黒羽麻璃央
ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』
“人”と“愛”の説得力を
存分に感じられるロミオを届けたいー
Stage of FAST -Stage 23-
『ロミオ&ジュリエット』の作品を想う時、Bette Midlerの『The Rose』が脳内に流れる。歌詞の中にこんな言葉がある。「人は言う、愛は刃のようだ、と」。“愛”の前で無力な私たちは、苦痛を強いられることでしか“愛”と共存できない。それを示す数々の例えを用いて曲が紡がれたのち、曲の主人公はこう唱える。「私は言おう、愛は一輪の花のようだ、と」。まさに黒羽さんの語ったロミオそのものだった。ロミオという一人の青年が苦痛を帯びながら見つけた一輪の花が舞台上に咲く時、黒羽さんが演じるロミオは一体どんな香りを漂わせてくれるのか。「嘘のない“愛”を表現したい」と話す彼にお芝居のこと、作品のことをお聞きしてまいりました。
ミュージカル
『ロミオ&ジュリエット』
Wキャスト・ロミオ役
©Takashi Okamoto
モンタギュー家とキャピュレット家が代々憎しみ合い、争いを続けてきたイタリアの街・ヴェローナ。ある日、キャピュレット家ではひとり娘のジュリエットに、大富豪パリス伯爵を求婚者として紹介しようと舞踏会を開催。そこへ、モンタギュー家のひとり息子ロミオが親友のベンヴォーリオ、マーキューシオと共に忍び込む。その舞踏会で、ロミオとジュリエットは運命的に出会う。お互いが敵対する家の者だと知り、ショックを受ける二人だったが気持ちを抑えきれず、ジュリエットの部屋のバルコニーで永遠の愛を誓い合う。二人の強い気持ちに心打たれたロレンス神父は、この結婚が憎みあう両家の和解に繋がるかもしれないと考え、密かに二人の結婚式を執り行う。しかし、そんな矢先、両家の若者の間でいさかいが勃発。ロミオは仲裁に入るが、親友のマーキューシオがジュリエットの従兄弟ティボルトに刺されてしまう。親友の死を目の当たりにしたロミオは逆上してティボルトを殺害、ヴェローナから永久追放されることに。ジュリエットの乳母の計らいで、夜が明けるまでのつかの間の時間、結婚初夜を過ごす二人。これが永遠の別れになるとは知らず、夜明けと共にロミオはマントヴァへと旅立っていく……。
ロミオ × 黒羽麻璃央
「いつか演じてみたい」と思っていた役で、こうして大好きな『ロミオ&ジュリエット』という作品に戻ってこれたのは素直に嬉しいですし感謝しています。マーキューシオとして参加していた2年前の東京公演が終わった後、演出の小池先生(小池修一郎)から「いつかロミオをやらせたい」という言葉をいただいたんです。そこから徐々にロミオという役を意識するようになっていて。僕自身「いつか演じられたら嬉しいな」と思っていたので、現実になって良かったです。
伏線が張られていたんですね。
黒羽さんから見た小池さんはどんな方ですか?
具体的に「ここが」というポイントはないんですが、稽古場での居方や動きを見ていると「不思議な雰囲気を持っている方だな」と思います。可愛らしいところはすごく可愛らしくて(笑)。あとは、役に辿り着くまでのプロセスや、僕が気づいていない武器を教えてくれる方でもあります。「こんな作品に出た方がいいよ」や「この作品を観た方がいいよ」と、僕の今後の役者人生も気にかけてくれる頼もしい方なんです。すごく温かい優しさを感じます。
愛を感じますね。
Wキャストの甲斐さんと
お会いされてみていかがでしたか?
僕らは同じ役をこれから長い間演じていく一種の相方でありライバル。お互い良い相乗効果を生み出せるような関係性を築けたらいいな、と思っています。甲斐くんは若いのでお兄さんが足引っ張らないように頑張らなきゃ!と(笑)。
様々な役をこなされている黒羽さんですが、
何か現場に入る前の
ルーティンみたいなものはありますか?
爪を切る、かな(笑)。何でだろうな~?多分心機一転したいんでしょうね。クランクインの前や舞台稽古が始まる前には不思議と爪を切っています。今はちょうどやっている作品があるので伸びかけなんですけど…そう考えると、僕の仕事スケジュールは爪の伸び具合で分かりますね(笑)。
確かに。爪に注目ですね(笑)。
今回、どのようにロミオを
作り上げていきたいと思われていますか?
「自分なりのロミオ」と言いたい反面、「自分なり」って自分じゃ分からない部分が大きくて。他の人に「黒羽くんっぽいロミオだね」と言われて初めて「そうなのか」と思うことが多いんです。それは他の役にも共通して言えること。とは言え、個人的には “人”、“愛”というものがちゃんと説得力を持つ作品にしたいと思っています。この作品はジュリエットを愛してしまったが故に始まる物語であり、2人の為にいろんな人の命が犠牲になってしまう物語。2人の“愛”に動かされてこそのストーリーなので、作中の“愛”自体に嘘があったらこの物語は成立しないと思うんです。だからこそ、愛情深い1人の青年をしっかりと作り上げていく必要があると思っています。ジュリエットにだけでなく、友達に対しても同じ。友達が殺されて、逆上して犯人を殺してしまうのも愛情がないとできないことだと思いますし。「愛に満ちた青年」、そこの部分はしっかりと持っていたいですね。愛深いロミオになるかもしれません。
いいですね~!楽しみです!
舞台に立つ黒羽さんだからこそ分かる
ミュージカルの魅力って何だと思いますか?
ミュージカルは、歌もダンスも芝居もできる総合エンターテインメント。ストレートプレイだと伝わりづらい描写も、歌や音楽でお客さんに届きやすくすることができるというか。感動するシーンはさらに感動が膨らむし、面白いシーンはさらに面白くなるし。表現の相乗効果の楽しさを実感できるのがミュージカルの魅力だと思います。
昨年はコロナの影響もあり、
公演中止せざるを得ない作品もあったと思います。
その期間にお仕事のことや
表現者としてのことなどを考えられましたか?
そもそも、「求められないと何の価値もない人間なんだな」とすごく思いました。誰かに求められてこそ、自分が存在する意味があるなって。自分一人じゃ何にもできないですし、必要としてもらえるからこそ生きていけるんだな、と改めて考えましたね。
現場が動き出した時はやっぱり楽しかったですか?
楽しかったです。稽古も人と会うのもすごく楽しかったし、今までの日常すべてがめちゃくちゃ楽しく感じましたよね。当たり前のように過ごしてきた日常に救われていたんだと思いました。何も気にせず毎日を楽しめる日が早く戻ってきてくれることを祈っています。
Message From『ロミオ&ジュリエット』
小池先生とはストレートにいけば4度目の舞台だったんですが、それだけ立て続けに一緒にお仕事をさせていただける方ってなかなかいらっしゃらないので、絶対に自分を成長させてくれる方だと勝手に何かご縁を感じております。今回のロミオを通して、一皮も二皮も剥けた黒羽麻璃央を皆さんに届けられたらいいな、と。是非応援を宜しくお願い致します。
黒羽麻璃央
くろば まりお
1993年7月6日生まれ。
内観を惜しまない孤灯の強さで役が秘めた人品をほどき、細緻な芝居で見る者の心を揺さぶる27歳。
ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』
TBS赤坂ACTシアター(東京):
2021年5月21日(金)~6月13日(日)
梅田芸術劇場メインホール(大阪):
2021年7月3日(土)~7月11日(日)
愛知県芸術劇場大ホール(愛知):
2021年7月17日(土)~7月18日(日)
原作:ウィリアム・シェイクスピア
作:ジェラール・プレスギュルヴィック
潤色・演出:小池修一郎(宝塚歌劇団)
出演:黒羽麻璃央/甲斐翔真(Wキャスト)
伊原六花/天翔愛(Wキャスト)
味方良介/前田公輝(Wキャスト)
新里宏太/大久保祥太郎(Wキャスト)
立石俊樹/吉田広大(Wキャスト)
小㞍健太/堀内將平
(Kバレエカンパニー)(Wキャスト) ほか
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:横山裕司(Lomilia)
スタイリング:ホカリキュウ
ディレクション:半澤暁
インタビュー・記事:満斗りょう