藤原大祐
僕が大きく成長していくことで応援してくれる方たちに恩返しをしたい
2020年、ドラマ『女子高生の無駄づかい』で俳優デビュー。その後は映画やドラマで次々と主演を務めるなど、着実に役者としてのキャリアを積む一方で、シンガーソングライターとしての才能も開花させている藤原大祐さん。デビュー当時とは芝居に対する姿勢が変わったという藤原さんに、転機となった作品や今後の目標など、お仕事についてのほか、プライベートなお話もお聞きしました。

俳優デビューから、はや5年。お芝居への向き合い方が、当初と変わった部分はありますか?
演じ方は、すごく変わっていますね。昔は、どうやってお芝居をしよう?とか、台本のなかでどういう役でいよう?とか、すごく頭で考えて、“こういうふうにセリフ言おう”とか思っていたんですけど。今は、それをいかに思わずに演じるか。現場で起こったことにどう反応するか、ということを考えるようになりました。攻めの芝居から受けの芝居に変わったんですかね。
受けの芝居が大事だというお話は、役者の方からよくお聞きします。
僕はもともと行動的で、自分から何かしたいと思うタイプの人間なので。お芝居でも“こういうことをしたら、おもしろいかも?”とか、昔はすごく考えていたんですけど。今は、とにかく相手がどうくるか。ボールを投げる側より、キャッチする側でいたいと思うようになったのは、大きな変化ですね。
そう思うようになったきっかけはあるのですか?
明確なきっかけはないんですけど、そのほうが、毎回お芝居が変わるなと思ったんです。相手からのボールを受けたら……例えば、芦田さんのお芝居を受けて反応したら、芦田さんと僕でしかできないお芝居になるし。阿部さんとのお芝居は、阿部さんとしかできないお芝居になって、いろんな僕を引き出してもらえる。でも、自分からボールを投げたら、僕の狭い器のお芝居からしか始まらないじゃないですか。
ご自身のなかで、お芝居が変わるきっかけとなった作品もない?
(自身のプロフィールを見ながら)あっ、でも、『柚木さんちの四兄弟。』というドラマは、僕のなかで大きかったです。

それは、どういう意味で?
僕が主演の作品だったので、僕の弟役を演じる子たちを引っ張っていかなきゃ!という思いでクランクインしたんです。最初は、“僕がこうセリフを言ったら、この子たちがやりやすいだろうな”とか、“こうやったら、このシーンがうまくいくだろうな”とかって計算して、助けてあげたいと思っていたんですけど。いざ撮影が始まってみたら、僕のほうが子どもたちにすっごく引っ張ってもらっていたんです。
どんなふうに?
子どもたちのエネルギーがスゴいし、その子たちのおかげでこの作品が彩られていくような感覚があったんです。その後、第1話を見たときに、“お芝居ってこういうことか!”というのを彼らに教えてもらって。そこから意識が切り替わりました。この子たちと一緒にいれば、自然とお兄ちゃんになれるのだから、とりあえずお兄ちゃんでいることだけを守っていこうと。途中からは、何も考えずに画のなかにいるようにしていました。
子どもというのは、どういうお芝居のボールを投げてくるかわからないところがあるのでしょうか。
そうなんです。毎回、エネルギーが違うものを投げてくれるので。というか、同じことをやらなきゃいけなくても難しい。でもそれって、スゴいお芝居だと思うんです。本当に彼らのおかげで、受けの芝居を意識するようになったかもしれません。たしかに、この作品が一つの転換期かもしれない。これです。明確にこれです!一番攻めの芝居でいこうと思っていた作品で、受けでいなきゃいけないことを知ったという。
180度違うところに着地しましたね。
その後も、役によっては攻めで演じているものもあるのですが、基本的には受け手でいたいという気持ちがあります。

完成した作品を見ても、そのほうがよい結果を導くことが多いと感じますか?
演じていて楽しいんですよね。見られ方については、正直わからないので。もちろん、自分のお芝居を見てくださった方が、いいなと思ってくれたらうれしいですけど。
最近の作品でいうと、先日、最終回を迎えたドラマ『ちはやふる-めぐり-』に、折江懸心役で出演されていましたが……。
あっ、“ちはやふる”では、完全に攻めの芝居をしています。いっさい受けの芝居はせずに振り切ったというか、これまでの役者人生で一番攻めた芝居をしています。
役柄的にも、高校生ナンバーワンの実力を持つエースでしたもんね。
懸心は、本当に難しくて。現場でも、脚本家の方に「ごめんね」と言われ続けていたんですけど。
というと?
「(セリフを)言いづらいよね」って。懸心は、普通の人間が言わないセリフしかないので(笑)。普通は、作品に溶け込むのがお芝居だと思うんですけど、懸心に関しては浮くことを選びました。浮きに浮き続けることが、逆にいいんじゃないかなと思って。生っぽい芝居というよりは、2次元っぽい芝居というか。そこを強く意識していました。

『ちはやふる-めぐり-』は、ご自身にとってどんな作品になりそうですか?
自分が携わってきたなかで、一番青春を感じる作品です。キャストもスタッフも、僕と同じくらいの世代の方が多かったんです。それもあり、1シーン1シーンを全力でいいものにしたいというエネルギーが詰まっていて。間違いなくステキな作品になると、撮影中から感じていたし、実際に完成したものを見ても、そう思いました。ぜひ、続編をやりたいです(笑)!
藤原さんは、アーティスト活動も行っています。今年の2月に窪塚愛流さんとFASTにご登場いただいた際、紙面上で、窪塚さんから「大祐なら武道館にいけるよ」というメッセージが贈られていました。
いやぁ、うれしいっすね。でも、僕も(武道館に)いけると思っています。
やはり、アーティストとして武道館の舞台に立つことは、目標のひとつ?
もちろん!一番手前にある夢の一つです。“この歳までに実現させたい”という明確な目標は、一応決めているんですけど……今は言わないです(笑)。実際に(武道館の舞台に)立ったときに言います。「実は○歳までに立ちたいと思ってた」って。もしかしたら、その年齢を過ぎちゃってるかもしれないし、それより早いかもしれないですけど。
武道館が目標というのは、何か思い入れがあるのでしょうか。
映画『大きな玉ねぎの下で』に出演したことは大きかったです。そのときに、自分も武道館に立ちたいなと思いました。僕は、大きな目標から逆算して、小さな目標を立てていくのが好きなんですけど、その小さな目標の一つが武道館なんです。大きな目標は……内緒です(笑)。

(笑)。大きな目標というのは、お仕事上のということですよね?
そうです。お仕事以外だったら、自分の家族がほしい、とかですかね。幸せな家庭を作りたいとか。もちろん、まだ全然、現実味はないですよ。いつか。いつか、でっかい家の庭で、自分の子どもと飼い犬が走り回っているのを見たい。まさに絵に描いたような、絵本みたいな世界ですけど。
芸能界デビューから6年。あらためて“この仕事を続けていきたい”と覚悟が決まった瞬間はありますか?
音楽活動を始めて、ライブをするようになってから、実感が湧いてきました。役者だけをやっていると、作品を届けている先の人の顔をなかなか見られないんです。それが、音楽を始めて……たとえば、ライブに何人来てくれたとか、具体的な数字を目にするようになって、応援してくださる方、一人ひとりへの感謝の気持ちがすごく大きくなったんです。その人たちに、僕が大きく成長していくことで恩返しをしたいな、かっこいい姿を見せたいなって。「私、この頃から(藤原を)応援してたんだよ」「俺、このときから知ってたぜ」とマウントをとれるぐらいの男になれたらいいな、という夢が生まれました。
それは、アーティストとして?
役者としても両方ですね。僕の音楽を知ってくれた方が、僕の出ている映画にも興味を持って、観てくださったりとか。そういう方がいるから、僕たちは仕事をできていると思うので。
年齢的には二十歳を迎えましたが、10代の頃と心境に変化はありますか?
“ちゃんとしない”を選ぶようになりました。あえて。ちゃんとするって、つまらないなと思って。ちゃんとしていない余白の部分に色がついたときに、おもしろいものが生まれるんじゃないかと。全部のことをきちきちきちっとやっていくより、楽しそうなことや、自分の心が動いたことに身を委ねていくほうが、いい表現ができるかもなって思うんです。

最近、心が動いたことは?
もう、日々ですね。僕、自分で「夜オフ」と呼んでいるんですけど、それを最大限に活用しています。
夜オフとは?
例えば、夜の10時に帰宅したとします。それからジムに行って、0時前ぐらいに終わったら、友だちと車で田舎のほうへ行って、朝日を見て帰ってきて。1時間半ぐらい寝てから仕事へ行くとか。
ものすごくハードな……。
でも僕、睡眠7時間より、ジムに行って朝日を見て、友達と話す7時間のほうが、絶対に有意義な気がして。その7時間のなかで、“あっ、これをやりたいな”と思ったら、それを全部やるんです。いい朝ごはんを食べたいと思ったら、カフェのモーニングを食べるとか。しなくてもいいことを、あえてする。家でご飯を炊いて、納豆ご飯を食べるのもいい。けど!無駄って、いいんですよね。無駄にしかない栄養素があるから。無駄なことばっかりやっています(笑)。
ここからは、2021年5月にFASTにご登場くださったときと同じ質問を3つしますので、アップデートしていただきたいのですが。
おもしろそう!

藤原さんにとって、欠かせないものは?
僕の人生に、ということですか?欠かせないもの……笑顔!僕、人の笑っている顔を見るために生きているんです。プライベートでは、常に人を笑わせていないと気が済まなくて。どうやったら、会った瞬間にウケをとれるかを、常に考えて生きています(笑)。
藤原大祐の軸は?
HAPPY!前回も同じじゃないですか?
前回は、「根本として、やりたくないことはやらないという思いをもちつつも、一辺倒に“やる・やらない”を決めるわけではなく。やりたくないと思うことのなかにも、探したらやりたいと思う理由が見つかるかもしれないので、それを見つけて、“やりたくないこと”を“やりたいこと”に変換するようにしています」と回答されています。
そんなの当たるか~(笑)!僕、今、すっごくアホみたいなヤツになってません?「笑顔」と「HAPPY」って(笑)。まぁ、いっか。僕の軸はHAPPYなので。あっ、“ハッピー”は大文字のアルファベットにしてもらってもいいですか?すみません、僕のこだわりで。楽曲をリリースすると、CDショップで「直筆でコメントをいただいてもいいですか?」と言われたりするんですけど、毎回、「HAPPY」とだけ書くんです。それぐらい、HAPPYが軸です(笑)!
自分も周りの人も含めてのHAPPY?
どんなことも、HAPPYのために向かっていっているというか。

では、座右の銘は?
前回はたぶん、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」ですよね?
実は、2020年2月にも同じ質問にご回答いただいているのですが、そのときは、その言葉でした。
2021年のときは、また違う!?
2021年のときは、ご自身で作ったという座右の銘を答えていらっしゃいます。
あっ、今も自分で作ろうとしていました(笑)。ハイ、決まりました。「人生を最高の映画にする」です。人生って、楽しいこともあれば悲しいこともあるけど、僕が生まれた瞬間から死ぬまでを1本のフィルムだと考えたら、そんなのって、すごくちっぽけなことだと思うんです。視聴者の方からしたら、その感情の動きが大きいほうがおもしろいだろうし。もちろん、“トータルしたらハッピーエンドだった”がいいですけどね。
チャーリー・チャップリンの名言に、「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ」というのがありますね。
そういう言葉があるんですね。うん、そういうイメージです。いつも、選択肢が2つある場合は「映画として、どっちのほうがおもしろいかな?」を基準にして選んでいます。「どっちのほうが藤原大祐っぽいだろう?」って。2021年は僕、なんと答えてますか?

「楽しいことだけをやって、人を幸せにして生きていく」と。
うわー、かわいいっすね~(笑)。楽しいことだけ、やれないんですよねー(笑)。だから、そこに“楽しくない要素”が入ったのが今回の答えって感じですかね。楽しくないことも、やってみたら、映画のなかでは意外にいいシーンになるかもしれないから。どんなことにもチャレンジして。最終的に、いい映画だったと思えるものになったらいいなと思います。

藤原大祐
ふじわら たいゆ
2003年10月5日生まれ。
インタビューでは、映画のことに対してはとても真剣な眼差しと表情で、21歳とは思えないぐらいに色々なことを見て感じて、考えられていて、すごく熱量のあるお話をしてくださっていましたが、後編のインタビューの時では、等身大で明るく、楽しそうに答えてくださり、かっこよかったり、愛嬌のある仕草だったりとたくさんの表情を見せてくれました。過去の質問のアップデートではノリノリでスタッフと、たくさん笑いながら答えてくださいました。お忙しい中貴重なお時間ありがとうございました。これからも、素直に感情と向き合いながら、心躍るままに目標の為にコツコツと挑戦される藤原さんのご活躍を応援しております。
ご登場ありがとうございました。
最近の出演作に、テレビドラマでは、日本テレビ『ちはやふる-めぐり-』(‘25)、テレビ朝日『伝説の頭 翔』(‘24)、NHK総合『柚木さんちの四兄弟。』(‘24)、関西テレビ・フジテレビ『リビングの松永さん』(‘24)などがあり、映画では、『大きな玉ねぎの下で』(‘25)、『リゾートバイト』(‘23)、『追想ジャーニー』(‘22)、『モエカレはオレンジ色』(‘22)、などがあり、10月31日より公開の『(LOVE SONG)』も控えている。

©2025「俺ではない炎上」製作委員会©浅倉秋成/双葉社
タイトル:『俺ではない炎上』
公開表記:2025年9月26日(金)全国公開
キャスト:阿部寛
芦田愛菜 藤原大祐 長尾謙杜
三宅弘城 橋本淳 板倉俊之 浜野謙太 美保純 田島令子
夏川結衣
原作:浅倉秋成『俺ではない炎上』(双葉文庫)
監督:山田篤宏
脚本:林民夫
音楽:フジモトヨシタカ
主題歌:WANIMA/おっかない(unBORDE/WARNER MUSIC JAPAN)
配給:松竹
クレジット:©2025「俺ではない炎上」製作委員会©浅倉秋成/双葉社
※Item Credit
・ジャケット ¥59,400
・パンツ ¥41,800
・ニット ¥41,800
全て CULLNI(カナ表記:クルニ)
《読者問い合わせ先》
CULLNI FLAGSHIP STORE(カナ表記:クルニ フラッグシップ ストア)
03-6416-1056
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:山口公一 (スラング)
スタイリスト:勝見宜人(Koa Hole inc.)
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿
