近の出演作にNetflix『今際の国のアリス』シーズン2 (22)、WOWOW『サウナーーーズ4 磯村勇斗とサウナを愛する男たち』(23)、映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編』(23)などがある。今後は映画『波紋』(23)、『渇水』(23)、『正欲』(23)の公開を控えており、現在はEX『ケイジとケンジ、時々ハンジ。』に出演中。
© 2023映画「最後まで行く」製作委員会
映画『最後まで行く』
全国東宝系にて公開中
(上映時間:1時間58分)
監督:藤井道人
脚本:平田研也 藤井道人
音楽:大間々昂
出演: 岡田准一 綾野剛
広末涼子 磯村勇斗
駿河太郎 山中崇 黒羽麻璃央 駒木根隆介 山田真歩 清水くるみ
杉本哲太/柄本明
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ディレクション:半澤暁
インタビュー:藤原利絵
記事:藤原利絵/緒方百恵