磯村勇斗
「国内以外の作品にも積極的に参加していくことが、次への課題」
現在公開中の映画『若き見知らぬ者たち』に出演している磯村勇斗さん。中学生の頃に映画を自主制作したのがきっかけで役者に興味を持ち、高校時代は地元・静岡の劇団に所属。その志が変わることのないまま、2014年にドラマで本格的に役者デビュー。その後、次々と話題作に出演し今や実力派俳優として知られる磯村さんに、海外の現場経験を通じて思ったことから最近のサウナ事情まで!プライベートについてもお話しいただきました。
映画『若き見知らぬ者たち』では、ヤングケアラーや貧困問題など、確実に今どこかで起きていることがテーマとして描かれていました。そういった現代社会が抱えている問題を映画として表現する際に、どんなことを心がけていましたか?
今回の現場では、役者陣からは「どうリアリティを表現するか」、内山監督からは「何がリアリティなんだろう」と「リアリティ」という言葉が飛び交っていたんです。そもそも映画はフィクションであってドキュメンタリーではないから、リアリティを求めるのは矛盾してくる部分もあるんです。今回も劇中でリアリティのある表現について、「僕たちはどこを狙っていけばいいんだろう」みたいな話を監督とよく話していました。
今は嘘みたいなことが現実で起こっているじゃないですか。だけど、それを映画でやろうとすると「こんなことありえない」って言われるし、ウソになってしまう。リアリティなんだけど、それをやってしまうと映画ではなくなるという監督の意見があったので、どこかフィクションとして僕たちも演じなければいけない。そこをどうしていくのかというのは面白いテーマであり、なかなか答えが見つからないことです。
でも、そんなことを話し合いながら作って出来た作品を観てみると、ちゃんと「フィクション」としての映画になっていたし、そこに生きている役者たちはみんな確実にリアリティがあったなと思いました。
これまで、監督や先輩俳優の方々から学ぶことも多かったと思いますが、磯村さんがこれから若い俳優さん(または役者を志す人)に向けて伝えたいことはどんなことですか。
大切なのは、自分をどこに持っていきたいかだと思います。国内だけでなくもっと海外を目指したいのであれば、表現も変わってくると思う。僕自身も「もっと早くから海外に向けた準備や演技論みたいのを学んでおけばよかったな」と今になってすごく思うので、語学やコネクションを今のうちからしっかり培っていくことをおすすめします。
磯村さんが海外に出たことで知った
「日本の良さ」はどんなところでしょう。
僕もまだそんなに多くの場数を踏んでいるわけではないので、これから色々気づくことも多いと思いますが、同じ作品をみんなで作っていくという意味では、あまり難しくとらえなくても大丈夫なんだなと思いました。たとえ言語が違って言葉がうまく通じ合えなくても、向いている方向は全員一緒だから「ものづくり」や「クリエイティブ」っていう部分では、どの国の人もみんな同じで、一生懸命作ろうとしているんです。そういうところはどこでも変わらないからいいなと思いました。
日本人ならではだなと
感じたことはありましたか?
日本人の働き方って、限られた中でどれだけいいものを作るかという点に特化しているので、そこは日本人の武器なんじゃないかなと思います。短期間での役作りや、短い時間で準備して撮影を回していくということは、他の国にも自慢できることだと思っています。
多くの作品に出演され、これからの日本映画界を牽引する一人になっていかれると期待していますが、今後の展望があれば教えて下さい。
国内以外の作品にも積極的に参加していくことが、次の課題のような気はしています。今は海外のチームと一緒に作品作りをすることも増えてきていると思うので、日本国内のやり方だけではなく、様々な国の作品に参加して、そこでいいものを盗むことがこれから大事になってくるだろうなと思っています。
磯村さんのご出身は静岡県。俳優を目指して上京されたそうですが、今思う故郷・静岡の良さを教えて下さい。
静岡県には、日本一高い富士山と日本一深い駿河湾があるんですよ。そのふたつの「日本一」に挟まれているので、その大地で過ごしたことは、何か特別なエネルギーを感じるなと思っていて。東京とは空気が全然違うので、深呼吸するだけでもリフレッシュできたり、エネルギーをもらえたりする場所です。これからの季節もすごくおすすめですよ。11月4日には、僕が企画する「しずおか映画祭」も開催するので、ぜひいらしてください。
さて、磯村さんといえば大の「サウナ好き」!前回「FAST」に出ていただいた時も、綾野剛さんと一緒にサウナに行かれたエピソードをお話しいただきましたが、 最近のサウナ事情はいかがですか。
最近は仕事で海外にいることが多く、今(取材は7月中旬)は韓国にいるので、現地のサウナに行きました。韓国のサウナはあまりイノベーションとかもせずに、昔から残っているようなサウナが結構あるんです。それはそれで味があっていいんですけど、やっぱり日本は施設の手入れなども含めてクオリティが高いなと思いました。それもまた違った楽しみなので、今は両方を味わっている感じです。
磯村勇斗
いそむら はやと
1992年9月11日生まれ。
取材が始まるまでの準備時間では、会場を散策されていた磯村さん。すれ違う人、会う人に必ず軽い会釈をされている姿は見ていてとても誠実なお人柄だなと感じた第一印象。インタビューでも、スタッフとたくさんお話しをしてくださり、誠実さだけでなく気さくな面も併せ持っていました。今も変わらずにハマっているサウナのことや今後のことなど様々にお聞きしましたが、ご自身の経験を踏まえてのお話をお聞きしている時はとても男らしく大人な表情となり、おもわず聴き入ってしまうお話しっぷりとお時間になりました。
これからも国内だけでなく国外でも、活躍、活動の幅をどんどん広げて挑戦されている磯村さんのご活躍を応援しております!
1年ぶりのご出演ありがとうございました!
最近の出演作に『月』(‘23)、『正欲』(‘23)、テレビドラマでは、TBS『不適切にもほどがある!』(‘24)、NHK Eテレ『東京の雪男』(‘23)、映画では、10月公開予定『八犬伝』(‘24)などがある。
©2024 The Young Strangers Film Partners
『若き見知らぬ者たち』
磯村勇斗 岸井ゆきの 福山翔大 染谷将太
伊島空 長井短 東龍之介 松田航輝 尾上寛之 カトウシンスケ ファビオ・ハラダ 大鷹明良
滝藤賢一 / 豊原功補 霧島れいか
原案・脚本・監督:内山拓也
©2024 The Young Strangers Film Partners
10月11日(金) 新宿ピカデリーほか全国公開
※Item Credit
カーディガン ¥79,200
パンツ ¥134,200/共にセファ
(サカスピーアール TEL:03-6447-2762)
その他スタイリスト私物
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:佐藤友勝
スタイリスト:笠井時夢
インタビュー:根津香菜子
記事:根津香菜子/有松駿