山田裕貴
信じられないことをやっていたら信じられない領域に行けると信じている
2011年、特撮テレビドラマ『海賊戦隊ゴーカイジャー』で俳優デビュー。その後は多彩な演技力を武器に、大河ドラマや朝ドラをはじめ、映画『HiGH&LOW』シリーズや『東京リベンジャーズ』シリーズなど話題作に次々と出演し、カメレオン俳優の名をほしいままにしている山田裕貴さん。この7月から10月にかけて3本の主演映画が公開されるなど快進撃が止まらない彼に、現在のお芝居への向き合い方などを伺いました。

映画『ベートーヴェン捏造』のシンドラーは、ベートーヴェンへの愛や尊敬が強すぎるあまり、自分でも予期せぬ行動に走ってしまいます。ご自身には、そういう経験はありますか?
ディズニー映画の『ヘラクレス』が好きすぎて、ギリシャに行きました。この映画を20、30回観ているんですけど、絶対に同じシーンで泣いちゃうんです。これはもう、この作品は僕の何かと関わりがあるに違いないと。ギリシャに行ったら、きっと「あの旅行は、人生の分岐点になりました」ぐらいの感動があるはずだと思っていたんです。でもそれは、ディズニーだから感じられた感動だったんです。いざパルテノン神殿に行ったら、観光客が多すぎて!記念写真を撮るぐらいしかできなくて、旅自体はすごく楽しかったんですけど、夢は夢のままで終わったほうがよかった……というのは、ベートーヴェンも一緒ですね(笑)。
途切れなく作品に出続けている状態が長く続いていて、ファンにとってはうれしい反面、体調面などを心配している方も多いと思います。昨年の山田さんのインタビュー記事を拝読したところ、「そういう状態に限界を感じて、自分の芝居をおもしろく感じられなくなった」とおっしゃっていましたが、少し時間が経ち、現在はどのような心持ちですか?
ここ1、2年、そういう状態だったんですけど。今の心境としては、少しだけどうでもよくなってきたかもしれないです。それは、いい意味で。自分の芝居をおもしろく感じられないって、自分のことを勝手に評価していたわけですよね。「つまんねぇ、自分」って。でも、それは人が決めることでもあるし。たくさんの人に作品を観てもらえるかどうかというのは、運もあるじゃないですか。だったら、考えるだけ無駄だなと。

そういう境地に至ったのですね。
『ベートーヴェン捏造』でも思ったことなんですけど、最終的に脚本の力が大きいんだなと。本に書いてあることを自分なりに膨らませたり……なんなら、書いてあることを純粋に演じるだけで、本がよければお芝居もよく見えるというか。だから、そこまで悩まなくてもいいのかなと思い始めました。この作品の試写を観た後からですけど。
たしか、試写をご覧になったのは数日前ですよね?
そうです。それまでは、不安でした。

不安というのは、本作でのお芝居に対して?
いや、自分の芝居全体に対してです。去年の11月から今年の3月にかけて、3本の映画の撮影をしたんです。『木の上の軍隊』『ベートーヴェン捏造』『爆弾』と。自分のなかでは、3本全て観てくれた人だけに伝わる何かがあると思っていて。もちろん、『ベートーヴェン捏造』だけでも僕の俳優としての何かが伝わったり、純粋に作品を楽しんでもらえたりしたら、ものすごくうれしいんですけど。でも、僕のなかでは3本で一つなんですよ。この3部作を観てくれた人にしか語れない領域ができるだろうなと思うんです。それは、ファンの人を含めて。
先日オンエアされた「オールナイトニッポン」のなかで、「マネージャーさんから、この3作品は山田裕貴の集大成的な作品と言われた」とおっしゃっていましたが、ご自身でもそう感じているということ?
大いに感じています。というか、そうとしか感じてないかもしれない。短い準備期間のなかで、すごく考えて挑みましたし。まぁ、3本すべて撮り終わった次の日から、違う作品のアクション練習をやっていたんですけど。

えっ!?信じられない!
でも、その信じられないことをやっていたら、信じられない領域に行けるだろう……ということを信じています。たぶん、誰もたどり着いたことのない考えだったり、心のなかだったり、そういうところに行けるだろうと。
自分自身もまだ知らない領域に。
はい。たとえば大谷翔平さんは、数字として信じられない結果を出しているじゃないですか。それはたぶん、信じられないやり方や努力をしているからだと思うんです。

我々の想像もつかないような。
僕がそこを目指しているわけではないけど、マインドとしてそうなれればいいなと。今までは、自分の置かれている状況をマイナスにとらえていたんです。なんで、こんなに休みをもらえないんだろう、とか(笑)。でも今は、自分の人生なんだから、自分のやりたいことをやり続けるだけだと吹っ切れました。僕がやったことは、誰のものでもなく僕の実績になっていく。だから、やれるまでがんばるだけです。もちろん、そのためには体調とかにも気をつけないといけないので、めちゃくちゃケアはしているし……って、ファンの人たちからしたら、こういう状態も心配になるのかな(笑)。でも、目指しているのは、ファンの人たちにも想像がつかないような領域ということです。

山田裕貴
やまだ ゆうき
1990年9月18日生まれ。
撮影では、大人っぽく柔らかい雰囲気とライティングでかっこよく渋さがあるパターンを撮影させていただきました。インタビューとはガラッと変わりスイッチが入っていた山田さん。和やかな雰囲気から一変してすごく素敵でかっこよかったです。また撮影全体が終わっても最後まで周りにお礼をされていてとても謙虚で、素敵なお人柄でした。これからも役者業に対してはすごく熱く、ストイックに取り組まれつつも、自分の感情に素直になられる山田さんのご活躍を応援しております。
初登場ありがとうございました。
最近の出演作に、テレビドラマでは、フジテレビ『君が心をくれたから』(‘24)、TBS『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』(‘23)、フジテレビ『女神の教室〜リーガル青春白書〜』(‘23)、映画では、『ゴジラ-1.0』(‘23)、『キングダム 運命の炎/キングダム 大将軍の帰還』(‘23/24)などがあり、2025年7月には、『木の上の軍隊』が公開、同年10月には『爆弾』の公開が控えている。

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タイトル:『ベートーヴェン捏造』
公開情報(公開日): 9月12日(金)全国公開
配給クレジット:松竹
キャスト:山田裕貴、古田新太、染谷将太、神尾楓珠、前田旺志郎、小澤征悦、生瀬勝久、小手伸也、野間口徹、遠藤憲一
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※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:小林純子
スタイリスト:森田晃嘉/AKIYOSHI MORITA
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿