佐藤 新×藤本洸大
映画『青春ゲシュタルト崩壊』
二人のシーンは、この作品を象徴する内容になっている
2016年から開催されている小説コンテスト「野いちご大賞」で第5回大賞を受賞した、丸井とまと原作の小説「青春ゲシュタルト崩壊」が、ついに映画化されました。本作で、派手な見た目と乱暴な態度とは裏腹に、人一倍“痛み”に寄りそえる朝比奈 聖を演じる佐藤 新さんと、聖の幼馴染・山下 祈を演じる藤本洸大さんに、お互いの印象や、撮影時の思い出などを伺いました。

©映画「青春ゲシュタルト崩壊」製作委員会
<あらすじ>
ある日突然、“青年期失顔症”を発症してしまい、周囲に知られることを恐れた朝葉(渡邉美穂)は、誰にも言えず一人で悩んでいた。朝葉の異変に唯一、気づいたのは、同級生の聖(佐藤)だった。聖は、朝葉に「今までと変えなくていいの?」と問いかける。彼に振り回されながらも、本当にやりたいこと、好きなことは何か、自分自身を見つめ直しているうちに、朝葉のなかで聖の存在が大きくなっていく。同じく、聖も朝葉と一緒にいるうちに、ずっと抱えていた“あること”に向き合うように……。

先ほど、再会を喜び合う姿が印象的でしたが、お会いするのはひさしぶり?
藤本洸大(以下、藤本):1カ月前くらいに、この映画の関係者試写会があって。
佐藤新(以下、佐藤):それ以来です。今日会ったら、藤本くんがバチバチにキメていて。いつもとのギャップがスゴい!
藤本:そうですか(笑)?
佐藤:カジュアルな藤本くんしか見たことがなかったから。“ビジュいいじゃん”みたいな(笑)。
藤本:あははは!でもたしかに、今日はいつもと違ってスーツですしね。
佐藤:そうそう。ちょっとドキッとしました(笑)。
では最初に、『青春ゲシュタルト崩壊』で演じている役どころについて、お互いに他己紹介をしていただけますか。
佐藤:藤本くん演じる祈は、僕が演じている聖と親友で。子どもの頃から、水泳で競い合っている関係です。
藤本:そうですね。
佐藤:でも、祈くんはマジメな人柄のせいか、どんどんどんどん一人で思い詰めちゃって、【青年期失顔症】を発症してしまうんです。聖がよかれと思ってかけた言葉が、祈を追い詰めることになってしまい、それまで通り、仲よくいられなくなっちゃうんですけど……祈は、めちゃくちゃやさしい子だよね? 友達思いで。
藤本:そう思います。
佐藤:めっちゃやさしくて、めっちゃ我慢をしちゃうタイプだと思います。祈はたぶん、聖のことをすでに許しているんだけど、聖のなかで許せないことがあって。聖のほうから祈に寄り添うのが難しい状態になっちゃっている。
藤本:はい。
佐藤:祈はもう、一歩先のステップにいっているのに、聖は立ち止まっている。それが、朝葉と出会うことで、聖と祈の関係性がどう変わっていくのか。
藤本:そうですね。二人はまず、歳が違うんですよね。祈のほうが一つ年上だけど、幼馴染という関係で。だけど、性格は全然違うんですよ。聖は小さい頃から、好きなことを好きとハッキリ言えるタイプで。祈は、聖に対してだけは素直になれるけど、ほかの人にはそうなれないのかな、という解釈を僕はしていて。
佐藤:うんうん。
藤本:だから、聖だけに見せる顔と、周りのそのほかの人に見せる顔に、けっこうギャップがある……あれっ、これだと祈の紹介になっちゃいますね(笑)。
佐藤:たしかに(笑)。
藤本:聖の一番の特徴は、自己主張がちゃんとできることだと思います。そこが、祈と大きく違うところですね。

そうした性格の違いから、二人がすれ違ってしまったところもありますよね。
佐藤:そうですね。
そのきっかけともなる過去のプールのシーンは緊張感がありましたが、撮影前に二人で話し合ったりはしたのですか?
藤本:あの現場の空気感は、独特でしたね。
佐藤:独特だったねー。藤本くんが、本番の「用意、ハイ!」の前から、ちゃんと役に入り込むタイプだったから。僕も、“あっ、今はあまり話しかけないようにしておこう”って。“僕は僕で、ちゃんと役に入る時間を作ろう”とか、お互いに気を遣いながら、あのシーンは撮っていたかなと思います。
藤本:そうですね。
では、打ち合わせをせず、本番で出たものをぶつけ合うという。
佐藤:そうですね。まず1回出してみて、という感じだったと思います。
藤本:そうでした。テストで1回やってみて、その後に少しだけ、話し合いをしました。
佐藤:うん、監督とも話し合って。でも、ちょっとした“間”だったり、アクションのしかただったりは話し合いましたけど、基本的には「こんな感じで、とりあえずやってみますか」と、テストでバン!とやってみて。
藤本:そこからはもう、本番の合図がかかるまで、お互いに無言で……。
佐藤:無言でやってたね。

聖と祈が一年ぶりに再会するシーンでの思い出は?
佐藤:そのシーンの本番前も、各々で気持ちを作っていたような……(笑)。
藤本:あはは!
佐藤:今お話しした二人のシーンは、この作品を語るうえで、ホントに象徴的な内容になっているので。だからこそ、めちゃくちゃ集中していたと思うな。
藤本:その再会のシーンって、クランクインして最初に撮ったんですよ。
佐藤:そうそうそう!
藤本:その後に、さっきお話しした二人のシーンを撮ったので。“最初に再会する”というのが、不思議な気持ちでした(笑)。
――気持ちを作るのも難しそうな……。
藤本:そうですね。
佐藤:そういう撮影のしかたは、映画ならではだよね。でも、藤本くんがすごくいいお芝居をしてくださったので……。
藤本:いやいやいや!それはもう、こちらが(と、手振りで佐藤を崇める)。
佐藤:ホントに勉強になりました。
藤本:いやいやいや!でも僕、一つ思ったことがあって。
佐藤:うん?
藤本:その再会のシーンの撮影前にも、衣装合わせと水泳の練習で(佐藤に)お会いしたんですけど、最初から初めて会った気がしなくて。新くんからも同じ空気をすごく感じたんですけど、もしかして醸し出してました?
佐藤:醸し出してない、醸し出してない(笑)!ただただ、藤本くんと話してみたい、仲よくなりたいなって。
藤本:それは、すごく感じました。
佐藤:えっ、本当!?
藤本:はい。
佐藤:うれしっ!でも、僕も初めて会った感じがしなかったんだよな。
藤本:本当ですか~?
佐藤:だから、最初からスッと話しかけることができたし。“あれ? 前から友達だったっけ?”みたいな感覚があって。“昔、同じクラスだったっけ?” みたいな。
藤本:そうなんですよ!僕、お仕事の現場でそういう感覚になったのは、初めてだったから。
佐藤:ホントに?
藤本:本当です!
佐藤:やったやった!
藤本:そういうこともあって、最初からすごく親しみやすい方だなと思ったんです。
佐藤:フフッ。
藤本:だから、最初に撮った再会のシーンも、自然と気持ちが入りましたし。
佐藤:僕もやりやすかったです。

佐藤さんは、主演という立場としても、“自分から話しかけなければ”という気持ちもあった?
佐藤:いや、祈を演じてくださる俳優さんは、どんな方なんだろうという好奇心と。とにかく仲よくなりたい一心でした。でも、楽屋での会話とかもすごく楽しくて。それが、幼馴染という役作りをするうえで、よかったのかなって。
藤本:そう思います。
佐藤:祈役が藤本くんでよかったと、ホントに思います。
藤本:いやぁ、うれしい!!
では、本作の見どころを教えてください。
佐藤:見どころは……泳ぐ練習をたくさんしたので。“あっ、ものすごく練習したんだろうな”というのが垣間見える、水泳シーンに注目してほしいです。僕も祈も、ちゃんと練習して、しっかり準備して臨んだので。
藤本:そうですね。祈は水泳部員という設定なんですけど、僕、もともとカナヅチだったんですよ。だから、まずは水泳嫌いを克服するところからのスタートで。
佐藤:それは大変だよね。
藤本:人生で、初めて水泳と向き合いました。ずっと逃げていたのに(笑)。
佐藤:あははは!
藤本:この作品の大きなテーマとして、自分を見失ってしまったり、思春期にありがちな未熟さが描かれていると思います。自分のやりたいことができなかったり、言いたいことが言えなかったり、周りに流されてしまう人も多いと思うんです。僕自身も、そういうときがありました。この映画を観た方にとって、勇気を持って何か一つ変わるきっかけになったらいいなと思います。
佐藤:俺、主演なのに、「泳いでいるシーンを見てください」でいいのかな(笑)!? でも、ホントにがんばったので。“あっ、ここ、新くんがすごくがんばったと言ってたシーンだ!”みたいに観てもらえたらうれしいです。

お二人ともこの日が本当にお会いするのが久しぶりだったこともあり、始まる前に「お久しぶりです!」とお互いに丁寧にご挨拶をされていました。その姿を見る周りも自然の顔が緩んでしまうくらい微笑ましく可愛らしかったです。インタビューでは、実年齢差はあるものの、お互いの青春時代が同じだったこともあり、話がとにかく弾み、お二人だけの共感やツボもピッタリで本当にこの作品からの共演とは思えないぐらい息がぴったりでした。後編では、作品に、登場するあるものでお話を伺いました。そのお話もすごく大盛り上がり。お楽しみに!
佐藤新
さとう あらた
2000年9月1日生まれ。
最近の出演作に、フジテレビ『silent』(‘22)、MBS『高良くんと天城くん』(‘22)、映画では、『春の香り』(‘25)、『わたしの幸せな結婚』(‘23)、がある。
藤本洸大
ふじもと こうだい
2005年10月6日生まれ。
最近の出演作に、TOKYO MX『低体温男子になつかれました。』 (‘25)、日本テレビ『なんで私が神説教』(‘25)、毎日放送『スメルズ ライク グリーン スピリット』(‘24)、映画では、『うちの弟どもがすみません』(‘24)、『恋わずらいのエリー』(‘24)などがあり、2025年6月公開予定の『劇場版 スメルズ ライク グリーン スピリット』が控えている。

©映画「青春ゲシュタルト崩壊」製作委員会
『青春ゲシュタルト崩壊』6月13日(金)全国公開
出演:佐藤新(IMP.) 渡邉美穂
田辺桃子 新井美羽 水橋研二 濱田龍臣 藤本洸大
戸田菜穂 / 瀬戸朝香
原作:丸井とまと「青春ゲシュタルト崩壊」(スターツ出版刊)
脚本:三浦希紗 ◎音楽:牧戸太郎 ◎監督:鯨岡弘識
企画・プロデュース:横山祐子
プロデュサー:伊藤聖
配給:NAKACHIKA PICTURES
制作プロダクション:AX-ON
Ⓒ映画「青春ゲシュタルト崩壊」製作委員会
※Team Credit
カメラマン:鈴木寿教
インタビュー:林桃
記事:林桃/有松駿